乙女の汚れた裸

BEZ DOTEKU
2013
チェコ
マテイ・フルパチェク 監督
ヤン・マザネツ 脚本
クリストフ・ハーデク
テレザ・ビトゥ
マリアン・ローデン
ペトラ・ルスティゴバ
チェコと謂えば、パペットや粘土によるアニメーション映画が直ぐに頭に浮かぶが、「イカリエ-XB1」というわたしの大好きな実写版傑作SF映画もある。
この映画も独特の暗く冷たい風合いでちょっと心地よい。
内容的には狂気を孕んだ陰惨な世界が描かれているが。
二つの並行世界を通して18歳の少女の精神世界を描くもの。
前半と後半でガラッと環境~場が変わるので、これは前半が彼女の現実世界で後半が心象世界という風に取って観るのね、とは思える。
彼女の家庭環境は、母の再婚で義父が入ってきた形のようだが、彼は母には嫌気がさしており、娘の彼女がいたく気に入っている様子。妻の不在の居間で彼女と義父は結ばれる(義父が一方的に結ぶのだが)。これが初めてではないようにも想われる。
母はその事態を知り、妊娠まで打ち明けられるが、娘はあなたにあげるからわたしとの仲は壊さないでみたいなお願いをする。
もうこの母はボロボロみたい。
娘は産婦人科で堕胎の処置をとる。
娘は義父が車で送り、大学に通ってはいるが、精神科医にも診て貰っている。
何となく彼氏らしき男子もいて、それなりに関わって来る女子の友達もいるが、彼女のこころの支えになるような存在ではないようだ。
後半の娼婦の館で、彼女は一番の稼ぎ手娼婦として強面オーナーに囲われている。
格登場人物は、精神分析的に関係付けられているようだ。
これは診察を受けている精神科医の分析の影響も反映されているか、、、。
オーナーは支配的で強欲な乱暴者だが、義父であろう(現実は包容力がある粘着的だがさも理解があるような振りをしているがこちらが本質といったところか)。
母は、もう病的で彼女を恐れていて意地が悪い年上の娼婦に当たるか(これはほぼそのままで娘からの復讐を恐れ彼女を貶めようとする存在だ)。
娼婦館の女性バーテンダーが親友女子となるか。観て見ぬふりをしている気の利いたセリフは言うが実際には頼りにはならぬところで、この対応関係であろう。
あの調子のよい白馬の騎士気取りの若い男は、学校のボーイフレンドか。娼婦館から連れて逃げると言って結局彼女を置き去りにして逃げてしまう。これが最も頼りにならない。
女性バーテンダーの隠し持った拳銃を奪い、高圧的で暴力的なオーナーに銃を向ける彼女。
これまで自分を搾取して支配し酷い目に遭わせてきた恨みと怒りをぶちまけ、引き金を引いたのだろう。
象徴的な親殺し。
彼女の抱え込んだ重くて暗い闇の娼婦館の心象世界は消え去る、、、。
兎も角、誰も頼れない、ということだ。
全くその通り。
自分で自分を救う他ないのだ。
(ここでは精神科医が手助けしてくれていたみたいではあるが)。
最後に穏やかな表情でソファーに座る彼女に対し、精神科医がもうこれ以上診察する必要は無いと述べている。
ハッピーエンドなのね(ちょっとあっさりに感じたけど)。
まあいいけど、、、。
U-Nextにて