インサイド・マン

Inside Man
2006
アメリカ
スパイク・リー 監督
ラッセル・ゲワーツ、アダム・エルバッカー 脚本
テレンス・ブランチャード 音楽
デンゼル・ワシントン、、、キース・フレイジャー (ニューヨーク市警)
クライヴ・オーウェン、、、ダルトン・ラッセル (銀行強盗のリーダー)
ジョディ・フォスター、、、マデリーン・ホワイト (女性弁護士)
クリストファー・プラマー、、、アーサー・ケイス (マンハッタン信託銀行会長)
ウィレム・デフォー、、、ジョン・ダリウス (ニューヨーク市警)
キウェテル・イジョフォー、、、ビル・ミッチェル (ニューヨーク市警、キースの相棒)
ちょっと人を喰ったようなテーマ曲がとても気になった。面白い。

オシャレな映画だった。
強盗団の描き方がシャープ。
ダルトン以外は人格を観たないかのような影みたい(これも計略のひとつだが)。
噺をしているのは彼だけだった。残りはショッカーでもよい。
まずダルトンは余程、ケイス(周辺)を調べ上げたんだね。
この時期のこの年齢の大富豪は、戦争を利用して富を形成した者は少なくない。
今は大変な慈善家で経済界で尊重される存在でもその礎を築いた頃は何やっていたか分からないものだ。
彼はナチスと組んで甘い汁を吸った。その捨てる事の出来なかった徴を隠していたというが今一つ事情が掴めなかった。
これは彼にその秘密を守ることを依頼された敏腕弁護士マデリーン・ホワイトですらはっきりとした内容は知らされないまま。
こちらが分かるはずもない(笑。

ダルトン・ラッセルのほぼ同じ口上が始めと最後に流されたり、人質の尋問がまだ助けられていない物語の中ほどで挟まれたり、構成も面白いし飽きさせない。
ただ、苦悩する被害者であるアーサー・ケイスは相当な権力も持っているはずで、マデリーン・ホワイト以外のルートで強盗団を追うこともあってもおかしくないと思う。ちょっと気弱で上品すぎる気がした。元ナチスと組んでいた割に。
その分、ホワイトは可成りのやり手である。ハッキリ言ってあの程度の仕事で、ケイスから多額の口止め料までせしめ、弱みを握っていることから顧客にも登録してしまう(笑。彼女も相当な金持ちに違いない。
今回の事件を利用し、つまり実際に欠番の金庫(無いことになっている)以外からは全く何も盗まれず、人質も皆無事救出され、ニュース報道はされたもの、実質被害が無かったことで、キース・フレイジャーはニューヨーク市長から刑事の鏡みたいに賞賛されしっかり~ちゃっかり出世している。これは確かに電話で謎かけをしたり相手を読み合ったりで頭は疲れたにせよ、強盗団ひいてはダルトン・ラッセルのお陰によるところが大きい。

強盗団は、結局ダイヤだけ盗んだのか?
あの欠番238から。
最後にフレイジャーに託す形でダイヤの指輪を残すという事は、俺の代わりにケイスの悪事を暴けという事?
まあ、警察のやるべきことかも知れないけど、メディアの仕事かもね。
でもそれはホワイト女史がやらせない手を打つでしょうが。
今やケイスは上客なのだし。
でも気になるのは、ダルトンはこれでどの程度、ケイスに打撃を与えられたのか?
ホワイトが言うにはダルトンがそれを使うような時は、直ぐにあなたが買い取るのよ、と言うアドヴァイスだ。
ダイヤをあれだけしこたま盗んだのだから政治(思想)だけでなく金も相当好きなはず。
どうするのだろう。
そう、あのバカでかいダイヤの指輪を託されたフレイジャーはこの事件解決後に、相棒と共に飽くまでも追及の手を緩めず頑張るのか?昇進したし彼女との結婚も控えているし、この辺にしといてやろうとなるのか、ならぬのか(笑。

頭は回るが女好きでとっても軽めのデンゼル・ワシントン。
如何にもやり手の知的で腹黒い~いやミステリアスな女傑のジョディ・フォスター。
強盗なのだが、強大な富を持つ偽善者も懲らしめたいこれまた知略に長けたクライヴ・オーウェン。
もと巨悪のくせに何だか脆弱な名士みたいになってしまったクリストファー・プラマー。
どれも実に良い味を出していた。
結局、全て観きれなかったが、客の中に協力者が何人も潜伏していたのね。
犯人と一緒の服で紛らわしい形で銀行から雪崩出たけど、あれで皆助かったわけ。
(客を犯人と同じ服を着せたのもその意味があるから)。
最後の、ラッセルがわざとフレイジャーにぶつかり銀行を正面扉から出て行きゆっくり歩いて車に乗った際にあれまあと分かる。

ただ、あの小部屋だが、あそこは何処にあるのか、今一つよく分からなかった。
(集中が途切れ途切れで観てしまったのがよくなかった。もっと暇な日に観るべきだったか)。
それにしても、警察の盗聴を逆手に取ったアルメニア語の大統領演説を聞かせたり、人質を殺すことは無いと踏んだ後に、屋上~距離を持ったところでトリック処刑をやって見せたり、巧妙な手で翻弄するダルトン・ラッセルの知略は思わず膝を叩いてしまった(笑。勿論、キース・フレイジャーもジャンボジェットを逃走用に要求するところに、相手方の時間稼ぎの内情を観抜くところなど、流石である。
まあ面白い映画であった。ちょっとデンゼル・ワシントンが軽めで下品なところが、わたしのデンゼルイメージとズレていたが、まだ若い時期だしね。
AmazonPrimeにて
