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GOMA28

Author:GOMA28
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アヴちゃん先生とは?

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長女の勧めで「アヴちゃん先生」という人のビデオを見ることになる。
普段は大概次女からくる類の情報でありお勧めの形を取った強要であるが、今回は長女なのでより急ぐこととなった(恐。
彼女、気が短いので(娘の言いなりになっている親はうちもそうだ。取り合えず首チョンパまではズレ込まないようにしたい)。

「アヴちゃん先生」のアーティスト育成教室(オーディション)らしい?「女王蜂」というロックバンドのヴォーカリストだそうだ。
大変洗練された中性的ヴィジュアルの人である。
わたしは邦楽の方はからきしなのだが、業界のカリスマ的存在とのこと。
テーマは、「オルタナティヴ歌謡・舞踊集団」を作るというもの、、、。
「裏島音楽学園」に16人の生徒(14歳から22歳)が選ばれ入学するが、課題ごとに選別されてゆく(つまり数が見る見る減ってゆく)。
更に、途中から別コースで育成された特待生が3人編入して来て異彩を放つと謂う何とも非情でダイナミックな構図。
この年齢での過酷な真剣勝負を見るのは正直、気が重いのだが。

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オルタナティヴ・ロック(ミュージック)は、わたしにとってはヴェルヴェット・アンダーグラウンドに始まる。
始祖みたいなもので、だれもが言っているパブリック・イメージ・リミテッド、ポップ・グループ、キャバレ・ヴォルテールらで火が付く?
衝撃作はブライアン・イーノプロジュースによる「ノーニューヨーク」か。
この辺は何かにつけて取り上げてきたのでここでは特に触れない。
ともかく、商業ロックと決別した自分たちの現実に真摯に向かい合った音楽である。
何にも影響されない諂わない強度を持つ。
そして常に実験的な要素・姿勢を崩さない、その意味でプログレッシブである。
わたしにとってはその信頼性(矜持)を持つ音楽であることがオルタナティヴ・ミュージックであった。

そんな目線で見てみることに、、、。

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全編(1~15話)、シビアな試練と試験が続くのだった。
こりゃ大変だねえと思ってみていたが、歌や踊りの課題を精いっぱいのパフォーマンスで熟してゆく姿には結構感動するものであった。学業やりながらのレッスンでもある。最もキツイ部活よりも大変なことも分かる。特に地方から新幹線登校の生徒など。
グループでの発表ともなると自己解体も迫られる姿にはもうハラハラする。
そして彼らの個々のファッションセンスは大したもの。

なのだが、140文字以内で詩を書く課題には呆れた。
文字数無視、内容が単なるお手紙レベル。
先生としては、少ない言葉でどれだけの表現が出来るか、歌詞を作る資質を見たかったのではないか、と思われるのだが、、、。
散文詩でよいと思うが、受け取った人が自分に引き付けて何かの思いを膨らめたり深く考えたり出来る契機となる必要もあろうかと。少なくとも多義的に受け取れる表現であるべきだ。意味が平易に伝わる程度の伝言で終わってよいはずはない。
ちょっと舐めてるのではとがっかりした。認められたものは、自分自身を鼓舞するものと母の応援に感謝するもので、言葉に詩的な厚みと力を感じさせるものではあったが、、、。表現者は言語感覚が基本だと思う(絵描きであっても勿論そうだ)。

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またグループでのパフォーマンステストにおいて、アヴちゃん先生の作詞・作曲による曲を三組に分かれてそのパフォーマンスを競う課題が課せられる。なるほどと思うサウンドに絶妙の振り付けであった。
その際に、全体としてのアーティステックで優れたシンクロを重視するか、メンバーの個人技・個性を重視するかでもめるところが出てくる。
これは悩ましいところと受け取れもするが、専門の振付師がバッチリ型を決めているのだ。まずはそれを完璧に熟した上での個ならではの表現の域が見えてくるのではないか。そこに行く手前での個人重視とは、単に仕上がらなかったどまりにしか映らないのでは。

これは甘さ、いや甘えであろう。技術の習得と自己表現が上手く嚙み合って上達すれば言うことなしだが、その途上に妙な又は過剰な自己実現欲が孕むと、歪な自己承認欲求ばかりの際立つ結果を招き易いと思う。
才覚のある人々が集まっているには違いないが、詩のところでも窺える、甘い解釈が気になった。認識の幼さか。

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それで授業ごとにふるいに掛けられ脱落者を出す。これは忍びないが表現者の世界である。こうした世界をこの先、生き抜いてゆくのだということを知らしめるやむを得ない手段でもあろう。
だがアヴちゃん先生の観点と判断は的確なものだ。

ただ、オルタナティヴ・ロックは、商業的成功や人気を第一義的に置いてはおらず、飽くまでも確固たる自分の思想~問題意識に対し忠実に生きることをコアにしている。そこに本質力があれば人はついてくるという姿勢だ。
(これはある程度、人として熟して来てからのベクトルの問題かもしれぬが)。
先生の指導はまずは業界を勝ち抜き人を引き寄せる魅力を目覚めさせることにあろう。
矛盾せずそれは繋がってゆくものと思うのだが(わたしとこの先生の捉え方が違うかも知れぬが)。
確かにミュージカル試験の後、Aグループのキャプテンに全体の中での順位をつけさせたり、結構キツイことを強要してくる。
集団内で切磋琢磨するということは相互評価も意識せずとも絶えずしてゆくのは不可避に思える。
この先生は悉く現状と自分の置かれた立場を意識化させ自覚を促すことを心掛けているようだ。
ショービジネス界で生きる基礎力がまずは肝心なのだ。きっと。

それから切羽詰まった時点でのコミュニケーションの努力の重要さである。
グループで動く際の前提となろう。
ディスコミュニケーションとか言って、したり顔ではいられない窮地がある。ここにちょっとした勇気と真の努力の余地があろう。
ここで一歩を踏み出せるか否かで状況は全く異なって来る。
変えるしかないのなら踏み出すしかない。暗闇でもジャンプするのみ。
わたし自身に言い聞かせていることでもある(家も同様である(笑)。

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そして才能が秀でている者、これまでの蓄積が豊富な者、リーダー格の頼りにされる者が次々に追いつめられてゆく。
ここが凄いところ。誰もが現状維持は許されない。安定したポジションなどない。化けることの出来ない者は振り落とされる。
特にグループリーダーになど抜擢されるとえらい目に遭う。ここはとってもよくわかるところ。
(組織・権力論の入って来る泥沼だ。どんな規模であっても)。
そもそもこうしたグループ、いや芸能界自体が生成変化し続ける有機体であろうし。
この学園も絶えざる異化を突き付けられ要求される動的構造をシュミレートしている。
この先生主導でやってる仕組みならやはりカリスマだ。
しかも課題曲としみじみ歌う校歌まで先生自前の曲というのが強み。
この権威は教育にとって大変有効に機能する。
集団のメリットが最大限に生かされるのだ。
相互作用が活性し自己解体と感情の解放が加速する。
密度を高められる。
強度が高められる。

「怒りを開放せよ!」この言葉が一番、響く。
わたしもこの凄まじい怒りを溜め込んだままではいられない。
この怒りを何兆倍のエネルギーとして叩きつけてやらねばならない。
それはともかく、、、強力な「オルタナティヴ歌謡・舞踊集団」になってもらいたい。


見ているこちらも充分刺激を受けた。
先生が生徒に向け「地獄へようこそ」と入学時に言っていたが、、、
こちらも一話から十五話まで、このスペックを一度に観るのは流石に地獄だった(笑。
残った生徒の解放度はどれほどのものか。もう表情が違う。
スッキリと化けていた。

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生徒は最終的に7人に絞られ学園を卒業し、「竜宮城」というグループでデビューとなった。
プロジュースはアヴちゃんである。

途中で去った生徒も二人別のプロジェクトでデビューを果たす。
他の人も是非、自分の道を見つけてもらいたいものだ。
ホントにそう願う。



YouTubeにて






徹底検証!世界で起こった奇妙な現象 Ⅱ

Alien Sound001

StrangeWorld
2016
アメリカ

エピソード2 - エイリアン・サウンド


ここでも調査ジャーナリストのアレックス・ハナフォードのフットワークは軽い。
SNSを利用するのは定石だが、新聞も上手く利用している。
やりがいを感じていそうで楽しそうで羨ましい(笑。

今回の調査は、”音”である。
胸や歯にズンズン響く轟音、現実とは思えぬ不気味な音で目覚めた人の報告から始まる。

音は空から来た。
出所は掴めないことから不安が募る、というもの。

空から何かが落ちてくるような恐怖。それは1分半ほど続いたという。
音が余りに不気味であったことから日が経ってもよく覚えてるそうだ。
しかし音の表現は難しい。
その人の感覚は意識(世界観)そして記憶・経験が絡む。心情が反映されもする為伝えるには、録音したモノを聴いて貰うしかない。
それを痛感する。
但し、多くの人がその音を聴き不安を覚えている事。
しかしその近傍の誰もが聴いているのではなく、聴こえなかった人も少なくない点。
どう解明するかである。

まずは、憶測が幾つも出て来る。
アラスカの政府の試験場からの音だ~陰謀説。
宇宙人の仕業だ~何だか分からず不安だと必ず出る。

アレックスは、大きな音であることからかなりの人が聴いているはずとしてWeb上を探ってみる。
報告が音データ付きでかなり上がっていた。
今は何かあれば直ぐにSNSに上げる習慣が出来ている為、証言資料集めには困らない。

何例にも当たっているうちに、彼はその多くが2012/1/22の夜に集中していることに気付く。
場所は、ノースバトルフィールド。
寄せられた報告のひとつに鉄道が近いことを知り、まずはその検証に当たる。
しかし重低音には近いとこもあるが、空から来る音ではないし、報告のあった時間帯には列車の運行はなかった。
大変早い段階で没となる。

報告者により不快な重低音の継続時間が異なった。
20分続いたという女性は、近くで稼働する除雪機の音かも知れないという感想を伝える。
直ぐに市議会に聞きただすが、夜の除雪作業は行っていないという返答であった。
その日の気温は-30℃でありとりわけ寒かったがその影響も考慮に入れることに。
(カナダの平原である。飛んでもなく寒そう)。

Alien Sound002

新聞にも記事を載せると直ぐに是非逢って話したいという人が現れる。かなり新聞も有効なメディアなのだ。
重低音の不気味さについては同じ感想であったが、色々と話すうちに、飛行機の衝撃波ではないか、という推測が出て来る。
しかし音の継続する時間がそぐわない。上から聴こえても一瞬のことだ。それにジェット機ならわれわれはそれと分かるはず。

自然現象からアプローチしてみる。
Web上を探ると地震との関係が疑われた。
浅い地震が4日ほど続き、低音を発生させていたのだ。
地震の研究者を訪ねるが、、、
しかしノースバトルフィールドは本来、プレートの真ん中にあり地震の回数はかなり少ない。
音の発生件数を遥かに下回る。
対応関係は全く認められなかった。
そこで、電磁波を疑う。
サスカチュアンのオーロラの現象に目を付ける。
その専門家を訪ねる。
彼はオーロラの電磁波を音に変換するソフトで、不気味なサウンドを聴かせてくれたが、あくまでオーロラそのものから発せられる音ではないことを念を押す。
しかし科学者は自分の専門外の件であっても必ずその問題に解決に役立つヒントを与えてくれる。
リレーみたいな感じである(そこが流石)。
本物の音は、という事になると、再び重機に差し戻されることに。

音響学の教授に当たり、録音を聴いて貰うと、気温の逆転が原因であるとの返答。
一般に気温は地上より上空の方が低い。
その場合、空気は次第に混じり合い一定の温度に落ち着くものだが、地上と上空の気温の逆転が起こると、空気は混ざらず上空に固まる暖かい空気層に対して音が曲がって歪む現象が生じる。しかも集束して増幅した音で歪む。
サスカチュアンの平原は音を遮る障害物もなく、かなり遠方まで伝播する。
その間、高い周波数の音は空気に吸収され低い周波数の重低音が届く。
歪んだ悪魔の音が数百キロ先から上から注いでくることに。
同じ市街地内という発想では原因は掴めなかったはずだ。
しかしそれに直撃される人と射程に入らぬ人がいて聴こえたり聴こえなかったりするという。その状況も証明できる。
犯人は遠方で稼働していたグレーダという重機と特定された。ブレードの調整工事をしていたらしい。

Alien Sound003

教授は、音の物理を知っていればそれだけの事だというが、、、
不気味で不安を煽る音であることには変わりない。
自然現象の噺であった。

地味ではあるが面白い。
この件は日本のキッズ向きではないが。
寒くて大変というのが羨ましい気もした。




AmazonPrimeにて




徹底検証!世界で起こった奇妙な現象

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StrangeWorld
2016
アメリカ

エピソード1 - 巨大なヒョウ


調査ジャーナリストのアレックス・ハナフォードが、自然現象でちょっと不思議で危ないものをアメリカ全土を駆け回り調査するというもの。世界中のと言っているが、アメリカ国内が基本である。

今日は、巨大なヒョウについての調査報告。
なかなか渋くて良かった。
夏休みの自由研究をこれからやるぞというキッズには持って来い、というもの。
是非、キッズには見て貰いたい。

巨大なヒョウがあちこちに降って来て、屋根や車や大事な庭を台無しにする現象を取り上げる。
(人の死亡事故もあったみたい)。
アメリカンフットボール大のヒョウが何故降って来るのか?
危ないじゃないか!
というところから始まる。
確かに危険だ。
遭遇した人々は皆、直撃したら死んでたわと口々に述べる。

調査ジャーナリストという職業も面白い。
きっと夏休みの自由研究の大好きキッズが長じてなったに違いない。

まず実際の目撃者に会う。
目撃証言や事故当時の損壊状況や氷の写真・動画などの証拠物件を片っ端収拾する。
特に触った当事者から普通の氷と違う感触を聞き出す。痛い程冷たい。放っておいてもなかなか溶けない、衝撃音が半端ではない、ともかくビックリした等々。
そしてそれが降って来る時は、決まって雲などない晴天の日であること。気温も27℃あったという。
(通常のヒョウは雷雲のある時に降る)。
実際にアレックスがその日の天候について気象局に確認すると証言者の謂う通りであった。
つまり目撃者~当事者たちが言う巨大なヒョウとは、通常のヒョウではない、巨大な氷の落下物~爆弾なのだ。
(デカいものは200㎏あったそうだ。かなりの被害を出したようだ。爆音も凄いはず)。
宇宙から降って来たのよというご婦人もいた。
証言を集めるうちに同様の現象が世界中で報告されていることを知る。それもかなり昔からあったものだ。

アレックスは、目撃者の証言と彼らからの意見から仮説を立てる。
一つは飛行機からの落下物説。トイレからのもの。翼に付着した氷等々。
通常のヒョウの出来る気象条件ではない状況で出来た氷。
気象現象とそれとは関係ない事故からの両面から確認することになる。

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アレックスは、まず飛行機から住宅街に落下物を落とす可能性について専門家に聞く。
まずトイレから落ちることは最近の飛行機からは構造上あり得ない。もし何らかの事故で落下したとしてもそれは青いはず。
機体に付着する氷は霧氷の形状となり、こんな武骨な形はとらないことを説明される。
かなりの上空なら巨大なヒョウが対流の関係で形成される可能性は高いよ、という意見も聴かせてくれる。

早速気象学者にアポを取り、写真と動画と目撃証言をふまえ専門家からの見解を聴くことに。
飛行機で移動中にググると1700年代からの記録に巨大な氷爆弾が報告されている事を知る。
飛行機のない時代からこの現象は世界各地で起きていることを確認。

まずヒョウについては、雨粒が上空の雲に運ばれ、氷点下の大気に達した時点で氷粒になる。激しい上昇気流と下降気流により氷同志の結合が起き、上昇気流で支えきれない質量で落下したモノがそれである。
ヒョウが決まって層をなして形成されているのは、昇ったり下ったりの過程で形成されていった証拠であると。
大きなヒョウは30回くらいの上下動があったことを層が示しているのだ。
しかし専門家は、今回の氷爆弾は断じてヒョウではないと答える。雷雲のない天候でヒョウは生じない。
晴れた空では、氷の形成は不可能だという。

ついにアレックスは、例のご婦人の仮設を確かめるべく、地質学者の下へ。
丁度よいタイミングでつい最近天井を突き破ってソレに爆撃された人をウェブ上で知り、彼がサンプルを大事に保管していることが確認できる。
その極端に冷たく重い破片を分けてもらい、彼は博士の研究室に直行する。
ソレが宇宙から飛来する件について聴いてみると、彗星からの氷の塊なんてしょっちゅうだよと来る。
しかしPHを調べてみると中性なのだ。純水に近い。彗星氷ならチリや岩石が含まれ酸性である。
ちょいと時間をかけて調べてみるね、ということで2日間調べて貰うと、これは大気層の上層の水であり、激しい対流の中で上下動を繰り返して巨大化した氷の塊である。
それが上層の時速800㎞のジェット気流で何千キロも飛ばされて来た結果のものだと結論付けられた。

全てのこの現象がそれに収まるかどうかはともかく、アレックスの調査した現象はこの説が最も信憑性は高いといえよう。

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夏休みの自由研究には持って来いである。



AmazonPrimeにて





双葉荘の友人

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2016

平松恵美子 監督
川崎クニハル 脚本

市原隼人、、、川村正治(ライター)
臼田あさ美、、、川村美江(妻、編集者)
中村倫也、、、倉田誠司(画家)
陽月華、、、八井沙季(倉田の妻)
中嶋朋子、、、美江の先輩編集者
中原丈雄、、、寺田幸吉(大家)
吉行和子、、、寺田直子(寺田の妻)


これは酷い。全く受け付けないタイプの映画。白痴 的。
臼田あさ美だけ良かった。この人がいなければ、10分はもたない。

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2000年3月の噺。
川村正治と川村美江の夫婦が今より良いアパートを探して「双葉荘」を訪れる。
物件自体は気に入り、夫婦は住むことに決めるが、大家の態度が高圧的で癖があり気に食わない。
幸い隣りの住人~奥さんが穏やかで気さくな人の為、直ぐに打ち解け、良い関係を結ぶ。
この奥さん、何かと美味しい料理をお裾分けと称し運んでくれるようになる。
夫は遠方に単身赴任とのことであった。
夫婦は隣の奥さんに甘え度々手料理を頂くようになる。

夫は舞台監督であったが、物書き専門でやって行きたい希望があり会社を辞め、妻の伝手で彼女の会社で出している雑誌のコラムを担当することに。妻は副編集長に抜擢され仕事は激務になる。
妻にストレスが一気にかかる状況となるが、この時同時に夫は部屋で物腰の柔らかな男の幽霊に遭遇する。
この幽霊に気を取られ妻との関係がギクシャクし、家庭不和を呼ぶ。
当然自分が多忙を極める時期に、自分の噺に上の空でお化けの噺をする夫には呆れる。

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この男性の幽霊は画家であり、正治がワープロを打っている時などにも現れ、絵を描いている。
同一空間に画家のエリア~近傍はセピアで正治は今現在のカラーで描かれ、音声が伝わらない為、筆談で意思疎通を図ることに。
幽霊は倉田誠司と名乗り、1970年代にいることを告げる。
画家は絵が売れず部屋代を滞納し妻に苦労を掛けていることを告白すると、正治も同じ立場であることを明かす。
ふたりはお互いに筆談で悩みを打ち明け励まし合うなどして親交を深めてゆく。

相変わらず隣の奥さんは美味しい手料理を持って来てくれ、3人で和やかに盛り上がる良い時間を共にする。
だが常にこの奥さんは淋しそうである。ふたりは夫が単身赴任であるからだと認識しているが。
基本、妻の職場でのストレスフルな状況と夫ののんびり頼まれた文を書きお化けと関わっている環境の差はハッキリ分かり、ここに生じる互いの葛藤はリアルで良い。
だが、この物語の肝となる、お化けの齎すドラマであるが、このお化けとの関係性も含め、何とも見ていられない。
奥さんは最初からお化けだと分るし、あの画家が旦那だろうことも最初からピンとくる。
ほぼ推理という範疇にない。

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大体、この噺端から不動産屋はお宅が返事しなければ直ぐに誰かが入ってしまいますよとか大嘘を言って強引に入れてしまった部屋である。お化けが出たところでかなり調べまくるはず。まして物書きである。あののんびりした関りでは妻だって納得すまい。
それ以前に、よく日本昔話等で狸に化かされ宴会に招かれたお百姓とかが飛んでもない泥饅頭とかを旨い旨いと食って酷い目に遭っているが、この夫婦何遍あの奥さんの幽霊からご馳走してもらったか。大丈夫なのか?毒の心配はなくとも素材とか気になるけど。
何より彼女の訴えたい事~心情が見えてこない。結局自分は自殺ではなく寺田に殺されたことを、この夫婦をバイアスして訴えたかったのではないのか。何のための接近であったのか今一つはっきりしてこない。
そもそも旦那と奥さんが別々の場所からこの夫婦に関わる必然性も分からないし、同じあの世にいるならそこで直接伝えられないのかと思ってしまう。
その辺の事情がよく分からないので、何の為こんなことしているのかという疑問ばかりが膨らみ、臼田あさ美はやっぱり素敵だなあとかその辺の感想しか湧かなくなる(苦。
そのせいで正治と美江の間に亀裂が入り夫婦の危機に見舞われることになったではないの。

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お昼の再現フィルムでもあるまいし、奥さんが大家のオヤジに襲われ首を絞め殺された後で首つり自殺に偽装された幻を観るというのは、よくやる超能力者の透視能力とかで観るやつだが、このご主人は元々そういう人なのか、とも思うが奥さんも端から幽霊のお隣さんとお食事会を何度も愉しんでいる。相手の狙いが何であるのか?
その幻視を根拠として大家に皮肉交じりにその一件を伝えてアパートを出ることにするとその夜、隣の奥さんがたいそう感謝してその気持ちを伝えに来る。
ばったり出会った大家から譲り受けたあの画家の描いた肖像画がまさに隣の奥さんであった事で妻の誤解も解け、元の鞘に収まるくらいならまだしも、実家で正治が子供の頃、モデルとなって描いて貰った絵がその画家であったことを母から知らされる。その絵を調べると裏に「双葉荘の友人」と記してあった。つまり彼からも礼が来た。というダメ押しであったが無理があり過ぎる。そもそも、時間をどう捉えての事なのか?
再現フィルムを見たことで、正治は画家に真実を伝えている。しかし実際に大家にはかすりもせず自殺で処理されたまま。
つまりそれはあの時間系と繋がっているのではなく、ただの現在の幻に過ぎない。
正治の幼い頃に絵を描いてあげてその裏に礼を書き、今現在の正治に見せる。これに何の意味があるのか。
これ時間ではなく、単に時間を空間化して好き勝手に配置しているだけの究極のご都合主義であり意味不明のメッセージでもある。
噺が根本から破綻しまくっているのが問題なのだ。滅茶苦茶ではないか。いい加減にしろ!

こういうのだけは、ご免だ。
それから画家の描いた絵が酷すぎる。
妻の死後、パリで有名となった画家とは到底思えない下手さ加減。
これは美大の学生とかに描いて貰えば良かったものを。
(どういう形であの絵が映画に採用されたのか不思議。リアリティを大きく削ぐ)。



AmazonPrimeにて










スクールガール・コンプレックスー放送部篇ー

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2013

小沼雄一 監督
足立紳 脚本
青山裕企 原案

森川葵、、、新谷マナミ (放送部部長)
門脇麦、、、三塚チユキ (放送部)
近藤真彩、、、森野アイ (放送部)
吉倉あおい、、、小田カズミ (放送部)
今野鮎莉、、、西野マユ (放送部)
高井つき奈、、、村口アヤネ (放送部)
新木優子、、、江里口フタバ (三塚の友人、同学年)
寿美菜子、、、本西郁美 (部活顧問)


キャストは豪華。
放送部の顧問は声優として有名な寿美菜子女史。
森川葵、門脇麦、新木優子と主役をはる若手女優も揃っている。
今野鮎莉は日曜朝の戦隊ものヒロインをやっていた。

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青山裕企の『スクールガール・コンプレックス』という写真家から着想を得た映画らしい。
確かにそういった表現媒体からこうした日常が構想されてもよいと思う。
女子高生の日常風景から膨らんだ物語というものか。
森川葵と門脇麦のストイックなやりとりがなかなかのもの。セリフ少なめが良い雰囲気。
そこに近藤真彩の絡みが実に効果的。
窓からテラス側に貞子みたいな感じでふたりに介入するところなど秀逸。
芸達者なので惹きこまれる。

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この時期の女子の間に生まれる関係性の微妙さ不安定で不穏な雰囲気もよく出ていた。
マナミが密かにチユキに惹かれ、彼女の机の中にあったマスクを自らして風邪になるというのも何とも言えない。
保健室で寝ているとチユキが見舞いに来て喉風邪に効くというキャラメルを一箱くれる。
その後、ふたりは接近し親密さは増すが、チユキの抱えた問題や部活の関係もありすんなりとはいかない。
更に森野アイはマナミのことを小学校時代から好きであった。
しかし彼女は一歩引いてマナミのこころを優先し尊重する。
ホントにマナミが好きなのがよく分かるが、マナミのこころは、何かを抱えたアウトローのチユキにあった。
こうした縺れは普通にあるものだが、切ないしもどかしい、、、。

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同性愛的に相手を好きになり相手もそうした感情を持ち応えたいのだが、既に異性のどうにも断ち切れない関係も持ってしまっていた。この時間性の問題が、新谷マナミ と三塚チユキの間にあり、すんなりと上手く事は運ばない。
そして二人だけの間の事ならそれだけのものだが、ここでは芸術祭での部活発表にダイレクトに絡んで来る。
ここは周囲を混乱に陥れる波及効果も大きい。
何と部長のマナミは主役を最近入部してきたチユキに決めてしまった
チユキも期待に応えてやる気でいたが、周囲の部員は穏やかではなくあからさまに批判して来る部員もいた。
だがそこは、森野アイの一言で収まるが、ギリギリのバランスで発表当日を迎える。

う~ん、三塚チユキは女子高生でありながら、ヒモを抱えているというのも大変な事だ。
少し前までチユキのことが好きで必死に縋っていた江里口フタバも散々振り回され呆れて離れて行った。
そして今度は、マナミの晩であった。
しかしチユキってモテるのね。男運は思いっきり悪いが。

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終盤の締めである芸術祭における放送部の演目、太宰治の『女生徒』の朗読は如何なものか。
もう「女生徒」役選びからしてグチャグチャだし、結局チユキはヒモに車で連れて行かれ本番には来ないし、皆でやるという機転の利かせ方は良いが、最後に内容を自分たちの現状に引き付けて原文を滅茶苦茶に改変してしまい、、、発表として成り立つものか?
少なくとも彼女らを信じて任せた顧問は立つ瀬もないのでは、、、。確かに混乱していた。
この辺に来るまでは上手い流れだったのでとても惜しい。

放送部員が自然でリアリティと説得力ある演技であった。
近藤真彩演じる森野アイが特に良い感じ。
キャストはかなりの水準だと思うが、、、終盤は明らかに無理がある。
何であんな形に持って行ったのか、、、。
しかも発表があの形になりしこりを残したはずだが、その後すぐにスッキリ部活は立ち直っている。
3年生最後の発表であったのに。

チユキはマナミとの間に築いた関係性をどれ程のものと思っていたのか。
当日、余程のことがあったとしても主役をすっぽかすのはあり得ない。単なる悪者ではないか、、、。
この締め方は納得できない。

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最後の無理に劇的にしようとした展開は共感出来ないが、その手前までの彼女らの気持ち~精神状態の揺れ動きはよく分かった。あのまま変な展開にせず、繊細で静かなやりとりがそのまま発表の場の昇まりへと収斂していれば、なかなかの作品であったと思う。
ちょっとあの締めくくりは、無い。



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水の花

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WATER FLOWER
2006

木下雄介 監督

寺島咲、、、美奈子
小野ひまわり、、、優
田中哲司、、、美奈子の父
黒沢あすか、、、優の母
津田寛治、、、優の父


父親と娘の2人で暮らす家庭をよく映画で観るが、どんなものだろう。
思春期には娘はほとんど相談事は母にする。
実際、身体に関することは、母でないと分からないことが多い。


後半にかけてよく雨の降る静かに青く沈んだ映像であった。
2人の少女のひりつき葛藤する内面にこちらもいつしか共振している。

ここでも父は帰りも遅く、娘がかなり家のこともやることになる。
しかし父も頑張って娘のお弁当はしっかり作っている。
お互いに支え合い同志という感じか。

出て行った母は不倫で他の男性との間に子供を作り別の家庭を持っていた。
しかしまた近くのアパートに幼い娘と二人で引っ越して来て住んでいる。
相手と別れシングルマザーとして夜の仕事に就いているようであった。
幼い娘はバレエを習っていたが、その状況では、諦めねばならず、母が夜になるといない淋しい生活をしている。

美奈子は幼馴染からの情報で自分を捨てた母の今の住居を知った。
独り淋しく近くのゲーセンで遊ぶ幼い優に美奈子は接近する。
いとも簡単に優は美奈子になついてついて来るのだった。
全く警戒心もなく。

美奈子は仙台の祖父母の実家に「海を観よう」と優を連れてゆく。
その日の晩に娘のいなくなった父と母は警察に届けにゆくが、ふたりはそこで鉢合わせとなる。
母にかかってきた無言電話は美奈子であることが分かった(美奈子は優のポーチを探って電話番号を確認していた)。
駅の監視カメラなどから娘たちが一緒に行動していることが警察から知らされる。
仙台行きに乗ったことも分かった。

経済的な問題も小さくないが何より家に心配して世話を焼いてくれる肉親のいることが肝心なことだろう。
幼い身にとって。
古い既に祖父母も他界して空き家となった日本家屋に娘がふたりで暫くの時を過ごす。
優は美奈子にとり自分の家庭を解体し母を奪った象徴でもある。
だが、父の違う妹でもあり、時を共にし遊んでいると自ずと情も湧いて来るもの。アンビバレンツな気持ちを抱きつつこの逃避行が何であるか自分でも分からずにいた。

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ここで一番印象に残ったのが、美奈子の弾くピアノの調べに乗って庭で優の踊るバレエである。
ここだけ切り取って何度も観たい。
寂しさや物語の文脈を超えた表現として惹きこまれた。
(実際、物語を忘れてこのシーンに魅入ってしまったものだ)。
優がかくれんぼの時に押し入れで拾ったアルバムに自分の母と一緒に映る美奈子の写真を見つけ事情を幼いながらも悟るところも演技は今一つだが、ハラハラした(芦田愛菜とかなら圧巻の演技で迫るところだろうが(笑)。
そう、夜の浜辺で距離を置いて二人で花火をする場面もお互いの葛藤が繊細に窺えて秀逸であった。

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その後、ずっと雨は強く降り続ける。
この雨に自分のこころの中身も溢れ出るかのように泣き崩れる美奈子。
電話で元母に美奈子は連絡する。2人とも無事であることを。
しかし今回の件もあり、優が父に引取られることも知る。
結局、彼女らふたりとも母に捨てられたこととなった。

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優にそれを伝えるが、美奈子の意地悪だと彼女は受け容れない。
優は独りで警察に保護され、美奈子は雨の海辺の砂に出来た水溜りに自分の顔を映して何かを悟る。

行き場のない怒りや葛藤が常に寂しげで虚ろな雰囲気に呑み込まれる調べの曲を聴くような映画体験であった。



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事故物件2013号室

THE LANDLORD

THE LANDLORD
2017
アメリカ

ダニエル・リンゲイ 監督


モリー・マクック、、、アリサ(コメディアン)
ジャック・ターナー、、、オリバー(アリサの彼氏)
テッド・マッギンレー、、、ロバート(アパートの管理人)


アメリカのバーでよくやっているというスタンダップコメディのコメディアンのアリサ。
どうにも好きになれない横柄な芸風だが受けていた。
その観客であったオリバーが早速モーションかけて来る(お決まりパターン)。
どうにも安っぽい世界観。

ストーカーから逃げてLAに来たのだけれどモーテル住まいだと告げると、凄く良いアパート紹介するよと来た。
直ぐに信用する気には流石になれぬが、その日もストーカーからの連絡が来て不安と恐れからその彼に連絡してしまう。
確かにセキュリティー万全みたいなかなりのハイテクアパートなのだ(それ以上に管理人がハイテクで悪さをしているのだが)。
何ともありきたりなフォーマットで滑り出したな~と思いつつそのまま見てゆくと、全くそのまま流れてゆくサスペンス。
これこそ、基本条件~要素を入れればかなり面白い脚本をChatGPTが10秒くらいで出力してくれるぞ。
この手の映画はもうそれに任せればよい。プロンプトの形を定め使える形にすれば、、、もうしているか、恐らく(笑。

事故物件2013号室とかいう邦題だが、前の女性がバスタブで自殺を図ったとは言え、良いアパートでお安くしてくれるので気にせず借りたら、、、
相変わらずストーカーからのメールは来るし、新しい住居も何故かバレてるみたいだし、管理人は”Apple Vision Pro”みたいな先進的なヘッドセットを付けて各部屋のカメラで撮った映像(マルチカメラ映像)を保存再生出来る優れもので、アパート住人の秘密情報を全て押さえてしまっている。どういう管理体制だ。

ただ、こういった噺にどれだけ面白味が感じられるかが問題。
ちょっと目先を変えてみたところでありきたりサスペンスに違いない。
途中でリタイヤさせない為には、魅力的なキャストを使うとか、そういった面で引っ張るしかあるまい。
その意味で、かなり残念な結果であった。
サイコキラーの管理人ロバートは、及第点であるが、主演の2人には魅力を覚えない。
ハイテクガジェットで古さを感じさせないように頑張ってみたが、道具立てで何とかなるレベルではない陳腐さが漂い続ける。

噺そのものも、生成AIにお願いしなかった為か、不自然なところが目立つ。そして平板過ぎる。
ストーカーが全てお見通しみたいな設定なのだが、影も形も微塵も見せぬ為、実体が全く感じられないのだ。(確かにその女は途中で出てはいるが、それとしての影も何も纏っていない。その意味で全くそのコマは機能しない)。
不安や恐怖を漂わせる質量が無い為、怯える演技をしていても白けるばかり。少しは向うの動きなども見せてはどうか。
最後の最後に出て来たストーカー彼女が、ヒロインに対する何のエピソードも伏線もない形でジャ~ンと出て来ても、こちらも彼女と一緒にあんた誰?と唖然とするだけで、ついにやって来たかみたいな恐怖を感じる流れにはならない。
単に間違って部屋に入って来たヒトみたいだった。
サイコおじさんが、ヘッドセットで角度を変えながらのマルチ映像を観ているが、カメラがどういう風に装着されているのかも見せないと、嘘くさいだけである(ここは肝心なところで、テクノロジーはディテールや配置関係などもしっかり見せないと説得力を欠く)。
何と言っても、失った娘の代わりを探していたのか、何なのかどうしたいのか、その辺の心情~狂気の内実がもう少し描かれなくては、このサイコおじさんのキャラも軽くて薄すぎる。
それを謂ったらオリバーの人物造形もブレブレでどういう奴なのかサッパリ分からん(これにはイラっとくるくらい)。
それ以外、くどくど細かいことを言ってもしょうがないが、ともかく噺を少しは多面的に描かないと深み~リアリティをもった流れが生まれない(それだけの問題ではないが)。

ヒロインは、ストーカーとサイコ管理人の双方から狙われるのだが、まずもってそのオーラがまるでない。
美人かどうかというもの以前に品が無い。皆、大味でいい加減。カメラワークにせよ何にせよ。
とても残念な作品と言うか、意味の薄い時間を過ごしてしまった(残。

ひと言、単に詰まらぬ映画であった(哀。
AmazonPrimeは、当たり外れも激しいので、その覚悟をしてポチっとね(笑。



見上げた空とマスク

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2020

藤井秀剛 監督・脚本・撮影・編集・製作
ピンク地底人3号 原作

種村江津子
望月智弥
坂井貴子
越智貴広
荒川真衣
田中大貴


また観てしまった~っ。呪われたのかも、、、
明日は、違う映画にするぞ、と誓うのだった。

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何やらこの監督作品の出演者は皆映画製作の専門スタッフでもあるとか。
役者というより映画のプロの集まりのようだ。
つまりその都度、この監督の作品に出る人をオーディションで選んで演じさせて撮って行くのではなく、ひとつのファミリーでいつものコンセプトの下で寄ってたかって作っているみたい。
怖い。ここからホラーが既に始まっていたのだ!

藤井秀剛チームを観るの、これで4作目となる。
順番に観てきているわけではないが、今のところ「狂覗」が一番共感するところが大きい。
しかしこれは妙にスッキリしていて、また良いのだ。

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東京がコロナパンデミックに対する対策の差で、完全に二極化してしまい、完全対策措置の施された富裕者地域とマスクなしに生活不可能な感染し放題の規制地区とに分断された。(自粛や制限の多い2020によくこの映画を作ったものだ。アッパレ)。
そんなときに、貧困地区の公園でブルーシートの掘っ建て小屋に住む恵美子と妹の礼子に一人息子の隼人の3人。
DV父親は、こうなる前に家を出ていた。

息子はいつまでも就職が決まらず、母と叔母は何をやっているのか、パートみたいなもので食いつないでいるようだが、生活は非常に逼迫している様子。
そこに何故だか富裕者層の娘がマスクもせずに感染地区にやって来てブルーシート宅に侵入。
隼人はイライラが募りマスクをやって追い帰そうとするが、親を困らせたいという娘は居座ろうとしていた。
母と叔母は何故かこのタイミングで、彼女らならではの癖で急場を凌ぐことにする。
以前、DV父親のいる頃も母はこの癖で生活を支えてもいた。万引き。

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息子には内緒であったが、彼はそれに気づいていた。
ホントに高い食材をかっさらって来てしまう。
息子はまた怒りまくる。微妙な娘はもう周囲からは彼女扱いされていた。
ストレスも募り、彼は無意識に母を(かつての父のように)殴ってしまう。
しかし飽くまでも自分ではなく、何者かに襲われたと思い込む。
この何とも言えない病的な父との同一視。アイデンティティの乖離。
何かといえば、ここから出て行くの一点張り。こんなクソみてえなところにはいられない、と。

登場人物の誰もが一癖二癖あるとは言え、、、何と言うか、この監督の他の作品からみるとやけに普通の映画だな、と妙に観易く感じて観ていたのだが、、、
そうでもなかった(笑。やはりね、、、。
この息子の隼人は時折、スマホにかかって来る父からの脅迫的な電話を幾度も受け取るが、切羽詰まったことで、それが自分の幻覚であることに気付く。
悉く自分の内面~無意識に抱いていることばが憎い父からの悪態という形で突き付けらていたのだ。
(勿論、初めは家出したクソ親父の未だに家族を追い詰める狂気の沙汰のように思って憤っていたのだが)。

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この常に怒りの込み上げてやまない自分の内なる声を聴く。
スマホが丁度よいガジェットの役目を果たしているではないか(兎角そういうものだ)。
「糞なのは、世の中か?ウイルスか?貧乏か?俺か?お前か?」
ちょっと待てよ、何処にいる?とスマホの画面をよく窺うと、何と遠方の地からかけていると思っていた父親の背景がブルーシートなのだ(そういえば、彼女のことも妙に分かっていたな、背後にチラッと見えたくらいで)。
そしてバットを握って既に近くにいるはずの父親を殴ろうとシートの中に入ると、ソレは父ではなくて自分なのだ、、、。

結局、自分をとことん慕ってくれる女の子によってギリギリの自己解体の局面を上手い具合に救われる。
何だかこの監督にしてはちょっと変なハッピーエンドとは謂わぬが、家族の解体が救われ、希望の見える終わり方なのだ。
彼女とはホントの恋人になっている。それはない。
何でこう収まるのか分からないのだが、、、。
(確かに彼女が出来れば肯定的になり自分を認め怒りも静まるというもの)。

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作風いやコンセプトを変えたのか、、、。
だがわたしは、こういうまだモヤモヤしてはいても何か視界が開けたみたいな終わり方は好きだ。
彼はここに留まることにする(彼女と)。



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超擬態人間

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Mimicry Freaks
2020

藤井秀剛 監督・脚本・撮影・編集
伊藤晴雨 原案
上田健二 音楽
ミヤ・サヴィーニ 特殊効果

杉山樹志、、、丸山風摩
望月智弥、、、佐竹徹
田中大貴、、、元川益暢
河野仁美、、、元川佐久羅
坂井貴子、、、新開真里
越智貴広、、、丸山英之
桂弘、、、光武蔵人
宮下純、、、永田絵麻
安井大貴、、、狂乱男


立て続けにこの監督の作品を観てしまったが、大変苦手な監督である。
ただ、怖いもの見たさでまた観てしまった(苦。

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伊藤晴雨の『怪談乳房榎図』にインスパイアされたという。
まあ、あの幽霊画ならこうなってもおかしくない。
藤井秀剛監督作品では3作目の鑑賞となった。
「半狂乱」2021→「狂覗」2017→「超擬態人間」2020の順番で観る事に。
「狂覗」のキャストがかなりここにも出ている、というよりダブっていないヒトの方が少ない。
こうした作品であるため、監督の意図をよく知った(分る)キャストで固められているのだろう(まさかファミリーを構成?)。
「狂覗」で目玉の作成~美術も受け持っていた女優の坂井貴子女史も(当然)出て、プロデューサーもしている。
とても良い女優さんだと思う。

Mimicry Freaks003

しっかし、いつも凄いもの作るねえ。
刺激の強さでは、この監督の右に出る人はいないのでは、、、。
ここでは噺そのもののえぐさに加えスプラッターもタップリあからさま。
まだ幼い子供の虐待から起こる怪奇な現象~事件を描いているような、、、テーマ性もキツイ。
(悪夢と現の綯交ぜとなったような、、、しかし現実に擬態したモノが惨殺を繰り返す)。
自分にとり驚異の存在に擬態というか変身してしまうみたい。
また、これは何かの研究機関が秘密裏に深く関わっているようで、謂わば人体実験と謂えるものでもあるようだ。

Mimicry Freaks002

尋常でない親子?の有様を描き出したかと思うと、山道(原発事故で通行止めの場所)にこともあろうに結婚式を控えたカップルとその新婦の父親がタクシーで乗り付ける。異質なグループが同じ場所に交錯することに。
父親は大企業の社長らしいのだが、何で娘の結婚式場にこんな場所を選ばせたのかその辺の不条理と不穏が最初から充満する。
タクシーもノアなのだが、、、このチグハグ感というかズレ又は不協和音がずっと続く。
何やら特異な式場パンフに惹かれてやって来たみたいである。これも奇妙。

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人里離れたというより放射能の汚染で危険地帯ではないのか。
そんなところでタクシーがエンスト?を起こして動かなくなり、運転手の女性は近くの人を読んで来るとか言って山中に消える。
社長一行は、やはり林の中にある廃屋みたいな家で休もうとする。何でこんな家に入って休憩など取る気になるなと神経を疑うが。
もう不条理劇のノリだ。
しかしホラーというより底なし沼に嵌る社長が女の死んだ臓腑~腸に縋って生還しようと試みるところはもうギャグでもある。
だがこの感覚、伊藤晴雨に充分繋がるところ、、、。
面白いねえ、この監督。
でも感覚的にわたしは無理。

Mimicry Freaks006

ともかく自分のテリトリーに嵌った者たちを執拗に追い惨殺を繰り返す。
スラッシャー・ホラーという類のものと言えようか。
ここにはテーマでもある子供の虐待から生じる擬態が連動して行く何とも言えないところ。
そもそも擬態とは、自らの身を天敵から守るためにその相手と同じ形体と動きまで似せるものだ。
(似せる相手が動物である場合、動きもそっくりでなければ意味がない)。
そして攻撃的擬態は相手を捕食する為に、それをおびき寄せる形態に成る。
ここでは、その擬態をする対象が変わって行く。つまり逃避し攻撃するターゲットが変わって行く。

「狂覗」を更に病理学的に歪めた底なしの狂乱映画であった。





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シン・仮面ライダー

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Shin Kamen Rider
2023

庵野秀明 監督・脚本
石ノ森章太郎 原作
岩崎琢 音楽

池松壮亮、、、本郷 猛(仮面ライダー・第1バッタオーグ)
浜辺美波、、、緑川 ルリ子(生体電算機)
柄本佑、、、一文字 隼人(仮面ライダー第2号・第2バッタオーグ)
西野七瀬、、、ヒロミ (ハチオーグ)
塚本晋也、、、緑川弘(ルリ子の父、SHOCKERの研究者)
手塚とおる、、、コウモリオーグ
松尾スズキ、、、SHOCKERの創設者
森山未來、、、緑川 イチロー(仮面ライダー第0号・チョウオーグ、ルリ子の兄)
本郷奏多、、、カマキリ・カメレオンオーグ
長澤まさみ、、、サソリオーグ
仲村トオル、、、本郷猛の父
市川実日子、、、緑川イチローの母
松坂桃李(声のみ)、、、第2世代外世界観測用自立型人工知能 ケイ(本郷とルリ子の監視役)
大森南朋(声のみ)、、、クモオーグ
斎藤工、、、情報機関の男、タキ
竹野内豊、、、政府の男、タチバナ


軌道の再調整を図る必要が生じた。
もう昨日のような訳の分からん映画を観てる場合ではない。

”SHOCKER”が、Sustainable Happiness Organization with Computational Knowledge Embedded Remodelingの頭文字をとったもの~略称だとは、知らんかった。ここで緑川 ルリ子に謂われるまでは。
赤いマフラーしている理由も初めて知った。
(正義のヒーローの象徴らしくサイボーグ009もそうであった。しかし後に黄色いマフラーに向うは変更となったが)。
余計なことだがルリ子は、気の強い綾波レイみたいだ(笑。
突然、自分が飛んでもない力を得てしまった事実に戸惑いを隠せない本郷 猛と生みの親、緑川弘博士とその娘ルリ子との出会いから始まる。本郷はずっと敵を殺し続けることに葛藤しながら闘いをやめられない。「辛いと幸せは横線一本の違いよ」ルリ子の慰めが何とも言えない。

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シン・ウルトラマンの感動がまだ醒めやらぬところで本作と来た。
浜辺美波がやたらとカッコよい。「私は常に用意周到なの。彼女の出演作で最高傑作に思える?
何と言う凛々しさだ。特に目を青く輝かせてパソコンから自身にデータをインストールしている場面が素敵。
こういうところを観るとファンになっちゃうね。
西野七瀬もハチオーグがオシャレに決まっていた。こういうアーティフィシャルな役がかなり合っているように思える。
「あらら」っていうのも良い。特撮モノに今後意欲的に出て貰いたい。
シン・ウルトラマンで大活躍の長澤まさみが思いっきり弾けた役で出ていたが、尺が些か短すぎた。
このテンションで凄まじい暴れっぷりとか見たかった。
ウルトラマンの斎藤工は情報機関の男で、滅法渋いが似合っていた。
政府高官だった竹野内豊は、政府の男~極秘エージェントで、こういう役が合うのね。
ともかく、キャストがやたらと豪華。
オーグになってしまっているとほとんど顔も分からなくなっている人もいて勿体ない。本郷奏多、手塚とおるなど特に。
松坂桃李と大森南朋の主役級の俳優が声のみ。贅沢である。

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昆虫合成型オーグメンテーションプロジェクトは、人体を生体エネルギー・プラーナの圧縮された力で強大な殺傷能力を持つ身体にアップグレードさせるもの。しかしこれがSHOCKERの理念とどう結びつくのか、今一つ分らぬところ。
そうか人の肉体を捨てさせこころだけの住処を与えるというのはSHOCKERの人類を救済する理念ではなくあくまでもイチローのものか。しかしオーグを作る理由がやはり今一つ分らない(というより上級オーグがそれぞれやりたいことをやってる感もある)。

ともかく、昆虫と人類は共に非常に進化した系、いや種であるのは確か。
しかし何でそこにカメレオンが入って来るのか不自然ではないの。
本郷奏多だから何となく成り立っていたが。コウモリも外れているが手塚とおるだから無理を感じなかったか。
でもやはり昆虫だけに統一した方が良かったかも。

さすがにカマキリ・カメレオンオーグは反則だし、想定外であった。
データにないものは、データをもとに完璧な解析をするルリ子にとっての弱点である。
姿も消せるし、不意打ち以外の何ものでもない。
本郷奏多にピッタリの役とは謂える。

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一文字 隼人の洗脳を緑川 ルリ子が解き、彼が本郷 猛の相棒となったのは大きい。
と謂うより、2人で組まなければこの物語は、半分でケリがついて終わっている。
イチローのところまでは行きつかなくては。
戦闘場面は、肉弾戦に迫力がある。仮面ライダーは飛び道具的な武器を特に持たない。
バイク同士のチェイスアクションもかなりのものだが、そしてサイクロン号の走りながらの変身も実にクールなのだが。

大概のオーグは2人の仮面ライダーが一蹴するが、ルリ子の兄イチローは格が全く違い大苦戦となる。
ラスボスとの闘いは、どこでもヒーローは苦戦を強いられるが、ここでも充分に痛めつけられるしんどいところ。
やはり仮面ライダーは基本、肉弾戦スタイルの闘いに終始するのね。
(ライダー1号2号の闘いではちょっと変則的な空中戦であったが)。

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オーグの闘い方はチョウオーグのように、プラーナを別の世界~ハビタット世界に転送してしまいその人間を抜け殻にしてしまうものがある。肉体と意識≒魂の分離。これをチョウオーグは究極の善行と認識している。こころだけの世界。
おい、まさか人類補完計画にリンクしてないか(それはご法度だぞ)。
霊界とはそもそもそうした場所か。だとすると普通のこころとこころの関係からすれば、まさにルリ子の謂うように地獄以外の何ものでもあるまい。阻止すべき。
ハチオーグも、自分のプラーナを増幅する為に、手下のものを吸収していたが、あくまでもエネルギーとしてである。
理想や思想はそこにはない。
だが闘わずして又は闘う前にそれを戦法として効率的にやれば、確実に勝ててしまうはず。
また、オーグを殺すのにサソリオーグの毒が有効というのも上手く出来ている。

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チョウオーグの森山未來はそれらしいオーラが出ていた。
しかし仮面ライダー0号として律義に(肉弾戦で)闘うのね。
(舞踏家でもあるから踊りの要素も強い演出が凝っている)。

プラーナが尽きてしまうと白い泡となって消えてしまうというのも潔い死に方だ。
緑川 ルリ子もそして終盤にはイチローとの闘いに決着し、ルリ子の遺言で懐柔した猛も融解して消えてしまう。
何とも無常感漂い、哀しいところ、、、。
しかし ルリ子も猛もプラーナとしてある場所に固定される。

Shin Kamen006

2人の遺志を継いだ一文字 隼人は「仮面ライダー2号」として戦うことを決意する。
自分の行動原理が自らにとって気持ち良いかどうかであるところ、とっても共感した。
柄本佑が大変爽やかな男で出ている。「こころスッキリだ!」大事である。
本郷のプラーナの固定されたマスクを託された彼は、でもどんな気持ちなのか(孤独を愛するライダーなのに)。
「二人でSHOCKERと闘おう」って、、、生理的に大丈夫なの?
謂わば、 ルリ子も猛も電脳界に生き続けるということか(ルリ子のプラーナも安全な場所に固定されているという)。
しかし魂は自然界の戻るべきところに向かうべきだが、どうなのかその辺。
中途半端な場に繫ぎ止められてしまっては、それも迷惑な話では、、、。
(所謂、ご冥福はだいじであろう)。


シン・ウルトラマンと同様に、感動した。シン・ゴジラには感服はしたが、、、。
浜辺美波には泣けた。




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本格的でわたしも欲しい。
実は一度、変身!とやってみたかった(流石にもう出来ないが)。


セミマゲドン

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CICADA!
2018
アメリカ

デビット・ウィリス 監督・脚本

ニコール・アンソニー
デビッド・アギレラ
ジェシカ・アーボガスト
アンドリュー・アルカンジェロ
フェニックス・アスカニ
デーヴ・ビーン
ルーベン・ブリオネス


最近、刺激の強すぎる映画ばかり観て来たので、邦題からしてアホそうな映画でバランス調整することにした。
アホ過ぎた。度を越してアホだった。
チープで安易で大雑把で隙だらけの間の抜けた噺。

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朝のニュースで西洋ミツバチ1万匹が街の交通標識に留まっているという凄い絵を観て感心したこともあり、、、
取り敢えず「蜂」でよしと。(西洋ミツバチは、巣が暑いので引っ越しに向かう途上で一休みしていたとのこと。ご苦労どす)。
しかしお決まりのワニやサメでなく蜂ね。思いっきりハリボテの。

単なる「蝉」を「セミマゲドン」
邦題からしてオチョクリまくっているが、観てみると、まだ、オチョクリ足りない。
中学生の夏休みの工作みたいな蝉が人に襲い掛かり、スプラッター(極めて出来の悪い)殺害する。
稚拙さが際立ち、それを売りにしているのか。ギャグアニメのノリである。

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蝉の造形も動きも殺し方も全て雑で、合成画面であるが実にぞんざいな仕事。
観てゆくうちに、キッチュさが堪らないとか言うヒトも出て来るとは思う(わたしも多少その口だ)。
キャストもまあエキストラがちょっとやってみるかみたいなノリでやってる感じ。
最初に出て来た主人公の少年時代の子役など、5分前に道端でおやつ代貰って頼まれたのではないか。
最近の子役は凄いのが多いから、絶対に素人に違いない。

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こういう作品は細かいことに拘らず全てを受け容れて楽しむ類のものだが(そのつもりで観たのだが、、、
残念であった。蜂でなくとも何らかのモノに惹かれたとかも、皆無であった。
蜂はわざとああいった路線で狙った部分が大きいであろうが、キャストの素人臭さが限界越えと謂える。
勿論、本や演出の拙さの問題でもあるが、棒台詞を棒立ちでボウっと言っている間が虚しい。
蜂が刺すと頭が吹き飛ぶってどういうメカニズムなの。まだ首から上が千切れるくらいなら、、、
そう、面白いのレベルに届かないのだ。
面白いではなく虚しい。

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元大リーガーが、バットを振り回すだけで夥しい狂暴な蜂に対抗するだけって、、、。
昆虫の専門の大学生?もいたのだし、荒唐無稽でも何らかの撃退法を考案してチームでやっつけるとか、普通あっても良いはず。
勿論すっとボケたバッターひとりでは、何の成果もなく、蜂は地下に潜って待つことに、、、
ひとつだけ、蜂の17年周期は設定上守っている。
まさかまた17年後、などと言って続編やらんよね。それだけは勘弁して。

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スタッフロールが驚異的に長かった。
和気あいあいとした製作風景とか、、、只管続くが、楽しいのはこの人たちだけだ。

今日はこの後、楽しみにしていた「シン・仮面ライダー」を観る。



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狂覗

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2017

藤井秀剛 監督・脚本
宮沢章夫 戯曲「14歳の国」原案
スビアトスラブ・ペトロフ 音楽
ミヤ・サビーニ VFX

杉山樹志、、、谷野十(2-C臨時教師)
田中大貴、、、森由紀夫(理科教師)
宮下純、、、橋本瑞穂(美術教師)
桂弘、、、管直樹(数学教師)
坂井貴子、、、片山さつみ(英語教師)
望月智弥、、、野々村龍太
種村江津子、、、稲田友美校長
納本歩、、、小沢二郎教頭
河野仁美、、、辻本きよ実
宇羅げん、、、上西譲(2-C元担任)
小野原舞子、、、丸山真由美


「半狂乱」の4年前の藤井秀剛 監督の作品。
向うの方が洗練されまとまっているかも知れぬが、わたしはこちらの方により強力なインパクトを受けた。
これ程、悍ましい映画は、ちょっとない。絶句。

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終始、セピア調の不穏な色調。
物凄い目まぐるしいカット割り。サイコなVFX。
谷野の心象に胸が締め付けられてゆく。
彼の過去、トラウマからの脅迫的イメージ、生徒の陰惨極まりない虐めの実態、、、。
まさに狂覗であり、それが教師でもある。

2.-Cの担任が校長室でリンチに遭い縛られた姿で発見され、
谷野が何やら妙な殴られるアルバイトみたいなことをしているところから始まる大変暴力的なオープニング。
校長、教頭の管理側は、すぐさま責任を生徒指導主任の森に被せようとして来る。

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森は管理に教務へのコンバートを願い出る。わたしに生徒の現状を探る秘策があると謂った趣旨を述べ。
管理から指摘された彼の得意な「解剖」から思いついたものである。
何と、生徒の立会無しの教師だけの極秘荷物検査!人権無視とは言え、まともに臨んでも全く真相は見えてこない。
生徒と教師~学校側との壁は絶望的なものであった。
そしてこの解剖により、生徒と教師双方の恐るべき実態が晒されることに。

「ひとは何かに没頭して、初めて自分が何者かが分かる」(ニクソン)これを森たちは何度も繰り返す。
少なくとも没頭している時が、一番安定していると思う。何にせよ。
谷野はかつて自分の受け持ちの子に自殺されてトラウマに悩まされ教職を退いていたようだ。
彼にとり、何かに没頭出来れば、復調してくる可能性はある。自分らしい自分になれるような、、、。
しかしその為には、周りの環境が大事だ。
まず、ここでは無理か(美術の橋本T以外にまともな人はいないし)。

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次々に現れるモノから禍々しい実態が明らかになって行く。探りながら咄嗟にモノを隠す教師も出て来る。
自分が絡んでいるからだ。自己保身から隠蔽に回る。
そう、病巣を探って行けば自らの関与も明かされてしまう。
荷物検査を始めた5人の教員のなかで、もめ始める。
しかし森が全て丸め込んでゆく。教員側の罪は全て隠蔽して問題解決を図ろうともってゆく。
教員の身は守りつつ生徒の実態~権力関係だけ掴もうとする。
谷野と橋本は学校はまず生徒あってのものだと抗議するが、森は教員~学校を守ってからのことだと返す。
(彼は管理からプレッシャーを掛けられている。学校側の醜態は晒さず、まだ何処にも報告していない上西Tリンチ事件の犯人を燻し出さなければならない)。

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そして終盤には、思いもかけない実情が浮かび上がって来る。
その(片山さつみ担任の)クラスの万田という容姿端麗で成績トップの女子生徒がこれまでカーストの最上位にいると思われていたのが、実は凄まじい虐めのターゲットとされていたことが判明する。
体育の時間を利用して教員は荷物検査を行っていたのだが、外での授業に万田の姿だけがなかった。
教室に散らばった清掃用具は何を意味するかが、体育の終わりを告げるチャイムが鳴るころに明らかになったのだ。
そして、、、最悪の状況を迎えた時に生徒は既に教室に戻って来ていた。

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かつて長谷川という女子生徒を自殺で失い教職を退いていた谷野が、実は同僚の教師を庇う為に自殺として報告したことがトラウマの真実であり、本当はその生徒と同僚教師が屋上でもめていて彼が縋る彼女の身を振りほどいた勢いで転落した事故だったのだ。
再度彼はその件に向き合うことになった時に現在の状況も一気に明らかになってしまった。
この同時性の収束力が大変な緊張を生む。
全てが晒されてしまうことを食い止めたいのが森である。
狂乱した森が最凶のバッドエンドで締めくくる。

最早、どんでん返しとか社会派サスペンスなどと呑気なことを言ってる場合ではない。

物凄い作品だが、2度観ようなどと思えない。
陰惨で暴力的過ぎる。




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ファンタズム

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Phantasm
2014

武田真悟 監督・脚本


辰巳蒼生、、、江草圭一(父)
長宗我部陽子、、、江草恭子(母)
末永みゆ、、、江草あみな(娘)
山本凪音、、、江草拓海(息子)
田口甫、、、斉藤(降霊術師)


アメリカのカルト映画に「ファンタズム」というのがあるが、シリーズで確か5作くらい出ている。
それとは別の邦画である。
後から出たのだから、題を何とかして欲しかった。同じはないだろう。
雰囲気がしっとりとして落ち着いたもので観易い。
霊を扱うが、ホラーなのかどうか。降霊師がホラーしてた確かに。

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長宗我部陽子という女優さんはかなり昔、見たことがある。かつては、長宗我部蓉子であったか。
(四国を統一した戦国大名の長宗我部氏と何か繋がりとかあるのかしら。大河ドラマ観てるとそっちの方で気になる(笑)。
大変懐かしい。

真面目で一途な感じの母。不慮の事故で息子を失うが、それを現実としてなかなか受け止められない。
降霊術師を自宅に呼び息子の現状を憂いている(その都度「寒~い。冷た~い」とか言われれば堪らないわ)。
仕事に明け暮れる夫とはすれ違いの日常。亡き息子に対する気持ちの違いが大きかったか。

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降霊を続けていくうちに、恭子は息子に逢うと言い出す。
降霊術師は彼女に、ホントに霊と逢う方法と場所を教えてしまう。
何でそんなことをするのか。
素人に教えるのなら、少なくとも同伴し、悪霊を連れ込まない策や、その後の除霊までしっかりケアが必須だと思うが、、、
この男、霊と出逢うやり方だけ伝えて、彼女独りにその後の全て任せてしまう。
あり得ない無責任さ。

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お陰で、家には悪霊がとり憑き、姉のあみなにも霊現象が襲いかかる。
姿は見えぬが確実に何かがいて、足を引っ張ったりの物理的な力が及ぶ。
異変を感じ強い不安から仕事中の父親に電話するが、ほとんど意味はない。

そう言えば、母の降霊儀式に使った打ち捨てられたトンネルは、物語の冒頭で女子大生3人が失踪した場所であったが、その後彼女らはどうなったのか、そのままであったが、余りに虚しいエピソードであったな。冷やかしで来たみたいであったが(心霊スポット?)
完全にこの世からは消えてしまうのか(霊界に誘われて逝ってしまったということね)。
後のニュースで、どっかの河原で白骨体3体みっけ!とかないと浮かばれないわね。

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江草家では遂に母親に悪霊が憑依し、あみなに襲い掛かり首を絞めて殺そうとする。
こりゃ、一大事。
そこへ、降霊術師の斎藤がやって来て悪霊を祓う。何というタイミング。
心配になってやって来たらこんなことに、、、。
危ないところを助けてもらってどうも、、、とかいう流れになっているが、そもそもこの男が元凶だろうに。
正義感ぶって勿体ぶっているが、何なのよ。
巨漢で余裕のしたり顔は、説得力の演出には効果的。

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父は病院に入院した妻を見舞い、娘からお母さんを守ってと訴えられ、娘を抱き寄せ家族を必ず守ることを誓う。
娘から弟が亡くなった時、喧嘩をしていて酷いことを言ってしまい後悔しているということも伝えられる。
自分は家族のことを余りに知らなかったと斉藤に告げ、霊とかまるで信じてはいないが、やれることをしたいという事で、彼と共に例のトンネルに向かうことに。
斉藤も以前、娘を亡くしそれで降霊術を身に付けたようなことを車の中で告白する。
しかし一度降霊したからには、除霊をしっかりとしなければならない。ここが何よりも肝心みたいなことを言う。
最初からそれを言えと謂いたい。

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除霊には、その霊が死んだ時と同じ死に方をさせなければならないという。
それはそもそも親に出来る事ではない。
しかも今、息子の拓海が実体化して父の目前に立っている。
息子は父に声をかけ貰った大事なバッジを手渡すのだ。
この時、初めて何故息子が家族が目を離した隙に河でおぼれ死んだのかが判明する。
彼は父から貰った大切なバッジを河に落としそれを拾おうとして溺れたのだった。

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必死に拓海を水の入ったバケツで溺れさせようと奮闘する斉藤を父は2Lペットボトルで殴り倒し、もう独にはしないと息子と手を取りトンネルの奥の深い闇に消えてゆく。
おい、家族はどうする?家族を霊から守るために来たのに、このパタンか(充分想定内だが)。
かなり良い生活をしてきたようで、稼ぎ手の父を失い、母と娘はこれからどうするのか。娘はまだ大学受験前だぞ。
それから完全に放り出された斉藤氏であるが、わたしとしては助かっても死んでもどっちでもよいのだが、物語上においても打ち捨てられた感じであった(納得。
最後は、母の憑依が解け、娘と抱き合う姿で終わり。

全体として上品な仕上がりで好感の持てる映画であった。





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半狂乱

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Frantic
2021

藤井秀剛 監督・脚本・撮影・編集

越智貴広、、、小山田将
工藤トシキ、、、杉山樹志
山上綾加、、、雪野あゆみ
山下礼、、、河本康人
望月智弥、、、浜口浩一
美里朝希、、、永田典子
田中大貴
宮下純
種村江津子


29歳ってそんなに縛りがあるか?
わたしにとっては何となくの通過点に過ぎなかったが。まあ普通に勤めていたから焦って何をかする立場では、なかった。
ともかく、ここらで一発デカい成功を掴みたい、という野心に燃える俳優の卵たちが無茶苦茶なことをする。
だが些か常軌を逸している。

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どうにもここまでやるかね、という気持ちで見続ける事にはなる。
どうみてもやり過ぎに思えるのだ。
撮影・編集は大変凝っていた。
舞台進行とそこに至る経緯がスパっと切り替わり交錯しながらスピーディーに展開してゆく。
こうした現在に対する過去の時系列を徐々に示しながら説得力を持たせてゆく手法はよく目にするが、技巧的に成功していても、内容そのものに無理は感じられる。
まるで自滅を前提に事を運んでるようにも受け取れるところだ。
殺人してしまったら、もう先はないと思うが、、、見境が無さ過ぎて現実感が削がれる。
劇場の扉に鍵をかけ、閉鎖空間を作ることで観客を巻き込む手法はありだと思うが。
(この点において効果はかなり効いていた)。

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しかし野心家であるなら、もっと準備万端に慎重に事を進めるものでは、、、。
計画が余りに杜撰で、想定外の対応が半端で衝動的過ぎる。
こんな流れで最後に小山田将は杉山樹志に罪を被せて逃げ切れると思ったのか。
それから、雪野あゆみと小山田将はどの時点で繋がりを持ったのか、途中で見せては最後のインパクトが無くなるのは分かるが、事実を明かされた直後辺りにその経緯も少しは再現しても良かったのでは。
ここは杉山樹志の殺意が急激にレッドゾーンに向かう酷く衝撃的なシーンでもあるし。

雪野あゆみという女性も歌手志望とは分かるが、裏が怖い。
その匂わせ方がほとんどないように思えたが、、、。


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ヤクザに絡まれ時計の弁償に法外な金を要求されるが、ここでもヤクザ間の抗争?に巻き込まれて3人殺すことになる。
ここでの杉山樹志の007ばりの機転には驚かされるのだが。一般人にあんなプロフェッショナルな動きが取れるだろうか。
この場面では、小山田将の素人振りがよく分かり、普通はこうだろうと思う(ただの役者の卵なのだ)。
その小山田の最後のラスボスみたいな勝ち誇った悪顔には参る。
(憎々しい顔の演技は素晴らしいが)。

色々と金に困るにせよ、この時点でヤクザからの金の無心は無くなったと謂える。
であれば、舞台に費やす金はあり、同時にその裏舞台の映画もトリックさえ首尾よく行けば問題なく撮れよう。
熱量は凄いが、余計なアクシデントは避けるべき。
そもそも最後に小山田は杉山に何でネタばらしをしたのか。
そのままにしておけば、何も知らぬまま杉山が連行されて終わりで済んだであろうに。
まあ、あのようにしたことで、最後のカタストロフに進展したのだし、それが監督の狙いなのだから、、、仕方ないが。
日本刀振り回しは、どうもやり過ぎな気はした。
設定上?登場人物が熱気ばかりで時折機転が利くにせよ基本、とても軽いひとばかりである。
それとも29歳の焦りなのだろうか。

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皆、初めて見る役者ばかりであったが、とても熱のこもった迫真の演技であった。
インパクトはあり、驚かされる場面はあったが、実際に金を強奪する程度にしておけばリアリティーは増したと思う。
役者の技量をフルに発揮して、巧に強奪して舞台~撮影資金に充てるでも充分にスリリングに描けるはず。
(舞台上での殺人トリックは良いが、実際に殺しては野心も実らないしちょっとチャチに見えてしまうのだが)。





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無聲 The Silent Forest

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無聲 The Silent Forest
2020
台湾

コー・チェンニエン 監督・脚本
リン・ピンジュン 脚本

リウ・ツーチュアン、、、チャン
チェン・イェンフェイ、、、ベイベイ
キム・ヒョンビン、、、ユングアン
リウ・グァンティン、、、ワン先生
ヤン・グイメイ、、、校長
タイ・ボー、、、ベイベイの祖父
チャン・ペンユー、、、チャンの母


自分のルーツは、自分で探り尽くせない。
幼年期から児童期の記憶などほとんど定かではない。何も思い出せない。
この記憶が克明に探れるなら、かなりの問題が明るみに出るはず。強力なゾンデが必要なのだ。
「検索の失敗」という形で闇に葬られているらしい(コンピュータのデータ削除も検索不能の状態にするものだ。もっともPCの場合、復旧は充分可能だが)。
三島 由紀夫のように生まれた時の記憶を鮮明に持っていたヒトもいるが、、、。
確かに彼は全てに自覚的であったように思う。
(吉本隆明も幼少期に起因する無意識の「荒れ」を重視していた)。

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この実話を元にした台湾の聾唖学校での性暴力事件の惨たらしさは、児童期に受けた性暴力の外傷経験が綿々と作用し続ける様が描かれるところにある。
この場合、小4からであるが。これも酷く深い傷を残しそれは化け物のように増幅して機械状に周囲を巻き込んで行く。
飛んでもない悪党に見えたユングアンこそが悲劇の主人公でもあった。
彼は自らの主体的な意思で犯行を重ねていたのではなく、身体に深く巣食った他者~悪魔に操られていたのだ。
しかしそれを意識しながらやるしかない苦痛・苦悩である。それも半ば快感すら覚えながら、、、その引き裂かれたこころの状態は、如何程のものか。

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外傷経験は決して消えず、激しい憎しみを伴い増大する。
これは加害者は忘れていようが、被害を受けた者は忘れようがない現実だ。
物語の最後に鋭い目つきでバスの後部座席を一人立って歩み出る少年のことをチャンは意に介していない。
(このままでは、いないという目)。
チャンはベイベイを救う事のみを考え、彼を利用した。彼の身体~人格を無視した。これを完全に忘れている。
この盲目的な横暴さがまた新たな憎しみを生む。
何であろうが、憎しみは強度を増すのみなのだ。憎しみは強度を増すのみなのだ。

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これはわたしが良く知っている。余りに良く知っている。
憎しみは原理的に増幅するのみ!
それ以外の在り様は無い。
意識の覚醒と共にその過程は鮮明となって行く。
対象を絞り自覚的に憎むようになる。それは指数関数的に増幅する。
20兆年先まで(もっとか)。宇宙の続く限り。
わたしも断じて許せぬ奴がいる。(よく分かってるだろうが、お前らのことだこの糞屑!)
そしてわたしの場合、親が悪魔のように無能であったことが大きい。これが元凶だ。

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ここに登場する子供たちも居場所が、社会には無い。
謂わば隔離されたに等しい聾唖学校でのみ、辛うじて普通に暮らして行ける。
しかしそこに綿々と続く根深いトラウマによる暴力が巣くっていたらどうやって生きてゆけばよいのか?
全く何処にも安心して活き活きと生きて行ける場所なんてない!
居場所のなさ、これはわたしも常に感じないでいることの無い感覚だ。
この地上はろくな場所ではない。
この地上はろくな場所ではない。

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2人で雨に打たれ、登校のバスのなかでの最後の束の間の晴れやかさ、、、
次の悲劇の間奏に過ぎない。


キャストが皆素晴らしい。
特にワン先生。だが実際にこういう人は残念ながらいない。
いれば救われる生徒は確かにいようが。
皆、ここの校長くらいのものである。




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机のなかみ

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2006

吉田恵輔 監督・脚本
仁志原了 脚本

あべこうじ、、、馬場 元(家庭教師、ヒモ状態)
鈴木美生、、、望月 望(受験を控えた女子高生、馬場の教え子)
坂本爽、、、藤巻 凛(馬場の教え子の一人、望のクラスメイト)
清浦夏実、、、水野 多恵(望の親友、凛の彼女)
踊子あり、、、棚橋 美沙(馬場と同棲する彼女)
内藤トモヤ、、、望月 栄一郎(望の父)
三島ゆたか、、、三島先生(望らの担任)


鈴木美生という女優さんはよく知らないが、映画では初めて観た(これが2007だからその後どうしているのか)
清浦夏実女子はグラビアやアニメ主題歌でも何度も出逢っている(曲も持っている)。
実写の語りは何やら男前なのだが、歌はとても繊細で綺麗なモノが多い。
取り敢えず、キャスト(ヒロインズ)に惹かれて観てみることに、、、。

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まあ、前半45分くらいまでもう胸糞悪い流れでしかなかったものだが、、、
ぐうたら糞屑家庭教師のせいだ。気持ち悪い父親のせいだ。
しかしそれ以降、それまでの流れを違う視座から追ってゆくことになると、、、。
家庭教師側からの描写であったものを、望の視座から追う。
あそこの場面がこういう状況であったか、彼女の心情はこういった関係からのものだったか、が分かって来る。
すると途端にリアリティ~しっかりした(重層する)物語性が見えて来るのだ。

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構成が上手い。
そこに説得力が生まれる。
「先生は恋人のいる人を好きになることをどう思いますか」と聞かれ、てっきり自分が好かれていると勘違いする。
この馬場という男の惚け具合がはっきり分かるところなど秀逸。

同棲相手がいながら可憐な女の子に現を抜かし、付き合っている相手がいながら、その可憐な子にも気がある(しかしこれは同情できる。どちらも確かに良い子なのだ(笑)。笑ってる場合ではなく、そうなってしまうことは往々にしてあるものだ。
家庭教師の場合、単に不実でぐうたらなだけであるが、男子高生凛の場合、率直なだけだ。
望は凛が親友の多恵の彼氏な為、一.歩引いているが、凛の事がとても気になり好きである。しょっちゅうふたりが喧嘩して別れ話をしていることから、自分が取って代わろうかという気持ちはある。それは自然なことだろう。
ついでに望の父は子離れ出来ていないとかいうレベルではない病の域に入っている。娘がおかしくならないのが不思議。
だが人物造形と相互関係は展開と共にしっかりと分かるものとなってゆく。
泥沼状態だが爽快なのだ。とても観易い。

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何とも、志望校に凛と多恵は合格するが、望は落ちてしまう。
望にとり最悪のパタンとなる。
自暴自棄になったところを馬場に付け込まれるも、娘偏愛の父が滑り込みで阻止するが。
そこに実は、慰めに来た凛と多恵もおり修羅場となる。ここで望は我を忘れた父に打たれ大量の鼻血を出し馬場は当然いる場もない。それはパンツも穿いていない望も同様である。この究極の状況で、どうしたのと聞く多恵を引っ叩き凛にキスしてしまう。
鈍感な多恵は何で叩くのよと望に聞きただす(まあ、こういう人の方が気楽に友達付き合いは出来るものかも知れぬが)。

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馬場は浮気がバレて彼女と別れるシーン。同時に、望は凛とベンチに座り彼の気持ちを確かめようとするシーン。
これが交錯しながら進む。
結局、馬場は反省して出て行こうとする彼女とよりを戻す。
望は「予備校行って頑張っていいよね」と凛に泣きながら念を押すが、「おれには何にも云えない」と返す。
何と率直な青年だ。「あなたはそのままでいいから、わたし頑張るね」と泣きながら誓う望。
何といたいけな娘なのか。もう自然に感動してしまった。

鈴木美生という女優がこれ以降、恐らく何にも出ていない模様。
どうしたのだろう。
とても透明感ある女優なのだが。まず使い方、撮り方アングルなども上手いのだが。
清浦夏実女史はやはり豪快だった(笑。歌と全くイメージが合わないヒトだ。
(ついでに馬場の同棲相手の女優も凄く個性的なひとであった)。

監督が上手いのだと思う。
これはかなりの傑作だ。
わたしが邦画のラブロマンス?で感動したのは初めてかも、、、。
よく出来た映画。




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いつかの、玄関たちと、

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2014

勝又悠 監督・脚本

藤江れいな、、、大塚あやめ(下村に住む18歳の高校生)
木下ほうか、、、大塚毅(あやめとすみれの父)
山村美智、、、大塚桐子(あやめとすみれの母)
橘麦、、、久保田すみれ(あやめの姉)
五十嵐康陽、、、久保田誠二(すみれの夫)
勝尾麻結奈、、、久保田茉祐子(あやめの娘、すみれと同い年の姪)
松原智恵子、、、一恵(コミュニティスペース"やまじゅく"の塾長の妻)
阿藤快、、、自動車工場の社長(誠二の勤める工場の社長)
森田哲矢、、、英語の先生(北足柄高校の英語教師)
松尾貴史、、、颯太(下村にある電気屋さん)


やはり木下ほうかって良い役者だなあ~と思った。
もう見られないのは淋しい。

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NMB48というのがあることは知っているが、歌もパフォーマンスも見たことない。
藤江れいなはウェブ上で何度か観て知っていた。
わたしは、乃木坂と櫻坂でもうよい。大体覚えきれないし。
そうそう、櫻坂の冠番組で、学力検査の(インテリ女王とおばか女王を決める)番組をやっていたが余りに面白くて録画を7回観てしまった。娘にもウケるかと思い、恐る恐る長女にも見せてみたが大笑いしていた(次女はクールにスルーしたが)。
それはそうと、もう何とか48とか46とか沢山あるのに、また「僕が見たかった青空」とかいうのを出してどうするつもり、、、。
この辺のグループを全て追っているファンはまたメンバーを覚えなけりゃならないのね。

まあ、幾ら儲ければ気が済むのか、、、。
乃木坂のライバルグループだとか。何でそんなことするのか、、、?
もうイクちゃんもいないし、齋藤飛鳥さんもいないし、白石さんはとっくにいないし、、、
久保さんに頑張ってもらいましょ(大河ドラマも観てるぞ)。
乃木坂のレベルは、ハッキリ言って高いし。最近弓木さんが妙な感じで頭角を現しているのでより面白さも増している(「プレバト」では唸った(爆)。
ともかく、今度の月曜日の櫻坂の学力検査・後半が楽しみ、、、もう腹を抱えて笑えること請け合い。
(わたしが忙しい忙しいと言いながら結構こそこそテレビ見ていることがバレたな)。

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何の噺だったか、、、実は映画は今朝がた観たモノで、もうほとんど思い出せないのだ。
面白さでは、櫻坂の学力検査の番組の方が圧倒的だし。
何と言うか、ああいったバラエティものの面白さは、他のメディアには太刀打ちできない強度がある。
映画を7回も観ようと思うことは、なかなかない。
タルコフスキーとベルイマンなら見られるかも知れないが。あと作品によって幾つかはあるにせよ。

尺が短く面白いものには基本、勝てないところはある。
ただし、どういうものが面白いのか、である。
ひたすらギャグやコントみたいなもので、笑わそうと煽るものが、時折コメディ映画にあるが、そういうのはちっとも笑えないモノが多い。面白くもなんともなかったりするものがほとんど。
基本、真面目な線で行くのに、知らず逸れてしまったりズレがきたりするところに面白味が生じる。
先程の櫻坂の番組では、学力検査を大真面目で受けてその結果~回答が意表を突くもので、皆が一瞬口をあんぐり開けてフリーズした後、大笑いに転じるもの、とか。
特に前回までおばかグループにいた子が一気にかしこグループに飛躍し、他のメンバーが激しく動揺しカオス状態になるスタジオの光景は、もう並みの映画では到達不可能の地平を生んでいる。これはそれまでの流れを知っていることが肝心であるが。
(この力学の応用は課題かも。コメディものでは)。

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どこまで関係ない噺を引き摺るのか(爆。
木下ほうかって良い役者だなあ~と思った、その後あたりからいきなり逸れたか、、、?

しかし今振り返っても、その辺の印象しかない。
「家族」がテーマだったのかしら。
始めから完全解体している単に同じ屋根の下で形式上くらしているだけの集合体の場合、まあこの映画でしみじみ語られる「家族」などという内実は無い。
概念自体が解体している。
今果たして「家族」なるモノが何らかの機能を果たすものだろうか。

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多様性も単独者も考慮に入れ、逸脱~溢出と病も視野に入れたうえで、家族が生きた概念として活性するなら「家族」というのもあって良いとは思うけど、、、。
今のところ死んだ概念にしか思えない(笑。
所謂、社会と個の間の機関として充分意味を担う場所であるには違いなかったのだが、、、。

やはりいきなり社会に出て戸惑えば、手近な共同体に滑り込むのが多いと思うな。
そこにたまたま新新興宗教もあり、オームみたいなところも開けていたり。
まあ、最初から家や町内会でどうにかなるものではないにせよ。
何らかの有効な共同体はあってよいはず。

この映画の感想にはなっていないので、あしからず。



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さよなら、人類

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En duva satt på en gren och funderade på tillvaron
2014
スウェーデン

ロイ・アンダーソン監督・脚本


ニルス・ヴェストブロム 、、、サム
ホルゲル・アンデション 、、、ヨナタン
ヴィクトル・ギレンベルイ 、、、カール12世 (スウェーデン王)


固定キャメラによる1シーン1カット撮影で.あることは、誰が見ても分かる。
こんな視点でずっと物事を見ていることはない為(大概こちらも動いている訳で)結構シュール。
アパートの廊下で夜噺をして「早朝出勤の者もいる。静かにしろ」という警告と「幸せそうで何より」という挨拶が妙に印象に残る。

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サムとヨナタンという面白グッズを売り歩くセールスマンの2人組が主人公みたいだが、、、。
特にこれと言って何をやっている訳ではない。
「ドラキュラの歯」と「笑い袋」と「歯無し親父のマスク」くらいしか売り物がない。
もう少しバリエーションや品数増やさなければ商売にはなるまいに。
だが頑固にこの3点を売り歩いている。
これはこれで面白い人たちだが。逆にこの無味乾燥な商売(やり取り含む)がこの映画の世界観そのものでもあるか。

En duva satt003

当然、ほとんどグッズは売れず、品を置いた店からは売上金が支払われず、問屋から仕入れ代金を請求されるが首が回らない。
とうとう仲間割れで、お前が商売下手だから、お前がこういう提案をしたんだろ、とか喧嘩になってしまう。
後で取り敢えずの仲直りとはなるも、、、同じことをやっていては、何が如何なるものでもなかろう、、、。
だが、彼らにそれ以外の方法があるようには思えない。

En duva satt004

終盤にヨナタンがサムに対して「ヒトを利用して自分たちの欲望を満たしてよいのか?」という基本的な疑問を呈する。
お前、明日からまた商売始めるんだぞ、大丈夫か?という感じで返すサム。
実際、商売再開となったかどうかは、分からない。
出口のないどうにもならなさ、が漠然と迫る。

En duva satt005

2人のセールスマンが噺を横断してはゆくが、別に主役でも狂言回しでもなく、取り敢えずあちこちの場面で出て来るという立ち位置。
その都度~ワンシーン毎、基本的に何でもない市井の人々の日常の一齣を切り取ったような映像が続く、、、のであるが、一つ間違えれば、グロテスクに変容する危うさは秘めている(メイクもチャップリン風の白塗りだし、変容しかけているか)。
時折、妙に誇張されたちょっとチャップリンの映画に出て来そうなカール12世などというのが現れたり、ロシアに負け敗残兵として帰還しトイレを借りようとしたり、妙に気持ち悪いダンス教室とかもあるが、これは現実にあり得る光景である。
ヨナタンの(悪)夢に、サルの電気ショック実験とか、奴隷の黒人を巨大な円筒形の金属の筒に入れて火で焙って行く儀式のような荒唐無稽なシーンも唐突に出て来る。
恐らくこれにヨナタンは酷く怯え、ヒトが欲望の為に他者を犠牲にしているという恐れと不安を募らせたのか。
サムには「何を哲学者気取りで」と一蹴される。

En duva satt006

向うのアパート?ホテルなのか?ともかく管理人みたいなのが、いちいち「早朝出勤の者もいる。静かにしろ」と言いに出て来るのが可笑しい。
(収容所の監視人みたいだ)。
全般に、シニカルで乾ききっていて冷淡で生きる希望など微塵も感じないうえにチョイと危うい光景が続くが、自分の周囲を見てもこんなものだなと感じられもする。
「ヒトを利用して自分たちの欲望を満たしてよいのか?」
まさに、これを踏まえて生きるべきである。
全く無自覚な馬鹿が今もそこ~向かいにいるし。
(こいつだけは、ただで済ますわけにはゆかない)。

”リビングトリロジー”の3作目に当たるそうだ。
前2作も観てみたい。


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凱里ブルース

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路邊野餐 Kaili Blues
2015
中国

ビー・ガン 監督・脚本

チェン・ヨンゾン
ヅァオ・ダクィン
ルオ・フェイヤン
シエ・リクサン
クィン・グァンクィアン


疲れすぎで一晩ほとんど寝れなかったので、今日は激しいものビビッドなものは避けたい、、、。
そんな気持ちでのチョイスとなった。

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ドラマ性はほとんどない。
ロングショットが特徴的。
細々とした筋立てなどない。
神学性のないタルコフスキーみたいにも思えるところもあり、、、

この空間とリズムに囚われてゆく感じが心地よい。
役者もエンジンのかかり難いバイクに乗ってあっち行ったりこっち来たり。
なにやってるのか、よく分からない。
それを眺めているこちらも、ただ凱里のある日の光景のとりとめなさを目の当たりにしている、、、。

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兄弟がどうだの妻がどうしたとか、甥をどうするか、とか出て来るが全くどうでもよい。
元々物語などあってないようなものである。
そこに神学的なものが滑り込んで来たり政治的な思想が見え隠れしたりもしない。
物語を排除して行くと、記憶も行き場を失ってゆく。
(これもひとつの思想に裏付けされた方法論であろうが)。

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特に風光明媚でもない、ただの田舎がもうなんでもない場所に行きつくしかない。
人などもう陽炎のようなもの。
彼らは、漢民族ではない中国人のようであるし、、、。
そこに伝わる民族楽器の音を聴こうとするが、師匠が外出していたりでなかなか聴くことが出来ない。
所謂、流行りのポップスのライブがあったりするが、ちょっとした路上演奏くらいのもの。
主人公が何故だかそれに交じり歌を披露するが、驚くほどヘタである。

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何をやっているのか、などもうその時点で問う気もないので、どうでもよい。
場所が析出されてくるだけ。
この「凱里」が撮りたいのだ。
監督は。

なんでも、この凱里は監督の故郷で、出演者は皆、家族・親友・親戚だという。最近観た短編でもそういうものがあったが。
こりゃあ、低予算で作れるぞ。もう自分の思うように作れる面は大きいと思う。
有名俳優など使ったらギャラは高いし態度はデカいし、新人監督にとっては大変なはず。

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思うように撮ったという感はある。
この先どういうものを撮って行くのか、、、。
そうした興味の惹かれる作品であった。



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金星ロケット発進す

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Der schweigende Stern
1960
東ドイツ、ポーランド


クルト・メーツィヒ 監督
スタニスワフ・レム「金星応答なし」原作
スタニスラフ・スカルスキー、フーベルト・ドラペラ、ヤツエック・ウェイロフ 脚本

谷洋子
オルドリッチ・ルークス
イグナーチ・マホフスキ
ミハイル・N・ポストニコフ
ルチーナ・ウィンニッカ


ソ連の宇宙船「コスモクラトール」に世界各国の選りすぐりの科学者が乗り込んで金星探査に向った。
金星に着陸するとそこには、、、。という奇想天外な噺。
ジョルジュ・メリエスの「月世界旅行」からは隔世の感はあるが、ほぼ地球と地続きの世界ではある。
大気組成が全く異なる為、宇宙服に酸素ボンベは装着してはいるが。
スタニスワフ・レムの原作にしては、軽い感じがしたが、充分面白い。
久しぶりにSFを観たという気がした。

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ゴビ砂漠で隕石のような磁気録音コイルが発見された。1970年のことである。
それは、地球の物質で作られたものではないことから、金星から来たとされた。
金星に向けて通信を試みるも何の音沙汰なしで、こちらからコイルの暗号を解きながら出向くことにする。
(暗号を解いてからの方が方針もしっかり立てることが出来そうだが、急いでいたのか?)
その「コスモクラトール」というのがとってもスタイリッシュでカッコよい。惚れ惚れするロケット。

アポロ11号が月着陸を果たしたのが1969年であるから、次は火星か金星かという気持ちであろう。
ソ連では特に。大きさと平均密度が地球に最も近い兄弟星とは謂われて来た、、、「明けの明星」、「宵の明星」でロマンチックであったし。暫くの間は牧歌的なイメージを纏っていた惑星だ。
実際はCO2による温室効果が凄まじく気温が460℃で、気圧は500近くだったはず。
強風も半端なものではない。100m/sの飛んでもない風速だという。金星探査機が悉く潰され藻屑になって来た経緯がある。
恐らく、地球には海が形成され金星にはそれが出来なかったことが決定的な差を生んだと謂えようか。
(海にCO2が溶け込めば、大気中のそれは希薄になる)。

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宇宙船で着陸して金星表面を人が呑気に会話しながらあちこち探索して作業をするなんてあり得ないが、この時期は金星が一番地球に近いという認識であったから無理もない。
金星で暗号が全て解読出来たのだが、それが実質どれ程役に立ったか。
金星人がろくでもない奴というのが分かったのは良かったにせよ。
物質とエネルギーを自由に変換できるテクノロジーを持つというのは、暗号関係なく博士が見抜いていたが。

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乗組員は西も東もなく優秀な科学者が集う民主的なプロジェクト。
日本からも隊員の健康を管理する医学博士が乗り込み皆から信頼される良い役だ。
戦後でもあり、核の反省も盛り込まれている。
但し、このフィルムは、アメリカが大幅にリストアし全編英語に直して修復したもので、何でもアメリカに都合の悪い部分はカットされているとか、、、だとするとヒロシマ・ナガサキの件か?丁度日本人がヒロインでもあるし、、、
(谷洋子という国際派女優を初めて見る。最近の日本女優もヨーロッパに活躍の場を広げればよいのに、と思う)。
とは言え、画質はとても良くなり観易くなったのは有難い。

明らかに金星人は高度な文明を持ち、地球人を滅ぼし征服を企てていたが、自らの核兵器で自滅した後であった。
しかし探査中にスライムに襲われ中性子光線を浴びせてそれを凌いだのは良いが、それを契機に金星人が残した中枢システムが物質をエネルギー変換し始めてしまったのだ。
それで急遽、そのシステムの作動を止め、エネルギーを物質に戻す。
この作業の最中、優秀な人材を3人失う。

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この犠牲になる場面は結構、あっさりしており、あれまあという感じで命を落とす。
最後救えそうな人もいたように思えたが、エネルギー化していた時に増加した重力が物質化に戻る過程でマイナスの力に転じる。
これは斥力でもないし、何と言うのか、、、ともかく逆噴射しても金星上からコスモクラトールが遠ざかってしまうのだ。
置いてきぼりされた通信士もいた。

その勢いで地球に戻って来て、終わり。
金星の脅威は無くなったみたいだが、実は初めから行く必要もなかったのでは。
既に金星人は滅亡しており、コイルの通信はそれ以前のモノであったようだし、行って余計なことをしなければシステムも作動しなかったのだから、、、。それが止められなかったらホントに地球は滅亡してたかも。
と思ったが、違ったかしら、、、今日は色々と疲れて途中寝てしまったところもあり、自信がない(苦。

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よく出来た映画で、円谷特撮などが肌に合う人にはとても美味しい映画であることは、間違いない。
出て来たロボットはイマイチであった。




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らせん

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1998

飯田譲治 監督・脚本
鈴木光司 原作

佐藤浩市、、、安藤満男
中谷美紀、、、高野舞
佐伯日菜子、、、山村貞子
伴大介、、、伊熊平八郎
加倉井えり、、、安藤利恵子
菅原隆一、、、安藤孝則
鶴見辰吾、、、宮下
真鍋尚晃、、、小林
安達直人、、、舟越
小木茂光、、、前川警部補
松重豊、、、吉野賢三
松嶋菜々子、、、浅川玲子
真田広之、、、高山竜司


「リング」はわたしとしては珍しく、原作も読んで観た映画であったが、本作については未読。

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とても面白かった。
怖いと言うか気味悪いのは、高山が司法解剖で内臓など全て切除されているのに起き上がって、安藤に対し「お前自分の腕も切れないのにこんな事よく出来るな」と嘲笑するところ、、、結構リアルで良かった(笑。更に胃から暗号を記した紙切れが採取される。
暗号以外は、安藤の幻覚であるが、あんなにありありと見えてしまっては重症ではないか。
そのままほっとけないレベルであろうに。
安藤は海で、目の前で死なせてしまった息子のことを、残った髪の毛を見詰めながら思い続ける日々を送っていた。
かなり憔悴している。暗号を解くとDNAのプレゼントというものであり、高山の意図を直ぐには掴むことは出来ない。

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安藤と常に関わることになるのが、高山の恋人であった高野舞である。
安藤は番組ディレクターの吉野賢三から呪いのビデオを渡されそれを見てしまい、貞子の記憶を追体験しその呪いを実感する。
死を意識する安藤の前に高野舞が現れたのだ。
この高野舞役の中谷美紀の美しさが尋常ではない。
まずは、とても自閉的な学生として。彼女は高山のように相手の考えが読めたり、近未来を透視できたりするため、彼の存在に救われて来たと謂う。とても慕っていたのだが、例の呪いのビデオを見てしまい死の不安と恐怖に慄く寄る辺ない安藤への同情もありふたりは一夜を共にしてしまう。
これが後にまさかの展開を呼ぶ。

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安藤の同僚の宮下は、そのビデオの件で死亡したという者の死因を調べると貞子の時代に猛威を振るっていた天然痘に酷似したウイルスの存在と血管に腫瘍が見られることを確認する。
しかし、それが何故ビデオの視聴による発病なのか関連性が問われるところ。ここで電子的に網膜にそれが植え付けられるみたいな強引な理屈が説かれる。しかし後に、ビデオは見ていないが、交通事故死した浅川玲子の記録した手帳を読んだ者も同様の死を迎えることが判明する。
この伝播のメカニズムは解明とまでは行かないが、貞子が何を意図しているのか、更に高山が安藤に何を託したのかが問われてゆく流れとなる。

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そして姿を消した高野舞が再び安藤の前に現れる。
彼女は以前のような理知的で内向的な雰囲気ではなく、とても派手で妖艶な姿に変貌していた。
ふたりは激しく求めあうが、安藤は違和感を覚える。
何と舞は、以前の交渉から生まれ落ちた貞子であり、完全に舞の身体(記憶も含め)をコピーしていたのだ。
舞は井戸のような形態の通気口から変死体で発見される。

安藤は、一週間過ぎても死んでいなかった。
貞子である舞から彼女の計画に協力することを要請される。
はじめは断るが、交換条件を出され呑むことになった。
高山はその流れを全て予見して安藤に暗号を示していたのだ。
安藤の亡くなった息子を生き返らせるかわりに受精卵に高山のDNAを受精させ彼を復活させることであった。
高山は貞子の協力者であったのだ。プレゼントとはこのことであったのを確認した安藤。
数週間で急速に成長を果たし、元の高山の姿になると謂うが、その兄弟でもある安藤の息子は復活後も幼い姿でいる。
急速に成長してしまうことは、老化も早いのか、その辺が今一つ判然としないので、少し集中を欠いてしまうところだ。

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最後に一見元の高山竜司と高野舞のペアのように見える(この世離れした存在に感じられる)ふたりから、浅川玲子の残した手記を小説として販売し、それを広めることで世に貞子のような存在を増やしてゆく計画を知らされる。
この先の人類が大きく変化して行くことを示唆するが、それがどういう意味を持ち世界がどのように変わるのかと安藤が食い下がるが、それは未定だと返す。但し安息はまだずっと先のことだと付け加える。
自分の子供を蘇らせるような残酷なことは出来ないと言う。

安藤が息子と海辺で佇む姿は、以前に高山から舞に送られてきたスケッチそのものであった。

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医学的な根拠を匂わせてSF的に持って行くのかと思ったらそれが有耶無耶になり、ウイルス~呪いの伝播のメカニズムもほぼ追及は無くなり、、、単にホラーの次元でそれらへの言及無しでまとめた方が集中できたはず。
それ以外の部分での物語、キャストの豪華さが勿体なかった。
中谷美紀の魅力に尽きる。





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レプリコーン

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LEPRECHAUN
1992
アメリカ

マーク・ジョーンズ 監督・脚本

ワーウィック・デイヴィス、、、レプリコーン(元靴職人の悪い妖精)
ジェニファー・アニストン、、、トリ(父の買った家に引っ越しに来た娘)
ケン・オランド、、.、ネイサン(トリの家を修繕に来た青年)
マーク・ホルトン、、、オジー(ネイサンの弟の友人)
シェイ・デュフィン、、、ダニエル(レプリコーンの金貨を盗んだ男、トリの家の前の住人)


どのあたりの層を狙った映画なのか。
実にちゃっちい。
子供騙しと謂いたいところだが、子どもも騙せない。

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レプリコーンというのが、どうにもしっくりこない。妙にコミカルだが可愛げ無く酷く悪そうな顔つきなのだ。
単にわたしの好き好きなのかも知れぬが、好感もてない(敵であっても多少の共感要素は欲しい)
それを言ったらヒロインのジェニファー・アニストンという女優も微妙過ぎる。

何と言うかキャストに魅力を感じない。
その上に、噺がどうも、、、。

ダニエルという男がアイルランドでレプリコーンという元靴職人の悪い妖精から金貨を100枚盗んでアメリカのノースダコタの田舎に戻る。だが鞄にその悪い妖精も潜んでいて、おれの金貨を返せ~と来た。
盗んだものなら返すのが当然だろうが、その男は妻を殺されたが、妖精は幸せのクローバーで箱に封印することには成功する。だが、その場で男も心臓発作で倒れてしまう。

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10年後、ダニエルは療養所におり、手放した家に都会からトリという娘とその父が越して来る。
廃屋同然であった為、内外装の修繕の手伝いを地元の青年、ネイサンとその弟アレックスと歳はかなり上だが彼とほぼ同じ精神年齢の友人であるオジーの3人がしてくれることに。
トリは家が余りに酷い状態であるために他にホテルを借りて住むと言いはっていたが、ネイサンがイケメンなので修繕を一緒にやって住む事にする。

そして地下室にオジーが降りた時に妙な歌声を耳にして、その声の相手にコンタクトを図ろうとしていた拍子に箱の上に置かれた幸せのクローバーが落ち、レプリコーンが封印から解かれ大暴れということに(笑。
「俺の金貨を返せ~。盗んだ奴は許さね~」と引っ掻いたり齧ったりで殺傷力はかなりのモノで、すばしっこい。
この金貨は、レプリコーンが封印から解かれたときに空に虹が出て、その麓に行ったら壊れたクラシックカーに隠してあった金貨の袋を見つけ、アレックスとオジーが内緒で井戸の底に移していた。

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妖精は金返せと執拗に襲ってくる。小さくて醜くく凶暴で人をなぶり殺しにする残忍さ。銃で撃たれてもその時は倒れるが直ぐに復活して襲い掛かる。
但し、かつて靴職人であった為か、汚れた靴があると片っ端、磨いて綺麗にする習性だ。
(これで時間稼ぎは多少できるか)。

それでこの妖精、子供用のゴーカートやダニエルの乗っていた車椅子とか地下室にあったキックボードとか、そんなものに乗るのが好きらしい。そういうものを飛ばして乗るのが彼流の美学なのかも。

ともかくこのままでは勝ち目はないため、金を返すことにするが、レプリコーンは99個しかないことに気付く。
一個はオジーが本物かどうか調べるために噛んでみた時に誤って呑み込んでしまっていた。
それでもう他に方法は無いという事で療養所にいるダニエルに妖精の殺し方を聞きに行くと先回りしたレプリコーンに既に手に掛けられてはいたが、死ぬ前に幸せのクローバーで殺せることをトリに告げる。

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戻って皆で井戸の周りの叢を必死で探すが、それがなかなか見つけられない。
オジーに下剤を飲ませお尻から出して渡すのはダメなのか?この妖精なら多少ウンチが付いていようが構わないと思うが、、、。
ともかく、危機一髪のところでそれが見つかり、アレックスがレプリコーンの口にスリングショットで狙いを定めて飛ばす。
見事口に入った幸せのクローバーの作用で、悪い妖精レプリコーンは苦しみもがきつつ井戸の底に落ちてゆく。

そして最後は、ネイサンに井戸にガソリンを入れられ爆発するが、「金貨は必ず取り戻すぞ」と叫び声をあげて終わる。
この手の映画の定番であるが、続編を匂わせることは忘れない。
金はその後、どうしたのだろうか。オジーの呑んだ分も含め。


まあ、単純な噺で、どうと言うものでもなかった、、、。
このレプリコーン、好きにはなれない。



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災い

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Rum 213
2017
スウェーデン

エメリー・リンドブロム 監督

アンキ・リデン
アルマン・ファニー
エレナ・ホヴセピアン
ウィルマ・ランドグレン


これ原作が児童文学だという。
スウェーデンやはり恐るべし。

12歳の少女の夏キャンプの1週間の出来事。
サマーキャンプのドタバタは、「アダムスファミリー」のウェンズデーが荒唐無稽に仕切ってしまうやつが面白くて大好きだが。

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ここのサマーキャンプは派手さはないが、何とも言えない。
メヤとエルベラとベアの三人が同じ部屋に泊まることになる。
当初は207であったが、キャンプインストラクターの女性が、部屋を水浸しにしてしまったことで、開かずの間となっていた213に移動する羽目に。
エルベラはそもそも最初からこのキャンプに気が進まず母に休むと愚図っていたが、さあさあ愉しんでらっしゃいと連れて行かれる。

行ってみたら、同室の子がメヤという金髪の気位の高いお金持ち風の子とベアというインド系?の貧しそうな子の2人であった。
ちなみにエルベラは東洋系のアパート住まいの子である。

一日目に、いきなりエルベラの指輪が紛失する。テーブルに置いていたものだ。
二日目にはメヤのデジカメが無い。
そして三日目にはベアのおばあちゃんに貰った大切なペンが無くなる。

3人の中で主導権を握るメヤはまずベアを犯人だと疑う。
人種的な偏見もあるかも知れぬが、ここでは経済的な格差からのモノが強かろう。
金髪のメヤはスマホとデジカメを持っており、東洋系のエルベラはスマホのみ持っており、インド系ベアはスマホもデジカメも持ってない。つまり持ってないモノが盗んだという理屈だ。
エルベラは、メヤの意地悪で指輪を隠されたと思い込む。
ベアは自分からの意思表示は乏しい。

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こういう最小単位であっても、直ちに第三項が析出されそれを排除することで集団の安定化を図ろうとする力学が働いてしまうものだ(今村説)。
結局、お化けに操られ盗まれたモノの在りかを自動筆記みたいにノートに書いていたエルベラが犯人はお前だと排除されることに。
(彼女は霊に敏感で憑かれる体質のようだ。来る時から不安を抱いていた)。またそのせいで挙動不審な面も見られていた。
メイベルという名の少女の声も聴いていたし。
そして文字通り宿舎からメヤによって追い出される(玄関の鍵まで閉められる。怖)。
ちなみにベアはそのお化けを見る能力があり微妙な立ち位置にいる。
エルベラにお化けがとり憑いていたのを見ているが、それを主張できない。
お化けなど端から信じないメヤに謂っても通用しないのは分かっている。

しかしなんやかんやと不穏な出来事はあって、、、3人で宿舎を抜け出し、赤い屋根の家に213で死んだ少女の噂の真相を調べに行っている。落書きや偶然手にしたその手紙やオカルト趣味の少女の母から聞いた話などから、何かあったことは掴んでいた。

エルベラは、2人に自分の疑いを晴らすために過去のキャンプの資料を見せる。
(どうやって見つけたかその経緯はいまいち分からなかったのだが)。
メイベルという少女が実在し213号室に泊まっていたが、何だか分からぬ事故で亡くなっていた。
これが判明し、無くなったものが戻って来たので、3人は仲直りするのだが、最後にそのメイベルの姿と語りがしっかりとメヤのデジカメに動画で入っており、3人で観てびっくり仰天する。

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再度、これを他の人にも見せようと再生しようとしたらデータは消えていた、という噺。
(このメイベルはずっと閉まっていた213の部屋を開けてくれてありがとうと言って消えた)。
このことは、3人だけの秘密となる。女の子は特に秘密の共有で強力な仲良しにもなる。
ある意味、よいサマーキャンプを経験したものである。
しかしこれがスウェーデンの児童文学なの?微妙~。


ともかく、ちっとも怖くない、男子生徒との淡い恋もあるジュブナイルものであった。
まあお化けの怖い話など、キャンプファイヤなどの時によくはなすものだし。、、、、
ここでは、それが実際にお目見えしてしまったという設定であった。




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呪い

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Vier
2022
オーストリア

マリー・クロイツァー 監督・脚本

レギーナ・フリッチュ
ユリア・フランツ・リヒター
マヌエル・ルバイ
ローレンス・ルップ


a-ha の ”Take On Me”のスローソフトアレンジが効いていた。
これ、名曲だね。
「わたしを受け容れて」

母はこどもを受け容れなかった(確かに精神病院に入院中の母ではあるが)。
こどもを受け容れられない母は巷に結構いる。
うちもそうだ。紛れもなく。ほんの一秒でも受け容れたことはない。そういう親であった。これはまさに「呪い」である。
それを悲しむべきととるか、恐るべき運命だと呪うべきか、受け取り方は様々だが、その過程で被った外傷経験の深さがどれ程のモノかである。肝心なのはそこだ。

心身のバランスを著しく崩す程の、自我の形成を阻害する程の障害を被れば深刻な事態を生む。
大変な生き難さを味わうことになる。
繋がりが途絶えれば、害の継続が無ければ、ゆっくりとした解放と治癒も見込めるが(そう簡単なものではなくこびりついた記憶やフラッシュバックもある)、現世における接触が続く限りは、トラウマは随時、更新され病は根深くなろう。
「呪い」というのは謂い得ているか。

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自らも二度流産の経験を持つ婦人警官のユーリは今身籠っている。
夫婦ともに今度こそという期待と不安を抱いて暮らしていた。
そんな折に、14年前の女の子の失踪事件の絡む、幼児の白骨化した死体遺棄事件を彼女は上司と共に担当することとなる。
その失踪した少女は、ユーリと同学年の友達のいない人を寄せ付けないタイプの子クラウディアであった。

ユーリの母がそのクラウィアが失踪前に少女たちのパーティーで彼女の唄う姿の入っているビデオを探し出し娘に見せる。
ここで驚くのが、この少女クラウディアの顔立ちが、最近医師ルドウィックと共に引っ越して来たマチアス(ユーリと同年)そっくりなのだ。なかなかこういう人選は難しいはず。よくやったと思う。見事というしかない。
さらに圧倒的なロケーションであった。空の広大なこと、、、。

このマチアスという寡黙で優し気な青年は、共に暮らす医師とゲイの関係である。
片田舎の保守的な環境では、何かと噂の立つ難しい立ち位置にいた。
始めは勿論、少女はとっくに亡くなっているか、何処かで名を変え生きているかだと推測されていたが、家を捨てた母親が精神病院で生きていることが分かり、そこで母と懇意となり、信頼していた医者以外に打ち明けたことの無い事情をユーリに語る。
クラウディアは修学旅行を欠席しその後で失踪した。表向きには喘息によると言うものであったが、着替えに支障があり休んだのだ。
彼女は両性具有者であった。
母親はそれをひた隠しにしており、その他の兄弟たちは育てる意思もなかったようだ。
周りの住人とも全く関係を持っていなかった。
彼女はその子は産んで直ぐに殺す気にはなれず、少なくとも14歳までは、認めることは出来なかったが、共に暮らしていた。

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クラウディアは14歳で家を出てチェコで難民として過ごし、最近になり男として伴侶の男性医師と共に故郷に還って来たのだ。
発作の症状もありひっそりと暮らしていたが、ユーリは、何故還って来たのか彼の真意を尋ねる。
とても複雑な心情であり簡単に説明できるものではなく、彼はユーリを撥ねつける。
しかしユーリは、かつてのその母の自宅、今はルドウィックとマチアス(クラウディア)の住む個人病院となっている家に彼女を連れて来てしまう。
その母も彼も双方ともに気づいてはいるが、素知らぬ振りをして接触する、、、。
マチアスが地下室を案内すると謂った瞬間、母は強い拒否反応を示し直ぐに帰ると訴える(マチアスは以前、地下室で発作を起こしていた)。

母は病院の付き添い職員と共に帰ると言って車に乗り込む。そこへマチアスが強引に乗り込んで「何か言うことは無いのか」と母に詰め寄る。「直ぐに捨てることが出来たのにそうしなかった。でもそれは間違いだった」と彼女は返す。
職員は合わせるべきではなかったと謂い車を出すが、これは双方にとり、どういう意味を持ったか、、、。
単にユーリの独善的行為で彼らの平穏を乱し、もしくはトラウマを更に深刻なものにしてしまったか。
この荒療治が良い方向に向かう可能性はあるのか。

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その後、マチアスは村を離れたようだった。
ユーリは夫と車に乗りながら「わたしはどんな子でも受け容れるわ」とほほ笑んで語る。
a-ha のスローアレンジの ”Take On Me”が再び流れるが、とくに、、、
"Today is another day to find you"の歌詞が沁みた。
"I'll be coming for your love,,,,"そんな機会がないのなら生きる希望などない(に等しいではないか)。
何となく和んで終わるのだが、、、

ユーリはこの先もマチアスには責任があるぞ。




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X エックス

X 001

X
2022
アメリカ

タイ・ウェスト 監督・脚本・製作

ミア・ゴス、、、マキシーン(女優)
ミア・ゴス、、、パール(老婆)
ジェナ・オルテガ、、、ロレイン(録音技師、助手)
マーティン・ヘンダーソン、、、ウェイン(プロデューサー、マキシーンの彼氏)
ブリタニー・スノウ、、、ボビー・リン(女優)
ジャクソン・ホール、、、スコット・メスカディ(俳優、ボビーの彼氏)
オーウェン・キャンベル、、、RJ(監督志望、カメラマン、ロレインの彼氏)
スティーヴン・ユーレ、、、ハワード(老人、パールの夫)


時代物名作に幾つか触れたので、今日は最近のホラー映画を観てみることに。
理由は、暑いから。
更に今日は娘の中学の進路説明会、娘の壊した網戸の修理の為、自転車で30分のホームセンターにその網を買いに、、、。
等で、大変疲れた。
ちょっとスッキリを狙ったのだが、、、

X 002

ホラー観て、初めてゲロ吐きそうになった(苦。
これ怖いのではなく、ただ気持ち悪い。悪趣味。
新しいタイプのホラーなのか。
確かにこれまでもホラーは気持ち悪さをかなり伴った。内臓ベロンチョとか、、、グロテスクの極致を狙うとこれか。
そして登場人物の軽いと言うか、ネジの飛び方。

X 003

やはりわたしは、所謂ホラー合わない。怖いと思えずただ気持ち悪いのでは、、、。
(そもそもこれまでわたしは、ホラー観て怖いと感じたことがほとんどなかったことに思い当たる)。
この撮影クルーもかなりいってしまっており、助手の娘だけ真っ当な子だと思っていたが、次第に染まってしまう。
そりゃずっと撮影現場にいたら感覚的におかしくなってしまうのかも。
最後に殺されてしまうし、、、何とも。

X 006

大体、安いポルノ映画撮っていてこれは、受けるぞ客は驚くぞってそれはないだろ。
まず儲かるような映画ではないぞ。自主制作のカルト映画を作る気か。
これほど客観性のない連中で目は出ないから、ここでサイコホラーの餌食となって残されたカメラデータを誰かに編集して完成してもらえば浮かばれるのでは。マキシーン後は頼むと謂いたいところだが、ビデオカメラは警察に押収されてしまっている。
マキシーンも、もう興味なさそうだし(この女、薬ばかりやっていて何狙ってるのか分からない)。

X 004

それよりもデータが残っていてマキシーンだけ生きているから重要参考人にされるのでは。
基本的に殺人鬼は老夫婦だが、彼女も最後の最後に老女の頭を車で轢いている。
正当防衛に当たるかと思うが。警察が残されたビデオデータをこの胸糞悪い殺人事件の締めにどう生かすのか、、、。

生き残ったのは。気の強い薬漬けのナルシスト、マキシーンだけというヒロインは生き残る鉄板の展開。
しかしこの女優、ミア・ゴスは醜い老婆のパールも演じていたという事でよく頑張った。
あれは、VFX特殊メイクであったのか。それより別に女優頼んだ方が手軽で早いと思う。
ホントは、助手のロレインが生き残って欲しかったのだが、、、。

X 005

テキサスの田舎にわざわざ撮影に借りられる農場の小屋を手配しそこで映画を撮って一儲けを狙ったのは良いが、、、
貸主が飛んだサイコ老夫婦であったという不運な若者6人の御話であった。
通常こういった殺人鬼に狙われた主演レベルの人はそこそこ感情移入出来、どうにか助かれば良いがとか応援してしまったりするものだが、助手の子以外はさっさとやられておしまい、という感じの面々であった(爆。

まあ、気持ち悪ホラーではナンバーワンだね。
老婆が酷く気持ち悪い上に残忍な殺し方をする。夫の老人は、その後始末役か。
あの奇妙なそばかすも気になったが、この主演女優の写真を後で観たらそんなの無かった。
どういう趣味による設定なのか。
ワニがやはり出て来る。アメリカ人はワニ好きである。どんな時でも。
監督が変なのだ。この監督の作品は、今後スルーする(笑。

X 007

ブルーオイスターカルトの”(Don't Fear) The Reaper”だけ良かった。
(RJが一人で車で帰ろうとした夜、パールにグチャグチャに刺殺される時にカーステから流れる)。
久しぶりに乗った。



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オペラは踊る(オペラの夜)

A Night at the Opera001

A Night at the Opera
1935
アメリカ

サム・ウッド 監督
ジェームズ・ケヴィン・マクギネス 原案
ジョージ・S・カウフマン、モリー・リスキンド 脚本
ハーバート・ストサート 音楽

グルーチョ・マルクス、、、オーティス・B・ドリフトウット(詐欺師)
チコ・マルクス、、、フィオレッロ(自称マネージャー、リカルドの友人)
ハーポ・マルクス、、、トマッソ(フィオレッロの助手)
キティ・カーライル、、、ローザ・カスタルディ(ソプラノ歌手、リカルドの恋人)
アラン・ジョーンズ、、、リカルド・バローニ(テノール歌手)
ウォルター・ウルフ・キング、、、ロドルフォ・ラスパッリ(花形テノール歌手、リカルドの敵役)
シグ・ルーマン、、、ヘルマン・ゴットリーブ
マーガレット・デュモント、、、クレイプール夫人(大富豪の未亡人)


今日もトーキー初期の古典的名作を観てみた。折角である(笑。

A Night at the Opera004

まあ、この時期のコメディ映画にはよく見る光景であるが、人々がちょこまか動き、よく頭の上にモノが落ちて来る。
そしてよく殴られる。
しかし直ぐに飛び起きて相手を追い回したりして、ヒトが皆抽象的な人形に見えてくる。
この映画は動きも良いが、間が絶妙でもあり、そこがこの出来栄えに繋がっている、間違いなく。

何と電話ボックスみたいに狭い船室に物凄い人数が押し込まれるシーンにシュルレアりリムの巨匠ダリも絶賛であったと、、、。
確かにえらくシュールなシーンであった。絵にしたら面白いわ。
笑うとかいうレベルではなく、物理的にもどうなってしまうのか、、、というような不安に駆られる異様なシーンであった。
(ここ程ではなくても、物との連動の工夫の面白さが細かく演出されている。人同士を超えて)。

A Night at the Opera006

船上でのシーンはとても印象的であった。
感動的なものでは、、、
フィオレッロとトマッソによるピアノとハープの演奏シーンは乗客共々とても楽しく盛り上がったものだ。
(特に子供たちの彼らの演奏を楽しむ笑顔が素晴らしい)。
ローザのソプラノとリカルドのテノールも素敵。
船上だけでオペラ座が味わえる。客にとっては得した気分だ。

A Night at the Opera007

何でもクイーンの『オペラ座の夜』はこの映画からつけられたタイトルなのだと。
まあ各方面に影響を与えた作品であることが分かる。
マルクス兄弟の最高傑作にも数えられているが、わたしはまだ彼らの作品には僅かしか接していない為、他も是非見て味わってみたい。
大変長い髭を生やした宇宙飛行士の英雄3人の髭を切って自分たち密航者各々に貼り付けて逃げるとか、発想も飛んでる(爆。
期待できるものだ。
いや、それ以上に、踏み込んで来た警官を騙すために4つのベッドを一つづ隣の部屋に移動させ、最後にベッドの亡くなった部屋で変装して他人に成り済まして切り抜けるなんて、まずあり得ないだろ、と謂いたいが切り抜けている(爆。もうこの兄弟には手の付けようがない。

A Night at the Opera005

全編ほぼすべて彼らのドタバタに終始する。
それをいちいち説明していたらきりがない、というより意味がない。
マルクス3兄弟のやり取りは、もう滅茶苦茶のシュールな連携。
ナンセンスの極みである。そう動作・所作だけでなく言葉のナンセンスさのセンスも。
特にグルーチョ・マルクス(ドリフトウット)のアクの強さは特筆ものだろう。
(近い存在としては、「バカボンのパパ」か)。
あれだけ厚顔で失礼で下品なのに憎めない面白さがある。
アメリカまで船を密航して来て、ゴットリーブやロドルフォを怒らせてしまい、警察に追われる身となり、オペラ一座からローザまでがクビにされてしまう。
この事態に対し、ドリフトウットの「ネチネチとあの手、この手を考えてみよう」と、奇想天外の反撃に出るところは、とても気に入った。
(わたしもこのような反撃は是非、心掛けたい)。

A Night at the Opera002

チコとハーポの機敏さと多芸な才能も凄いものだ。
ロドルフォがアメリカの公演で歌を披露している最中、中幕や書割でサーカスじみた曲芸で舞台を台無しにするところなど、日本のドリフにも確実に影響を与えているはず。
それでもこの嵐の中『イル・トロヴァトーレ』は進行すのだ。狂騒状態のまま。
そのカオスを経て、しっかりローザとリカルドの恋も成就するのだから、凄い力技でもある。
詰まり、最後をロドルフォに入れ替わり、ローザとリカルドが締めくくり大喝采で終演する。
そう、ロマンチックも置き去りにしない(笑。

A Night at the Opera003

ここで、ローザとリカルドが団員に復帰し、怪しいことこの上ないドリフトウット、フィオレッロ、トマッソもお咎め無しで警察も退却。
マネージャーとして契約も取る。
これまた余りに強引な力技~ハッピーエンドだが、面白いのでよしとしたい。




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ル・ミリオン

Le million007

Le million
1931
フランス

ルネ・クレール 監督・脚本
ジョルジュ・ベール、マルセル・ギユモー 原作
アルマン・ベルナール、フィリップ・パレス、ジョルジュ・ヴァン・パリス 音楽

アナベラ、、、ベアトリス(リリック座のダンサー)
ルネ・ルフェーヴル、、、ミシェル(画家、ベアトリスの婚約者)
ルイ・アリベール、、、プロスペール(彫刻家、ミシェルを裏切る友人)
ポール・オリヴィエ、、、チューリップ親父(ミシェルの上着を奪う泥棒)
コンスタンタン・シロエースコ、、、ソプラネッリ(リリック座のテノール歌手、チューリップ親父から上着を買い取る)
レーモン・コルディ、、、タクシー運転手
ヴァンダ・グレヴィル、、、ヴァンダ


今日もルネ・クレールにする。
昨日は既に観た映画について書いたので、まだ観ていない本作にした。
とってもよく出来たミュージカルコメディ。
全体の流れの緩急がリズミカルで心地よい。

Le million001

夜のパーティーが煩いと天窓から注意にやって来た隣人に、このパーティーが何なのか今朝からの経緯を語って聞かせるという形で始まる。時間を戻して見せるという乙なものだ(笑。
箱庭の模型で作られたような街を俯瞰するカメラワークがお伽噺の始まりを期待させるに十分な効果を持つ。

Le million003

宝くじの当たった貧乏芸術家のミシェルがボロジャケットのポケットに籤を入れたまま上着ごと奪われてしまい、その行方をひたすら追うドタバタコメディとなる。
巴里の街に消えたボロ上着の後をミシェルと敵となったプロスペール、泥棒更に警察も加わり、必死に追ってゆく。
お洒落で、よく計算されたストーリー展開だ。

いよいよ押し迫る後半の上着を次々に奪って逃げる様はまるでラグビーそのものだし、とてもハラハラさせる(最後の最後まで)。
それと同時に、ベアトリスがミシェルの浮気心にやきもきする心情もクロスする。
つまり余計にハラハラさせるのだ。
それらが絶妙に絡む歌と共にテンポを増してゆく。

Le million005

特に終盤のミシェルとベアトリスの心の動き~心情をオペラ座の舞台がそのまま同期して表すという破格のミュージカルとなっていて圧巻。(中盤でプロスペールが友人ミシェルを裏切る場面でも彼の心情を表す歌が流れる)。
相変わらずちょこちょこ多くの人が追いかけっこをするが、それぞれの動きがコミカルでとても細やか。
やはり動作やその連鎖が後のチャップリンのものを連想させる。
しかしここに政治的なモノは感じられない。

そして最後は、奪い合いの果てにそれは何処かに失せてしまい、諦めてミシェルとベアトリスはタクシーで払う金もないのにオンボロアパートの前まで乗り付ける。するとそのタクシーの屋根にボロジャケットが乗っているではないか。喜び勇んでその上着を手にすると泥棒軍団がやって来てピストルで脅し奪ってゆくのだった。
これで再び落胆、憔悴しきったところで、部屋に戻ると借金取りたちが一堂に集まり盛大なパーティーを準備しているではないか。
意を決し悪い知らせを語ろうとしたところに、ベアトリスに上着を届ける約束をしたチューリップ親父(泥棒の親玉)がプレゼントとして届けてくれる。
又もや舞い上がりポケットを調べるが、空っぽ。
ここでもう万事休すかというところで、宝くじの券は無かったのかと聞くと、これかいと素直に出してくれる(何で?
2人は大感動で抱き合いその流れで盛大なパーティーへ。
何ともギャグコントみたいなアップダウンである。終始この調子であったが(笑。

Le million004

ただし、「この世はお金がすべてじゃないけれど お金はやっぱりありがたい お金がすべてじゃないとインテリは貧乏人に言う でもその言葉よりも お金の方がありがたい」と謳ってパーティーの大団円となるが、ここ数日間続いているフランス(正確にはフランス語文化圏)における大暴動も実は貧困~格差・差別~不平等が根底にある庶民の不満の爆発である。
引き金が警察の不正であったことが大きかった。
あっけらかんに楽しく唄って踊っているが、かなり謂い得ている歌詞であろうか。

Le million006

ベアトリス役のアナベラが素敵であった。
曲も良い。
しかしどう見てもミシェルは、ぐうたらでいい加減な男にしか思えなかったが、、、。
ルネ・クレール監督による「巴里の屋根の下」の次のトーキー映画である。
やはり面白い。



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自由を我等に Ⅱ

À nous la liberté010

À nous la liberté
1931
フランス

ルネ・クレール 監督・脚本
ジョルジュ・オーリック 音楽

レイモン・コルディ、、、ルイ(蓄音機会社の創業者、社長)
アンリ・マルシャン、、、エミール(ルイのムショ仲間)
ロラ・フランス、、、ジャンヌ(ルイの秘書)
ポール・オリヴィエ、、、ジャンヌの伯父


5年後に上映されるチャップリンの「モダンタイムス」に大きな影響を与えた作品としても有名。
特にベルトコンベヤからのドタバタ騒ぎなど、シーンや内容的にもその作り出す世界観の先駆けでもある。
未来世紀ブラジル」にも繋がるものだ。更にシリアスではあるが「レ・ミゼラブル」も想起するところ、、、。
しかしその内容よりもサイレント映画的にセリフを抑えコミカルで哀愁もあり、小気味よい所作で展開して行く流れが秀逸である。
観て行くうちにいつか見た夢を思い出しているかのような気持ちにもさせる。
そう恐らくそこがわたしにとり、この映画を特別なものにした。

À nous la liberté011

極めてアーティフィシャルで抽象的~人形的な光景なのだ。
とてもリアルなチャップリンも意図した資本主義社会というより市場社会における人間の疎外を基調とするにせよ、絵が精緻な夢のような脈絡をもって進行する。
この辺の感触が心地よい。いや違和感もあるのだが、しっくりくる。

この感覚は、やはりトーキーが流行っているのに基本サイレントで抽象性を持たせた「モダンタイムス」と質的に似通っている。
所謂、現在の実写映画と比べてみると、まるで実写にはなっていないのだ。
そこが妙に記憶に残ってしまった夢に似ている。

À nous la liberté014

この時期の映画なら皆、そんなものだろうと言うと、そうではない。
やはりルネ・クレールだからだ。
セット(ロケ現場)と風などの使い方、ベルトコンベヤからオートメーションへの流れ、カラッと乾いてコミカルなのに全編を覆う切なさと哀愁。
終盤の風の吹き荒れるシーンに特に惹かれる。
あれだけの風を受けながらスピーチを続ける老人のシュールさが好きだ。
札の舞飛ぶところは特にどうでもよい。
そして誰もいなくなった」、「 巴里の屋根の下」、「自由を我等に」(実は2017/3月に既に観ている)は、やはり格別なものがある。
この映画については、前回に感想は書いているので、そこについて重複は避けたつもり。

À nous la liberté015

今回は何となくまた観てしまったが夢見心地になってしまったので、最後まで行ってしまった。
いつもならブログ用に新しい映画を他に観るのだが、これが途中でやめられなくなったのだ。
その訳をほんの一言、記しておきたくなったもの(笑。
(実は、以前観たのだが、またAmazonPrimeなどで見つけてまた観てしまうということは、これまでに幾度もある。ただし途中で切り替えたり、ブログ用にその後、もう一本観たりしたものだが、今回はこれを観たらもう今日が終わる時間であった(爆)。

二度目を書くほどの説得力はないのだが。





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ホームワーク

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Homework
1989
イラン

アッバス・キアロスタミ 監督・編集・インタビュアー

小学生の男子生徒たちと二名の父親


インタビュー形式のドキュメンタリー映画である。子供の顔を正面から撮ったシビアでタイトな映像であった。
アッバス・キアロスタミ監督作品は、「風が吹くまま」、「友だちのうちはどこ?」、「 そして人生はつづく」、「オリーブの林をぬけて」、「桜桃の味」の5作は観て来た。子供の情景が印象に残る作品が多い。

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まず何と言っても恐ろしい程の不毛感、虚しさを覚えた。
なにやら式典~行事?の準備・練習を学年全体の体制で教師が生徒たちに指導している光景に眩暈を覚える。
「シーア派の始祖はアリ―だ!」とか何度となく叫ばされ、これからの彼らの人生がどういうものになるのか心細いことこの上ない。
一番、伸び伸びと友達と過ごし、頭も柔らかい時期であり、基礎学力(定義は色々あるが)を身に付けつつ、様々な事に興味関心を抱き、趣味や習い事にも励む年頃であってよいはずだが、、、
学校~教師はある意味、イスラム教への洗脳のような取り組みに全精力を傾けている様子が窺える。
子どもたちはただ抑えつけられ、多くの時間を費やし訳も分からぬ文言を暗唱させられていることがはっきり分かるものだ。

監督自ら、「宿題」について、子供たちそしてその保護者へのインタビューを通し、イランの抱える教育事情~諸問題を浮かび上がらせる 。「宿題」からホントに析出されてゆくのだ。
これは、そのまま子どもに対する教育の在り方を問うものになってゆく。

イランではやたらと宿題が多く、それが子供が自分ひとりで完結して出来るものになっておらず、必ず家の誰かの手伝いが必要となるものだそうだ(例えば、書き取りの宿題で誰かがテキストを読む役をしなければならないとか)。
何人兄弟?と聞くと10人のところもある。
両親は子どもが多い上に、仕事勤めと家事で忙しく子供に時間をかけること自体が難しい。
だが、問題はそこではなく、親が見ようにも両親ともに文盲というケースが少なくないのだ。
そうでなくとも、自分が教えられた算数と今子供が習っている算数が余りに違い、教えられないという。
どういう算数なのか、見てみたい。

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また書き取りは、綺麗な字で書くことが義務付けられ、何度も書かなくてはならない。
訳も分からぬ宗教的な内容の噺だ。たくさん書いて暗記するようだ。
全ての教科の内容がイスラム教と関連付けられているらしい。
高圧的に教え込まれる形で強制的に学習させられる。
その為、宿題忘れの生徒は教師に定規が割れるまで叩かれ罵られ、親にもベルトで鞭打たれるという。

小学校の一角に特別に宛がわれた部屋でアッバス・キアロスタミ監督から一人づつ呼ばれ、質問を受ける子供たちのその委縮しオドオドした態度にはとても当惑する。
好奇心旺盛で活き活きした快活さを感じる生徒が一人としていないことに、こちらの気持ちも沈み込む。
「君はテレビのアニメと宿題とどちらが好き?」に対し宿題忘れの生徒たちがが皆「宿題」と答える。
(忘れた子供たちの理由は幾つもあるが、量が半端でない無味乾燥な拷問のような内容では無理もないにも関わらず)。
目がそもそも生きていない。不安と恐怖が植え付けられた目だ。純粋で悪戯っぽい光る目をした子がいない。
様々な暴力で抑えつけられ書き取り暗唱ばかりやらされ自尊心も主体性も自我も育っていないことは明らか。
この子たちが親になればやはり子供に同様のことをさせ、出来なければベルトで散々打ちのめすのかと思うとやり切れない。
(教師も全く同じ姿勢だ)。

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多様性も創造性もあったものではない。
だが、ヒトにとり一番大事な時期ではないか。
父親の1人は外国暮らしをかなり経験した知識人で、宿題など出さずに学校で完結させるべきだという。
そして何より覚えさせるのではなく自ら考える子供を育てなければ、創造性など生まれる余地などない、と語る。
学校で教員から家で親からただプレッシャーを与えられ罰を受ける子供の負担と精神的弊害についても述べていた(ちょっと光明を感じたが)。
教育内容も自分の頃とは大きく違い(算数がどれ程違うのかちょっと比較して見せて欲しいのだが)、そのまま自分のやりかたでは教えることに躊躇するという。せめて親にも協力してもらいたいならその内容に関する保護者用のプリントを出して欲しいというのも真っ当な意見だ。手伝える家族にとり有効であろう。
だが、少数派の考えであることも確か。外国から自国を見る目は普通なかなか持てるものではない。

1989年の時点で小2の子が現在どういうイラン人になっているのか、、、。
とても怖い。イラン・イラク戦争もあり、将来の夢はと聞かれて「フセインを殺す事」と答えていた子もいた。
最後に、監督から授業で習った詩をリクエストされた(ともだちが近くにいないと独りではいられない)子が、とうとうと暗唱し出すのだ。詩が身体に沁みついてるが如くに、淀みなく、、、。
教育は、ホントに恐ろしい。

何で女の子を一人もインタビューしてないのか、分からない。
(女子は果たしてどう感じているのか。どういう状態なのか。とても肝心なところではないの)。




AmazonPrimeにて







エル プラネタ

El Planeta001

El Planeta
2021

アメリカ、スペイン

アマリア・ウルマン 監督・脚本・主演・製作・衣装

アマリア・ウルマン、、、レオ(スタイリスト)
アレ・ウルマン、、、レオの母(無職)
チェン・ジョウ、、、レオの一時の恋人、雑貨店店員


モノクロで乾いた画面がオシャレ。
街もモノもヒトも皆、同じような質感で、どれが主役でもない。
アニエス・ヴァルダ監督の映画をちょっと想いうかべた。
内容は違うが、絵のトーン~センスは近いと思う。

El Planeta002

アマリア・ウルマンとアレ・ウルマンは本当の娘・母であり映画でもそのままの役。
凄い、低予算映画だ。何でも、チェン・ジョウもアーティスト仲間だそうだ(笑。
監督が主演と謂うのは、他にもあるが、実の娘・母でその役をやるなんてやり難そうだが、どうなんだろう。
有名な俳優使わぬ分、お金は浮くけど(もしかしてハリウッド映画に対する批判的なアプローチでもある?)。

話の内容も、職が無くて貧困そのものの娘・母の日常を淡々と描く。
職探しも節約もせず、見栄っ張りで「つけ」でどんどん買い物してしまう。
インスタ映えを気にした投稿もしている。
母は特に、あちこちに自慢話をして回るが、時折万引きで捕まったりもしているみたい(娘には内緒だ)。
(娘にはアヴリル・ラヴィーンの仕事があるのよ、とか謂いつつ店を出たところで店員に捕まりバッグから商品を取り上げられる)。

El Planeta004

娘の仕事依頼はそのまま立ち消えか、、、この落胆はわたしにも分かる。
だが彼女らの事態はとても深刻だ。
終いには電気も止められ普段仲の良い母娘も険悪な状況に、、、。
ドライヤーが使えなくなると女性には応える。冷蔵庫がまず問題だと思うが、、、。
ノートパソコンは図書館で充電して来るから良いとしても、手を打たないと。
福祉担当部署に相談したり、職探しが上手く出来なければ、一時生活支援事業とか、どの国にも自立支援制度はあるはず。

El Planeta003

と、普通は何らかの動きは取るはずだが、プライドが高く、生活保護も受ける気はなさそう(母が特に。
娘は危ないSNSを介した性関係のバイトをやりかけて、その低額なのに幻滅して止めたり(不幸中の幸い。
そんな状況なのに、暗さがなくジメジメもしていない。
母は、アルゼンチンに行ってタンゴを習いたいわね、とか言って狭いアパートで踊ったりしている。

ジャブは度々喰らってダメージは受けていても、基本そういう人たちなのだ。
これを日本に持ってきてしまったら、暗くジメジメでもう観ていられないモノになるかも。
娘も、チープな雑貨店で出逢った中国人に恋をして彼がただの遊びと分かった時だけ酷く落ち込むが、その後プライベートビーチみたいな砂浜で裸で(よくこんな場所があったと思うが)泳いでスッキリである。
この辺、とても良い性格と謂うべきだ。
但し、帰って来てドライヤー使おうとしたら電気が止められていて、母と言い合いになったが。

El Planeta005

そしてこれ、ずっと製作国としてフランスが絡んでいると思っていたのだが、最後が実に決まっている。
娘と一緒にいつものように過ごしている時に、ドアチャイムが鳴る。
母が出て行くと玄関には警察が。同行願いますと謂われその場で支度して彼女は何も告げずに出て行く。
奥から娘の「ママ」と呼ぶ声だけがする。
実におフランスぽいのだが、アメリカ・スペインなのね。

この乾いた淡々としたトーンとても心地よいのだ。
監督~ヒロインも魅力的。
とってもフランスぽい。
貧困問題が基調にあるとしても個人の意識と生活スタイルの問題でもある。
その辺の突き方は絶妙でオシャレ。
この娘~母の関係性が生活の現状を膠着化している部分は否めず、彼女らが変わらないのは濃厚な共依存関係にある為だ。ちょっと良い歳した娘がこんなに母とべったりはなかろう。
問題の核心は、双方の自立にある。その方向性が母の逮捕で不可避的に生まれるのかしら(それを匂わせて終わる)。

El Planeta006

ソフィア・コッポラとかよりずっと面白い。
若い女性監督・女優であるからか、結構、他の女優や歌手をいじっていたが、そこも興味深い(笑。
他の作品も期待したい。



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”Bon voyage.”

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ファースト・マン
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