メランコリック

melancholic
2018
田中征爾 監督・脚本
皆川暢二、、、鍋岡和彦(東大出のニート)
磯崎義知、、、松本晃(殺し屋、銭湯の和彦の同僚)
吉田芽吹、、、副島百合(和彦の彼女)
羽田真、、、東則雄(銭湯「松の湯」のオーナー)
矢田政伸、、、田中敬三(暴力団のボス)
浜谷康幸、、、小寺雅人(殺し屋、銭湯の和彦の先輩)
山下ケイジ、、、鍋岡修一(鍋岡和彦の父)
新海ひろ子、、、鍋岡惠子(鍋岡和彦の母)
大久保裕太、、、田村幹久(和彦のかつてのクラスメイト、会社経営)
ステファニー・アリエン、、、アンジェラ・イェン(田中の情婦)
2日続きで邦画の大金星(笑。
最近の邦画では、出色の出来。
とっても面白かった。
またキャストが良い!脚本もとても面白いアイデア。
ちょっと気になる点はあるけど、、、全体としては文句なし。

銭湯が風呂の時間が終わった後、暴力団の殺しの死体処理場となるなど面白いアイデアだ。
それを膨らませるとこんな物語が出来るのか、、、上手い。
座布団3枚くらい進呈したい(笑。
鍋岡和彦のちょっと自閉がかった回避型愛着障害みたいなキャラが極めて現代的で馴染める(笑。
東則雄の温厚で包容力あるな大人ぶった小心者の湯銭のオーナーとか、彼を脅しいいようにこき使う暴力団のボスの田中敬三も分かり易い。
そして殺し屋で湯銭で働く和彦の先輩の小寺雅人の影のある孤独な佇まい。
如何にも今どきの軽いキャラのようでいて人情味のある松本晃などキャラにとても魅力があり親しみが湧いて来る。
アンジェラ・イェンなども如何にもいそうな感じ。
ただ、副島百合はどういうつもりで和彦に接近して付き合うことにしたのかどうも分かり難い。
(何やら策略をもって近づいた背景などを最後まで疑ってしまった。そう、最後まで不思議な存在であった)。

何とも言えない人が和彦の両親である。
特にお父さん。
いいキャラしてるのは確かだが、これほど仄々した人は珍しい。
和彦の家には何のプレッシャーもなさそう。息子が東大出た後、全く就活もせずブラブラしていても意に介さないところなど、大物である。漸く決まった勤め先が銭湯でも、ほうそうかいのノリ。普通自立はしてほしいとか思わないのか。
松本が撃たれて家に転がり込んできたときも、お風呂屋さんも危ないこともあるんですねえ、とかのんびり感想を述べていたし。
それに引き換え、同じようにのんびりしているお母さんが、彼の傷の手当てをしてあげているのにはびっくりした。あの流れでは傷を見たところで卒倒していそうなおかあさんであったが、、、。

一番違和感を覚えたのが、そこである。銭湯のオーナー東の裏切りで銃で撃たれた瀕死の松本が和彦の家に運び込まれ、そこで味噌汁くらいしか作りそうもないお母さんに傷の手当てをしてもらい、その晩には起き出してうどんを普通に食っているのだ。
弾は無事に摘出出来たのか?
わたしは、先輩の小寺みたいに間違いなく死ぬものと思っていた。彼と変わらぬくらいの重傷ではないか。
あの手当と回復力には、うっそ~である。
その上、あの田中の暴力団事務所では、いつものように死体を銭湯で処理せず、そのまま置き去りであった。
大丈夫か。
田中も東も、松本にちょっと扱い方を教わっただけの素人の和彦が撃ち殺しており、そのまんま。
警察だって馬鹿じゃないと思うが、、、。
単に暴力団関係者の同士討ちで処理するのか。しかし銃のタイプが違えば弾も異なって来るがその辺どうなのか。
更にすんなり和彦が銭湯の経営者に居座れるのか、、、田村の助けを借りて上手くやるのか、、、。

一旦、身を案じ別れた副島がまたニコニコして和彦が番台に座る銭湯に来ていたが、、、
その後、彼と松本とアンジェラと一緒に食べて呑んでで大盛り上がりであったが、よりも戻せる感じに窺える。
生き残った人が皆、銭湯に集まってファミリーになった感である(笑。
松本の感想が面白い。和彦さんファミリーって、なんか暖かいすね、って単に変わってるだけでないの?
まあ、おかあさんが料理上手で、うどんが今まで食べた中で一番旨かったところが大きかったか(傷の治療はブラックジャックなみだし)。
人生には一生この時が続けばいいのにと思える瞬間がある。
この時の為に俺は生きて来たのだと思える瞬間。
その為に生きている。
と、最後は飛んでもないハッピーエンドの大団円であった(爆。

暴力団の請負で散々人を殺して来て、この小市民的な幸福感で一杯の締めくくり、、、。
とても現実的な感もある。
人の犠牲や不幸の上に幸せを築くのが人間である。
人を貶め引きずり下ろしそれを成就感や幸福に転嫁することを当然の如くにやっている連中が身近にうようよいるのだから。
(うちの斜め前のおやじをはじめ)。
このエンディングも自然に思えた。
ともかく面白い。これは見る価値あり。
このアイデアと皆川暢二と磯崎義知の演技で魅せる映画であった。
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