ロニートとエスティ 彼女たちの選択

Disobedience
2017
アイルランド、アメリカ、イギリス
セバスティアン・レリオ 監督・脚本
レベッカ・レンキェヴィチ 脚本
ナオミ・アルダーマン『Disobedience』原作
マシュー・ハーバート音楽
レイチェル・ワイズ、、、ロニート・クルシュカ(NYの写真家、父はユダヤ教指導者)
レイチェル・マクアダムス、、、エスティ・クパーマン(ロニートの恋人、ユダヤ教徒)
アレッサンドロ・ニヴォラ、、、ドヴィッド・クパーマン(エスティの夫、次期指導者)
アントン・レッサー、、、クルシュカ(ユダヤ・コミュニティー)
バーニス・ステジャース、、、フルマ(ユダヤ・コミュニティー)
アラン・コーデュナー、、、モーシェ(ユダヤ・コミュニティー)
ニコラス・ウーデソン、、、ゴールドファーブ(ユダヤ・コミュニティー)
リザ・サドヴィー、、、ゴールドファーブ夫人(ユダヤ・コミュニティー)
The Cure の” Lovesong”が唐突に鳴ると二人は過去の時間に飛ぶ。
香りや場所、絵や写真もそうだが、音~音楽は特にその作用は強いと思う。
エンディングにもかかり、しみじみ聴き入った。かつてよく聴いていた音でわたしにとっても特別の意味を持つ。

厳格なユダヤ教のコミュニティー。
ある意味、ここに全面的に身を任せてしまえば、結構楽に暮らせそうな気もする。
そんな顔をしている人もいるし。
だが戒律が半端ではなさそう。生まれてずっとこの環境ならそういうものだと暮らせるか。
しかし外界の情報は常に入って来るのだから、当然相対化して考えるはず。
ここではとても生きては行けないというユダヤ人も出て来るものだ。
物語は、その厳格なユダヤコミュニティーの指導者の娘が突然ある日消えてNYで写真家となっていたが、父の訃報を受けて帰郷したところから始まる。

冒頭シーン、ラビが亡くなる前の講話で終盤、「選択」と「自由」をテーマにとり上げていた。
このコミュニティーで生きていれば生活・思想・信条全てが鋳型としてあり例外は認められない。
長い伝統をコミュニティーの成員に厳格に守らせ尊敬されて来たラビが最期に「選択」と「自由」を口にして亡くなる。
このテーマが噺全体の基調となって流れてゆく。
父の葬儀・告別に参加する為に還ったロニートに対し、コミュニティーの面々は皆しかめっ面で冷淡。
迎え入れてくれたのは幼馴染のドヴィッドと今や彼の妻となっているエスティくらいであった。
ロニートは、エスティがドヴィッドと結婚していることに驚きを隠せない。
コミュニティーの誰もがエスティとロニートとの関係を知っていたのだ。
ラビはこの件を知った際、神にわたしを殺してくださいと叫んだという(驚。

ロニートは独りでここから脱したのであるが、エスティはコミュニティーに残った。
そしてそこで生きるために幼馴染の優しく賢いドヴィッドと結婚をした。ラビの勧めの下で。
だが、愛せるのは女性であり、ロニートであった。その後もずっと彼女の事を想い続けた。
これは辛い。だからラビの訃報も彼女がロニートに伝えたのだ(他の者はその気はなかったらしい。実の娘なのに)。
新聞にも偉大なるラビの死が掲載されていたが、子どもはいなかったと綴られている。
実家を売るつもりでもあったが、遺言で既に寄付されていた。
ロニートの立つ瀬は無い。何とも、、、。ユダヤ教とそのコミューンはこれ程のものなのね。

しかし一番最初に惹き付けられたのが、2人きりになった部屋で何気なくつけたラジオからThe Cure の”Lovesong”が流れ出した時だ。
それまで疲労感たっぷりで、お互いに強張っていたエスティとロニートのこころから、かつての感情が急に瑞々しく迸るのだった。
確かにあんな環境下ではとても素直な感情など表せない。無意識的にも抑圧してしまうものだ。
だが、ここで2人は昔の2人に還る。
愛し合うが、直ぐにエスティは素面に~日常に戻る。彼女は現在、学校の教師をしており、とりわけ規範を体現していないとまずい立場なのだ。


しかし一度戻った感情(情熱)~生命力は留められない。
校長や夫、周りの人々に批判されても自分の確固たる核を実感してしまっては法も何もあったものではない。
2人はそれを強く訴えるが、ドヴィッドは激しく抵抗を示し、ロニートがここに戻ってきたことで災難が起きたと彼女を責める。
彼の立場としても自分の妻の覚醒と謂い、新たなラビとしての責務からして、それを認める訳にはいかなかった。
しかし冷静に熟慮し、ラビの告別そして新たに後継者としてラビに就任する挨拶で、彼は前任者の最期のスピーチより「選択」と「自由」の件を取り上げる。
敢えて強調する。われわれは自由だ。そして妻を見詰めて、君は自由なのだ、と。
このシーンは流石に感動的な流れとなった。一時険悪な空気を孕んだ3人の関係であったが、その空気は払拭される。

わたしは、エスティとロニートは手を取り合い、NYに行くのではと思っていたのだが、エスティには子供が出来ていた。
エスティはコミューンには残るが、これまでとは違う、互いにもっと自立した夫婦としての再出発となるはず。
ロニート1人で帰って行くのだが、エスティは子供の自由を守ることを誓う。
素敵な女優のW主演であった。
見て損はないが、ユダヤ教のコミュニティーの厳しさには、眩暈がした(笑。
U-Nextにて

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