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欲望という名の電車

Vivien Leigh001

A Streetcar Named Desire
1951年
アメリカ
テネシー・ウィリアムズ 原作・脚本
エリア・カザン監督

ヴィヴィアン・リー 、、、ブランチ・デュボア (元名家の未亡人)
マーロン・ブランド 、、、スタンリー・コワルスキー (職工・ステラの夫)
キム・ハンター 、、、ステラ・コワルスキー (ブランチの妹)
カール・マルデン 、、、ハロルド・ミッチェル (スタンリーの同僚)

キャストは申し分ない。


「アンナ・カレニナ」から3年後のヴィヴィアン・リー主演
「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラが「この役!?」である。あれから12年後か、、、。このひりつく痛々しい演技で主演女優賞を取りまくったものだ。

ブランチは名家の娘であったが身内の者は妹以外死去しており、その上夫も家も全て失ってしまう。自暴自棄の果て放蕩の限りを尽くし、高校の国語の教師であったが、未成年誘惑のかどで免職となり故郷から追われるように妹の家に身を寄せる。
”欲望”という名の列車に乗り、”墓地”という列車に乗り換え、”極楽通り”に行きたい、と彼女が言うところから始まる。

確かに黄昏ている。(黄昏た狂気の役作りが徹底している)。
明るみを極端に嫌う。(昔化粧品会社の女社長で白色のスポットライトを自分の顔に常に照らして歩く人がいたが)。
わたしにはもう陽は射さないのと言い、陽を一切避ける。
夜のシーンばかりが続く。まるで、夜だけ動き出す人形たちのようだ。
月の下で甘味な幻想(妄想)に生きる。
これもよいのだが、それだけでは生きれない。
彼女は、粗野な昼の世界の逆襲を受けることに。

いみじくもブランチが転がり込んだステラの家をポーの怪奇小説の舞台のように酷いと言った通り、そこで日毎恐ろしい事態が反復される。
ブランチは過度に神経質で見栄っ張りで自意識も過剰であるが、それにしてもスタンリーは度を越している。粗暴にも程があろう。果たしてこれが義理の姉を前にすることだろうか?
自分が俗物であることを見下されないための自己防衛もあるにせよ、最初から懐疑の目で彼女に敵意丸出しで、事あるごとに暴力で脅している。嘘や上流階級ぶった虚飾が特に癇に障るというのは分かるが、この夫もかなり異常だ。
しかし、妹のステラは妊娠しており、この粗暴な夫を愛している。
ブランチは暴力を恐れ一緒に逃げる相談をするが、ステラは全く取り合わない。
ステラは貧しく粗暴な夫との暮らしに充足しているのだ。
夫のスタンリーは、これまでの平穏な生活がブランチのせいでおかしくなったと怒りを隠さない。
いちいちブランチの噂を嗅ぎ回り、容赦なく弱みを暴き尽くそうとする。

ブランチにとっては、最後の救いをここに求めて流れ着いたのだ。
「極楽通り」に。欲望を墓に葬って、再生を求めはしたが、彼女は余りに受動的であり、自立性が脆弱すぎた。
ヒトの好意に縋る事に慣れ過ぎてしまったためか、もう神経が磨り減って意欲がなくなってしまったためか、、、。自分から動くことができない。
ここに来るまでで、もう余力はなかったか。
生きる力は、とても弱い。所謂弱者といえよう。


「熱いお風呂に入りたい。」
これはとてもよく分かる。
高ぶる神経が休まるのだ。この辛い空間内ではお湯の温度だけが救いとなる。
わたしもひっきりなしに風呂には入っている。やはり熱い温度で。
感覚を一時だけでも充たせる。

それにしても、よくあれだけ義理の弟にいびられながら居座り続けたものだ。
お互いに水と油くらい感覚的に合わないのに。
単に意見に齟齬をきたす程度の差異ではない。
どう見ても双方とも一日同居したらもうウンザリのレベルであろうに。
動けないのだ。お金の問題は大きい。自立(幻想)の問題は大きい。(よく故郷で教師が務まったものだ)。
だが、それだけか、、、。
動けないという事は、内側の狂気に徐々に沈み込む事態ではないか。
発狂する前の蛹の状態。
この間、この世界での淡い希望をハロルドとの間に抱いたが、あくまでも彼女の側での世界の充足に過ぎなかった。
彼女は昼の出会いを望まなかった。彼との幻想の共有は所詮出来ない。
昼の世界の住人たちからの遠慮も配慮もない噂も押し寄せ、幻想はことごとく打ち砕かれてしまう。
ハロルドも退いてしまった。
更にステラの出産入院の夜のスタンリーの仕打ちが決定打となってしまう。

彼女は妹の家を出てゆくのではなく、内側から向こう側に出て行ってしまった。


残酷な話である。
ハロルドの悲嘆に暮れる姿に同情する。



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