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ガス橙

Gaslight001.jpg

Gaslight
1947年
アメリカ

パトリック・ハミルトン原作
ジョージ・キューカー監督


イングリッド・バーグマン、、、ポーラ(声楽の勉強を、結婚によりやめる)
シャルル・ボワイエ、、、グレゴリー(ピアニスト・作曲家でポーラの夫)
ジョセフ・コットン、、、キャメロン(ポーラの叔母のファンであった刑事)
アンジェラ・ランズベリー、、、ナンシー(グレゴリーの指示で動く癖のあるメイド)
バーバラ・エヴェレスト(、、、エリザベス(耳の遠い料理人)
メイ・ウィッティ、、、スウェイツ(近所の詮索好きの婦人)

時代設定が1875年ということだ。
どうりで、馬車であることが納得できる。
1950年前後のクラシックカーを見るのが好きで、馬車に少しばかり落胆したが仕方ない。
車出現以前のイギリス(ロンドン)の街の雰囲気を少なからず堪能できた。

この映画徹底してアクションが無い。
何と言うか、どのような映画よりもアクションを見せない。
映すことを封印している。
その場面をこちらに想像させることで芸術性を高めている。
方法をしっかりもった映画であることが分かる。

何よりも絵が美しい。霧に煙る街燈の光の光景ばかりではなく、、、。
最初の頃に出たホテルのバルコニーから臨む朝が、不気味なほど冴えわたった美しさであった。
部屋でもガス燈の明かりを巧みに使う演出が実によい。
足音とともに、神経を確実に刺激し不安にする。
狂気に次第に追い込まれてゆくイングリッド・バーグマンの端正な美しさは遺憾無く溢れ出ていた。
特にパーティドレス姿に、、、。

ポーラとグレゴリーは、最初だけ仲睦まじい恋人同士といった感じであったが、彼が彼女の叔母(高名な歌手)の殺された忌まわしい事件の起きた家に住みたいという事で、結婚後そこに移り住んでから事態は異常なものへと進展してゆく。
そこはかつてのポーラの家でもあり、その殺人事件自体が迷宮入りしていて、彼女には数々の思い出があり重くのしかかるものがあった。
恐らくそれも夫の計算の内であろう。遺品置き場を彼女の部屋の上にするとは、上手いやり方だ。

彼は彼女の叔母アリスの宝石を狙っていたのだが、殺害はしたがそれを盗み損ねていたのだ。
そのため、彼はポーラに近づき結婚し、その家のアリスの遺品を徹底的に探り、宝石を見つけ出そうとしていた。
グレゴリーにポーラがじわじわと、とことん精神を追い詰められてゆく姿には、こちらも耐え切れなくなってくる。
今よく取り沙汰されているDV以外の何ものでもないが、とても巧妙に仕掛けられポーラは精神を蝕まれてゆく。
大体、物を隠され、それを何故失くしたとか何処に隠した、など毎日責め立てられていたら誰でもおかしくなる。
(わたしは日頃、それを一人二役でやっている。ただ、自分で何処かに置き忘れて一日中探しているだけだが(笑)。
彼女はいつまでもグレゴリーに疑念を抱かず、自分を責め続けるし、グレゴリーとつるむナンシーというメイドもかなりのものであった。いや実はエリザベスの方が曲者だったのかも、、、。

グレゴリー自体が宝石のため現妻の叔母を殺害した上、彼女を発狂させようというのも、相当異常(というよりサイコ)と言える。
少なくとも宝石のFetishな魅力に取り憑かれた亡者である。
果たしてこれがどうにかなるのか、ポーラはこの状況を脱することができるのか、、、
ポーラは自分が本当に病気だと信じ込んでいってしまう。
こちらも、この物語の出口が見当つかず、心配と不安が募るのだが、、、。


しかしキャメロンという異様に直感の優れた刑事が現れ、グレゴリーに不審を抱き、彼の意図を暴き追い詰めてしまう。
この終盤の展開は意外に早いリズムであった。
グレゴリーが深夜外を歩いて近所に姿を消すだけで、キャメロンはおかしい事を悟ってしまうのだ。
(このくらいの状況でどんどん家に踏み込んで行ってしまうのも何とも言えないが、、、)。

最後のポーラのグレゴリーに対するセリフには溜飲が下がる思いだ。
よくもやったわね、という気持ちが、逆説的ひねりを効かせよく出ていた(笑。

アクセサリーや懐中時計、楽譜に挟まれた手紙、壁に掛けた小さな絵、作曲家グノーのサイン入りの手袋の片方、、、などの小物が大変効果的に使われていた。特にキャメロンがポーラを信用させるために持って行く手袋ほど有効なアイテムはあるまい。あそこから、事態が変わる。ちなみに悪い方に急転したのは、挟まっていた手紙の発見からだ。すべての重要な転機は、これらの小物が握っている。
実に上手い映画だ。
スウェイツがもっとお節介を焼いて、事件に絡んでくるような期待を持たせたが、そこについては、ほとんどなかった。

グレゴリーが作曲家・ピアニストということもあってか、BGMにもベートーベンやシューベルト、ヨハンシュトラウスが使われていた。
上手く場面に溶け込んでいた。
ともかく、優れたキャストに支えられた映画でもあろう。
シャルル・ボワイエの冷酷非情な表情の演技が素晴らしい。


この種の全て内に篭ったDVは、外からはほとんど発見されずに行くところまで行ってしまうのではなかろうか。
普通キャメロンのような刑事は滅多にいない。

Gaslight002.jpg




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