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婉という名の女

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大原富枝の本は、噂だけで読んではいない。
圧倒的な作品ということであり、コンディションの良い時を選び、隔絶された部屋で、一気に読みたい。

映画があったので、観てみることにした。
大丈夫だろうか、と心配にもなったが、岩下志麻が主演であるため任せた!
小説と映画は全く異なる形式の芸術である。
別モノと意識して味わいたい。

1971年
今井正監督

岩下志麻、、、婉
江原真二郎、、、野中清七
河原崎長一郎、、、野中欽六
緒形拳、、、野中希四郎
中村嘉葎雄、、、野中貞四郎
田代美恵子、、、野中米
楠侑子、、、野中寛
長山藍子、、、野中将
北大路欣也、、、岡本弾七
山本学、、、谷秦山
岸田今日子、、、みつ
加藤嘉、、、井口九郎兵衛

土佐藩執政の野中兼山の子供たちのなかのひとり婉という娘に焦点を当てた物語。
野中兼山は儒学―南学の流れを組む学者であったが、そこから仏教色を削ぎとり、独自の朱子学を構築したという。
彼の功績として、治水・商業の発展(利得の向上)・森林経営・開墾などが挙げられている。
飛び抜けた経世家であるとともに非常に優れた儒学者であり、藩政改革に大変な貢献をしたにも関わらず、政敵の謀略により失脚させられ、彼の死後8人の子供とその生母2人、乳母1人を含む11人が、宿毛(すくも)の在に幽閉され、外との交渉を閉ざされ気の遠くなるほどの永い年月を送る。一家断絶を図る目的であることは、言うに及ばない。

幼いうちは、それでもその幽居が広く自由にさえ思えたそうだ。
だが、思春期を迎えた後は、ヒトは外部―他者なしには生きることができなくなる。
性の問題が必然的に噴出する。
謂わば、彼らは二重の制度によって究極的に苦しめられる。
(これ程の拷問があろうか!)
案の定、婉の兄は発狂してしまう。
その弟は、いや兄上こそが人として正しい(感覚の持ち主だ)と謂う。
そのとおりだろう。
正しく発狂して彼は座敷牢で死んでしまう。
その母も自害して果てる。
婉にもその危機は訪れる。
そのように、一人また一人と亡くなってゆく。
精神がズタズタになる地獄の日々がひたすら反復される。
全員で自害しようとしたこともあったが、婉がその流れを絶つ。
そんな獄舎を、儒学者山崎闇斎門下の谷秦山がある日訪ねてきた。
勿論、遭って話すことは叶わぬが、その事実と兄の詩を高く評価してくれた事に、彼らの生への希望が湧き出る。
特に、婉にとっては、唯一の尊敬に値する外界の男性であり、彼の存在が深くこころに宿ることになってゆく。
今や遠くに去りゆく谷秦山の姿を竹矢来越しに、輝く笑顔でいつまでも見守る婉。
(遠くを歩み去る男の姿がこれほどの生きる希望に繋がるのか、、、と思うと胸がひどく締め付けられる)。
谷秦山とは、学問上のやり取りを文で交わすことが許されるが、彼が所帯持ちであることから世間で詰まらぬ噂が広まり、それもできなくなる。

そして後を継ぐ男が全て死に絶えた時に、藩から恩赦が下される。
女は数ーヒト扱いしていないのだ。
(婉は幽閉中を全て学問に費やしており、その点に置いては男を遥かに凌駕していても、御制度上はおんなである)。
お前たち、外に出て勝手にしろ、とお達しであった。

幽閉されてから既に40年が経過していた!

まさにふざけるのもいい加減にしろ、であるがよく40年孤絶した空間を耐え抜く事ができたものだと、女の強さにも感嘆する。

「わたくしたち兄弟は誰も生きることをしなかったのだ。ただ置かれてあったのだ。」
これは、映画の始まりの恩赦を受けた際の婉の文句である。
ここから想像を絶する凄まじい回想が始まった、、、。


川を初めて見る3姉妹。
婉はその美しさに見入り、姉と妹(腹違い)は、その流れの激しさに尻込みする。
その後の彼女らの生き方を象徴する場面であった。

世間体というものが思いの他、障害を生むことも学習したが、それよりも矜持を常に忘れず突き進もうとする婉。
「元執政、野中兼山の娘・婉、邪魔だては許しませぬぞ!」
かつての自分たちと同じように蟄居させられた谷秦山に逢うため籠を飛ばす婉の姿に、愚劣な制度に対する強烈な憤りとヒトとしての断固とした矜持を感じた。


これは、どこかで小説を当たらなければ、と思う。


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GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
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