リトル・ガール

Petite fille
2020
フランス
セバスチャン・リフシッツ 監督
サシャ
カリーヌ、、、母
信じられない程美しいドキュメンタリー映画。
感動した。
ドビュッシー、ラベル、ヴィヴァルディなどの選曲も良い。
ドキュメンタリーに時折感じるがさつのなさが全くない。センスが良い。
ドキュメンタリーと気づかず、途中まで上手い子役だねえとか感心しながら観ていた(笑。

フランス北部、エーヌ県とは、かなり保守的な田舎なのか?
おフランスと謂えば、日本よりLGBT問題など進んでいるように思いこんでいたが、この厳しさは何だ。
サーシャと言う7歳になるトランスジェンダーの男の子~こころは女の子が主人公。
特に学校をはじめとするバレエ教室などの教育機関がちょっと酷すぎる。
実際にクラスでは、女子からも男子からも疎外され友達が出来ない。
教師、管理自体がそういう態度であるから尚更である。
教育機関こそが先頭切ってこうした問題に積極的に当たらないでどうする。
バレエなど美を追求する表現芸術など特に。それがもっとも頭の固い保守的な差別主義では噺にならない。
伝統的な面が災いしているか。と謂うより先生の問題だろう。

だが、サーシャを支える家族が素晴らしい。素晴らし過ぎる。
母父兄姉が皆、彼女をそのまま受け止め彼女を女の子として認め活き活きと生きてゆけるよう励まし支援を惜しまない。
これがもし私の親であったら、世間に顔向けできない親に恥をかかせるなこの親不孝者くらいはまず普通に言う(口癖であった)。
断じて認めるなどあり得ない。何一つ認めてこなかったものだ(模範的毒親)。
まず親・兄姉に恵まれていたことは幸いである。皆が互いに支え合ってサーシャを暖かく見守っている。
そしてパリの小児精神科医が見事当たりで、この医者により事が前に運びようになる。
何より素晴らしいのは、子どもの事で親として自責の念に悩む母親に「あなたは何も悪くない」と言って労うところ。
孤独に懸命に闘う親を応援できないでどうする!
これと正反対の日本のバカ医者には何人会って来たことか、、、。
(この専門医はサーシャを性同一性障害ではなく性別違和として確認している)。
そして何とか保守的な学校の管理及び教員も動かすことになった(まだ前途多難ではあるが)。

この7歳のサーシャが素直で賢明でしっかりしていることに驚く。
自分をちゃんと持っているが、適度な距離感を持って周囲に接することが出来ている。
(周囲は物分かりの悪い連中の方が圧倒的に多い状況にあり)。
とても繊細な上に寛容で、この歳とは思えぬ程、大人なのだ。
この子凄い人になるぞ。

しかし好きなバレエが断念は残念。どこかで再開出来ないだろうか。
男の子としてしかバレエをさせて貰えなかったのだ、、、。
母と共に女の子の服やバッグを選び、水着も選んで着ることが望みであったが、実際に緊張と戸惑いも隠せない、その心境も切なく伝わってくる。
思わず泣けた。
この歳でこんな困難に健気に立ち向かっているのだ。

多様性だ何だと言いながら個々の現状は、こうしたものだと思われる。
頼りになる家族と理解者に支えられ、自分らしく強く生きて欲しい。人生を愉しく過ごして欲しい。
率直にそう思う。
世の中自体はそう簡単には変わらないから。
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