エイリアン

Alien
1979年
アメリカ
リドリー・スコット監督
エイリアン
「生存のため良心や後悔に影響されることのない完璧な有機体」
(それは「風とともに去りぬ」のスカーレット・オハラをも凌ぐ)。
H・R・ギーガー究極のデザイン。
シガニー・ウィーバー、、、エレン・リプリー(航海士)
ヴェロニカ・カートライト、、、ジョーン・ランバート(操舵手)
イアン・ホルム、、、アッシュ(科学主任、、ウェイランド・ユタニ社のロボット)
トム・スケリット、、、アーサー・ダラス(船長)
ハリー・ディーン・スタントン、、、サミュエル・ブレット(機関士)
ジョン・ハート、、、ギルバート・ケイン(副長、一等航海士)
デニス・パーカー、、、ヤフェット・コットー(機関長)
宇宙貨物船ノストロモ号
ウェイランド・ユタニ社の船であり、アッシュ以外の乗組員は「特命」については知らない。
「生きているエイリアンの捕獲と回収」こそが目的で、乗組員の生命は問題にしないというもの。
(生物兵器産業で儲けようというもの)。
漸く仕事を終え、地球に帰還しようとしていたノストロモ号は進路を大きく変えていた。
知的生命体の信号をキャッチしたからだ。(元々会社はこれを調査済みで、彼らを差し向けたのだ。でなければアッシュを急にこの船に乗せまい)。乗組員たちは渋々会社の契約条項に従い、当外惑星の調査に当たる。
強烈な生命力をもつエイリアンは、調査にきた、ケインにフェイスハガーとして貼り付きまんまと船内に侵入する。
その後、ケインの体内に幼体を宿し、船員たちが皆で食事を摂っている時に、苦しみだした彼の胸を破って飛び出てゆく。
そして、エイリアンは脱皮し急生長して、比類の強さで船員たちの殺戮を始める。
何といっても、終盤の畳み掛けに圧倒される。
それまでの長い展開はすべてここのシーンのためにあったかのよう。
自分以外の乗組員が皆殺され、独り残されたリプリーがノストロモ号自爆装置を起動、脱出用シャトルに向かうがその途上にエイリアンに出逢ってしまう。これはダメだということで、急遽母船内に戻って爆破装置の解除を試みるが間に合わずそのままカウントダウンに入ってしまう。
その為、再度シャトルに向かって走るが、エイリアンの姿はすでに何処にもなかった。
リプリーは周囲を充分チェックしシャトルに乗り込むことに成功し、発進する。背後でノストロモ号の大爆発を確認し、全てが終わったと安堵する。しかし、ほっとしたのも束の間、船内のメカと見紛う質感で不気味に収まっているエイリアンを発見。
彼女の絶望と驚愕は如何程のものか、、、。(わたしも飛んでもないところで、ゴキブリに出逢い、これに似た絶望を味わったことがある。が、わたしの経験の比ではない)。
最後は静かな空間に、リプリーの苦しげで速い息遣いだけが響く。
物質的な恍惚感をいや増しに増すレンブラント光線に煙る中での、、、水、酸、吹き出す水蒸気、火炎、リプリーとエイリアンの身体、宇宙服、船内メカ、、、、ジェット噴射、宇宙空間、、、。
これこそメタル・タルコフスキー空間だ。
ここでのエイリアンは、ほとんど溶け込んだ闇の中から全貌を見せない。
動きの中で確認できる艶かしいメタリックな頭部、、、そして手。
この演出と基本フィギュアの強度により、極めて物質的実在感の高さにめくるめく。
痙攣する美だ。
このエイリアン、リプリーとシャトルに折角同船したにも関わらず、一向に襲っては来なかった。
確かにシャトルが破壊されたら自分も死んでしまう。
ここで暴れるのは得策ではない。
あくまで、大人しく隠れたままで、地球に到着してから大暴れするつもりであったか、、、。
(ウェイランド・ユタニ社では歓迎会があろうが)。
又は、リプリーを子供を産み付ける対象と思っていたか。
(恐らくその両方であっただろう)。
しかし、彼は彼女に一方的に拒否されて、暗黒の宇宙を漂って逝く。
それは、到底最後まで馴染めない孤高の他者であった。
見事にエイリアンであった。
絶対に飼い慣らせないフィギュアであった。
この点で、”エイリアン”はSFの金字塔なり得ている。
そもそも「エイリアン」は、この映画から産まれたはずだ、、、。
(その後のたくさんのエイリアン映画、TV、文芸等々、、、)
勿論、これを超えるエイリアンはいない。

イアン・ホルムの怪演も忘れられない。
「バンデットQ」、「未来世紀ブラジル」、「裸のランチ」、「フィフス・エレメント」、、、「イグジステンズ」ちょっとキリがなくなるがが、「終わりで始まりの4日間」もあった、、、彼はどこでも異彩を放っている。
「鳥」、「SF/ボディ・スナッチャー 」のヴェロニカ・カートライトの神経質そうなひりつく演技、「エレファントマン」のジョン・ハートや「パリ、テキサス」のトラヴィス・ヘンダーソンの印象がずっと残るハリー・ディーン・スタントン、「コンタクト」で狡猾な博士を演じたトム・スケリットなどの名脇役がしっかり固める。
シガニー・ウィーバーは、断然この映画である。
(「宇宙人ポール」にも出ていたが、、、)。
エレン・リプリーは、この「エイリアン」の中で、”エイリアン”とともにSF映画史に永遠に残るはず。

」

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