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2006年

滝田洋二郎監督
あさのあつこ原作
原作については全く知らない。

林遣都、、、原田巧(中学生天才ピッチャー)
山田健太、、、永倉豪(キャッチャー、巧の女房役)
鎗田晟裕、、、原田青波(巧の病弱な弟、野球好き)
蓮佛美沙子、、、矢島繭(巧のクラスメイト、テニス部)
萩原聖人、、、戸村真(野球部顧問)
上原美佐、、、小野薫子(テニス部顧問)
天海祐希、、、原田真紀子(巧の母)
岸谷五朗、、、原田広(巧の父)
菅原文太、、、井岡洋三(巧の祖父)

菅原文太の演技がもう見れないのは、本当に淋しい。
しかし、林遣都にはこれからずっと注目してゆきたい。


現時点であるが、実写邦画の中でわたしの一番好きな作品である。
野球に全く関心がなく、TV中継も見ないわたしが、何の因果でキャッチボール見ながら泣かなければならんのか?!
しかし、この映画、キャッチボール見るだけで充分泣ける映画に仕上がってる。
この映画は少年時代から青年へと役者が変わって推移するような時間的スパンはなく、中学一年(入学少し前から始まるが)の短い時間をじっくり豊かに、少年のこころの変化と周囲との関係を描いてゆく。


この作品、何が特別かといえば、恐らく何も特別なものはない。
弟の病気療養もあって東京から岡山の妻の実家に越してきた家族の話だ。
ただ、その長男である原田巧という少年が、天才的な野球のピッチャーであり、弟が野球が何より好きであるにも関わらず病弱なため出来ないでいる、という状況にある。
野球についても全国大会でどうの、ではなくここ岡山県での活躍である。(この先全国レベルの活躍になるかもしれぬが)。
しかし、それでも中1で、県大会準優勝のチームの3年生4番バッターも歯が立たないというのは、相当なものだ。
体も著しく成長する時期で、1年と3年とでは、飛んでもない体格(筋力)差があったりするものだが、それもものともせず投げ勝つのだから凄い才能の持ち主なのには違いない。

物語は、この才能を持て余している孤独な少年が、自分の速球をしっかり受け止めてくれるキャッチャーに出会ってから始まる。
このキャッチャーも中1とは思えぬ、包容力と優しさをもった懐の深い少年である。
速球はとりあえず受け止め手が現れても、巧のこころは頑ななまま変わらない。
彼は頑固なまでに物事に妥協しない。
見上げたもので、彼は自らの孤独を受け容れ、それに耐える力をもっている。
彼の何よりの強みであるが、それで留まっていれば自ずと限界も呼ぶだろう。
しかし中学生でいつそのような力を得たのか?
永倉豪の母から息子に野球をやらせて上げることはもう出来ないと、言われると「野球はやらせてもらうのではなく、やるものだ」と直ぐに返せる程、肝が据わっている。
彼がいつからか、弟の夢を引き受けたことからか、、、分からない。
(弟は野球が大好きなのだが病気からすることが出来ない。巧は無意識的にも野球を自らに運命づけている)。

巧は不条理な持ち物検査は受け入れず、顧問からの髪を切れにも「髪を切ったらもっと球が速くなるのか」と言って拒否する。おまけに「あんたに僕の球が打てるか」と言って顧問に挑戦状を突きつける。結果、巧が勝つ。
彼は全てその形ー調子で、自分の姿勢で押し通す。実際通ってしまう。
その為、周囲との軋轢を生む。
枠にしがみついてレールの上を上手く渡りたいだけの連中には激しい羨望と敵意を向けられる。
逆に真のライバルも呼び込み、真剣に対決を挑まれる。
どちらにせよ、熾烈な戦いの中を孤独に生きてゆく宿命なのか。
ただ祖父は、巧にもっと自分の為に楽しく野球をやらせてあげたいと願う。


林遣都と山田健太のコンビは奇跡的な出逢いだ。素晴らしい名コンビである。
脇役の少年たちもそれぞれ個性がしっかりしていて、リアリティが充分あった。
弟の痛々しさすら感じる前向きで清々しい演技には感動を禁じ得なかった。
お寺の小坊主も、惚けていて幅広い感情表現などなかなかのものであった。
寿司屋の倅も充分に個性的で活き活きしていた。
そして巧をリンチした3年風紀委員の先輩も見事に小市民的ないじましさと卑劣さを発散していて名演技であった。
矢島繭は清楚で純粋な、巧のこころに触れ得るもうひとりのパートナーとも言えようか。
更に、対戦することになった名門校(準優勝校)のメガネをかけた参謀の生徒の個性も際立っていた。
また、回りを固める大人も渋い。
祖父はまさに縁の下の力持ちであり、みんなをまとめ安心させる雰囲気を常に滲ませていて流石の貫禄であった。
父は普段は頼りないが、肝心なところでの洞察はしっかり的を得ており、普段強気の妻にも深い気づきを与える。
病弱な弟、青波を心配する余り、巧に辛く当たり、野球をすることに否定的な母の姿も充分厚みを感じられた。
顧問は如何にも熱心で不器用な野球部の顧問であり、部員にしっかり目が向いている。

キャストがともかく良い。
このキャストの演技で見せているところが大きい。
しかし、話の流れも全く端折ること無く、丁寧な描写でじっくり厚みを持って展開してゆく。
その為、説得力がある。

何度も繰り返されるキャッチボールの意味がそれぞれの場面で異なってくる。
これまでキャッチボールなどに興味などもったことのないわたしであるが、キャッチボールにすら魅せられてしまった。
このコンビは本当に素敵だ。
野球をすることで、初めてこころの繋がりができる、と彼の父が謂うように、巧も家族や友人、自分の野球チームやライバルチームの人間と、深い共感を得てゆくことだろう。それを予感させるエンディングだ、、、。
最後、弟のお見舞いから駆けつけマウンドに立った巧を、初めて母が応援する姿に彼は晴れ晴れと癒される。
彼の最後の投球の後の爽やかな笑顔が全てを語っているではないか。(冒頭では投球後の唖然とした空虚な表情であった)。
孤独を受け容れ自らをしっかり見出すことは重要であるし前提でもあるが、こころの理解を得ることで広がり豊かになってゆくものは大きい。
肉親の理解、これは決して小さなものではない。
そしてゆくゆくは、矢島繭の存在が次第に大きく支えになってゆくのであろう。
そんなことまで自然に想い浮かぶ映画であった。

この映画は、また観てしまうかも知れない。
(娘たちともう少したったら観てみるか、、、)。





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