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デルス・ウザーラ

Dersu Uzala001

1975年
ソ連・日本製作

黒澤明監督・脚本
ユーリー・ナギービン脚本
ウラジミール・アルセーニェフ原作

ユーリー・ソローミン、、、アルセーニエフ(探検家)
マクシム・ムンズク、、、デルス・ウザーラ(ゴリド族猟師)


この映画、物凄い資金難のなかで作られたらしい。ほとんどソ連から金が出た模様。
スタッフも日本人は5人。ソ連は70人。ソ連軍から30人出されたという。
また、森の中で出逢う虎をソ連側は、飼育された虎で用意しておいたが、黒澤は野生の虎でなければダメだと言い張り、わざわざ野生の虎を捕らえてきて出演させようとしたが上手くいかず、結局ほとんど当初用意した虎で済ませたらしい。
土地も土地であるし、大変な映画製作となったことだろう。


探検家ウラディミール・アルセーニエフの1902年から10年のシベリア沿海地方シホテ・アリン地方における記録から作られている。

アルセーニエフはロシア政府から地図上の空白地帯の地図作成を命じられる。
探検隊を組織しそのシホテ・アリン地方にやってくるが、そこで原住民ゴリド族のデルス・ウザーラという男に出逢う。
この物語は、アルセーニエフ隊長とデルス・ウザーラとの交流を通して描かれる。


デルスの墓を訪ねて来たアルセーニエフは、そこが宅地開発されていて、墓もどこにあるのか定かでない状況になっていることに愕然とする。
デルスは、皮肉にも彼の安全の為にとアルセーニエフが手渡した最新式の猟銃を強盗に狙われ、殺されてしまった。

文明に非文明が押しつぶされてゆく様相のなかのひとつの光景である。

デルスの悲劇は、彼が猟銃で襲ってくる可能性のある虎を撃ち殺してしまったことに始まる。
(いや、デルスの元に文明が侵入してきた時点で彼の運命は決定していたのかも知れない)。
彼らゴリド族には虎を撃ち殺してはならない掟があるようだ。
彼はそれから森の逆襲を怖れ、自分の行ってしまった殺傷を恥じ、ひどく不機嫌になる。
そして、誰もが認める優れた猟銃の腕があるにも関わらず、視力がほとんどなくなり、森で暮らすことも叶わなくなってしまう。
実際に視力自体が落ちたのか、森への畏怖から心理的に目が見えなくなったのかは、はっきりはしない。

デルスというヒト、自然界の生き物全て自分と同格の扱いであり、彼らを敬い信じている。
しかしクロテンの猟で街で生活費を得たおり、ウォッカを呑まされ商人に金を全て持ち逃げされる。
人が何故そういうことをするのか彼には全く理解ができないし恨む意識も微塵もない。
ひとの命を助けるのも当たり前、それを恩に着せたり自慢もしない。
文明の枠外にいることで、森の中ではとても頼りになり探検隊員たちから慕われるが、それが同時に彼の限界でもあった。
彼は森を一歩出たら、全く一般の生活者とはなれない。
文明の作る規範がことごとく彼の認識と理解を越えている為である。
彼は目が役に立たなくなったことで、アルセーニエフの家に引き取られるが、一室に閉じ篭ったままで過ごさざる負えない。
とは言え、彼が籠の中の鳥で、生きて行けるはずもない。

「何故、道路にテントを張って過ごせないのか?」
せめて、屋敷の外には出たかったであろう。
それまでは、ずっと森の中で様々な息吹や気配を肌身に感じつつ野宿に近い生活を営んできたのだ。
彼を連れてきたアルセーニエフにもその配慮とケアが必要であっただろう。
部屋が殺風景だから壁紙を貼替えさせよう、という問題では決してない。

結局、彼は出てゆくこととなり、身の安全を心配したアルセーニエフから渡された最新式猟銃のせいで命を落とすことになってしまう。

文明が彼を殺してしまった。

そして彼の亡骸を埋めた土地も、3年後には宅地にされてしまっていた。

ケレン味や派手なところのない、淡々とした流れの映画であった。
過酷な自然の光景が強烈な夕日の光線とともに印象に残る。

森の情勢を読むデルス・ウザーラの的確な判断と指示は見事なものであった。
それがなければ、アルセーニエフ隊長も隊員も何度命を落としていたか。
しかし、あくまでも西洋文明の及ばぬ異質な世界である森の法の元でのことである。
デルスは森のヒトであるのに、余りに探検隊―アルセーニエフとの友情を深めすぎてしまったのかも知れない。
しかしそこはとても難しい。ほどほどに距離を置いてとか言っていられる空間ではない。
常に森は気候の変動や予期せぬ事故、密猟者の罠や猛獣、病から身を守るための生死をかけた戦いの連続である。
そこで共に暮らせば、親密な関係にもなる。まして相手が尊敬に値すればなおのこと。


探検隊が背後にいなければ、デルスは虎を撃たなかったかも知れない。
森を追放されて、不慮の死を遂げる事もなかっただろうが、、、。
この悲劇は、宿命的なものであった。


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