フラッド

Hard Rain
1998
アメリカ
ミカエル・サロモン 監督
グレアム・ヨスト 脚本
モーガン・フリーマン、、、ジム(強盗のリーダー)
クリスチャン・スレーター、、、トム(現金輸送係)
ランディ・クエイド、、、マイク(保安官)
ミニー・ドライヴァー、、、カレン(教会関係者)
エド・アズナー、、、チャーリー(トムの相棒)
マイケル・グリアン、、、ケニー(強盗団)
ダン・フロレク、、、メーラー(強盗団)
ウェイン・デュヴァル、、、ハンク(ダムの管理人)
ピーター・マーニック、、、フィル(警官)
マーク・ロルストン、、、ウェイン(警官)
「フラッド」でも分かるが、原題の「ハードレイン」の方がこの場合、自然の無慈悲さはよく窺える。
インディアナ州のハンティングバーグは、大変な豪雨に見舞われ、町のほとんどが冠水し、上流のダムの決壊で洪水に見舞われる。
現金輸送車で各銀行から集めた金を巡り、水が凄い勢いで増水する間、輸送の職員、保安官たち、強盗の3者に教会のステンドグラスの修繕に当たった女性も絡み、激しい攻防が展開されるクライムアクションであり人間ドラマでもある。

CGは恐らく使わず、スタジオセットでこの洪水シーンを作った感じなのだが、、、。
水の迫力と熱演は凄かった。
セットの設営とその撮影、演技共にかなり大変だったろうな、と思うし費用も相当かかったはず。
銃は勿論、ボートによるアクションもたっぷりあり、余所見をする余裕はない。
とても良い出来だった。
最初は、現状に耐え地道に自分の職務を全うして頑張る人たちが描写されているかに見え、、、。
現金輸送車が大雨で路肩を外れ立ち往生してしまったと思ったものが仕組まれた罠であったことが判明する。
この降り続く豪雨と宙吊り状態の金の存在により、ひとの抑圧していた欲望が一気に頭をもたげたと謂うところか。
ドンドン嵩を増してゆく水にモノが流され削られ壊されてゆく状況の圧力に精神が蝕まれてゆく過程で。

強盗団のリーダーのジム、現金輸送係のトム、保安官のマイクの主演者たちは、申し分なかったが、ヒロインが今一つ馴染まなかった。その場にいる必然性があまり感じられないのと女優のオーラの問題。他にも相応しい女優はいくらでもいるように思えた。
ジムは、如何にも大物リーダー感があったが、結局、相手の保安官チームのあくどさにトムと組んで闘うこととなった流れは分かる。
しかも完全に狙いが同じなのだ。盗賊の逮捕ではなく自らがそれとなったのだ。よってはっきり敵である(爆。
トムは、増水した雨で動かなくなった輸送車が強盗団に襲われたとき、迷わず金を隠したのは命を守るための担保としてだろうが、歩きにくい水量のなか、逃げる速度を考えると微妙な判断に思える。普通ならそのまま逃げたら単に目撃者として撃ち殺されてお仕舞であろうし現金隠すのはクレバーであるが。
保安官は元は真面目で、任期満了するまで幾ら住民の不評を買おうと、責任を持って街を守る意志を持っていたことは窺えるが、ダムの決壊と共に大義はもうどうでもよくなり、輸送車の金を強奪して老後の安寧を確保しようと決める。尽くしてきたが報われない。もうすぐ任期を終える。先が心許ない。そこに益々激しく降り注ぐ雨、ついにダムの決壊とまで来た時に彼の中の何かも崩壊したのだろう。
われわれも日常生活が悉く上手く行かず、外的要因で流されたり紆余曲折して疲労困憊したりしているうちに、これまでの役割を全部投げ出してしまおうという衝動に駆られることはあろう(大概踏みとどまるが、このような持続する災害が堰を切ってしまうことはあるかも知れない)。
ヒロインの動きはどうにも取って付けたような感じで、とりあえずクライムアクション(+ディザスター)モノには女性も何らかの形でいれなければ、そしてパニック度、スリルを際立たせる役目を担って貰うというところだろうが、、、女優がしっくりこなかった。

ハラハラ感はかなり高く、演出も凝っており、危機からの脱出も一発では上手く行かず、何度もトライ&エラーを繰り返して脱するところもなかなかであった。
最後の鬼と化したようなマイクの執念が怖さを充分に魅せていたが、トムに撃ち殺される。
このトムであるが、最初に現金を隠した時、明らかにこやつはどさくさ紛れにせしめる気だろうと思っていたが、ついに最後までくすねることは無く、州警察に渡すつもりであったようだ。ちょっと何か企んでいるような顔に終始思えていたのだが。
そして終盤は、トムとカレンを守り、悪の警官たちと渡り合ったジムに礼を謂い、彼を逃がす。
その際に笑顔と共に現金の入ったバッグ2つのうち1つをボートに乗せてゆく。
他の連中は金に振り回され皆命を落としたが、無欲のトムとカレン、欲はブレずに持っているが、流されず冷静で判断を誤らない盗賊のジムは生き残る。
わたしもモーガン・フリーマンが生き残ると嬉しい(笑。
U-Nextにて
