水の中のつぼみ

Naissance des pieuvres
2007
フランス
セリーヌ・シアマ 監督・脚本
ポーリーヌ・アキュアール、、、マリー(15歳の少女)
ルイーズ・ブラシェール、、、アンヌ(マリーの同級生)
アデル・エネル、、、フロリアーヌ(上級生の花形選手)
ワレン・ジャッカン、、、フランソワ(男子選手)
監督の処女作。
マリーは腐れ縁の同級生アンヌと普段はつるんでいるが、ある日アンヌの属するアーティスティックスイミングクラブの演技発表会の際、上級生で花形選手のフロリアーヌの姿に一目惚れしてしまう。
マリーは憧れのフロリアーヌに近づきたいが為、クラブに入り、彼女の演技を近くで見学させてもらう。

しかしその条件としてフロリアーヌのお願いを聴かなくてはならない。
それが彼女が彼氏と逢いに行くときに怪しまれぬように彼女を家から連れ出し、落ち合う場所まで一緒に行き、彼女が彼氏と共に過ごす間外で待っていて、終わったら一緒に帰るというもの。
流石に何度か付き合ったところで、嫌気がさしてもうこんなことに付き合わない、とはっきり断る。
当然、そりゃそうだとこちらも思う。
アーティスティックスイミングの演技をしている時、終わってプールから上がり挨拶していたフロリアーヌは確かに綺麗で輝いていたが、日常生活や彼氏とイチャイチャしている時の彼女には特に魅力は感じられない。
マリーもそう思ったのではないか。
スターとは兎角、そういったものなのかも。

しかしフロリアーヌの方がマリーを必要とするようになっていた。
彼女にこころを許していたのだ。
フロリアーヌは容姿が端麗である為、男子にやたらとモテ、周囲から妬まれていた。
その雰囲気に対する反発から殊更に人前で見せつけるなどして、孤立を深め苦悶しているところはある。
マリーには率直に話し、男性とも最後までは行けず、突き放して逃げて来てしまっていると告白する。
このことで、マリーとフロリアーヌの関係は深まる。
一方、ずっと一緒に何となくつるんでいるアンヌは独特の個性を持ち他者と広く付き合えるタイプではなく自閉的な特性をみせるぽっちゃり形である。マリーとフロリアーヌの美形に対し、逆の意味で目立つ方だ。
しかし性的な欲求はかなり強く、フロリアーヌのプールでの彼氏のフランソワを狙っている。
自分の世界に入りこんでおり、客観性はあまり感じられない。
幼児性もあり、オマケ欲しさに自分の年齢では頼まないランチを頼み、そのオマケで遊んでいるところをしみじみ見ていたマリーに、あんたは自分を巨乳だとか言ってるけど、ただのデブのガキよ、もううんざり、と呆れられる。
確かによく分かる。ネックレスを万引きしてフランソワにぬけぬけと渡しに行ったりもするのだ。

それでマリーはフロリアーヌに更に接近することに。
しかし、男子との一線を越えられないフロリアーヌに、その最初の相手になって欲しいと懇願されたときは強く断る。
こころの準備などしているはずもなく単に驚いたにせよ、相方の不甲斐無さに呆れるうちに、それを引き受けることにする。
フロリアーヌのベッドでそれをするが、その後このふたりの関係はどうなるのだろうと思う。
マリーはフロリアーヌに対して恋愛に近い感情は抱いているのだが、フロリアーヌの性的な関心はやはり男子一般に向けられている。マリーのお陰でフロリアーヌは解放されてこれからは自由に気楽に男子と関われるようになったという感じである。
マリーとしてはそれが納得いかない。彼女の方から今度はフロリアーヌにお願いする。
フロリアーヌは直ぐに悟り、マリーを抱き寄せキスをする。「こんなの簡単よ」と謂って彼女は離れてゆく。

丁度そのタイミングで、フロリアーヌに袖にされたフランソワがネックレスをくれたこともありアンヌをその捌け口にやって来た。その勢いでふたりは肉体関係を結ぶ。しかしアンヌは自分が愛されているとは感じていない。単にフロリアーヌに向けた欲望が果たせなかった為にアンヌを代用したに過ぎない。それは彼女も感知していた。
3人の少女たちのこころの動きが淡々と描写されてゆくのだが、不思議にマリーとフロリアーヌ、マリーとアンヌの関係はタップリ描かれるのだが、フロリアーヌとアンヌは全くない。フロリアーヌにとりアンヌは人には見えないのかも。
フロリアーヌはひとり恍惚の表情で踊っており、結局はフロリアーヌに振り回された形のマリーとアンヌは元のように寄り添い、プールにふたりで浮かんでいる、、、。
しかし最後にマリーの目が光り表情が何をか告げている。

ソフィア・コッポラの描く女子よりこちらの方が瑞々しかった。ポーリーヌ・アキュアールはこれからが楽しみの女優だ。
この監督も処女作でここまで描けるとは、凄いものだが、処女作を超えるのは大変だとも謂われる。
今後に期待したい。
U-Nextにて
