ダーク・タワー

The Dark Tower
2017
アメリカ
ニコライ・アーセル 監督・脚本
スティーブン・キング 原作
アキバ・ゴールズマン 、ジェフ・ピンクナー 、アナス・トーマス・イェンセン 脚本
イドリス・エルバ、、、ローランド(ガンスリンガー、塔の守護者)
マシュー・マコノヒー、、、ウォルター(黒衣の男、魔術師)
トム・テイラー、、、ジェイク(超能力者)
キム・スヒョン、、、アラ(透視者)
フラン・クランツ、、、ピムリ(ローランドの父)
アビー・リー、、、ティアラ
ジャッキー・アール・ヘイリー、、、セイヤー(ジェイクの母)
スティーブン・キングが10年かけて書き綴った全7巻の小説をもとにした映画だという。
その割にとても単純な内容で、前・後編とか1、2、3編に分けて作っても良いとは思うが、それで世界が深まるような噺になるとは思えない。
1時間半でも丁度良い気がする。
ただし、小説を読破した人からすれば、変更点や省略の数々が気になったのではないか。

どうしたって人物造形とその背景や関係性の変化~深まりなどを丁寧に追うのは無理である。
だが、どうも設定されたその世界観からして、如何にもアメコミのヒーローものから一歩も出てない感がするのだ。
かなり単純なファンタジーの部類と捉えるのが妥当か。
子供の成長を追う冒険譚とも思えるし、子供向け映画でもよい気がするが。
そしてハリウッド映画定番の父と息子の絆が描かれる。
何でこうも彼らは父子の関係性と鮫の恐怖ばかりを描きたがるのだろう。
わたしには、どうでもよいのだが、不思議でもある。

ホントに10年かけ7巻に及ぶ長編小説の内容がこれであれば、ビックリ仰天に当たるが。
細かい部分の省略があっても基本的な世界観まで削除してしまえば、もはやその作品とは何の関係も無くなってしまう。
基本線がこれであるなら実に単純な「善と悪」との攻防戦を出ない。
後は、それぞれが持つ武器~能力そしてそれらを使った闘いをスリリングに魅せるくらいであろう。
ローランドのガンアクションはアクロバティックで面白かった。そう来るか、という楽しみが散りばめられている。
ウォルターの強力な念力も風格もラスボスらしいものであった。その割に最期は呆気ない(笑。
娯楽映画としては、このバトルを上手く描ければまずはOKとなる。
更に出て来るキャストの個性~魅力で持たせるところか。主演の3人は申し分ない。

キャストは皆それぞれが良い味を出していた。
アラはもう少し出してもらいたい。こういうキャラが支える部分はおおきい。
ジェイク少年は見てゆくうちにどんどん親しみが感じられるようになり共感ももてた。
だが、淡々とじっくりその人間そのものを描くと謂うより単純明快なキャラを当て嵌めて動かしてゆくタイプ。
総じてアメコミ風の演出スタイルで愉しませてくれる。
それはそれでよい。
ひとつ気がかりなのは、ウォルターに魔術でジェイクのいる場所を自白させられ鼻血を出して倒れたアラは気を失ったのか死んだのか。死んでないのなら、その後何らかの形で姿を見せて貰いたい。

空間割が、普通のニューヨークとポータルを跨いで移動するとても荒廃した場所であり、ジェイク少年がよく悪夢に見たまさにその空間であった。
これで彼が超能力者であることが分かる。
そこで彼は度々スケッチしていたガンスリンガーであるローランドとも実際に出逢う。少年にとっては感動の再会みたいなもの。
ここから相棒として親密になるまで行動を共にしてゆく。
そして世界を中心で支える(この発想で、ガックリくるのだが)塔を守るのがガンスリンガーのローランドの使命であり、今この塔が黒衣の男ウォルターによって破壊される危機に瀕していた。つまり世界全体の危機なのだと。「世界」とは何かの考察も欲しいところだ。いずれにせよ塔が攻撃に逢う度に、ジェイクのいたニューヨークにも地震が起きていた。
その破壊の仕方が、ジェイク少年のような超能力を持った子供を誘拐し、その能力を吸い取ることで破壊エネルギーに変換して塔を攻撃してたみたい。この辺のシステム分かり難かったけど。この塔の存在もジェイクはニューヨークにいる頃から何度も悪夢に見ていた。ローランドとジェイクはその後ニューヨークと悪夢に見た地をポータルを通して何度も行き来しながら、ウォルターやその手下たちと闘う。
更にローランドにとっては父、ジェイクにとっては母の仇であり、ウォルターだけは是が非でも倒さねばならぬ相手であった。
またこのウォルターというのが、ただ只管、悪いだけの男で、こちらとしては、ふたりにどうやって倒されるのかを追ってゆくだけの鑑賞となる。この魔術師が実にアッサリと非情に人を殺してゆくのだ。

終盤のローランドVSウォルターは、なかなか愉しませてはくれたが、尺を後5分でも延ばしてもう少しハラハラさせてくれても良かったかも。特にあれだけ強大なパワーを持った(威圧感抜群の)ウォルターが最後がやけに呆気なかった。
わたしは、あの後、むくっとまた起き上がり襲って来るのではと期待してしまったのだが、、、。
あの銃アクションと謂うよりコメディタッチの弾アクションで死んでしまう。
あれが出来るからローランドはガンスリンガーなのね。
そして悪者が倒されたことで、世界は救われましたとさ、である。
何とも、、、。この世界と言われてもねえ、、、。
そしてローランドは元居た荒れ果てた世界に戻って行くのだが、もう身寄りもないジェイク少年も一緒に行くことに。
とっても裏しそうなジェイクであった。

あっさり観られる疲れない映画である。
期待せず観る分にはよいか。
AmazonPrimeにて