SAD VACATION ラストデイズ・オブ・シド&ナンシー

Sad Vacation: The Last Days Of Sid And Nancy
2016
スペイン
ダニー・ガルシア 監督
ダニー・ガルシア 、ブレット・ダンフォード 脚本
シド・ビシャス
ナンシー・スパンゲン
シルベイン・シルベイン
ケニー・“スティンカー”・ゴードン
ウォルター・ルー
オネスト・ジョン・プレイン
ハウイー・ピロ
以前から気にはなっていたが、ついに観た(猫と格闘しながらとなったが)。
監督のダニー・ガルシアは「ジョニー・サンダース」や「クラッシュ」の音楽ドキュメンタリーも手掛けている人。
「クラッシュ」の方は是非観てみたい。
ジョー・ストラマーのファンなので。この人のソング・ライティングは魅力的(デヴィッド・ボウイも彼を讃えていた)。

セックスピストルズは実はほとんど聴いたことが無い。
パンクファンから言わせれば、風上にも置けない奴である(笑。
ジョン・ライドン(ジョニー・ロットン)のその後のプロジェクトは聴いていた。
パブリック・イメージ・リミテッドは実に刺激的であった。
日本の誰だっけ、今名前が浮かんでこないのだが、前衛舞台演出家が、このグループの音楽を使っていたのを覚えている。
(いや脚本家の方だったか、いや舞踏家だったか。もう最近これだから)。
余り知られてないと思うが、彼は「クラフトワーク」のファンである。しかもシド・バレットともお友達だったとか。羨ましい(爆。確かにPiLは完全なポストパンク~オルタナティヴ・ロックとなろう。「キャバレ・ヴォルテール」(スリーマントラズ)と共に、中東の音みたいで、やたらとズッシリ来たものだ。
何の噺だ、、、?

そうそう、セックスピストルズは実はほとんど聴いたことが無い、だった(笑。
「マイウェイ」をおちょくったパンクチューンはバスの中で聴いたことがあり、友人と受けまくったものだったが。
まともに彼らのサウンドに浸った経験はないのだ。
だからセックスピストルズの顔であるシド・ビシャスに思い入れとかないし。
よってその彼女のナンシー・スパンゲンとか、ほとんど分からない。
ただ、シド&ナンシーというフレーズは聴いていて、なんか仲の良いペアだったんだね、くらいに思っていた。
まあ、2人とも早く亡くなったのね。ナンシーは20歳、シドは21歳。(イアン・カーティスは23歳だったな)。
薬漬けの人生というか。薬漬けの波乱の人生か。
しかしドキュメンタリーに出演していた彼らの友人たちは、好きなようにやりたいことをやった人生だったと言っている人や、第二の人生を生きることも出来たはずと夭逝を惜しむ人もいた。まあ受け取り方は人それぞれである。
兎も角、どちらの母親も娘に幼い頃から薬を宛がっていたり、シドの方は母が幼少期からずっと中毒症状にあったという。
つまりまともな養育は受けてこなかった。2人もこのフィルムを見る限り四六時中、薬を打っていたみたいだ。
彼らにとり、生きることはこの方向性しかなかったと謂えるか。いや死に向ってこの方向性しかなかったのだ。

最終的に、シドの死が母から渡されたヘロインによるものというのは象徴的で皮肉でもある。
薬から生涯逃れることは出来なかった。
シド・ビシャスという人は、その存在自体にカリスマ性があり、周囲の友人からはかなり愛されていたことが分かる。
多くの友人から心配されていたし、あのマルコム・マクラレンもナンシーの死で疑いがかけられた彼の裁判に大金で優秀な弁護士を雇うなどしたようだ。(実は映画にはなかったが、ミック・ジャガーもかなり彼の為に骨を折ってくれたそうだ)。
ナンシーはシドにホントに刺されたのかどうか、シドも自殺してしまい有耶無耶となってしまった(生前、シドはナンシーから心中をせがまれていたそうだ。ある意味その通りとなったのか)。
ナンシーの方がシドをダメにした悪者扱いをされていたが、どちらも近い友人たちは彼らのピュアな魅力を讃えている。
そうしたものだろう。

ただ、セックス・ピストルズに疎いわたしにとって、思い入れが無い分、感情的に乗れなかった。
客観的に観ると薬ばかり打ってラリっては痴話げんかばかりしているペアでしかないのだ。
これはもうどうしょもなく。
(ジェスロ・タルのイアン・アンダーソンは、わたしにとり、煙草と酒さえあればコンポーズにとって充分なイマジネーションが得られ、薬は全く不要と言っている人もいる。彼はパンクとは全く無縁の音楽家だが)。
そもそもパンクは、音楽と謂うより、そのスタイル~カリスマ性こそが重要であり、ファンの欲望を満たす鏡であろうとした2人の必然的な行く末であったとも謂えようか。
その点、ジョニー・ロットンはシドから見ればまるで人気はないが、音楽で自己表出したい欲望を持っていた為、パンク後も生き残ったのだろう。
ずっと後の事だが、アメリカのTV番組でシドのことに話を向けられロットンは、自分の事だけで精一杯で、誰もあいつを助けてやれなかった、と言って涙を見せていたそうな。
そうしたものだろう。
U-Nextにて