プロフィール

GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
基本的に、日々思うことを綴ってゆきます。悪しからず。
必ずパソコン画面(PCビュー)でご覧ください。


*当サイトはリンクフリーです。

PICKUP
still dark
この世界に残されて
ファミリー ファミリー
通告
暗黒街のふたり
Autonomous 自律
怪奇蒐集者 黄泉がたり 村上ロックより抜粋
閉鎖病棟 -それぞれの朝-
ついに実現、S君の絵画展
S君 小さな情景展 Pre001
遠藤彰子先生と語る
春夏秋冬そして春
キューブ CUBE
ドント・ハングアップ
キャット・ピープル
パラサイト 半地下の家族 -2
パラサイト 半地下の家族 -1
ヘンリー・ムーア~彫刻に見る普遍性
911爆破の証拠―専門家は語る 前
9/11:爆破の証拠 - 専門家は語る 後
アポロ 11
シャチ~優しい殺し屋~
ハイヒール
お嬢さん
とうもろこしの島
セールスマン
トラピスト1に寄せて
「労働疎外より人間疎外」によせて
カッシーニ グランドフィナーレ
カッシーニ グランドフィナーレⅡ
シチズンフォー  スノーデンの暴露
スノーデン
レヴェナント: 蘇えりし者
透明な身体性
森羅万象を描く デューラーから柄澤齊へ
ヴィデオドローム2 ~イスラム国 ~アノニマス
見えない重力を描く Ⅱ
美の翳りに寄せて
写真についてーⅡ
午前零時の奇蹟(シュル・レアリスム覚醒の時間)
パーフェクト・デイ ~ルーリード ~ローリー・アンダーソン ~スーザン・ボイル
未来派の画家~ウンベルト・ボッチョーニ
Balthus ~ バルテュス展行ってまいりました。
「ゴールドベルグ変奏曲」 バッハ  ~グールド ~P・オトゥール ~ニーチェ
大昔のスケッチ(詩画集のための試作)
すでに世界は終わっていたのか ~ ヒエロニムス・ボスその1
スヌーズレン002
情報リテラシー  ~華氏911 ~不都合な真実
南伸坊「歴史上の本人」
プラトーン
アリータ
カレンダー
08 | 2023/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
邦画特選
☆彡 東京物語
☆彡 秋刀魚の味
☆彡 麦秋
☆彡 晩秋
☆彡 雨月物語
☆彡 アフタースクール
☆彡 ラブレター
☆彡 四月物語
☆彡 花とアリス
☆彡 スワロウテイル
☆彡 リップヴァンウィンクルの花嫁
☆彡 寄生獣
☆彡 寄生獣 完結編
☆彡 ヒミズ
☆彡 冷たい熱帯魚
☆彡 女子ーズ
☆彡 フラガール
☆彡 怒り
☆彡 ミスミソウ
☆彡 志乃ちゃんは自分の名前が言えない
☆彡 少女邂逅
☆彡 羊と鋼の森
☆彡 空(カラ)の味
☆彡 カノン
☆彡 花筐
☆彡 ローリング
☆彡 サマーフィルムにのって
☆彡 あん
☆彡 ドライブ・マイ・カー
☆彡 お嬢ちゃん
☆彡 夏の妹
☆彡 モダン・ラブ
☆彡 ソウル・フラワー・トレイン


アニメーション☆

★彡 サマーウォーズ
★彡 君の名は。
★彡 この世界の片隅に
★彡 言の葉の庭
★彡 聲の形
★彡 魔法少女まどか☆マギカ 劇場版前後編
★彡 魔法少女まどか☆マギカ 劇場版 新編
★彡 映画けいおん!
★彡 涼宮ハルヒの消失
★彡 響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ
★彡 たまこラブストーリー
★彡 百日紅 Miss HOKUSAI
★彡 planetarian~星の人~
★彡 『千と千尋の神隠し』を観て。廃墟のテーマパークの可能性
★彡 星を追う子ども
★彡 劇場版総集編メイドインアビス 旅立ちの夜明け・放浪する黄昏
★彡 Dr.STONE
★彡 天気の子
★彡 竜とそばかすの姫
月別アーカイブ

悪夢探偵

StrawberryMoon002.jpg

2007

塚本晋也 監督
塚本晋也 、黒木久勝 脚本
塚本晋也 『悪夢探偵』原作
石川忠 音楽

松田龍平、、、影沼京一
hitomi、、、霧島慶子
安藤政信、、、若宮刑事
猪俣ユキ、、、パンク少女
村木仁、、、肥枝田
ふせえり、、、肥枝田の妻
大杉漣、、、関谷刑事
塚本晋也、、、0(ゼロ)
原田芳雄、、、大石恵三


監督がここまで大怪演する映画は、そうは無いと思う。
噺の流れ的には続編もと思ったが、内容的にはやり切っている。
だが、『悪夢探偵2 怖がる女』という続編があった。
機会があれば観てみたい。まだ何かやれるのか。
それにしても「悪夢探偵」ではないぞ。「他人の夢の中に嫌々入る毒親のトラウマに苦しむ青年」に過ぎない。
颯爽と探偵で商売している訳でもないし。

トラウマが強大で根深い程それが何であるのか分からない。ひりつきながら突き動かされるのみ。
大概の場合、幼少期の記憶がない。
生存欲求の自己防衛の規制からくる。
しかしその正体が像を伴い、凄まじい衝撃と共に蘇ってしまうと、、、何かの機会に、、、
根底から揺らぐ。
別に確かなアイデンティティを持って生きていた訳ではなく非現実的な日常を苦し紛れに生きながらえて来たに過ぎなくともだ。

だが、やはり知るべき~対峙するべき真実である。
迷う(選択の)余地など全く無いのは自明。
無意識に隠蔽していようがそれはこころを支配しており絶えず意識を病み歪め続けて来たのは確か。
世界を叩き潰さなければならない。
神を殺さねばならない。
法ではなく物理法則~全自然学にしたがう。
生きているのなら目覚めるしかないのだから。

moonbow002.jpg

夢~水を介してと言うのはよく分かる。
重力と時間から解かれた場で明白になるもの~知り得るもの。
この”0”という存在は、腹を包丁で刺して昏睡状態のなかでその場に行き着いた。
まさに覚醒した。そして死の縁にいる者に次々に交信するようになる。
0と影沼京一は、夢の場ではっきりと出逢う。
他の人間は向き合えない。自分に対峙出来ないように。
だから姿なき0に恐怖し惨殺されるだけ。
ふたりはある意味、共感関係にある。

どちらも比類なき壮絶な幼少時代を潜って来たからだ。
その意味でわたしも共感できる権利を持つ(爆。
環界の害意と悪意を増幅して反射する憎悪の磁場。
自然の摂理として発生する無限のアリ地獄。
彼らの慣れ親しんできた場。
悪夢。しかし夢がやはり再生の場でしかない。

sun005.jpg

霧島慶子には恐ろしいクリーチャーとして垣間見える存在でしかなかった0。
しかし同じ位相にいる影沼京一が何故霧島慶子に見えるのか。
何かが違うのだ。
それはそうだ。
同様の経験をした者が同じような存在と成る訳ではない。
それこそ多様性である。複雑系のなせること。

共感は出来ても同意できない間はある。
あって当然。
目覚める過程で皆異なる路に逸れる。それぞれが異なる重さを纏う。それが意識を生む。
ここでは霧島慶子の立ち位置も幼少時のイメージもほとんど掴めない。
ただ彼女が影沼京一の何かに魅かれたことは分かる。彼女はそういう存在だったのだ。そこから分ることはある。
それが目覚め後の生の意欲に繋がれば先ずは良いのでは。
だが続編には霧島慶子は出てこない。

もしかしたらhitomiの続投に困難を監督が感じたからか。多分ね。

moonbow003.jpg

わたしの体質にとても合う心地よい映画であった。




AmazonPrimeにて











決算!忠臣蔵

kessan001.jpg


2019

中村義洋 監督・脚本
山本博文 『「忠臣蔵」の決算書』原作

堤真一、、、大石内蔵助
岡村隆史、、、矢頭長助
濱田岳、、、大高源五
横山裕、、、不破数右衛門
荒川良々、、、堀部安兵衛
妻夫木聡、、、菅谷半之丞
大地康雄、、、奥野将監
西村まさ彦、、、吉田忠左衛門
木村祐一、、、原惣右衛門
西川きよし、、、大野九郎兵衛
石原さとみ、、、瑤泉院
竹内結子、、、りく
阿部サダヲ、、、浅野内匠頭
桂文珍、、、祐海和尚
村上ショージ、、、前田屋茂兵衛
上島竜兵、、、早川惣介
板尾創路、、、戸田権左衛門
滝藤賢一、、、戸田采女正
笹野高史、、、落合与左衛門
鈴木福、、、大石松之丞


財政面から赤穂浪士の討ち入りまでの顛末を描いたコメディー。
大石内蔵助が遺した会計帳簿『預置候金銀請払帳』を基に作ったものだと。
とすると大石は実際は、この映画のようないい加減な男でなく几帳面な性格だったのでは、、、女好きで金使いも荒かったのかしら。
いずれにせよあの人数抱えて、潜伏期間が長くなればなるほど財政は逼迫するわね。

kessan002.jpg

企業が倒産でもすれば皆、こんな風に大変なのかしら。それまでにもリストラしたり残務整理したり、あわよくば再建のために奔走したり、、、。ここでは親戚筋とか出て来てメンドクサイ。
ともかく、仇討ち~討ち入りには大変な予算がかかる。
藩が「番方」ー闘い担当と「役方」ー経理担当に分かれており、互いの折り合いが中々つかないで四苦八苦していたことがよく分かる物語になっていて勉強になった(笑。
この時期、闘い専門の部門があっても戦も無いのだし、何やっていたのだろう。
丁度5代将軍、綱吉の時だ。生類憐みの令が出ていて皆が鬱積していた頃、やはり赤穂浪士は注目の的だったようだ。
赤穂藩が極めて良質な塩を生産している謂わば、優良企業であったため、幕府にとり潰す口実としては願ってもない機会だったか。
浅野内匠頭とかいいカモだった?普通喧嘩両成敗のはずがここまで一方的と言うのも、庶民的には物語を期待するはず。

kessan003.jpg

時代の空気は大きい。
赤穂浪人たち、大石内蔵助はずっと仇討ちするかお家再建にかけるか、色々と迷っていたが、世間が揃って仇討ち~討ち入り物語を過剰に期待しているものだから、そちらに向かざるをえない流れに乗せられてゆく。
閉塞感を突き破るヒーロー物語を欲する、こうした世間の作る潮流は強い。

瑤泉院(ようぜんいん)浅野長矩の正室が大石内蔵助を酷く嫌っていたのは笑えた。
それほどいい加減で筆頭家老として皆のリーダーとして通用していたのは、何処がどのように優れていたのか今一つ掴めなかったが、そこは物語上、大事な部分なのでは、、、。
物足りないと感じたところは、その辺か。
真面目な財務主任の矢頭長助とのやり取りも面白さの一つと言うか見どころだろう。

kessan004.jpg

いずれにせよ大石は「決済」して逝ったことが分かる。
一貫して、浅野内匠頭が松の廊下でやらかしてしまい、即日切腹からお家断絶~家臣たちの路頭に迷う苦悩と長引く潜伏の日々を財政の観点で描き切るアイデアは、秀逸であった。
数字が絶えず画面に現れこちらもハラハラしながら惹き込まれたものだ。

討ち入りの場面は無いという画期的な「忠臣蔵」であったため、実質吉良上野介は出ていないも同然。
この思い切った切断(取捨選択)が良い。
映画の中には色々な要素を放り込み過ぎて焦点のボケるものは少なくないが、そこがスッキリしていて観易い。
そして重く深刻になり易いこの物語をここまで面白く笑えたりするものにしたのは、なかなかのもの。
大石内蔵助が堤真一であったのは、正解。他に考えられないくらいピッタリであった(笑。

kessan005.jpg

もうちょっとあの芸達者の阿部サダヲの浅野内匠頭の切腹前シーンがあっても良いような気はした。
清廉潔白ぶりとか描き始めるとこの映画のテーマがブレたりして不味いが。
上島竜兵さん渋い役柄しっかり熟していたが、もう観れないのは淋しい限り。
それを謂うなら竹内結子もだ。

豪華キャストのよく出来たコメディ映画であった。
(岡村隆史と上島竜兵は大真面目な渋い役であったが)。





AmazonPrimeにて










ザ・レポート

The Report001

The Report
2019
アメリカ

スコット・Z・バーンズ 監督・脚本・製作
デヴィッド・ウィンゴ 音楽


アダム・ドライヴァー 、、、ダニエル・J・ジョーンズ(上院調査スタッフ)
アネット・ベニング 、、、ダイアン・ファインスタイン(民主党上院議員)
ジョン・ハム 、、、デニス・マクドノー(オバマ大統領首席補佐官)
ジェニファー・モリソン 、、、キャロライン・クラス(司法長官代理、大統領法律顧問)
ティム・ブレイク・ネルソン 、、、レイモンド・ネイサン
ベン・マッケンジー 、、、CIA職員
ジェイク・シルバーマン 、、、CIA職員
マシュー・リス 、、、ニューヨーク・タイムズの記者
テッド・レヴィン 、、、ジョン・オーウェン・ブレナン(CIA幹部、後に長官)
マイケル・C・ホール 、、、トーマス・イーストマン(CIA法律顧問)
モーラ・ティアニー バーナデット(CIA職員)
ドミニク・フムザ 、、、ジョージ・J・テネット(CIA長官)
ノア・ビーン 、、、マルティン・ハインリヒ(民主党下院議員)
ダグラス・ホッジ 、、、ジェームズ・ミッチェル博士(心理学者)
T・ライダー・スミス 、、、ブルース・ジェッセン博士(心理学者)
コリー・ストール 、、、サイラス・クリフォード(ジョーンズが相談する弁護士)
ファジャー・カイシ 、、、アリ・スーファン(FBI捜査官)
リンダ・パウエル 、、、マーシー・モリス(ファインスタインのスタッフ)
ジョン・ロスマン 、、、シェルドン・ホワイトハウス(民主党上院議員)
ジョアン・タッカー 、、、グレッチェン(CIA職員)
イアン・ブラックマン 、、、コファー・ブラック(CIA幹部)
カルロス・ゴメス 、、、ホセ・ロドリゲス(CIA幹部)
ラットネッシュ・デュベイ 、、、 ハリド・シェイク・モハメド(アルカイダ幹部)
スコット・シェパード 、、、マーク・ユーダル(民主党上院議員)
ケイト・ビーハン 、、、キャンディス・エイムズ
ジェームズ・ヒンドマン 、、、バックリー
オースティン・マイケル・ヤング 、、、ミラー捜査官
ジョセフ・シラヴォ 、、、ジョン・リッツォ(CIA法律顧問)


何でまたこういうの観てしまったのか、、、。
疲れたわ~だけでなく違和感もあり(爆。
デッド・ドント・ダイ」、「フランシス・ハ」、「パターソン」のアダム・ドライヴァーが熱演。
ホントに熱演だった。セリフもやたらと多く、熱の籠もった反論、力説等、頑張った。
実話を基にしている緻密な構成。

The Report002

911後のブッシュ政権下でのCIAによる捕虜への拷問の実態をオバマ政権下で調査する過程を描く。
上院調査スタッフのダニエル・J・ジョーンズをリーダーとして少人数で5年掛かって調べ上げる。
これも飛んでもない膨大な資料から、5万語だったか、忘れたが、、、。報告書も6000ページになった。

これを観てつくづく思ったのが、何をやり遂げるのも大変なことだねえ、ということ。
彼はこの5年間、まともにベッドで寝たこともない。缶詰で仕事しながら眠ったり、、、。
いやそれよりもこの努力が全く先の見えない仕事に対してなされている事と言うのが肝心。
いくら新たに真実を暴いて見せても、それが政治的には決め手とならない。交されてしまう。
当初持っていたモチベーションも次第に削がれてゆく。それで去って行くスタッフもいたが誰が責められようか。
消耗の感覚しかあるところから持てなくなるのでは、、、。
一時は、CIAの奸計に嵌りダニエル自身、有罪に持ち込まれる裁判にかけられる寸前まで行く。
捜査自体の隠蔽や妨害も当然入る。
真実を明かすことの困難というよりそれを白日の下に晒す困難をいやという程味わうことに。
(今やたらとTVで熱狂しているスポーツ大会などでは、国の代表として応戦され勝てばおめでとうと持て囃され一区切りであるが、こういう仕事は、基本孤立無援で周囲が敵ばかりで終わりがない)。

The Report003

確かに拷問となればあんなことをするのだと思うが(水攻めっていったいどういうつもり)、それに至る理屈と過程が余りにも貧弱なもので少なくともそれをCAIがやるものなのかと、、、唖然である。チンピラギャングよりお粗末な組織に思えた。
「強化尋問プログラム」と称して行われるそれは、相手を死に至らしむ拷問以外の何ものでもない。
目的が敵の内部情報を引き出すことであるなら、あんな手法が有効だと認めることが信じられない処。
そこから得たまともな情報は皆無であった。そもそもこのプロジェクトを立てた主要スタッフは、これまで実際の異文化~アルカイダとの接触も尋問自体も精神科学や政治状況に関しても全く何の経験も知見もない連中が勝手にやったものである。それを許可したのはCIAであるが。正当化したのも。おまけに嘘の成果をでっち上げたのも。
何でこんなゴロツキ連中をCIAは起用したのか、という以前の問題としてCIAって何なのよ。
(それまでにも人間関係を構築して情報を聞き出す方法を持っていたというのに)。

The Report004

それに捕虜を人として扱うことの重要性は、既にジョージ・ワシントンも述べている。
「捕虜をいたぶるようなアメリカ軍兵士がいれば、他への警鐘となる重い罰を与えるべきだ。その非道な行為は軍や国家をも貶める」。実質、退化しているではないか。
最終的にダニエルの5年に渡る努力を無駄にせず、チーフのダイアン・ファインスタイン議員がレポートを発表する。
勿論、それを認めない権力派閥のあるなかで。
野蛮な行為を隠蔽するのもアメリカだがそれを反省し総括するのもアメリカでありその経緯をこうした映画に残すのもアメリカである。
そういう国なのだろう。敢えて「アメリカ」と言ったのは、愛国心がかなり俎上に上がっていた為だ。わたしのように愛国心とか帰属意識の微塵もない人間にとり、ひっかかるところではある(関係ないが)。

しかし911の黒幕など誰の追及も受けないところにいるし、ここは直接の指示者と実行犯の周囲の事だけを扱っている。
更に当ブログではお馴染みの「スノーデン」の名も何度も上がって来るが、ただの裏切り者である(苦。(「シチズンフォー  スノーデンの暴露」も参考までに)。

The Report005

結局、拷問に当たった局員は告発を受けるどころか昇進し、中心人物は長官!となった。
何なのそれ、、、。人材がいないの?
見事な働きをしたダニエル・J・ジョーンズは、レポート公開後、委員会を去っている。
彼を支えていたのは、何だったのだろうか。信念?愛国心?自分を晒さぬ男であった(少なくとも映画では)。
彼の分析力ははじめから評価されていたが、それを世に晒す執念がどれ程のものか誰もが見誤っていた感がある。


この監督、傑作「コンテイジョン」の脚本家であった。面白さでは、あっちだな。





AmazonPrimeにて






*ポスター 




クーリエ:最高機密の運び屋

The Courier007

The Courier
2021
イギリス、アメリカ

ドミニク・クック 監督
トム・オコナー 脚本
アベル・コジェニオウスキ 音楽

ベネディクト・カンバーバッチ、、、グレヴィル・ウィン(英国の技師・ビジネスマン)
メラーブ・ニニッゼ、、、オレグ・ペンコフスキー(アレックス、ロシア連邦軍参謀本部情報総局大佐)
レイチェル・ブロズナハン、、、エミリー・ドノヴァン (CIA職員)
ジェシー・バックリー、、、シーラ・ウィン (グレヴィルの妻)
アンガス・ライト、、、ディッキー・フランクス (MI6職員)
ジェリコ・イヴァネク、、、ジョン・マコーン (CIA長官)
キリル・ピロゴフ、、、オレグ・グリバノフ (KGB職員)
アントン・レッサー、、、バートランド
マリア・ミロノバ、、、ヴェラ (オレグの妻)
ウラジミール・Chuprikov、、、ニキータ・フルシチョフ (ソ連共産党中央委員会第一書記)
キーア・ヒルズ、、、アンドリュー・ウィン (グレヴィルの息子)


「核爆弾が落ちる4分前警報」というのには笑える。
これを未然に防ぐ機会があったのに、と後悔するつもりかと、家族の悲劇を取り上げ脅されてはどうにもならない。
(確かに核シェルターとは謂ってもホントに実用に耐えるレベルのものなど学校や家庭にはない)。
しかしよりによって何でわたしが、、である。政府関係者は顔が割れていて動きようがないのだと、、、。
最後に「君しかいない」で、決まり(苦。このセールスマン、ソ連に飛び、商売を始めることに。

The Courier005

当時頻繁に東欧に出張していたことからMI6に雇われてしまった普通のセールスマン、グレヴィル・ウィン。
結局、彼(とアレックス~ペンコフスキー)のお陰で核戦争が回避されたのだ。キューバ危機である。
今であれば、こんな酷い苦労せず人工衛星(超高解像度カメラ搭載)をフルに使ってデータ収集が出来る。
デジタルデータの送信処理さえ上手くやれば問題ない。

それにしてもとてもわたしでは、こんなストレスには耐えられまい。
スパイとは飛んでもなく大変な仕事である。誰もがKGBの可能性がある。店員、ホテル従業員、運転手、、、。
監視、盗聴、タレコミ、読唇術にも絶えず気を付けなければならない。
グレヴィル・ウィンもストレスから吐いていた。
家に帰っても家族に相談したり愚痴るような内容ではない。機密事項である。かえって奥さんに疑われたりして更にストレスが高まる。
どこまでも続く孤独と緊張。とても無理。

The Courier006

しかしペンコフスキーの場合、自国で高い地位を築いていながら、人類全体の平和の視点から掟を逸脱したこの行為はもっと勇気を必要としたはず。
大変な人である。「フルシチョフのような衝動的な人間に核のスウィッチを任せたら飛んでもないことになる」。そうした認識から西側に5000もの有益なデータを流し続けた。
彼がグレヴィル・ウィンに冗談交じりで言った「将来モンタナに行ってカウボーイになりたい」は、この映画の終わりに思い出すと、ホントに悲しい。

一般人であったグレヴィルはアレックスと関り重大な情報に触れるうちに、この押し付けられた仕事に使命感を持ってゆく。
軍事情報、核配備など、フルシチョフVSJFKの意地の張り合いとも取れる熾烈な均衡は辛うじて保たれていたが、アメリカのトルコに忍ばせた核配備に対しソ連はキューバにそれを置いた(これをばらしたのがアレックスだ)。ここで一触即発の事態になる。
この時期に物心のついていた人々は、毎日新聞~ニュースでいつ核戦争が始まるかリアルな恐怖を味わっていたそうな。
わたしは全く知らない。後に本で読んだのみ。

The Courier003

ウィンは、欲深き資本主義の商人というイメージでやって来たが、機密軍事情報が外に流れていることを察知したKGBが動き始める。
内部の漏洩者にターゲットを絞り、ついにペンコフスキーがターゲットにされる。
一度、帰国して上から君はもう外すと言われ自由の身になった彼であったが、アレックス(ペンコフスキー)の亡命が進んでいないため最後のモスクワ出張だと妻に告げ戻ってゆく。しかし時すでに遅し。アレックスは逮捕され、のこのこ亡命させに戻ったウィンも当局に捕らえられてしまう。
ここからは、文字通り地獄である。収容所の過酷さは筆舌に尽くしがたい。
何年にも渡り厳しい尋問に耐えて過ごすが、ある日、変わり果てたアレックスにも面会することが出来る。
彼はウィンに何も果たせなかったという趣旨の事を述べ、家族の為に君に渡したデータの内容も喋ったことを謝罪する。
しかしウィンは勿論許すとも、君のお陰で世界が核戦争を免れ、見事君は目的を成し遂げたではないか、と讃える。
この機会があって本当に良かった。ここでの邂逅が無ければ無念過ぎよう。
ロシアバレエを2人で鑑賞して泪する場面も素敵であったが、、、あれが実質最後の濃密な日常であったか。

The Courier002

ペンコフスキーは激しい拷問の末、銃殺されたという。彼は祖国を裏切るどころか世界を核戦争から救った偉人である。
グレヴィル・ウィンはソ連スパイと引き換えに釈放されたが、戻って来れただけでもよかった。直ぐにセールスマンとして働いたそうだ。
その後、東欧にも仕事で行ったかどうか。

これ程の働きと苦渋を舐めた男にどれ程の敬意が示されたのか。

The Courier001

些か疑問である。
グレヴィル・ウィンとアレックス~ペンコフスキーの名はしっかり歴史に刻まらなければ。
余りに重かった。
キャストは皆申し分なかった。音楽も格調高くマッチしていた。
ベネディクト・カンバーバッチは「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」で大変強い印象が残った欲者だ。
ここで更に印象を深めた。


明日はちょっと、楽をしたい、、、(笑。






AmazonPrimeにて














ザ・インタープリター

The Interpreter006

The Interpreter
2005
アメリカ、イギリス、フランス

シドニー・ポラック 監督
チャールズ・ランドルフ、スコット・フランク、スティーヴン・ザイリアン 脚本
マーティン・スティルマン、ブライアン・ウォード 原案
ジェームズ・ニュートン・ハワード 音楽

ニコール・キッドマン、、、シルヴィア・ブルーム (国連通訳)
ショーン・ペン、、、トビン・ケラー (シークレットサービス)
キャサリン・キーナー、、、ドット・ウッズ (シークレットサービス)
イェスパー・クリステンセン、、、ニルス・ラッド (シークレットサービス)
イヴァン・アタル、、、フィリップ・ブレ (戦場カメラマン)
クライド・クサツ、、、リー・ウー (国連役員)
アール・キャメロン、、、エドモンド・ズワーニ (マトボ共和国大統領)
ジョージ・ハリス、、、クマン・クマン (反ズワーニ派、平和主義者)
ロバート・クロヘシー、、、キング捜査官
テリー・セルピコ、、、ルイス捜査官
デイヴィッド・ザヤス、、、チャーリー・ラッセル
シドニー・ポラック、、、ジェイ・ペティグリュー
イェスパー・クリステンセン、、、ラッド(ズワーニの警備主任)


実際に国連本部でのロケであると。
これだけしっかり国連の中身が晒されてしまって大丈夫か?
「通訳」であるニコール・キッドマンの知的な美しさの際立つ映画であった。
初っ端から撃ち捨てられたサッカー競技場で男がふたり少年兵に銃殺されるところから始まる。
彼らはその指示者を先生と呼んでいた。

The Interpreter001

アフリカの小国マトボの大統領暗殺計画を聞いてしまったことから起こるサスペンス。
大量虐殺で自国民から大変な非難を受けているこの大統領が国連で演説をする予定となっているところであった。
国連で通訳として勤務するシルヴィア・ブルームが偶然、そのマトボの大統領暗殺計画を聞いてしまった人。
それは、ホールに響くささやきであった。
シルヴィア自身、幼くして親姉妹をマトボの大統領下の体制で殺害され、(後に知るが)最近になって兄も殺されている。
この大統領に対して彼女は途轍もない憎しみを胸の底に抱いていたが、演説後に他国に逃がす予定となっていた。
彼女は「赦し」~復讐の連鎖を断ち切る理念から今の職務についていた。

The Interpreter003

始めは、このシルヴィアの訴えがそのまま受け取られない。
シークレットサービスも動き出すが、彼女自身が疑われる羽目になり、嘘発見器などにもかけられる屈辱を体験する。
だがその情報を流した後に、彼女は何者かの追跡の影に怯えることに。
実際に仮面の男に襲われシークレットサービスは彼女を24h体制で警護することになった。
しかし彼女の命が何故狙われるのか、ちょっとよく分からない。
何れにせよ、内部に彼女がこの計画を危うくしていることを知り殺し屋を彼女を向けている者がいることは分かる。
彼女は日夜を問わずシークレットサービスの警護を受けている身でありながら度々部屋を無断で抜け出す。

ずっとかつての恋人で反ズワーニの活動家のゾーラに電話~メールをし続けていたシルヴィアは、彼と行動を共にしていたフィリップと連絡がつき、また単独で抜け出し彼に会う。
そして兄サイモンと行動を共にしていたゾーラが少年兵に射殺されたことを知った。
しかしこの時はまだ兄の消息は知らされていない。だが兄の大量のノート(「死亡者リスト」のノートも含)を鞄ごと託される。

The Interpreter002

兄とゾーラに共闘を持ち込んだクマン・クマンに会うためにシルヴィアは警護されている身であるが、勝手に外に出てバスに乗る。
車内の彼と話す為だ。だがそこに彼女を狙う殺し屋ジャン・ガンバも乗っており、更に彼女の警護のため急遽乗り込んだケラーの部下もいた。彼女はゾーラの殺害と兄サイモンの消息を尋ねるが、彼は知らないが、調べさせると約束する。彼女はそれを聴いてバスを降りるが、殺し屋も後を追って降りてゆく。顔を見られて後を追えないケラーの部下は、バスに残ったことで仕掛けられた爆弾で乗客諸共死んでしまう。クマン・クマンも爆死であった。
車でバスを追っていた部下と彼女は、軽傷で助かる。

彼女の身勝手な振る舞いと部下を失ったことでケラーはシルヴィアに詰め寄り、一時は険悪になるが、その後お互いのここに至る経緯やプライベートな件にまで話が及ぶ。
そして疲れ切って眠る。

シルヴィアは、再度フィリップからの話で、サイモンもゾーラと共に少年兵に撃たれて死んだことを知らさる。
それはこの後の彼女の行動が決まる契機となった。とりもなおさず彼女の基本理念を逸脱することに。

The Interpreter004

ズワーニの歓迎ムードは街道には全くなく、同国民による彼を非難するデモとプラカードしか見当たらなかった。
国連本部に着くまでに彼は自分の置かれた状況を認識する。彼は支持者からは先生とも呼ばれていたことも分かる。
厳重体制で会場を見守るケラーたち。
そのなかを上手く手配されたスナイパーがすり抜けてゆくのだが、、、。

国連本部のトイレに隠した銃を組み立て侵入者が大統領を狙っているところに平然と訪れたのが警備主任のラッドであった。
彼はスナイパーに対しその後のこと、逃げる手配の噺をしたかと思うとすかさず彼を射殺する。
その男の銃器には弾が入っていなかった。
そこへ駆けつけたケラーがその状況からラッドの手配によるものと見抜き彼を逮捕する。
(ラッドは裁判での証言を呑む)。

丁度その頃、国に帰るとケラーに知らせて身をくらましていたシルヴィアは、保護された大統領の部屋にいた。
彼に銃を突きつけ、彼自身の著した本を読ませた。当初は彼に希望を抱き支持していたが、独裁者に変貌し国民~彼女の大切なモノを全て奪ってしまったことを強く非難する。
彼女のいる場所に気付いたケラーが駆け付け、彼女を説得して銃を降ろさせる。
暗殺騒動はズワーニの自作自演であり、この平和演説と暗殺未遂により支持率を回復しようという企みであった。
警備主任を抱き込んだ大騒動は幕を閉じる。

The Interpreter005

事件後、ズワーニ大統領は国際裁判所で裁かれることとなり、シルヴィアは国に強制送還となる。
元々彼女はアフリカに還るつもりで板のだが、今回の件で身に危険は及ばないのか心配である。


さいごまでニコール・キッドマンのクールビューティーが光った。
音楽も良い。




AmazonPrimeにて









猟人日記

The Hunters Diary006

The Hunter's Diary
1964

中平康 監督
浅野辰雄 脚色
戸川昌子 原作

仲谷昇、、、本田一郎(電子計算機コンサルタント)
戸川昌子、、、本田種子(一郎の妻)
北村和夫、、、畑中健太郎(弁護士)
十朱幸代、、、藤睦子(畑中の助手)
小園蓉子、、、尾花常子(自殺した尾花けい子の姉)
茂手木かすみ、、、津田君子(画学生、被害者女性)
中尾彬、、、山崎幸太郎
岸輝子
山本陽子
稲野和子
高田敏江
山田吾一
鈴木瑞穂
松下達夫
庄司永建
青木富夫
丸山明宏、、、ステージ歌手


全く事前の知識もなく無作為に選び観てみたが、かなりよく出来た作品であった。
原作者がチョイ役ではなく重要な主役級の役でずっと出ているのにも驚き。
説得力あった。

The Hunters Diary001

本田一郎は豪邸を持ちながら安アパートも借りて二重生活を送り、ガールハントをして“猟人日記”というものをつけている。
趣味の世界ではあるが、そこに逃げ込んだというものか。
奥さんが関西物産会長の娘で彼は婿で入る。
最初身籠った子供が、骨のない奇形児で流してしまった。そのトラウマで妻が心身ともに病んでしまう。
一郎も妻と共に苦しむが、やがて現実逃避の性的放浪者となって行く。

The Hunters Diary003

しかし彼は重大な過ちを犯す。タイピストの女を妊娠させてしまったのだ。彼女はそれを彼に告げることが出来ず自殺を遂げる。
ここから彼の関係する女が次々に殺されてゆくという事態となる。
彼は恐れ不安に陥る。「触れた女が次々に死ぬ。俺は死を撒き散らしているのか」。
単なる偶然とは思えなくなってくる。
最初の二件までは偶然だと高をくくっていたが、3件目の画学生に至っては絞殺に使ったネクタイが彼のものなのだ。
これは明らかに彼を陥れる犯罪だと分る。そして状況証拠から当然彼が疑われることに。
おまけにアパートの方に残した猟人日記まで盗まれてしまう。

それにしてもこの本田一郎と言う男、実にモテる男である。
きまってハーフ?のフランス人芸術家とかイギリス人特派員みたいなのになって獲物をひっかけるのだ。
それが面白いように上手く行く。
だが、その外人口調が何と言うかギャグみたいでこの部分だけはニンマリしてしまうもの。
勿論、本田は真面目にこういうやり方がインテリ女性は弱いなどと確信しているのだ。いい気なものである。

The Hunters Diary002

犯人は周到に彼の素性と血液型を調べ、同じ希少な血液型RH(-)AB型の血液と分泌物を被害者に残してゆく。
遺留品と指紋、血液型、実際に逢った事実など状況証拠は充分であり彼は一審で死刑判決を言い渡される。
そこで義父に依頼された敏腕弁護士の畑中健太郎が彼につくことに。
余りに証拠の揃い過ぎた(綺麗に仕組まれた)猟奇的連続殺人であるが、彼が真犯人でないとするとかなり手強い恐らく怨恨による殺人事件と踏む。
畑中はやり手の助手、藤睦子と共に、血液の入手先や被害者の周辺や犯行時刻などを再度洗い直す。
畑中は記憶力の良い本田に猟人日記を書き直すことを要求する。
ふたりは、本田の記した猟人日記を元に調べ直してゆく。
そして一番最初の、まだこの猟奇殺人として報道される前のあるタイピストの自殺に注文くする。
その姉の存在が浮かび上がって来た。

The Hunters Diary004

実は、われわれはこの姉の無念と妹を死に追いやった男に対する恨みを映像で予め観ているため、ずっと犯人はこの姉であると思って観てきている。特に頬のほくろの特徴などもあり。彼女に関わった者皆がこのほくろを覚えていたのだ。
であるから、そこに向けて畑中と藤の名コンビがテンポよく辿り着くであろう過程を愉しむ感じで観ていた。

ところが終盤、大どんでん返しである。
確かにその展開は充分にあると思ったが、唸った(笑。
この辺、戸川昌子の怪演が際立つ独壇場である。
これまで映画の原作者が、これ程出しゃばる~ではなく活躍するのは初めて観た(恐。
凄みがあって他のところを忘れそうになったではないか。
ここの顛末は敢えて書かないで置くことにする。かなり練られている本~いや原作である。

ただ一つだけ(笑。そのどんでん返しのお陰もあり、よれよれで釈放された本田に、最後のおまけがつく。
この辺り、ホントにしつこいほどに周到である。

The Hunters Diary005

まだ若き丸山明宏氏の銀巴里のステージ姿を観た。ファンではないが、成程と思った。
更に十朱幸代が大変可愛らしく演技共々素敵である。
中平康監督は、「月曜日のユカ」の監督である。確かにスタイリッシュであった。
一度は、観る価値あり。






AmazonPrimeにて












暗殺者たちの流儀

ANATOMIA ZLA001

ANATOMIA ZLA
2015
ポーランド

ヤツェク・ブロムスキ監督・脚本・製作
ルディック・ドリザール音楽

クシシュトフ・ストロインスキ、、、ルレク(カロス・Z)
マルチン・コヴァルチク、、、ワスコ
アンジェイ・セヴェリン
ピョートル・グウォヴァツキ
ミハリーナ・オルシャニスカ、、、ハリナ


大変渋い映画であった。
フランス映画に似ているが、どこがどう違うとかは、わたしの手に負えるものではない。
更に乾いた印象を持ったが、、、。
その道の評論家なら色々と指摘してくれそうなところ。
ホントにこれがフランスモノならどんな感じになるのだろう、、、。
興味深い。渋い。

ANATOMIA ZLA002

しかしこの雰囲気、トーンは好きだわ。
今、仮釈放でシャバに戻りひっそりと暮らしている老人は、腕の良い殺し屋として名を馳せていたが仲間の裏切りでムショに入っていた。世のモラルの低下を嘆くご老人である。
だが、老後を静かに暮らさせてはくれない。

警察庁長官を殺害せよと言う依頼を検事がしてくる。
アメリカの政治家から来ている危ない件らしい。
ともかくその検事は尻に火が点いているような感じで猛烈な勢いでルレクを脅して仕事をやらせようとする。
さもその警察庁長官が悪者であるような口ぶりで。失敗は出来ないからお前に頼むという。
ルレクもやらざるを得ない状況となる。しかし金は前払いではなかった。

一度引き受けると計画的に機械的に冷酷に彼は動き出す。
確かに一流の殺し屋だわと思わせる人格になる。
殺しのターゲットを狙い淡々と計画と準備を図るところは手慣れたモノ。
面白いのは、老眼でかつての射撃の腕が鈍ったため、アフガニスタンで民間人3人をタリバンと間違え射殺してしまい除隊させられた腕の良い狙撃手を雇い、2人で組んで仕事を進める運びとなるところ。バディムービー風に展開する。

ANATOMIA ZLA003

しかし新しい相棒は、殺すには大義が必要という。もう後味の悪い殺しはご免なのだ。
老人の殺し屋もシャバで完全に足を洗うつもりでいた時は、それに同調する感じの姿勢であったが、もう目的は設定しておりブレる様子もない。スウィッチが入り、やるのみモードで動いており、相棒であるワスコも従ってゆく。
ずっと一緒にいるうちに時折ぶつかりつつも良い相棒関係は築かれるもの。

間に入る検事が警察庁長官の泊まるホテルの部屋と愛人との密会の日に300m程離れた向かいのホテルを取って準備する。
丸投げでないところは結構良心的にも思うがこの男もこれにしくじると大変なことになる焦りが見て取れるところ。
犯行もテロ組織がやったように仕組めると。なかなか良い仕事をするなとルレクも評価する。
そして張っていると、愛人が現れ少し後から花束を持った長官も入って来るではないか。
やるぞ、と声をかけワスコも実に手際よく銃の準備をする。
ルレクがガラスに丸く穴を開けて待つと長官が窓を開け煙草を吸う。
そこだ、とばかりに一発で仕留める。しかしオペラ歌手の愛人は仕留めそこなう。彼はやはり大義ないモノは撃てない性格なのだ。

ANATOMIA ZLA004

そこからは上手く逃亡するが、成功報酬で検事ともめる。前金支払いを後払いに延ばしたあげく現金では2万だけ、残り8万は口座に送金するというが、この口約束など信用できるものか。ちゃんと作って来たのは高飛び用のパスポートのみ。
そこで結局相手のボディガードと撃ち合いとなり、相手は2人とも倒すが、ルレクも不意打ちを喰らい深手を負ってしまう。
彼の車で、病院に連れてゆく途上で差し掛かった橋から銃を捨てる時にルレクも事切れていたことに気付く。
仕方なく彼も橋から落とし、直ぐに高飛びすればよいものを、、、
そもそもワスコの分け前やパスポートは一切ないのだがルレクは彼への報酬はどうするつもりだったのか。
ワスコは馴染みのコールガールとのんびりしているうちに銃とルレクの遺体が引き上げられ、彼の車を使っていたことでルレクの仲間に狙われナイフで殺されてしまう。
駐車場の門番に高飛びしたなどと余計なことを言ったばかりに。

ANATOMIA ZLA005

淡々と時計仕掛けのように物語は進んでゆく。
そして終わり方も良い。
とても心地よい映画であった。




AmazonPrimeにて













インサイド・マン

Inside Man006

Inside Man
2006
アメリカ

スパイク・リー 監督
ラッセル・ゲワーツ、アダム・エルバッカー 脚本
テレンス・ブランチャード 音楽

デンゼル・ワシントン、、、キース・フレイジャー (ニューヨーク市警)
クライヴ・オーウェン、、、ダルトン・ラッセル (銀行強盗のリーダー)
ジョディ・フォスター、、、マデリーン・ホワイト (女性弁護士)
クリストファー・プラマー、、、アーサー・ケイス (マンハッタン信託銀行会長)
ウィレム・デフォー、、、ジョン・ダリウス (ニューヨーク市警)
キウェテル・イジョフォー、、、ビル・ミッチェル (ニューヨーク市警、キースの相棒)


ちょっと人を喰ったようなテーマ曲がとても気になった。面白い。

Inside Man005

オシャレな映画だった。
強盗団の描き方がシャープ。
ダルトン以外は人格を観たないかのような影みたい(これも計略のひとつだが)。
噺をしているのは彼だけだった。残りはショッカーでもよい。
まずダルトンは余程、ケイス(周辺)を調べ上げたんだね。
この時期のこの年齢の大富豪は、戦争を利用して富を形成した者は少なくない。
今は大変な慈善家で経済界で尊重される存在でもその礎を築いた頃は何やっていたか分からないものだ。
彼はナチスと組んで甘い汁を吸った。その捨てる事の出来なかった徴を隠していたというが今一つ事情が掴めなかった。
これは彼にその秘密を守ることを依頼された敏腕弁護士マデリーン・ホワイトですらはっきりとした内容は知らされないまま。
こちらが分かるはずもない(笑。

Inside Man004

ダルトン・ラッセルのほぼ同じ口上が始めと最後に流されたり、人質の尋問がまだ助けられていない物語の中ほどで挟まれたり、構成も面白いし飽きさせない。
ただ、苦悩する被害者であるアーサー・ケイスは相当な権力も持っているはずで、マデリーン・ホワイト以外のルートで強盗団を追うこともあってもおかしくないと思う。ちょっと気弱で上品すぎる気がした。元ナチスと組んでいた割に。
その分、ホワイトは可成りのやり手である。ハッキリ言ってあの程度の仕事で、ケイスから多額の口止め料までせしめ、弱みを握っていることから顧客にも登録してしまう(笑。彼女も相当な金持ちに違いない。
今回の事件を利用し、つまり実際に欠番の金庫(無いことになっている)以外からは全く何も盗まれず、人質も皆無事救出され、ニュース報道はされたもの、実質被害が無かったことで、キース・フレイジャーはニューヨーク市長から刑事の鏡みたいに賞賛されしっかり~ちゃっかり出世している。これは確かに電話で謎かけをしたり相手を読み合ったりで頭は疲れたにせよ、強盗団ひいてはダルトン・ラッセルのお陰によるところが大きい。

Inside Man003

強盗団は、結局ダイヤだけ盗んだのか?
あの欠番238から。
最後にフレイジャーに託す形でダイヤの指輪を残すという事は、俺の代わりにケイスの悪事を暴けという事?
まあ、警察のやるべきことかも知れないけど、メディアの仕事かもね。
でもそれはホワイト女史がやらせない手を打つでしょうが。
今やケイスは上客なのだし。


でも気になるのは、ダルトンはこれでどの程度、ケイスに打撃を与えられたのか?
ホワイトが言うにはダルトンがそれを使うような時は、直ぐにあなたが買い取るのよ、と言うアドヴァイスだ。
ダイヤをあれだけしこたま盗んだのだから政治(思想)だけでなく金も相当好きなはず。
どうするのだろう。
そう、あのバカでかいダイヤの指輪を託されたフレイジャーはこの事件解決後に、相棒と共に飽くまでも追及の手を緩めず頑張るのか?昇進したし彼女との結婚も控えているし、この辺にしといてやろうとなるのか、ならぬのか(笑。

Inside Man001

頭は回るが女好きでとっても軽めのデンゼル・ワシントン。
如何にもやり手の知的で腹黒い~いやミステリアスな女傑のジョディ・フォスター。
強盗なのだが、強大な富を持つ偽善者も懲らしめたいこれまた知略に長けたクライヴ・オーウェン。
もと巨悪のくせに何だか脆弱な名士みたいになってしまったクリストファー・プラマー。
どれも実に良い味を出していた。

結局、全て観きれなかったが、客の中に協力者が何人も潜伏していたのね。
犯人と一緒の服で紛らわしい形で銀行から雪崩出たけど、あれで皆助かったわけ。
(客を犯人と同じ服を着せたのもその意味があるから)。
最後の、ラッセルがわざとフレイジャーにぶつかり銀行を正面扉から出て行きゆっくり歩いて車に乗った際にあれまあと分かる。

Inside Man002

ただ、あの小部屋だが、あそこは何処にあるのか、今一つよく分からなかった。
(集中が途切れ途切れで観てしまったのがよくなかった。もっと暇な日に観るべきだったか)。
それにしても、警察の盗聴を逆手に取ったアルメニア語の大統領演説を聞かせたり、人質を殺すことは無いと踏んだ後に、屋上~距離を持ったところでトリック処刑をやって見せたり、巧妙な手で翻弄するダルトン・ラッセルの知略は思わず膝を叩いてしまった(笑。勿論、キース・フレイジャーもジャンボジェットを逃走用に要求するところに、相手方の時間稼ぎの内情を観抜くところなど、流石である。

まあ面白い映画であった。ちょっとデンゼル・ワシントンが軽めで下品なところが、わたしのデンゼルイメージとズレていたが、まだ若い時期だしね。




AmazonPrimeにて











ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書

The Post001

The Post
2017
アメリカ

スティーヴン・スピルバーグ 監督・製作
リズ・ハンナ、ジョシュ・シンガー 脚本
ジョン・ウィリアムズ 音楽

メリル・ストリープ、、、キャサリン・グラハム(ワシントン・ポスト社主・発行人)
トム・ハンクス、、、ベン・ブラッドリー(ワシントン・ポスト編集主幹)
サラ・ポールソン、、、トニー・ブラッドリー(ベン・ブラッドリーの妻)
ボブ・オデンカーク、、、ベン・バグディキアン(ワシントン・ポスト編集局次長・記者)
トレイシー・レッツ、、、ベン・バグディキアン(ワシントン・ポスト取締役会長)
ブラッドリー・ウィットフォード、、、アーサー・パーソンズ(ワシントン・ポスト取締役)
ブルース・グリーンウッド、、、ロバート・マクナマラ(第8代アメリカ合衆国国防長官)
マシュー・リース、、、ダニエル・エルズバーグ(元アメリカ合衆国軍事アナリスト)
アリソン・ブリー、、、ラリー・グラハム・ウェイマウス(キャサリン・グラハムの娘)
キャリー・クーン、、、メグ・グリーンフィールド(ワシントン・ポスト社説編集)
ジェシー・プレモンス、、、ロジャー・クラーク(ワシントン・ポスト上級法律顧問弁護士)
ザック・ウッズ、、、アンソニー・エッセイ(ワシントン・ポスト顧問弁護士)
ジュディス・マーティン、、、ジェシー・ミューラー(ワシントン・ポスト記者・コラムニスト)


始まりからワクワクがずっと続く、とても緊張感溢れる作品である。
難解さは抑えてエンターテイメント性を大事にしているが、押さえるところはしっかり押さえている。
メリル・ストリープとトム・ハンクス。
「ペンタゴン・ペーパーズ」ときたらこのくらいのキャストでということか。
当時の新聞の印刷されるまでの工程の面白さがしっかり見られるのはとても素敵。
特に最後の立体的なループを感じる印刷シーンは一際美しい芸術作品にも見えた。

The Post002

ベトナム戦争の泥沼化というのは、わたしにもイメージとして残るところがある。
ヒッピームーブメントとして。ドラッグ、サイケデリックロック,東洋趣味と瞑想、、、TVや雑誌で賑わっていたような。
何だかやる気あるのかないのか分からないような気怠い感じの人々と、、、
ベトナム還りの精神をやられてしまった兵士の悲惨で重苦しい印象も綯交ぜになっている。

「ペンタゴン・ペーパーズ」はアメリカのベトナムへの政治的および軍事的関与を記した極秘文書であり、このスクープは戦争の舞台裏を暴いたものとして大変なスキャンダルとなる。
ニューヨーク・タイムズの大スクープに始まり、すかさずワシントンポストも同じところから記事を入手し掲載する。
勝てないことが分かっていながら嘘を報告し続けただ戦争を長引かせた内容がズッシリと。47巻構成で文字数100万語。読み切れないわな。
その辺の顛末の描かれた映画。

The Post003

当時、長引く戦争に辟易し疑問視する国民が増えて来たところに、「ペンタゴン・ペーパーズ」と来た。
こりゃ人々は怒るわ。デモをしたりヒッピーになって飛んでしまったり。
政府は、それ自体に重大な機密情報が含まれていたというほどのものではなかったが、機密文書の漏洩が安全保障の脅威に当たると言う認識でこれを厳しく追及しようというスタンスだったようだ。
ニクソン政権が記事を書いたニューヨーク・タイムズの差し止め要求を出すなか、ワシントンポストの社主キャサリン・グラハムは会社の経営を考え掲載するか踏みとどまるかの大葛藤となる。迷いに迷った末一大決心で掲載にGoサインを出すのだが、、、
その後の裁判で負ければ反逆罪で投獄となる大きな賭けである。
それ以前に、株式公開した直後に差し止めが決まれば会社は彼女の何度も口にしていた「緊急事態」だ。

The Post004

この過程で、真実を世に出して会社と社員の生活をダメにするつもりかという派と偽りの戦争とニクソン政権を終わりにするためにも闘おうという派との間で対立する。一番苦境に立たされるのは、社主のキャサリン・グラハムに他ならない。
社員、顧問弁護士、政治家たちは只管自分の主張を繰り広げているばかり。基本そういうものだが。
彼女の鶴の一声で掲載は決まり、反響は大きく、他の多くの新聞社も追従する。

メリル・ストリープとトム・ハンクスの動き以外に印象的だったのは、ベン・バグディキアンであった。
彼は早い時点でこの重大機密書類を持ち出した人物を割り出していた。勿論、その友人は以前の仕事は辞めている。
ベンは盗聴の網を潜り彼とのコンタクトに成功する。隠れ家に置かれた膨大な書類の山に圧倒されるがそれを厳重に荷造りして飛行機のファーストクラスの座席を二つ取ってポストに持ち込む。
弁護士からはその情報の提供者などを聴かれるが答えない。しかしニューヨークタイムズと同じであることは告げてしまう。
これで彼らポストも同罪である。終始苦悩の表情でやるべきことを粛々とやっていた。
そして当のダニエル・エルズバーグであるが、書類を持ち出して守衛の前を通り過ぎる時、足を止め呆然と考え込む~いや考えるのではなくそこで躊躇するのだ。この気持ちとてもよく分かる。これ自体、勇気と決断の正義の犯罪行為とも謂えるか。

The Post005

この書類を世に出して当然の追及を受けるが、、、
裁判には6体3で勝つ。
メディアは統治者に仕えるものではなく国民に仕えるものである、と。
これで新聞業界、ひいては報道の自由は、危機を逃れた。新聞業界全体が信用を高めた。
裁判所から降りて来る彼女を迎える人々は年齢層は違えど女性ばかりである。
戦争に駆り出された夫や兄弟の還りを待つ女性たちがこころから祝福していた。
メリル・ストリープだと殊更絵になるところ、、、。

The Post006

物語の最後は、「ウォーターゲート事件」を匂わせて終わる。
ニクソンが、ワシントンポストをあらゆる場から締め出す電話を必死に掛けているところ。
自動ロックのドアの鍵の部分にテープが貼られ明らかに侵入者のいることが警備員によって通報される。
そしてエンドロールへ。盗聴工作であるが、それがあらぬかたちへ
(この後のワシントンポストの追及でニクソンは退陣に追い込まれる)。

The Post007

夫の自殺で会社を引き継いだキャサリンを軽んじる周囲の大物に囲まれ、新たに株の公開や報道の在り方を巡る苦悩など、彼女の細やかな感情の起伏の分る繊細な演技は、物語に充分説得力を与えていた。
見応えのある映画であった。音楽はジョン・ウィリアムズ。聴かせる。





AmazonPrimeにて










ケープタウン

Zulu001.jpg

Zulu
2013
フランス、南アフリカ共和国

ジェローム・サル 監督・脚本
ジュリアン・ラプノー 脚本
キャリル・フェレ『Zulu』原作

オーランド・ブルーム、、、ブライアン・エプキン (強行犯撲滅課の刑事)
フォレスト・ウィテカー、、、アリ・ソケーラ (強行犯撲滅課の警部)
コンラッド・ケンプ、、、ダン・フレッチャー (強行犯撲滅課の刑事)
イマン・アイザックス、、、ジャネット(婦人警官)
ジョエル・カイエンベ、、、ジーナ
インゲ・ベックマン、、、ルビー (ブライアンの元妻)
ティナリー・ヴァン・ウィック・ルーツ、、、クレール・フレッチャー
レガルト・ファンデン・ベルフ、、、デビーア
パトリック・リスター、、、ジュースト・オパーマン博士
タニア・ヴァン・グラーン、、、タラ
ランドール・メイジエ、、、キャット(ギャングのボス)


実にヘビーでダークな内容。
オーランド・ブルームとフォレスト・ウィテカーの動と静の主演コンビが素晴らしい。

Zulu002.jpg

アパルトヘイト~真実和解委員会は勿論、ズールー人という民族、、、が基調にある。
この殺伐とした治安も何もない南アフリカの都市ケープタウンが舞台。

警官も含めよくもまあこんなに人があっさり殺されて(殺して)ゆくもんだと感心する。
元々治安の悪いところに、極めて悪質な薬が絡む。
この薬は、所謂(新種の)麻薬のような装いをしているが、そうではなく化学兵器の一種として秘密裏に研究開発が進められている黒人だけ殺す攻撃性や自殺願望を高める薬なのだ(アパルトヘイト時代に始められ、中断されたが再開されたという)。
しかもその人体実験にホームレスになった黒人の子供たちを使っていた。
警察も失踪~ホームレスの子供の捜査など全くしない。都合の良い実験材料だ。

Zulu003.jpg

一体どこのレベルがこの薬の開発をやらせているのか。
つまり資金の出所だが、それが形の上では、何とか警備会社とかいっていたが、実際どこなのか。
こういうところでは、いつどのような形で巻き込まれるか分からない。
普通に暮らせる場所があるのか。
アリも捜査を進める中で、過去のトラウマに何度も新たに向かい合う経験を重ねてゆく。
子供時代がフラッシュバックする。

現場を嗅ぎ回り真相を暴こうとしている刑事と少し前まで黒人を虐殺していた白人の警察上層部の意識の違い。
どうこころを整理すれば同僚として仕事が出来るようになるものか(この辺はアリのような理性がないと無理だと思う)。
上は常に事件の極めて表層の直接の実行犯だけ特定して事件の深層~構造には一切触れずに蓋をして終わりにしようとする。
このパタンはよくクライムもので目にするところだが、この映画にはリアリティが感じられた。
やはり歴史的背景は大きい。今現在もまだ問題は継続している。

Zulu004.jpg

アリ・ソケーラは自身、幼い頃に父を虐殺され自分も重傷を負わされている。そして息子の捜査に手を貸した母も殺害された。
しかし、彼は飽くまでも刑事として理性的に真摯に事件に臨んでいる。
こうした内省的で理知的な役にフォレスト・ウィテカーはピッタリだ。
彼と組む型破りのアル中で女好きの相棒ブライアン・エプキンをオーランド・ブルームがワイルドに演じる。
実に好対照だがどちらも鼻の利く勘の良い絶妙のコンビである。
ここに自主的にメカ・パソコンに強い女性警官ジャネットが加わることで情報収集力が倍増し捜査が加速する。
この力は大変大きい。敵も様々な偽装、隠蔽、目くらましを打って来る情報戦争でもある。

しかし真相に近づくことが、そのまま解決に繋がるというような単純なものではない。
警察の組織力が、上がダメな分、まるで発揮されないのだ。
もう真実に対し誠実な能力のある者だけが、謹慎処分を受けつつ事件に立ち向かわざるを得ない。
この不条理である。結局少数の分かっている者だけで闘うしかないのだ。
だから治安も悪いのだろうが。

Zulu005.jpg

最後はアリ・ソケーラはやんちゃなブライアン・エプキンの制止を振り切り、単身悪のアジト~新薬研究所に乗り込み、ケリを付けようとする。これまでの怨念が爆発した鬼気迫る表情で敵を倒してゆく。
ブライアンも後から乗り込み、アリの後方支援をするが、彼は悪の権化である生物化学兵器の開発主任である博士を砂漠の真っただ中へと只管追い詰めてゆく。もはや弾丸も切れ血だらけの素手しか残っていない。
鬼神のような顔でアリは、今や力尽きて歩けなくなった相手を無言で殴り殺す。
翌日になり、博士の遺体はブライアンの乗る軍用ヘリで発見される。
降りるとブライアンは、近くの木に寄り掛かって息絶えているアリを目にするのだった。
痛恨の極み。深手を負っていたことからの出血死かも知れない。脱水症状も絡み。

こんな犠牲を払い、この一件は本当の出資者はともかくそれを実行していた組織の壊滅に至った。
何と言うか、ダークでヘビーな物語である。
オーランド・ブルームは途轍もなくタフな役を熟したものだ。
ここまでタフな刑事はそうはいないぞ。
最後は理性も何もかなぐり捨てたフォレスト・ウィテカーのアリの心情もよく分かるが、もう死ぬしかない流れであったのは、ファンとしてちょっと残念(笑。

Zulu006.jpg

余り観たくないがよく出来た映画ではあった。でももう観たくはない。
主演のコンビが言う事なし。
美しいロケーションとの絡みがヘビーさを際立たせていた。




AmazonPrimeにて











マトリックス レザレクションズ

Resurrections001.jpg

The Matrix Resurrections
2021
アメリカ

ラナ・ウォシャウスキー 監督・脚本・製作
アレクサンダル・ヘモン、デイヴィッド・ミッチェル 脚本
ジョニー・クリメック、トム・ティクヴァ 音楽

キアヌ・リーブス、、、トーマス・A・アンダーソン / ネオ(ゲームデザイナー)
キャリー=アン・モス、、、ティファニー / トリニティー
ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、、、モーフィアス
ジョナサン・グロフ、、、スミス(デウス・マキナCEO)
ジェイダ・ピンケット・スミス、、、ナイオビ(アイオのリーダー)
ランベール・ウィルソン、、、メロヴィンジアン(エグザイルのリーダー)
ジェシカ・ヘンウィック、、、バッグス
ニール・パトリック・ハリス、、、アナリスト(セラピスト)
プリヤンカー・チョープラー・ジョナス、、、サティー
マックス・リーメルト、、、シェパード
アンドリュー・ルイス・コールドウェル、、、ジュード・ギャラガー
トビー・オンウメール、、、セコイア(ハッカー)
エレンディラ・イバラ、、、レキシー
ブライアン・J・スミス、、、バーグ
クリスティーナ・リッチ、、、グウィン・デ・ビア
チャド・スタエルスキ、、、チャド
エレン・ホルマン、、、エコー


かなり長い映画なのにうっかりポチっとしてしまった為、観る事となった(笑。
出て来る人もやたらと多いし、癖も強いし、実体なのかアバター(この言い方は無いようだ)なのか、コンピュータのデータに過ぎないのか、、、。
その場所も、夢か現か、仮想現実か、、、何をわたしは観ているのか、、、映画~エンターテイメントを観てるのよ(爆。

Resurrections002.jpg

わたしは、実は「マトリックス」の3シリーズは観ていない。確か最初の「マトリックス」(1999)は観ていたけど、、、。
これSFには違いないが、あのキアヌ・リーブスの弾丸を避ける余りにも有名なポーズだけでご馳走様となっていて、、、
キアヌ・リーブスのクールさとエージェント・スミスのしつっこさの印象しかない。
「マトリックス リローデッド」、「マトリックス レボリューションズ」は恐らく観ていないと思う。
それで4作目をいきなり観て、どうのこうの言う権利はないと言う前に、何だか分からない(爆。
ただ、キアヌ・リーブスもキャリー=アン・モスもお年は召されましたな。
モーフィアスはやはりローレンス・フィッシュバーンがしっくりくる。一度以前観ただけなのに、存在感というものは大きい。

Resurrections003.jpg

通常の感想の書き方は無理なので、印象的な所だけを箇条書きしたい。
若い人々がいっぱい出ているが誰が誰なのか、、、。
把握は難しいが、後半に現れるサティーと言う子がとても印象に残った。
こうした空間である。突然出て来て凄い役割を担っても不思議な感じはしない。

AIの作る仮想世界で人間の体力?が発電エネルギーとして使われているというところからして奇抜な発想。
トーマス・A・アンダーソンとトリニティーの接触によって生じるエネルギーがとりわけ凄いらしい。
接触し過ぎると危険という事で、ふたりの距離が重要なんだと、、、。
空間の安定のために。ふ~んそうなんだ(ローラではない)。

Resurrections005.jpg

面白いVFXだなあと思ったのは、オリジナルモーフィアスが粒子状の塊で現れた姿。
何でもプログラムが現実世界にアクセスしたモーフィアスのようで、「エクソモーフィック粒子コーデックス」と言うようだ。
だいたい、ここに出てくる人たちは、皆仮想現実の空間に現象しており、オリジナルは船の中とかで「アップルシード」みたいに首にコネクタ挿して分身を形成し活躍させている。
つまりそのフィールドには、コンピュータプログラムの実体化したモノと人間のオリジナルから形成されたモノがほぼ同様の人型で出現して会話したり争ったりしているのね。でもその確認は船?の中のモニターのデータの動きで確認しているようだ。現実的な像ではなく。

Resurrections004.jpg

「鏡のハッキングは大変だ」と言うのも印象に残る。
確かに鏡から出入りしていた。それ以上のコメントはわたしには無理(笑。
「モーダル」もパソコンの別窓という感じで捉えてよいようだ。
現ブラウザに対するメタレベルのブラウザ。
それで何となくわかる。こういうSFはとかくIT用語を利用する。

Resurrections007.jpg

ともかく、何をどうしようとか言う前に、この物語は、ネオとトリニティーの純愛物語なのね。
誰がどうなろうが、どんな犠牲を払おうが、トーマスは愛するトリニティーを救うという。
でもそれが多大なエネルギーを得る事にもなるのなら皆も協力する、という噺だったのかどうなのか、、、。

その辺、わたしにはどうもはっきりしないのだが、、、
なんせ、機械同士が電力の争奪の為に闘ったとか言っているし。
そうそう戦闘ゲームの要素も強かった。特に終盤。
あの辺、「バイオハザード」の対ゾンビの闘いのイメージに近い。照明演出も含め。

Resurrections006.jpg

VFXが凄いわね。初代モーフィアスの粒子状の姿など、かなりパワフルな3D造形だ。
迫力も充分であったが、格闘シーンがどうも今一つなもたつく感じであった。
もう少しシャープな動きが欲しい。
キアヌ・リーブスよりキャリー=アン・モスに切れが感じられる。

全体として緻密に煉られたSFアクション映画であった。






AmazonPrimeにて












ミセス・ハリス、パリへ行く

MRSHARRIS GOES TO PARIS002


MRS. HARRIS GOES TO PARIS
2022
イギリス

アンソニー・ファビアン 監督・脚本
ポール・ギャリコ 原作
キャロル・カートライト、キース・トンプソン、オリヴィア・ヘトリード 脚本
ラエル・ジョーンズ 音楽


レスリー・マンヴィル、、、ミセス・ハリス(軍曹である夫を失った未亡人、家政婦)
イザベル・ユペール、、、マダム・コルベール(ディオールの敏腕マネージャー)
ランベール・ウィルソン、、、シャサーニュ侯爵
アルバ・バチスタ、、、ナターシャ(ディオールのモデル)
リュカ・ブラヴォー、、、アンドレ・フォーベル(ディオールの会計係、ナターシャの恋人)
エレン・トーマス、、、ヴァイ・バターフィールド(ハリスの親友)
ローズ・ウイリアムズ、、、パメラ・ペンローズ(ハリスを頼る女優の卵)
ジェイソン・アイザックス、、、アーチ―(ハリスを見守るご近所さん)


ポール・ギャリコ原作とは。そうなんだ。と思った(笑。何がそうなのか、はともかく。
心地よい映画であった。美しいドレスは充分、目の保養になったし。
ミセス・ハリスが働く屋敷で目にした500ポンドのクリスチャン・ディオールのドレスに一目惚れする場面から惹き付けられる。
導入からしてメゾンのファッションショーで披露されるドレスに身が入る。
1950年代のパリが素敵。

MRSHARRIS GOES TO PARIS001

ナターシャはディオールの顔でもあるモデルをこのまま続けるか、哲学の勉強をもっと深めるか迷っている女性であるが、その役を演じたアルバ・バチスタも女優をこのまま続けるか哲学に専念するか迷っていたところだったと言う。
役と自分が一緒なので息を吹き込み易かったらしい(笑。ポルトガル語、英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語に堪能だと言う。
(優秀な女優さんてかなりいるのね)。
まあそれにしてもこういう美しい人がDiorを着るとこうなるのね、というのを堪能できた。

MRSHARRIS GOES TO PARIS000

ミセス・ハリスを演じたレスリー・マンヴィルはイギリスを代表する大女優という事だが、映画に疎いわたしは、知らなかった。
大変細やかな表情の変化で気持ちや意思を雄弁に伝える事の出来るチャーミングな女優さんである。
そして何と言ってもイザベル・ユペールの存在感の圧倒的な事。
男性陣もなかなかのものだった。特にシャサーニュ侯爵役ランベール・ウィルソンのいぶし銀の演技は冴える。
他にもリュカ・ブラヴォーの真摯で献身的な姿勢とジェイソン・アイザックスの渋さもしっかり物語を支えていた。

MRSHARRIS GOES TO PARIS004

ミセス・ハリスの天真爛漫な生き方が、関係する人々を全て巻き込み、彼らを解放して行くところが爽やかで清々しい。
しかしイギリスから突然やって来てDiorに紛れ込んだ家政婦がスタッフのストライキや改革を組織するのは、ファンタジー~荒唐無稽すぎるところではあるが、、、。
どうしても一つの事で成功を収めるとその殻を破って次のステージに行く~自分の更に欲する場所に進展することが難しくなる。
自分で自分を堅苦しく縛っている場合もある。
ここでは特にマダム・コルベールか。Diorというメゾンの伝統と格式にディオール自身よりも拘っていた。

MRSHARRIS GOES TO PARIS003

自分の改革案をディオールに伝えられずにいたアンドレもミセス・ハリスに乗せられ結局ディオールを動かしメゾンの経営状態を改善することになる。ついでに彼女のお節介で、高嶺の花であるナターシャを彼女にすることが出来る(こりゃミセス・ハリス様様だわ)。
ナターシャも本当に自分のやりたい事を選択して哲学に進む。サルトルの話ばかりしていた彼女だ。ミセス・ハリスもそれを知っていて後押しする。肝っ玉母さんみたいなヒトだ。

MRSHARRIS GOES TO PARIS006

しかし、必死で貯めた金を叩いて買った(作った)一点ものも超豪華ドレスをパメラに頼まれ貸してしまったお人好し振りは、最大の失敗か。
その反省的思考はシャサーニュ侯爵や家政婦として勤めていた主人に対しても示される。相手に対する敬意は肝心だ。
まさか、わざとドレスを焼いて、プロデューサーの気を引こうとするなんて、、、飛んでもない女だ。
恩を仇で返すの見本みたいなもの。

しかし色々とお世話になったDiorメゾンのスタッフたちが、また新たに高価なドレスを彼女に送ってくれる。
シャサーニュ侯爵も薔薇の花束を。
それを着て軍人何とかパーティーに毅然とした佇まいで現れ会場の注目の的となる。
アーチ―と楽しく踊るミセス・ハリス。
ファンタジーが現実となったような噺だが何だか泣けてくる場面が幾つもあった。
何と言うか所々で刺さるのだ。
ミセス・ハリスの悪戯っぽいチャーミングな笑顔と美しい絵が感性に訴える。

MRSHARRIS GOES TO PARIS007

キャスト皆が振る舞いも含め大変綺麗であった。
音楽もフィットしていた。
物語自体は奇想天外であってもとても心地よいファンタジーに昇華されており、後味も良い。




AmazonPrimeにて










ふくろう

fukurou001.jpg


2004

新藤兼人 監督・脚本
林光 音楽

大竹しのぶ、、、ユミエ(母)
伊藤歩、、、エミコ(娘)
木場勝己、、、ダム作業員A
柄本明、、、ダム作業員B
原田大二郎、、、ダム監督
六平直政、、、電気屋
魁三太郎、、、電気屋上司
田口トモロヲ、、、水道屋
池内万作、、、巡査
蟹江一平、、、引揚援護課の男
大地泰仁、、、浩二(エミコの幼なじみ)
塩野谷正幸、、、警視
江角英明、、、村長
加地健太郎、、、ダム所長
上田耕一、、、電力支所長
松重豊、、、水道課長
松波寛、、、福祉課長


大竹しのぶと伊藤歩の主演ということで、失敗はないはずと、観てみた。
大当たり(笑。

fukurou002.jpg

希望ヶ丘開拓村の最後の一軒屋を舞台に描く室内劇。
舞台にそのままで移行できそうな映画。
とても強かなユミエとエミコ母娘のどん底の苦境からの脱出計略が面白可笑しく展開して行く。
(大竹しのぶに負けぬ伊藤歩の身体をはった迫力の演技は際立った)。
舞台を思わせるような演技とも謂える。
非常に悲惨で重い現実であるが軽妙にコミカルに描かれてゆく。

背景としては、ヒロインの親たちは国策で夢に溢れ乗り込んだ満州であったが、戦争勃発の為引き上げとなる。
帰国後、入植することになった開拓村の土地は全く農地に向かず、彼らは疲弊し尽くし失意と極貧を背負って逃げるように出て行き、残ったのはユミエとエミコの母娘だけとなっていた。彼女らは出て行かないのではなく、何処にも行く当てがなくそこに居続けるしかなかったのだ(更なる弱者)。

fukurou003.jpg

まずは飢え死に寸前のユミエとエミコの母娘の現状から始まる。
木の根なんかもう喰ってられない。全然味もしない。ドブネズミのような姿でふたりは暮らしている。
そこで一念発起。風呂に入り綺麗にして開拓村の旗・横断幕みたいなものからミシンでそれぞれふたりのワンピースを作る。
そして母がなけなしの金で電話をかけにゆくと、、、

男たちがやって来る。ひとり、またひとりと、、、。
ダム工事現場の作業員。酒が回ると公共事業の矛盾を愚痴る。国は税金をばら撒いているだけ、、、とか。
電気屋と水道屋。七曲りを登ってここまで、水道、電気を引くことの不合理を説く。税金の無駄遣いだ、いつまで居座るのかと。
それから作業員の同僚や上司、電気屋の上司。部下が失踪しているとこぼすが、財布には中間でピンハネしているらしくかなりの大金を持っている(来る客たちは皆思いの他金を持っているのだ)。

fukurou005.jpg

ひとりひとり売春で金を巻き上げてゆく。
一回一回の調子に乗った晩酌噺と毒を呑まされてのオーバーアクションの死に際が面白いので飽きることがない。
(この展開が全てシステマチックなのだ。遺言を一言残すのも笑える)。
次第に彼女らの食事は豪勢メニューになってゆく。
鰻重、カレー、寿司、すき焼き、最初の頃とは段違い。喰い方も迫力ある。
止められていた電気、水道が繋がり生活に余裕も生まれて来た。
何と、ふたりで楽しそうに見ているのは世界地図である(でかい希望が芽生えて来たぞ)。

fukurou004.jpg

そしてやって来るのが警官。引揚援護課の男。
この辺から少し錯綜した複雑な絡みとなる。
しかしやることは皆、同じ。
最初の頃は、母ユミエが男たちの相手をしていたが、ピントはズレているがくそ真面目で使命感を持った引揚援護課の男からは娘のエミコが相手をするようになる。こんなものチョロいわよのノリである。母37歳。娘17歳である。肝が据わっている。
そして開拓村から出て行ったエミコの幼馴染の青年。
この青年だけはふたりにとり特別な存在であった。共に国に振り回され極貧のなかをのたうち生き抜いてきた者である。
しかし着いた時は彼はもう瀕死の状態。不毛の地とは謂え故郷で死のうと独り戻って来たのだ。
噺では両親は共に生活苦の中で病死、自殺を遂げてきたという(初めてこの母娘が泪する)。

fukurou006.jpg

ここで、品性下劣な男どもは母娘が皆毒殺して行くが、引揚援護課の男とエミコの幼馴染の青年は所謂、まっすぐな理想を胸に抱く者である。その2人を射殺するのが警官なのだ。国家権力によって彼女らの仲間は悉く殺されてきた構図となる。
この警官も母娘の連携で仕留め、合計9人を葬り、金も充分溜まり、ふたりはすっきりサッパリとここを出て行ったようだ。
もうこの時点で娘のエミコの方が母よりハードボイルドであっけらかんと勇ましくなっている(笑。
(きっと国外のリゾート地にでもトンずらしているのだろう)。

大竹しのぶの艶のある巧妙な演技と伊藤歩の飄々として大胆な演技を堪能する作品でもあった。
こうしたひとつの室内劇では、演者の技量が決めるところは大きい。
男性陣の演技も含め、充分面白い映画であった。






AmazonPrimeにて














黒振り袖を着る日

kurofuri000.jpg

柴山健次 監督

きっと忘れない:
2013

上田慎一郎 原作
上田慎一郎 柴山健次 脚本

門前亜里、
福田英史、
美紀乃、
小野孝弘、
藤本浩二、
白木あゆみ


これが一番、面白かった。
地方の警官が深夜呑んでしまった人の車を代行運転して農道を走っていると、ひとを轢いてしまう。
驚いて見ると女子高生なのだ。

kurofuri001.jpg

妻にはうり坊を轢いてしまったと連絡し帰りが遅くなることを告げる。
誰も見ていない道であり、女子高生もこの地域の子ではない。
何処かに処分しようとするが、突然朝になりむくっと起きる。
傷一つ無く、車のフロント周りも全く損傷は無い。つまりこれは警官の幻想か?

その子は、何とこの警官が東京で刑事をやっていた時に麻薬の売人逮捕の際、ピストルの誤射で殺された男の娘であった。
(この時、正当防衛として彼は特に咎められなかったという。しかし目撃者の娘の首を絞めていたはず)。
田舎の農道を深夜走っている際にタイミングよく轢かれるトリックなど出来るはずもない。
この子は、霊なのか、警官の罪悪感による幻視なのか。
かなり明確な復讐の悪意と害意の塊である。

今度生まれる子供の名を警官の妻に向け告げさせ、それで満足して消える。
最後に警官の銃声が響く。


そらぞら:
2007
田中淳一、柴山健次 脚本

furofuri002.jpg

東海林愛美
加藤真弓
谷中啓太
内田愛里
納谷英樹
古守史佳
藤井寿美恵
中里文音


聖子が東京から郷里に戻ると、知恵がそこにいる。
幼馴染で歌手として東京で頑張っていたはずの彼女が何故かここにいた。
兄の葡萄園を手伝っていることを訝る。
恋人かと思うがそうでもないらしい。
歌も頼めば唄ってくれるが、、、。
或る時、自転車での坂道で酷く咳込む。
その後、彼女は病で亡くなったようだ。
今は聖子が彼女のギターを弾いている。

儚い情感を淡々と描いたものか。


黒振り袖を着る日:
2006
荒木敏子、柴山健次 脚本

金澤ゆかり
小橋川よしと
安野 遥
内田清美
神野信人
山寺正敏

kurofuri003.jpeg

これは布団屋さんの娘と酒屋の息子が結婚するまでの噺。
娘は彼氏に対して自分の気持ちが素直に出せずにずっとくよくよしていた。
布団を仕立てて欲しいというお得意さんのおばあさんの戦時中の恋人との噺に触発される。
素直になりなさい。
その一言が沁みてそのおばあさんの仕立てた黒振り袖を着て結婚式を挙げ、その後それをおばあさんの布団に仕立て直した。
布団や振り袖そして戦時中の恋の話など、日本の古い伝統と若いカップルの葛藤を絡めて描いた作品。
言わんとしていることは伝わる。

kurofuri004.jpg

一番最初の噺が面白かったかな。
若い女優さんもよい味を出していた。



AmazonPrimeにて









トルソ

torso 001

2010

山崎裕 監督・脚本
佐藤有記 脚本

渡辺真起子 、、、ヒロコ(アパレル会社事務員)
安藤サクラ 、、、ミナ(ヒロコの異父の妹、ファッション誌関係?)
蒼井そら、、、モデル(ミナの業界で活躍する)
ARATA、、、酔っ払い男
石橋蓮司、、、レンタカーの店員
山口美也子、、母


画面の暗い場面が多くてイラつく。
暗いところでモゴモゴは極力止めて貰いたい。

torso 002

トルソ(石膏像)をデッサンしたことはあるが、風船?と言うのが珍妙。
だが、そこそこそんな形に見える。つまり彼女にとり不必要な要素のないヒトなのだ。
それを自分を慰めるために使っている女性となれば、かなり不気味にもとれるが、映像としての撮り方は結構綺麗で情感もあり神秘性も感じられた。それからこれは完全に能動的な立場で関われる(受け身はない)。
面白かったのは、ヒロコが海~他に誰もいないプライベートビーチみたいな浜岸に降りて、素っ裸になり、膨らましたトルソと共に無邪気に心底楽しそうに浅瀬で戯れている絵が実にシュールであった(笑。
かなり危ない感じに思えたが。

torso 005

変幻自在の安藤サクラ演じるミナは、ここでは素直で奔放で遠慮はないが配慮は出来る憎めない妹だ。
姉の秘密を知っても最後まで知らぬ顔で通していた。
結局、華やかな都会での夢を諦め故郷で介護職に就くことに決めるが、その際に初めて姉にも自分の外に出る事を促す細工をして出る。粋な計らいだ。
渡辺真起子演じる姉のヒロコの内向的な闇の塊感は、物語の進むにつれ親の作る環境が酷く影響していることが分かる。
父親の墓前に線香もあげる気すらない、母のあの物言いからも充分に推察できるところ。
性に対するトラウマや不安が彼女を長いこと閉じ込めている。
完全に自分が主導権を持ち統御する性の行為は癒しの過程でもあろう。
まずは安心で自由な世界の保証だ。あの海辺は印象的、、、。趣味の世界として引き摺り続ける~安住する場合も多い。

torso 003

アパレル会社の娘たちって、週一で合コンというのやってるの?
まあいくら何でも忙しないわね~。
こりゃ、ヒロコじゃなくてもちょっと距離置きたくなるでしょ。
ヒロコの場合は特にだろうけど。
彼女の場合、料理やパッチワークをしたりと趣味も多い。
無駄な時間過ごすよりは家で静かに暮らした方が良いわね。

torso 004

かなりテーマ的には重いし暗くなる噺であるが(実際画面の暗さにイラつくところはあるが)主演女優の飄々とした余裕ある演技と常にどことなくユーモア漂う演出に救われている。
寧ろ軽妙な感じで流れ、全く激昂して争うような場面もない。
そこが品があって良い。
ミナの東京での仕事ぶりももっと観たかったところ。
あの華やかな仕事を諦めるのは、勿体ない。
もうちょっと頑張れなかったか。まあそこにいたらカメラマンのDV男から離れられないこともある。
ミナにとっては暴力男とキッパリ別れることが肝心であろう。

torso 006

最後に郷里に帰ると言うミナを見送って、部屋に戻ってみると、妹が自分の誰にも知られてはいけないモノを堂々とクローゼットの中に上着を着せて飾って置くではないか。しっかり空気を入れて膨らんだ形で。
全て知っていたのだ。おくびにも出さずにいたが。
そしてヒロコは大事なトルソから卒業する決意を胸に秘める。
異なる現実へと一歩踏み出す彼女の早朝の表情が明るく、何らかの確信が窺えた。
「私たちはまだまだいけるよね」(ミナ)。
その通り、と言いたい(爆。

torso 007

この映画は、渡辺真起子と安藤サクラの両主演を堪能するものであるが、どちらの存在感も半端ではなかった。
達人の域にある演者がそのキャラクターそのものに自然と成ってしまっているというか。
もう、上手く演じているとかいうレベルではない。

あのバーで出逢いラブホで先に寝てしまった男はもしかして井浦新?
もう出る映画というか役柄選んでよ、と謂いたい(笑。




AmazonPrimeにて











幸せのレシピ

No Reservations001

No Reservations
2007
アメリカ

スコット・ヒックス 監督
キャロル・フックス 脚本

キャサリン・ゼタ=ジョーンズ 、、、ケイト・アームストロング(フランス料理店料理長)
アーロン・エッカート、、、ニック・パーマー(副料理長の後任、専門はイタリア料理)
アビゲイル・ブレスリン、、、ゾーイ(亡くなった姉の娘)
パトリシア・クラークソン、、、ポーラ(レストランオーナー)
ボブ・バラバン、、、セラピスト


噺が自然に流れる。
余り無理が感じられない。大きな起伏もない。
観る事に抵抗がないのですんなり観れた(笑。

No Reservations002

こういうしっかり出来ていて、サラリと鑑賞可能な映画は良い。
やたら重くて暗いのだけど内容的にそれ程でもない映画って結構多いしね。
ドイツ映画『マーサの幸せレシピ』(2001)のリメイクだそうだ(そちらも観てみたい)。

キャストも良い。
主演の3人は言う事なし。
キャサリン・ゼタ=ジョーンズってこういう優秀な出来る女が似合う人だわ。
アーロン・エッカートはチャラいんだけど、やるべきことはしっかり熟す頼れる男が似合う。
アビゲイル・ブレスリンは多感な複雑な心境を見事に演じていた。なかなかのもの。子役は凄い子が多い。

No Reservations004

やはりまだ幼い娘だと母を失くして叔母に引取られるということは、親しい間柄であっても難しいことだろう。
しかもシングルマザーの母との結びつきは大変強い。
母に拘り他を拒絶することは分かる。
多くのファンを持つ有名料理長のケイトの作るゴージャスな料理もほとんど食べない。
そう、子どもは食べないことで抵抗を示す。
(食べることは相手を認め、従属することにも繋がる)。

姪もこころをなかなか開かないが、ケイトの方も産休の副料理長の代わりでやってきた腕の良いニックに対しこころを開かない。
確かにケイトとニックは性格的にかけ離れている。拘りが強く自閉的な完璧主義の彼女とオペラを厨房に流して唄いながら料理をする明るく社交的な彼は直ぐに打ち解けるようには見えない。ただしお互い腕は認めあっている。
まあ、新しい人間関係の構築はそう容易いものではないことは分かる。
このゾーイとケイトは、頑固で似た者同士かも知れない。
ゾーイはずっと母との思いを大切にして何かと籠ってしまう。
ケイトは自分の作りあげた厨房に誇りを持ち自分の統制からはみ出る他者の存在は認められない。
能力は認め合っていても気持ちの問題は大きいものだ。

No Reservations003


だが、その気持ちの解れる発端が、厨房に姪を連れて行った時に、ニックのまかないパスタをゾーイが凄い勢いで食べたことだった。
こうした料理の映画である。充分予想がつくものだが、そうした王道的流れである。
この予定調和は心地よい。やはり料理でいかないと。
ゾーイがニックに馴染み、ケイトも彼に対しこころを開けば、良い感じに展開するが、その通りに進む(笑。
間に子供が入るのは強い。

このような義理の関係は難しいと思うが、子どもとの関係ひとつで、どれ程の事が解消し、上手く流れ出すか。
良い形でこころを開く場が成立する事が肝心である。

アメリカでは(欧米では)職場の上司がセラピーを受けなさいと言えば受けなければならないのか。
ケイトもポーラの命令でセラピーを受けていたが、セラピストがなかなか渋い気の利いたアドバイスをくれる人であったのも救いか。
「自分で作ったレシピがベストだよ」。
それだけでなくケイトの新作料理の評価もしてくれるのだから得難い人である。

No Reservations005

結局、ゾーイが間に入る形で、何度も別れる危機に瀕したケイトとニックは、これまでの高級レストランを飛び出し~解放されて、新たに3人で経営するビストロを始めることに。当然腕が良いので大繁盛である。
絵に描いたようなハッピーエンドとなった。
良いと思う。

こころを開けるひとには思い切って開くこと。
頼れる人には気軽に頼る事である。




AmazonPrimeにて











二人小町

Two Komachis001

Two Komachis
2021
日本・香港

曽根剛 監督
平谷悦郎 脚本
芥川龍之介 戯曲『二人小町』原案

ハンナ・チャン、、、黎小町(キャリアウーマン)
エリズ・ラオ、、、黎小町(モデル志望のアルバイト店員)
和泉素行、、、王喜龍(死神)
ウェスリー・ウォン、、、黄(社長)
キコ・レオン
カーク
ベン・サー


原作未読。ベースがしっかりしている為か、アレンジしても面白い。
香港ロケ。そちらでも愉しめるか。
香港ならではの極彩色夜景とかは特になく、観光気分には浸れない。裏通りの世界か。

Two Komachis003

死神がふたりの小町という女の欲望に翻弄されるよく出来たお噺。
ふたりの主演女優がとても良かった。
何だかやるせない死神も人間臭くてよく分かる。
「運命」を突き付けられた女性の方も、そりゃ混乱し取り乱す。
これから、という仕事もある。どちらの小町も夢が叶えられそうなところにいる。
死にたくはない。
そのじたばたに死神も呼応する。よくこれまで死神やって来れたな。

Two Komachis004

そもそも死神がふたりの同姓同名の同じ歳の女性に恋をするという奇想天外かどうかはともかく設定が強引で面白い。
死ぬ時期が迫った時に、僕は死神で君はこうして死ぬとわざわざ言う必要もあるものか。
(まあ、これを告白することで、コメディが動き始めるのだが)。
しかも女性にあなたの子供が出来たなどと言われてコロッと騙されたり。
同姓同名で歳が同じなら身代わりも効くということから、ふたりの小町への関りも深まり噺もややこしくなる。
何にしても女性に弱く優柔不断な死神って通用するのか。

Two Komachis005

女の方はどちらも計算高く強かである。しかも腹黒い。
これはすんなり死ぬような玉ではない。
特にモデル志望のとても率直で可憐に見えた小町がかなりの悪であるのも効いている。
豹変ぶりが怖い。いくら夢のためとは言え、、、。
やり手のOL小町は如何にもという感じだが。
そう執着心か。どちらの小町にも根深くあるもの。生への執着心は勿論。欲望である。
最後、ふたりで死神を拒んだことを後悔していたが、、、。
(運命に贖うことも運命であるか。こうなるとどちらをとっても不幸ではないか)。

Two Komachis006

死神がやたらと人が良く振り回されやすい男であることでコメディとして成立している。
役者も哀愁があって良い。
そしてヒロインの女優が全くタイプの違う綺麗なオーラを放っていることが魅惑的な映画にしている。
面白かった。

Two Komachis002








AmazonPrimeにて













ティーン・ガール〜ヴァレリーとホリデイ〜

Teenage Girl 001

Teenage Girl: Valerie's Holiday
2019
アメリカ

アーロン・リー・ロペス 監督・脚本


ヴァレリア・ハウレギ、、、ヴァレリー/ホリデー(整備工クラスの女子)
パウリーナ・チャベス、、、フリーダ(親友)
ダリン・マッケイ、、、トミー(モテ男)
モンタナ・リアン、、、スカーレット(女子カーストトップの虐めっ子)
サンドラ・ノリ、、、校長
ポール・マシュー・ロペス、、、用務員
ジェス・ボレッゴ、、、父


何なんじゃ、これ。今日は暇がなくギリギリ見終わったところだが。
軽そうなのは、ほとんどどれも単に奇想天外、なのよ。まったくもう。
ヴァレリーはいつもカースト上位の子たちからグズと呼ばれ馬鹿にされている。
しかしグズというのは、性格的、行動面に対して呼ばれる蔑称だと思うが、、、

Teenage Girl 002

そこで一念発起し、親友フリーダの力を借りオシャレに決めてみることに。外見をがらりと変えてみせようと言うのだ。
すると皆から一目置かれ、誰だあの可愛い子という事になり、、、それは無いでしょ、単にヴァレリーがオシャレしただけじゃん、、、ホリデーという双子の姉妹がロスからやって来たということにしてしまいモテモテになる。何でまた他人になるの?
暫く姉妹で入れ替わり学園生活を送ると発表し、、、それを皆が信じる、、、嘘でしょ。
何でオシャレに気を遣うことにしたの。イメチェンよ。だけではダメなのか?
そもそもそれが何故グズというレッテルの解消になるのか?

Teenage Girl 003

学校としても(書類上及び保護者からの確認なく)こんなバカバカしい噺を取り敢えず受けてそのままはあり得ない。
必要最低限の情報すら先方から送られて来ていないのだ。普通受け容れないでしょ。
そして成績も良い。頭は変わらないしもともと成績は良かったのでは、、、では何でグズだったの?

それはそれとして、何でヴァレリーのホリデーが直ぐに男女から受け容れられ持て囃されカーストトップになってしまうのか。
ギャグコメディとは分かっていても、それはない。確かにスイッチした途端、堂々と行動し出した。雰囲気~イメージ~プロジュースの問題なのか。

Teenage Girl 004

それにヒトは見た目だけなのか。見た目でも分かるし、双子だってもしそうなら学校がはじめから知っていなければおかしい。
そして何となく嘘と分かる(爆。スカーレットの好きな男子トミーに告白された結果、彼女の逆鱗に触れたのが契機となった。
要するにいい気になって傍若無人に振舞い始めたことが、以前の親友にも疎まれる結果を招いていた。
何だお前はヴァレリーだったのか、とまた皆が馬鹿にし始める。
見た目だけでなく、名前=アイデンティティの問題か?
見た目だけで気に入り、ちやほやしまくっていたのに、名前がヴァレリー~当人となったことで幻滅って、どこをどう見てひとを認識しているのか、格付けしているのか。まあ記号のそうした機能なのであろうが。

Teenage Girl 006

狂気の沙汰だ。グロテスクな認識。不気味な意識。
これでヴァレリーはグズ時代の親友とカーストトップの時点で出来たクールな友達両方失う。
パパに泣きつく。
用務員にアドバイスされる「将来を他者に委ねるな。問題から逃げたら自分に向き合えなくなる」。
幸いパパと用務員が出来た人で救われる。
校長も咎めずに彼女を励ます。「自分の将来と守るべき友情を賢明に選びなさい」と。
両方を経験してどちらも自分らしくなかったことに気付く。
「誰に嫌われようとわたしは自分が好き。わたしは変わらない」。
良いと思います(爆。

Teenage Girl 005

何だか感動させようというプロムのパーティーに絡めての終盤の盛り上げであった。
高校生で誰もがここまで幼稚で下品とは、凄い世界である。

学園ものとしての流れは鉄板であり、カースト天辺の男女もそれぞれ自分を見出す。
トミーは改めてヴァレリーに告白し、スカーレットは虐めで自分を大きく見せて来たことを反省しグズグループに謝罪。ヴァレリーたちと友人になる。
良いと思います(爆。
どの辺の層をターゲットにした映画なのか。
二度テーマ曲をとうとうと唄い皆を唸らせるが、本人は唄ってないな。





AmazonPrimeにて







続きを読む

軽やかで爽やかな

Moonwalker002.jpg


ただ、待っている。
最近は特に。
そんな日々が続いているような、、、。
いや耐えているのだ。

今日は「白と黒の同窓会」と言うのを見たが、さっぱり意味が分からなかった。
ヒロインに付き纏う白と黒の実体のない女。
最後の最後に、ヒロインとその白い女が入れ替わって、ヒロインが突然消えてしまい今日皆さんから中高の彼女の事が聴けて良かったです、ってどう意味か分からん。場所~場面は連続しているし。後日、日を改めてならまだ分からなくもないが。
旅行に行く噺だって、その友達はまだそんな間柄ではなく、この先の噺のようなことを言っていたはず。
(つまり友達は大学生になってからはいない)。
この影であったのに突然実体化し、ヒロインが影に入れ替わっていたのが、その文脈~筋道が全く不明。
こういう噺は、大嫌いなのでもう二度と触れる気はない。

moonbow.jpg

ここのところ続けて観てしまった重い映画はちょっと現在の家の状況にそぐわないので、軽めのモノを探して観たつもりが、ワケわからんというのは困る。重厚で難解なモノの方が見応えがあったとか充足感が持てるだけ良い。
何なんだこいつら(志摩リンではないが)気持ち悪いだけなので、ご免だ。

「軽やかで爽やかな」ものがよい。
何の捻りもいらない。
淡々として飄々として郷愁を呼ぶもの、、、
そんな作品が観てみたい。

「東京物語」など最高なのだが、あんなものが他にあるとも思えない。
タルコフスキーみたいなものもとってもよいが、そうはない。
イングマール・ベルイマンも時折観たくなるが、そのとき観ればよいか。
サイバーパンクは「ブレードランナー」でよし。
これからSF観るとすれば、ドゥニ・ヴィルヌーヴを待つ。

待つ。耐える日々が続く、、、影すらない灼熱の中で。



StrawberryMoon002.jpg





ピッチ・パーフェクト

Pitch Perfect001

Pitch Perfect
2012
アメリカ

ジェイソン・ムーア 監督
ケイ・キャノン 脚本
ミッキー・ラプキン『Pitch Perfect: The Quest for Collegiate A Cappella Glory』原作

アナ・ケンドリック、、、ベッカ
レベル・ウィルソン、、、ファット・エイミー
アンナ・キャンプ、、、オーブリー
ブリタニー・スノウ、、、クロエ
スカイラー・アスティン、、、ジェシー
アダム・ディヴァイン、、、バンパー
ジョン・マイケル・ヒギンズ、、、ジョン・スミス
エリザベス・バンクス、、、ゲイル
アレクシス・ナップ、、、ステイシー
エスター・ディーン、、、シンシア
ハナ・メイ・リー、、、リリー
ベン・プラット、、、ベンジー


パソコンでDTMをいつもやっているベッカは父が教授を務めるバーデン大学に入学する。
ルームメイトの東洋系女史は白人が嫌いなようでまともに口もきかない。
ベッカにとり志望校ではなかったようで、レコードを扱う「校内ラジオ局」でバイトをしていた。
そこでジェシーと言う男子と音楽を通し仲良しになる。

Pitch Perfect003

シャワーの時に鼻歌を歌っていると、大学の女性アカペラグループのクロエから誘いが来る。
独りでDTMで作った曲で勝負しようとしていた彼女であったが、そのままアカペラグループ「バーデン・ベラーズ」に入ることに。
これが彼女にとり初めて仲の良い友人の出来るきっかけとなり、彼女の価値観も変わるのだった。
しかしこのグループ、部長のオーブリーが頭が固い上に直ぐにゲロを吐くことで手古摺る。

そして「バーデン・ベラーズ」として部長のプランに従い練習を進め活動して行くのだが、大学には毎年優勝を攫う男子ばかりの「トレブルメーカーズ」がいた。彼女らの宿敵であり、ジェシーはそこの中心的なメンバーでもあった。
最初の頃は歯が立たないが、部長がベッカの創造性を認め、彼女に主導権を渡したところで、グループも個々の個性が生かされるようになって活性化し、最後には大会で優勝を果たすという、コテコテの王道を行く青春コメディであった。

Pitch Perfect002

わたしにはまったく重ならない青春キャンパスライフであったが、これを観てそうそうわたしもこうだったわ、とか思う人っているのかね。
とっても定番スタイルなんだけど、それがよくあることとも思えないのだが、、、。
その典型のコメディ。ファンタジー。ミュージカル・コメディか。

アメリカの大學生対象の、こんな大きなアカペラ大会があるのを初めて知った。
参加していたどのチームもレベルはかなりのもの。
歌はそれぞれ各自が唄っていたと思うが、確かに上手いとは思うが、感動まではちょっと行かない。

Pitch Perfect004

メンバーの個性もそこそこ造形されていたが、ベッカ以外は部長と副部長とファット・エイミーがとりわけしっかり(面白く)描かれてはいた。
アレクシス・ナップやエスター・ディーンの役ももう少し深堀してもよかった気がする。
しかし、部長が何であんなにゲロを吐くのか、意味判らなかった。
この物語でそんなに必要なの?
ベッカには、DTMの方も頑張って貰いたいものだ。
そちらで素敵なアレンジにしたものをアカペラの方に還元するのもよい。

Pitch Perfect005

そして最後はお決まりの気まずく成っていた敵のグループのジェシーと仲直り。
彼の好きな映画の音楽を曲に組み込んだことが功を奏した。
まあ、音楽絡めた鉄板のキャンパスコメディであった。
わたしが観てどうというモノではないけど。

”2”と”ラストステージ”という続編があるみたい。
微妙。




AmazonPrimeにて










グレイテスト・サマー

Summer 03 001

Summer '03
2016
アメリカ

ベッカ・グリーソン 監督・脚本

ジョーイ・キング、、、ジェイミー(16歳高校生)
ジャック・キルマー、、、ルーク(神父を目指す青年)
スティーブン・ラフィン、、、マーチ(ジェイミーの親友、家で毎日パーティーを開く)
アンドレア・サヴェージ、、、シラ(ジェイミーの母)
ポール・シェア、、、ネッド(ジェイミーの父)
ローガン・メディナ、、、ディラン(ジェイミーの従兄弟)
エリン・ダーク、、、叔母(ディランの母)
ジューン・スキッブ、、、祖母


”グレイテスト・サマー”なんていうから観てしまったが、、、
何だかよく分からない噺であった。
最初から最後までドタバタしていて落ち着かず、、、結局何だったのか分からず仕舞い。

Summer 03 002

ヒロインは、クロエ・グレース・モリッツを庶民的にしたようなジェイミーという女子。
なかなかの熱演だが、よく分からない子。いや思春期だから分らなくて当然か。

祖母が臨終のときに家族それぞれに訳の分らぬことを言って逝く。
息子に言ったこと以外は他愛もない下らぬ話だが、祖父が実は違うひとでまだ存命していることを知り、ジェイミーのパパは、祖母が嫌っていたユダヤ系のママに葬式を丸投げしてホントのパパを探しに行ってしまう。

Summer 03 003

その間、祖母の放ったことばが皆、気になり夏休みの調子が狂ってくる。
(祖母の謀か、無邪気に言ったことに過ぎないのか、言葉を無責任に放つ者はとかく迷惑をかけるものだ)。
父はドイツに本当の父を探しに行き、、、
母は仲の悪かった祖母の葬式を丸投げされ泥酔して踊りまくっており、、、
仲の良いディランは、お前はゲイだから遠くに行くように言われ幼いのに車を運転して出掛ける、、、
ジェイミーは、それ程混乱するようなことを言われたとも思えないが、教会に行くとこれから神父になる青年に一目惚れしてしまう。
(まあ恋愛絡みのアホなメッセージは受け取ってはいたが)。

Summer 03 004

神父にこれからなる青年が何故、ジェイミーの求愛を受け容れるのか、屋外の野原みたいなところでイチャイチャしていれば当然目に付くことが分かるのに、何故そうしたのかが分からない。
お互いにどういうつもりなのか。
単に刹那的な暴走という感じでもなかったのだが、、、。

ディランは何度も車を運転して遠くに行こうとするが、そもそもゲイなのか?
自分はどう感じているのか、さっぱり分からん。
叔母も今一つ立ち位置が分からなかった。

母もどういう人なのか、ユダヤ系と言うだけで差別されカリカリしていたが、
途中から入りこんで来た超差別主義者のホントの祖父(父のホントの父)も何だかよく分からない頑固者のまま。
終始、マーチがジェイミーのことを親身に気にかけ彼女を守ろうとしている事だけが見て取れた。
結局、ジェイミーが頼れる親友はマーチだけだと分る。

Summer 03 005

しかし噺自体はジェイミーの無軌道な我儘な行動とそれに呼応した神父を目指すはずの青年のいい加減さが周囲を巻き込んでいただけのもの。
詰まり噺自体全くどうでもよいもので、何なのよというレベルである。
ジョーイ・キングが適度に可愛らしかったのでどうにか最後まで観た、という感じ(笑。

Summer 03 006

お勧め要素は特に無い。
暇ではないのに暇つぶし映画を観てしまった。




AmazonPrimeにて











黒い司法 0%からの奇跡

JUST MERCY001

JUST MERCY
2020
アメリカ

デスティン・ダニエル・クレットン 監督・脚本
ブライアン・スティーブンソン 「黒い司法 死刑大国アメリカの冤罪」原作
アンドリュー・ランハム 脚本
ジョエル・P・ウェスト 音楽


マイケル・B・ジョーダン、、、ブライアン・スティーブンソン(弁護士)
ジェイミー・フォックス、、、ウォルター・マクミリアン(冤罪死刑囚)
ブリー・ラーソン、、、エバ・アンスリー(人権活動家)
レイフ・スポール、、、トミー・チャップマン
ロブ・モーガン、、、ハーバート・リチャードソン
ティム・ブレイク・ネルソン、、、ラルフ・マイヤーズ


「アラバマ物語」の街で1980年代の状況がこれだとは、、、絶句。
18歳白人女性の殺害事件で冤罪にされた黒人男性の無実を勝ち取るまでの実話である。
オクスフォードを卒業したてのブライアン・スティーブンソン弁護士と人権活動家のエバ・アンスリーの差別意識との過酷な格闘が描かれてゆく。

JUST MERCY002

差別意識の根深さが凄まじい。
黒人は皆、推定有罪ではないか。
全く気が抜けない。
何処でどういう冤罪を着せられるか分からないではないか。
公民権運動がどれだけの実効性があったのかと思ってしまう、、、。

マイケル・B・ジョーダンとジェイミー・フォックスの迫真のやり取りは緊迫感で圧巻であったが、ティム・ブレイク・ネルソンの演技が絶妙で光っていた。彼の虚偽証言ひとつでウォルターが死刑判決となったが、そのマイヤーズも検察側に弱みを付け込まれそうせざるを得ないところに追い込まれた結果であった。しかし良心の呵責を解くようなことばで彼を説得し気持ちを解放させるブライアンの人間力が素晴らしい。マイヤーズの意識の覚醒と怪演がとても見ものであった。
まあ、キャストは皆文句なく凄い。

JUST MERCY004

ブリー・ラーソン演じる白人人権活動家がいることは救いであるが、これ程の差別の根深さには眩暈を覚える。
差別に対し、わたしも日常のディテールに置いて気になるところは、幾らでもある。
地方検事の「「アラバマ物語」の博物館」にでも行ってみたまえなどとブライアン・スティーブンソンに騙る皮肉以外の何ものでもないことば。彼は供述も証拠も無視してウォルター・マクミリアンを死刑囚にした男だ。こうしたブラックジョークみたいな現実は至る所にある(この彼も最後にはブライアンの説得によりウォルターの無実を認めることになる)。

ブライアン・スティーブンソンは貧困の反対は正義だと論じる。
確かにそうだ。ターゲットにされるのは黒人だけでなく白人の貧困層も含まれる。
検事側が司法取引で虚偽の証言を関係ない男にさせたり誘導尋問などで、全く証拠も動機も何もない黒人を犯人に仕立て上げている。そしてまともな裁判なしに死刑判決である。これ自体言語道断であるが、それが白人たちにとり共通感覚であり安心できる結果なのだ。決まって駒として貧困層が利用され排除される構造~正義が成立している。
司法制度そのものの不備も勿論だが、これでは余りに情けない。

JUST MERCY005

今現在も黒人が警官に理不尽に殺される事件が勃発してそれに対するデモが行われている。
状況は進展していないのか。
ただ、この映画で印象的なシーンに、マイヤーズが自分の身の安全のため頑なに偽証を認めなかったが、ブライアンのウォルターも同じ人間であることを感じさせ認識させることで、キッパリ自分を守ることを止め偽証をはっきり認めるところがある。
「彼を早く子供のところに返してやってくれ」と最後に叫ぶが、これが事実であるならば、やはりしっかりお互いの顔を見ることである。
身体的な対峙から始まっている。ブライアンはエバの指摘通り、相手を記号ではなく純粋に顔を見て関わって行く。
ここでウォルターは身体は未だに檻に入れられていても精神はハッキリと解放されたと述べる。

JUST MERCY006

この世の閉塞感が自閉的な姿勢~相手を記号化して処理する意識が生んでいる面は大きい。





AmazonPrimeにて








テーラー 人生の仕立て屋

Tailor001.jpg

Tailor
2021
ギリシャ・ドイツ・ベルギー

ソニア・リザ・ケンターマン 監督・脚本
トレイシー・サンダーランド 脚本
ニコス・キポロゴス 音楽

ディミトリ・イメロス、、、ニコス(高級スーツ仕立て屋)
タミラ・クリエバ、、、オルガ(隣の奥さん)
タナシス・パパヨルギウ、、、カラリス(ニコスの父)
スタシス・スタムラカトス、、、オルガの夫(タクシー運転手)
ダフネ・ミチョプールー、、、、ヴィクトリア(オルガの娘)


女性監督ならでは、と謂えるか、オシャレな映画である。音楽との絡みも良い。
(何故かおじいちゃんたちのスーツ姿がやたらとオシャレでないの)。

Tailor002.jpg

何より仕立て職人ニコスが実に味があること。首にいつもメジャー掛けていて粋。
存在感だけでもってゆく。そうミシンの存在感も半端ではなかった。
職人の採寸から始まる一連の丁寧な熟練作業も実に心地よい。
一念発起の仕事にプライドを持つ働くおじさんの噺。

不況の煽りで傾いた高級スーツ店の職人ニコスが待っているだけではダメという認識から、手作り屋台をSUZUKIのバイクで引いてゆく。お得意さんが皆鬼籍に入り、途中で父が倒れてしまい、50歳にしての奮起である。
しかし移動屋台で高級オーダースーツを注文する文化・伝統はギリシャにもなかろう。勿論、お宅に伺い採寸からの作業は丁寧に熟すのだが、道端で急に買う気になるものか。仕立てに時間と費用がかなり掛かるものであるし。
困っていると2階の窓からウエディングドレス作って貰える?と女性の声がかかる。
それまで女性ものは自動的に断って来たのだが、急にこれに賭けてみようと思い当たる。
男性スーツから女性のドレスへの(華麗なる)転身である(笑。

Tailor003.jpg

随分思い切った。しかし長年仕立て屋をして来た腕の良い職人である。
直ぐに女性ドレスをマスターしてゆく。
お隣さんのオルガも裁縫が得意で女性の服(普段着)作りを手伝ってくれる。
そして女性のドレスも普段着も思いの他需要があった。
ドンドン声がかかるではないか。

Tailor005.jpg

オルガとの共同作業も良い形で進む。
娘も彼によく懐いでいて良い雰囲気。
屋台はなかなか儲かる。
ギリシャの街並みと海のロケーションがこれまた映える。やはり光の国だねえ。
更に彼の佇まいが良い。
何と言うかがむしゃらに頑張ると謂うのではなく、仕事の一つ一つの所作が仕事を慈しみ愉しむ感覚に充ちている。
これだな、と思った。

Tailor004.jpg

ダンディなのだ。
スーツでもウエディングドレスでもプライドを持って仕立ててゆく。

しかしオルガとの共同作業が長すぎたのか、とても立派なウエディングドレスを仕上げた後、親密な関係になってしまう。
その前に素敵な浜辺でムーディーな時間を過ごしていたな。
翌日、それまでニコスに親しく接していた彼女の娘が明らかに反抗の態度を見せる。
店は銀行に差し押さえられ、その後入ってみると酷く店内を荒らされていた。
オルガは娘を取り、ニコスはワーゲンのワゴンに乗り換え、ウェディングドレス職人として晴れやかに旅立ってゆく。
(頑固な父からもウエディングドレスを見て「よく出来た」のことばをもらい自信になったはず)。

Tailor007.jpg


この格式や伝統を重んじる高級スーツ作りを父の代から続くしっかりした店でやって来た人にしてはフットワークが軽くて面白かった。
フットワークの軽さ。これとても肝心なところ。
品の良いコメディ感覚も散りばめられて、よい演出になっていた。
わたしに今一番、大切なのは、このフットワークである!
見習いたい。
新たなチャンスを掴むフットワーク。

Tailor006.jpg

ここに出て来るこまっしゃくれた女の子悪くないが、昨日のサーシャが余りに素敵だったので、イマイチ感をもってしまった。
大変細やかに煉られた素敵な映画であった。
この監督期待できる。




AmazonPrimeにて











リトル・ガール

Petite fille001

Petite fille
2020
フランス

セバスチャン・リフシッツ 監督

サシャ
カリーヌ、、、母


信じられない程美しいドキュメンタリー映画。
感動した。
ドビュッシー、ラベル、ヴィヴァルディなどの選曲も良い。
ドキュメンタリーに時折感じるがさつのなさが全くない。センスが良い。
ドキュメンタリーと気づかず、途中まで上手い子役だねえとか感心しながら観ていた(笑。

Petite fille006

フランス北部、エーヌ県とは、かなり保守的な田舎なのか?
おフランスと謂えば、日本よりLGBT問題など進んでいるように思いこんでいたが、この厳しさは何だ。
サーシャと言う7歳になるトランスジェンダーの男の子~こころは女の子が主人公。
特に学校をはじめとするバレエ教室などの教育機関がちょっと酷すぎる。
実際にクラスでは、女子からも男子からも疎外され友達が出来ない。
教師、管理自体がそういう態度であるから尚更である。

教育機関こそが先頭切ってこうした問題に積極的に当たらないでどうする。
バレエなど美を追求する表現芸術など特に。それがもっとも頭の固い保守的な差別主義では噺にならない。
伝統的な面が災いしているか。と謂うより先生の問題だろう。

Petite fille003

だが、サーシャを支える家族が素晴らしい。素晴らし過ぎる。
母父兄姉が皆、彼女をそのまま受け止め彼女を女の子として認め活き活きと生きてゆけるよう励まし支援を惜しまない。
これがもし私の親であったら、世間に顔向けできない親に恥をかかせるなこの親不孝者くらいはまず普通に言う(口癖であった)。
断じて認めるなどあり得ない。何一つ認めてこなかったものだ(模範的毒親)。

まず親・兄姉に恵まれていたことは幸いである。皆が互いに支え合ってサーシャを暖かく見守っている。
そしてパリの小児精神科医が見事当たりで、この医者により事が前に運びようになる。
何より素晴らしいのは、子どもの事で親として自責の念に悩む母親に「あなたは何も悪くない」と言って労うところ。
孤独に懸命に闘う親を応援できないでどうする!
これと正反対の日本のバカ医者には何人会って来たことか、、、。
(この専門医はサーシャを性同一性障害ではなく性別違和として確認している)。
そして何とか保守的な学校の管理及び教員も動かすことになった(まだ前途多難ではあるが)。

Petite fille005

この7歳のサーシャが素直で賢明でしっかりしていることに驚く。
自分をちゃんと持っているが、適度な距離感を持って周囲に接することが出来ている。
(周囲は物分かりの悪い連中の方が圧倒的に多い状況にあり)。
とても繊細な上に寛容で、この歳とは思えぬ程、大人なのだ。
この子凄い人になるぞ。

Petite fille002

しかし好きなバレエが断念は残念。どこかで再開出来ないだろうか。
男の子としてしかバレエをさせて貰えなかったのだ、、、。
母と共に女の子の服やバッグを選び、水着も選んで着ることが望みであったが、実際に緊張と戸惑いも隠せない、その心境も切なく伝わってくる。
思わず泣けた。
この歳でこんな困難に健気に立ち向かっているのだ。

Petite fille004

多様性だ何だと言いながら個々の現状は、こうしたものだと思われる。
頼りになる家族と理解者に支えられ、自分らしく強く生きて欲しい。人生を愉しく過ごして欲しい。
率直にそう思う。
世の中自体はそう簡単には変わらないから。





AmazonPrimeにて






風たちの午後

kaze003.jpg

1980

矢崎仁司 監督・脚本
長崎俊一 脚本

綾せつ子、、、夏子
伊藤奈穂美、、、美津(夏子のルームメイト)
阿竹真理
杉田陽志、、、英男(美津の男友達)


ストロベリーショートケイクス」は、そこそこ面白かった記憶がある。
この作品が監督デビュー作という。

kaze000.jpg

ずっと粗目のモノクロでラストにカラーになる。
自主制作映画~インディーズ映画だという。確かにそういう感触。
監督の意図は伝わるが、とっても冗長で耐え難い作品。
特に神経を逆撫でするのが音である。水滴の落ちる音、、、蛇口締める気ないのね。
そして何言ってるか分らぬセリフ。これまたダラダラ続くBGM.。

kaze004.jpg

夏子がルームメイトの美津のことを好きになるが、それを言葉では言えない。態度ではそれとなくずっと示してはいるが。
今ならLGBT問題として大きく取り上げられ、あっけらかんと告白出来る気風にはなっているが、当時は難しい状況であった。
(パッと告白してしまえば、相手が全く受け付けないタイプなら、サッと諦めもつこうが)。
まあ、通常好きを伝えること自体、勇気のいるものである。それが性同一性が絡むとまさに相手次第となろう。
それでずっと片思いで耐えている。その過程で生活も乱れて来る。
この時間の流れが空間的に耐え難い。
そう不協和音をずっと聞かされているようなもの。そんな精神の崩れを感じる。
美津と関係を続けている男友達の英男から夏子を別れさせようと自分が関係を持ってしまう。
だがその為に彼女は妊娠してしまうのだ。美津はその相手を知らぬが。
物語の最中に夏子がしょっちゅう吐く。うんざりするほど吐く。

kaze002.jpg

美津は夏子の妊娠を気遣い距離を置き離れてゆく。
最後はカラーになって花に敷き詰められた部屋で夏子は死んだように寝ており、ずっと赤ん坊の泣き声が続く。
そう、ひたすら気に障る音を流し続ける。
夏子の心理状況に同調するかのようなノイズを充満させる演出なのだ。

拷問映画というジャンルでもよい。

kaze001.jpg

ルームシェアしていると、今彼氏が来ているとかを知らせるのにハンカチを一枚外に干すのね。
確かに分かり易い。
と言うか実際にやってる人も結構いるのでは。

当時としてはどうだったのか。
こういう映画は無理。この演出、本といい、、、。
切なさとか不条理に感じ入るという以前の生理的障害として。

kaze005.jpg

何で「風たちの午後」なの。






AmazonPrimeにて











こっくりさん

kokkuri001.jpg

2007

福田陽平 監督・脚本

大久保麻梨子
長崎莉奈
佐伯新
藤本ゆき
岡田由麻


ホントにあったシリーズ劇場版映画。
所謂、サスペンス映画的で、キャラもしっかり造形されていた。
結構煉られており、「こっくりさん」に興味を持つ女子高生心理や報道の姿勢を真剣に語りあったり、職場や学校の虐めの体質等々ちゃんと描こうという意欲が分かる。

親しい友人3人で「こっくりさん」をやって面白半分で何でもかんでも聞いていくうちに、首謀者が「この中に嘘つきはいますか?」という質問をしてから輪が崩れ関係性がおかしくなる。
どうやら恋愛絡みの腹に一物のある彼女が確かめようとしたようだ。
結局、理科室で疑いを持っていた彼女をカッターナイフで首を切って殺してしまう。
親友を殺した少女は精神鑑定で保護観察となる。
だが、その殺意はこっくりさんに憑依された結果のものだとひとり残った娘は報道アナウンサー~ヒロインに訴える。

kokkuri002.jpg

その後、そのようなオカルト案件に乗り気でないスタッフやたんなる集団ヒステリーによるものとして距離を置くデスクなど報道スタッフに温度差があるなか、ヒロインは残った少女と何度も逢って真相に迫ろうとする。
助手の男性もインタビュー中のノイズや影の動きに異常を感に調べ始める。
デスクも絶えずヒロインに意見し忠告したり協力したり励ましたりしながら関わって行くが、合理的な考えは捨てない。

面白いのは、こっくりさんをやったことで予知~透視能力が身に付くと言うもの。
しかし、自分の死を予見するような形で幻視するもので事態を変えたり避けられるものではない。
それはキツイ。
分ったところで回避が出来なければ、、、つまりこっくりさんの呪いなのだ。
自分を自殺に追いやった人間が許せないということで、これがかつてのヒロインと関係して来る。

こっくりさんってコインでやるのではなく鉛筆でやるのね、
これが正式なやり方だと言っていた。

kokkuri004.jpg

その報道チームは一人が殺人で逮捕されその他は皆殺されてしまう。大概最後に残るヒロインも。
「こっくりさん」した女子3人も皆殺される。最後の一人はもしかしたら生き残るかと思ったが。
何とも潔い。

こっくりさんの論文をかつて書き現在は精神病患者として入院している男も生き残ってはいる。
まあ、部外者であり女子高こっくりさん殺人事件には直接関係はない。
この人も含めこっくりさんをすると自分の死を確認する予知能力が得られるというのも何とも禍々しい結末だ。
こういうことはやらぬに限る。

長崎莉奈の女子高生もうちょっとどうにかならなかったか。
かなり厳しい演技であった。

kokkuri003.jpg


ほんとうにあった怖い話「死者のブログ」
同「顔を見るな」
同「里帰りにて」
もついでに観てみた。
暇だからではなく、ちょっとましなものがないかと次々に当たってみただけのこと。
どれもフ~ンとは思ったがそれまで。
いずれも投稿者の謂う通りに若干ストーリーにするため脚色し再現したものと言うが、、、

「死者のブログ」は、嘘っぽい。亡くなった人のブログに不謹慎にも悪戯コメント書くなどもっての外だが、送信した途端にその母から返信が来て、告別式だったか誘われ、断ると職場や自宅にやって来る。そしてブログのAuthorも幽霊として押し掛けて来る。母もすでに亡くなっていて幽霊としてやって来たみたい(笑。
いくら何でもやり過ぎだし噺がシンプル過ぎる。何の捻りもない。馬鹿らしいの一言。
「顔を見るな」は、急に連れ出された心霊スポットで、2人が幽霊をホントに観てしまう噺だが、その幽霊が連れ出された方の男が殺した彼女だったというオチでそれなりに愉しめた。しきりにその幽霊の顔を見るな、と連れ出して憑かれた男に忠告したのは、そう言う理由だったのか。
とは言え、これホントにあった話なの?自分が面白半分で連れ出したスポットで、相手が既に恋人を殺害していて、その恋人の幽霊に助けを求められたって。どれだけ凶悪な友達と付き合ってるのかい、、、。噺としてはよく出来ていたが、ホントにあったとは信じがたい。
「里帰りにて」は、主演の女優さんがしっかりヒロインをやっていた(かなり良い女優に思える)。里帰りしたら義母が何かが出ると家にお札を貼って、異様な雰囲気になっており、いるはずの祖母が見当たらない。
結局、憑かれていた義母は急性心不全で亡くなり、祖母は既に亡くなっていて義母が自分で遺体処分し年金不正受給していたそうだ。家の先祖の霊がそれを咎めるかたちで現れたと投稿者は受け取っていた。
こういう噺はありそうなものに想える。義母がやたらと不気味だった。

satogaeri.jpg


やはり怪談もので面白いというものは稀ですな。
「こっくりさん」はサスペンス調であったためなかなか楽しく観ることは出来た。




AmazonPrimeにて




ほんとうにあった怖い話「母の声」

hahanokoe001.jpg

2014

菊池正和 監督・脚本・編集
弥栄裕樹 音楽

浅香うらら、、、エリ(引篭もりの女子中学生)


わたしがつくづく感じたのは、この時期の子は、他者に対する感覚が極めて希薄。いや歪。
自我が確立していない分、他者も一個の内面をもつ人格としては捉えられない。
でももう中学生(「もうちゅうさん」ではないけど(笑)、体はデカいのにこのアンバランスが何とも言えない。
引き籠り部屋のドアの外にご飯を持って来た母が声をかけると、その声が気に障るといって「死んでいなくなれ!」と罵ることが平気で出来る。逆から見れば、どうにもならない不全感の叫びとも取れるが。それを何かのせいにして合理化しようというのか。
ここでは「母の声」である。確かに声にはこころの敏感な部分に直接作用するような物質性~波動がある。

しかし3度の食事を毎日作って運んでくれる母に対してだ。
(もしかしたら塾に高い月謝を祓わせてすっぽかしているケースもあろう)。
ある意味、何を謂ってもどういう対し方をしても自分を保護し世話を焼いてくれるという全幅の信頼をおいているのか。
それが前提に無いとこんな事が謂えるわけがない。
それとも全く無意識に言っているのか。
そう、感覚だけなのだ。
他者~異物性を徹底排除しようとしている。極度の排他主義。他者のこころを知ろうとか言うレベルではなく、ただ感覚的に他を寄せ付けない状況。
(そうこういう子は声だけでなく他者を汚いとか臭いとかいう。誰かが触れたものは触れないとか)。

人間ではない。
受容性~共感なくして関係性は生じない。結べない。

中学生の時期にまだ人間になっていない。
これは尋常ではない。
異常だ。

反抗期とはそもそも何か。
潔癖症とは何か。
これを正当化するものか。
無理だ。
あり得ない。こちらが耐えられない。限界を超える。

これ程極端でなくとも、こうした傾向、特性をもったバリエーションが多々見られるのは事実。
しかしこのエピソード提供者は、あの頃と言って振り返っている。
つまりその自分を対象化し包含する精神性は持ち得ていると謂えよう。
どの契機でそうなったのか。つまりどういう過程で自我を育んだのか。
ある意味、その当時の母親に対してこんな酷い接し方をしていたというスタンスからモノを言っている。
これはとりもなおさず反省的思考から生まれたものだ。
内省を感じる。

この非人間的中学生が、どういう過程を踏んでそうなったのか、そこを知りたい。
当人に是非分析してもらいたいのだ。
大いに参考になる。
わたしにとって。今切実なのだ。この点が。分るだろうか!

結局、母が余りの酷い仕打ちに耐えかねて家を出てしまったのだが、、、。
母のいなくなったにも拘らず不気味な何者かが自分の部屋のドアをノックしこじ開けようと毎日やって来るのだった、、、。
娘はその恐怖と不安に耐えられず、家を出ることにしたが、キッチンで料理の支度をしている母の後姿を見て、彼女が自殺したと思い込んだという(これは自身の内面の投影なのか。何であるのか)。
いずれにせよその体験が内省の契機となったというのか。

母は離婚した元夫のところに転がり込み、傷を癒していたらしい。
あの後ろ姿の幻は一体なんであるのか、、、。
その幻と面と向かって接したのは、クラスメイトの女子であり、休んでいる彼女を何とかクラスに迎え入れようとやって来た子であった。
その子は帰りに事故で亡くなったという。

このように怪談で誤魔化されては困る。
そんなことは、どうでもよい。安易な結びつけは止め。
逆にこんな怪談を経なければまともにならぬのなら、先ず無理。
しかし確かにまともでない輩が周囲に跋扈しているのも事実。
そのまま歳だけとった奴らに今夜も出逢ってしまった。
久しぶりに低周波ねずみ男のバカ面を街頭で垣間見たわ。吐き気がする。

この投稿者は今はどういう人なのか。
そっちを知りたいね。



AmazonPrimeにて





ジャスティス・リーグ

Justice League000

Justice League
2017
アメリカ

ザック・スナイダー 監督・原案
クリス・テリオ 脚本・原案
ジョス・ウェドン 脚本
DCコミックス 原作
ダニー・エルフマン 音楽
シグリッド『Everybody Knows』、ゲイリー・クラーク・ジュニア『カム・トゥゲザー』主題歌


ヘンリー・カヴィル、、、クラーク・ケント / スーパーマン
ベン・アフレック、、、ブルース・ウェイン / バットマン
ガル・ガドット、、、ダイアナ・プリンス / ワンダーウーマン
エズラ・ミラー、、、バリー・アレン / フラッシュ
ジェイソン・モモア、、、アーサー・カリー / アクアマン
レイ・フィッシャー、、、ビクター・ストーン / サイボーグ
エイミー・アダムス、、、ロイス・レイン(スーパーマンの恋人)
ジェレミー・アイアンズ、、、アルフレッド・ペニーワース(ウェイン家の執事、オペレーター)
ダイアン・レイン 、、、マーサ・ケント(クラーク・ケントの育ての親)
キアラン・ハインズ、、、ステッペンウルフ(ニューゴッズの一員)
アンバー・ハード、、、メラ(「マザーボックス」を守護するアトランティス人)


3つの「マザーボックス」を巡る噺、、、でもないな。
とても爽快(詳しいことは分からぬが)。
ジャスティス・リーグというヒーロー大集合の豪華企画である。
ともかく明るく楽しい映画だ。

Justice League001

オールスターが集まって思いっきりそれぞれのカッコ良いとこ魅せる映画だ。
その多彩なアクションを追ってゆけばよい。
結構、愉しめる。
悪のテッペンウルフもかなり手強い。
ハラハラする程ではないが、スリリング。

Justice League003

わたしはDCコミックとマーベル・コミックの違いとか全く詳しくなく、これまでにも余り観て来なかったので、ちょっと整理しておきたい。
コミックは、基本読まないので、映像作品となったものを念頭に(変わらないが取り敢えず映画をもとに)。
DC陣営はスーパーマンとバットマンというヒーローに加え、レックス・ルーサーとジョーカーなどの強力な悪役がいる。
それからワンダーウーマンというヒロインも。皆超人であったり凄いメカを武器に持っていたり、、、

マーベル陣営は、アイアンマン。バットマンもそうだが、高性能スーツで闘う。しかもバットマン同様大富豪。
そしてスパイダーマン。蜘蛛に噛まれて超人になった若きヒーロー。
キャプテン・アメリカは、アベンジャーズで人気を得たか。マーベルのヒーローチームである。
丁度、DCのジャスティス・リーグに当たる。

Justice League002

ジャスティス・リーグは、スーパーマンとバットマンにワンダーウーマンが中核を成し、マーシャン・マンハンター、フラッシュ、グリーンランタン、アクアマンの7人が「オリジナル7」としての構成となる。場合によっては更にヒーローが加わる。もうお祭り騒ぎだな。
忘れてならないのは、スーパーヴィランの存在である。特にジョーカーやハーレイ・クインは主役としても魅力的。
スーサイド・スクワッドなど。わたしは、ハーレイ・クインのファン。ワンダーウーマンも素敵だけど(笑。

アベンジャーズは、アイアンマンとソーとキャプテン・アメリカの3人が中核であり、スパイダーマンやハルクなどがそれに加わる。
もうアベンジャーズで4作ある。そちらの活躍の方が人気は高いか。
つまりオールスター映画では、アベンジャーズ(マーベル)の方がメジャーで、スーパーヴィラン映画ではDCのスーサイド・スクワッドなどが弾けている状況か。
そう言えば、自分がそのヒーローだぞと公表しているのは、アベンジャーズ側か。アイアンマンとか。
スーパーマンは眼鏡とスーツがオシャレなクラーク・ケントとして平日は過ごしている(スーツを脱いでそのまま飛んでゆくところが格好良い)。結局、わたしはほとんどアメコミの知識は無い。ただ、この手の映画は好きだ。

Justice League004

さて、この噺は死んだスーパーマンを「箱」の力で蘇らせて、ジャスティス・リーグ として力を結集しステッペンウルフをやっつけるというもの。ステッペンウルフとはかつて地球に置き忘れた「マザーボックス」を取り戻しに来た悪者だという。
この「マザーボックス」があれば、スーパーマンが生き返るというので、先ずはジャスティス・リーグがそれを使う。
蘇ったスーパーマンはDC仲間のヒーローたちが敵に見えたみたいで、激しく突っかかって来る。
しかし恋人はちゃんと認識する。育てのママもしっかり分かる。
そこから記憶が戻ったみたい。
ちゃんと闘いの場に参戦して来る。こうでなくちゃ、というタイミングで。
やはりヒーローのなかのヒーローなのね。
ステッペンウルフは「箱」に勝手に触るんじゃない、と怒りまくる。

Justice League005

わたしは、フラッシュというキャラが面白かった。スーパーマンと競争して互角なのだ。
見た目がとっても素早そうなところが、絵的にもともかく楽しい。まさにフラッシュだねえ。軽めなにいちゃんというところも。
それからサイボーグ、メカ的にキラキラしていて良い。
サイボーグ009を彷彿させるキャラで親近感?がある。
メカ~システムにとても詳しそうで頼りになるが、ちょっと弱そうだった。
一番タフなのはワンダーウーマンかな。
いくらハードに闘っても傷もなければ、メイクも乱れない。終始爽やかでアッパレである。

Justice League006

それに引き換えメインキャラのバットマンがやけに鈍重な感じで、ここで必殺技を繰り出すかと思ったところで何も出ない。
やり手の執事アルフレッドが色々とオペレートしてくれてるはずなのに、技が乏し過ぎる。
もうちょっとおおっと思わせる奥義を見せて欲しかった。
ともかく重い印象だけが残ったのだが。

それを謂ったら、アクアマンも今一つ。
顔だけやたら強そうで、圧倒的なパワーを期待してしまうが、その場は設定されていなかった。
皆、それぞれ持ち味は分かり、強さも演出はされているのだが、超人なのだから、凄まじいものが見たい。特異なものを感じたいのだ。
どんなに闘っても綺麗なままのワンダーウーマンが最もワンダーに思えた。

ステッペンウルフはあれまあ、手下の蟲にやられるという呆気ない最期であった。ホントかよと思った。

Justice League007

「希望は車のキーのようだ」車を処分してしまったわたしには、何か虚しい。

実娘の自殺で、監督のザック・スナイダーと彼の妻でプロデューサーのデボラ・スナイダーが途中降板となる。
ショッキングな耐え難い噺だ。
そして『アベンジャーズ』の監督ジョス・ウェドンがその後を継ぎ完成させたという背景を知り驚く。
つまり、DCだかマーベルだか分らぬ作品となったのかしら。両方のいいとこどりなら良いが。
わたしが両方の作風に疎いので、何とも言えない。
もうちょっと弾けて欲しかったが、そこそこ面白かった。
監督夫妻には、お気の毒としか言いようがない。



AmazonPrimeにて








プチ温泉芸者

puchi002.jpeg


2000

遊方仁 監督
田村みつる 脚本


牛川とこ
近藤和美
相馬茜
丘みどり
波多江清
井上真凰
松永九仁彦


時代を感じる内容であったが2000年。
年代物と言う程でも.ない。
画質はよくない。VHSビデオか、という感じ。でも面白い。

puchi001.jpg

何でも3大レースクイーンの組んだ「デリシャスカプリシャス」というトリオが主演のアイドル映画だそうだ。
(何も知らず軽そうなので観てみたのだが)。
結構面白かった。持ち歌があるようで、それを宿泊客の前で3回くらい唄っていた。
気晴らしにはなる。
とても息苦しいときに観るにはよいかも知れない。

puchi003.jpg

噺はバブルが弾けて不景気の波が老舗温泉旅館にも押し寄せて来て、女将であるおばあちゃんが困っている時に尋ねて来た孫が街道で拾った女の子~即席のお友達と奮闘し「カッパ温泉」を守るというもの。途中から観光協会の娘も彼女らに共感しトリオで頑張る。
レースクイーンのいで立ちで駅前で呼び込みをし、客の前では「プチ温泉芸者」となって楽しませ、客を対地上げ屋との闘いで見方に付けてゆく。
しかもその「カッパ温泉」を定宿にしている推挙な爺さんがホテル業界の大物だということが最後に分かり地上げ屋やリゾート開発会社の社長を一喝して黙らせる。
なんだよ最後に出て来ていいカッコしての定番パタン。水戸黄門か、みたいな。

puchi004.jpg

地上げ屋の元暴力団組長で今は何とか興行を仕切っているオヤジは、娘が観光協会に勤めていて「カッパ温泉」を守るレースクイーントリオの一人。娘とは対立関係にある。
しかしオヤジは愛人を旅館に客として忍び込ませ、帳簿を盗ませたり情報を収集するスパイとして動かしている。
この旅館を更地にして巨大リゾートホテルの駐車場にしたあかつきには、彼女に店を持たせるという約束だ。
もうこの手のフォーマットそのものみたいな。
更に孫娘と友達になった娘とリゾート開発会社の社員は元恋人関係で、この旅館でばったり会ってびっくり。
最終的には、この旅館を共に守ることで共闘し、恋人関係が戻るというもの。
もう予定調和の何連発か?

puchi005.jpg

色々途中で悩んだりビール飲んで愚痴ったりするが、全ては行くべきところに収まる。
とても安定しており、まったく心配なく観られるもの。
しかし時として、これが肝心なのだ。
色々と厄介な事案を抱えてどうにもならないような時、予定調和は心が少しだけ休まる。
単なる現実逃避ではないか、と糾弾されそうだが、実は先に見たアメリカの重苦しいオカルトサスペンスドラマで気が滅入ってしまい、こちらにスイッチしたのだ。妙な予言と殺人と悪夢と幻覚と何かに支配された幼い息子とか、、、現実の重みに更に重しを乗せられる感覚である。たまったもんじゃない。
ともかく、重苦しい変な幻覚と悪夢で押して来る映画はご免だ。実は内容もないことが多い。

puchi008.jpg

トリオだけでなく、スパイとして送り込まれた2人の女性客もレースクイーンではないかしら。
皆、綺麗なお姉さんで、すんなり観ることが出来た。
しかも噺もすんなり予定調和。
いう事なし。ストレスなし。
これが大事。
暫く、これみよがし映画は避けて、こういう感じのものばかり観たい。

puchi007.jpg

演技についてはギリギリアウトという感じ。
周りのベテラン俳優が支えていたというか。





AmazonPrimeにて











トラ、パトロールから戻る

tora100.jpg


今回はこれまでで一番長期にわたる5日間パトロールに出ていたトラが帰還した。
(最近は、「雲黒斎」とも呼ばれるようになったが)。
「お前なにやってたんだよ」と謂うところであるが、まずは基本総合栄養食と水をしっかり摂らせその後、ゼリー仕立てのプリプリおやつで一息ついたところで、お医者用の籠に入れて風呂場に連れて行きしっかりとシャワーを浴びせた。
障った感じとても汚れていたのだ。

還って来るなり何すんだという勢いであちこち逃げ回るが、観念して隅っこで固まったところを集中してシャワーを浴びせ石鹸スポンジで優し目にゴシゴシして流す。
また籠に入れてケージの外からドライヤーでもかけるかと思っていたがもう籠には入らない。仕方ないので逃げ出したところを押さえてタオルで拭いたが、そこそこで断念。
まあこの気候だし放っておけば乾くか、、、で終わり。

こちらから撫でられたりは好きではないのに、向こうからはしょっちゅう鳴いてきたり体や頭や尻尾を擦りつけてくる。
おやつをねだるのだが、以前ほどがつがつ食べない。
ともかく自分主体で何やら遊びたいのだ。
そういう場を求めているのだ。


昨日の夕方、今日のブログに書こうかと思い、「脂肪の塊」というのを観てみたのだが、噺にならない。
丁度そこで頻繁に流れるストリングス調のチープなBGMテーマがあるがそれに象徴される詰まらぬ内容であった。
出口なく耐え難い泥沼に嵌って藻掻く男女の様子は見て取れるが、それで何なのか、どうなるのか、である。
そんなもの自体、見たくもない。

出口の見えない停滞感に次第に感覚がマヒして来る煮詰まった日常というのはある。
猫だってそれには耐え切れなくなる。
外の状況を確認しようとしてもおかしくはない。

しかし外もまた内なのだ。
「風景はコード化されていた」(J・G・バラード)

やはりとことん対峙するしかない。
罅割れを見つけることが出来るかも知れぬ。


何にも動じない強い意志~念をもつこと。






”Bon voyage.”

検索フォーム
ブロとも申請フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

SF PickUp
ブレード・ランナー ファイナルカット
ブレードランナー2049
メッセージ
インターステラー
第9地区
月に囚われた男 MOON
オブリビオン
コンタクト
オデッセイ
エイリアン
プロメテウス
エイリアン: コヴェナント
エクス・マキナ
クラウドアトラス
モンスターズ 地球外生命体
クロニクル
ガタカ GATTACA
チャッピー
パシフィック・リム
ザ・ミスト
オートマタ
スターシップ9
モーガン プロトタイプL-9
ロスト・エモーション
スローターハウス5
ザ・ドア 交差する世界
メランコリア
アルファヴィル
アンダー・ザ・スキン
不思議の国のアリス
イーオン・フラックス
サリュート7
アポロ13号
シルバー・グローブ/銀の惑星
イカリエ-XB1
アイアン・ジャイアント
アンドロメダ
地球の静止する日
地球が静止する日
宇宙戦争
トランス・ワールド
ロボット
ヴィデオドローム
イグジステンズ
マイノリティ・リポート
フローズン・タイム
マザーハウス 恐怖の使者
EVA
ベイマックス
ファースト・コンタクト
ファースト・マン
13F~サーティーン・フロア
あやつり糸の世界