トルソ

2010
山崎裕 監督・脚本
佐藤有記 脚本
渡辺真起子 、、、ヒロコ(アパレル会社事務員)
安藤サクラ 、、、ミナ(ヒロコの異父の妹、ファッション誌関係?)
蒼井そら、、、モデル(ミナの業界で活躍する)
ARATA、、、酔っ払い男
石橋蓮司、、、レンタカーの店員
山口美也子、、母
画面の暗い場面が多くてイラつく。
暗いところでモゴモゴは極力止めて貰いたい。

トルソ(石膏像)をデッサンしたことはあるが、風船?と言うのが珍妙。
だが、そこそこそんな形に見える。つまり彼女にとり不必要な要素のないヒトなのだ。
それを自分を慰めるために使っている女性となれば、かなり不気味にもとれるが、映像としての撮り方は結構綺麗で情感もあり神秘性も感じられた。それからこれは完全に能動的な立場で関われる(受け身はない)。
面白かったのは、ヒロコが海~他に誰もいないプライベートビーチみたいな浜岸に降りて、素っ裸になり、膨らましたトルソと共に無邪気に心底楽しそうに浅瀬で戯れている絵が実にシュールであった(笑。
かなり危ない感じに思えたが。

変幻自在の安藤サクラ演じるミナは、ここでは素直で奔放で遠慮はないが配慮は出来る憎めない妹だ。
姉の秘密を知っても最後まで知らぬ顔で通していた。
結局、華やかな都会での夢を諦め故郷で介護職に就くことに決めるが、その際に初めて姉にも自分の外に出る事を促す細工をして出る。粋な計らいだ。
渡辺真起子演じる姉のヒロコの内向的な闇の塊感は、物語の進むにつれ親の作る環境が酷く影響していることが分かる。
父親の墓前に線香もあげる気すらない、母のあの物言いからも充分に推察できるところ。
性に対するトラウマや不安が彼女を長いこと閉じ込めている。
完全に自分が主導権を持ち統御する性の行為は癒しの過程でもあろう。
まずは安心で自由な世界の保証だ。あの海辺は印象的、、、。趣味の世界として引き摺り続ける~安住する場合も多い。

アパレル会社の娘たちって、週一で合コンというのやってるの?
まあいくら何でも忙しないわね~。
こりゃ、ヒロコじゃなくてもちょっと距離置きたくなるでしょ。
ヒロコの場合は特にだろうけど。
彼女の場合、料理やパッチワークをしたりと趣味も多い。
無駄な時間過ごすよりは家で静かに暮らした方が良いわね。

かなりテーマ的には重いし暗くなる噺であるが(実際画面の暗さにイラつくところはあるが)主演女優の飄々とした余裕ある演技と常にどことなくユーモア漂う演出に救われている。
寧ろ軽妙な感じで流れ、全く激昂して争うような場面もない。
そこが品があって良い。
ミナの東京での仕事ぶりももっと観たかったところ。
あの華やかな仕事を諦めるのは、勿体ない。
もうちょっと頑張れなかったか。まあそこにいたらカメラマンのDV男から離れられないこともある。
ミナにとっては暴力男とキッパリ別れることが肝心であろう。

最後に郷里に帰ると言うミナを見送って、部屋に戻ってみると、妹が自分の誰にも知られてはいけないモノを堂々とクローゼットの中に上着を着せて飾って置くではないか。しっかり空気を入れて膨らんだ形で。
全て知っていたのだ。おくびにも出さずにいたが。
そしてヒロコは大事なトルソから卒業する決意を胸に秘める。
異なる現実へと一歩踏み出す彼女の早朝の表情が明るく、何らかの確信が窺えた。
「私たちはまだまだいけるよね」(ミナ)。
その通り、と言いたい(爆。

この映画は、渡辺真起子と安藤サクラの両主演を堪能するものであるが、どちらの存在感も半端ではなかった。
達人の域にある演者がそのキャラクターそのものに自然と成ってしまっているというか。
もう、上手く演じているとかいうレベルではない。
あのバーで出逢いラブホで先に寝てしまった男はもしかして井浦新?
もう出る映画というか役柄選んでよ、と謂いたい(笑。
AmazonPrimeにて
