三十路女はロマンチックな夢を見るか?

2018
山岸謙太郎 監督・脚本
上原三由樹 脚本
Juliet「Aqua」主題歌
武田梨奈、、、荻野那奈(三十路前で焦る公務員)
久保田悠来、、、風間拓人(映画オタクの強盗)
佐生雪、、、笹川麗良(拓人の今カノ)
山村美智、、、赤城香奈恵(那奈の同僚)
秋吉織栄、、、工藤麻子(那奈の同僚、親友)
竹富聖花、、、日野まりあ(那奈の中学時代の親友)
酒井美紀、、、栗原葵(拓人の元カノ)
近藤芳正、、、油谷茂雄(課長)
昨日面白かったので、上原三由樹脚本の長い映画をひとつ。
フィリップ・K・ディックみたいな題名の映画だが、何の捻りもない(笑。
そのまんまの映画なのだが、最後に彼女らの職業にビックリ。
公務員て、そっちかい(爆。

長々と最後まで強盗を騙して捕まえるのだが、それだったらそんな子芝居打たなくても良かろうにと思う無駄が一杯。
この極致が「コンフィデンスマン」のシリーズで、あれはナンセンスとしか言えないが、これも近い。
こちらを騙すためにその演技という感じ。
すると物語はそれ自体で成り立つものではなくなり、外から観る我々との関係を前提に成立するものになる。
これも映画特有の在り方の一つか。
噺は、3人組の銀行強盗がアパート一階の公務員の女性宅に突然押し入ったことに始まり、そこに身を隠して翌朝、彼等が車で逃げだす際に、三十路を前に独身で今の生活に疑問を持つ彼女も勢いで逃避行に混ざってしまうロードムービー調の展開となる。
まあ、共に三十路近くまで独身で来た親友がその日の朝いきなり寿退職を皆の前に告げたことで、取り残された孤独感とこのままでわたしは大丈夫なのかという迷いと焦りがピークに達していたのも確か。
状況的にこの流れは当然呑み込めるものだ(と言うかドラマ上これ以外の展開は無かろう)。

そして何故だか彼女が進行方向を指示しパトカーや検問から車を巧に逃がしてゆくのだ。
近くであるし課長を車で送ったりする仕事柄の彼女なら土地勘から謂っても無理もない気はする。
映画オタクでいつもカメラを回している拓人とその元カノの葵と今カノの麗良とも言葉巧みに馴染んでゆく。
自分が美少女ヒロインになる夢を抱いていたが、その上を行く親友を前に自信を失い公務員を選んだことなども打ち明ける。
しかも拓人は、那奈にも思わせ振りな態度、仕草をして来る。ここは葵も見て取り那奈に対して警戒を始めるところだ。
拓人は映画で一発当てたい一心で金をつぎ込み借金が膨らみ、暴力団から借金を返すように追い立てられ(彼らの勧めで)今回の銀行強盗に及んだという。葵曰く、女より自分が好きなだけの男だと。
ちょいと驚いたのは、那奈が拓人の周りの2人の女を手にかけ亡き者にして、彼を独占してしまうところだ。
いくらこれまでの殻を破り違う自分を目指すにしても余りに極端で逸脱が激し過ぎでは。
この辺に無理を感じたが、単に三十路を前秒読み段階にきてタガが外れたかとも取ればとれる気もするところ。
何度も何度も腕時計を確認し、後三十路まで何時間何分というカウントばかり取っていた(笑。
余程、二十代のうちに何か大きな転換をしておきたい焦りが伝わってくる(もう仕事は辞めようとか言っていたが)。

何と言っても4億円の金を持って逃亡しているのだ。
破れかぶれになってもおかしくない。
しかし拓人はこの金をやはり暴力団に渡すと言う。彼女は頻りに二人で持って逃げようと縋るが。
指定された受け渡し場所まで行くが、拓人は必ず還って来ると言う。
今回は自分たちが銀行強盗をして逃げる一部始終を全て記録しドキュメンタリーで臨場感と迫力のある映画を身を張って撮るつもりなのだ。この執念は凄い。そして策も用意しているらしい。
何と彼は自分の最期までをカメラに収めるつもりで、最後ヤクザに金を渡して撃たれるところは遠方から那奈に頼んでいる。
結構緩い流れで来ていることもあり、それ程の緊張感もないが、実際に撃たれるのかどうか気にはなるところ。
結局、撃たれて死ぬところまでカメラに収まり、最後にピンピンで生き返ってどうだったと出来栄えを彼女に聞く。
ヤクザの親分に手渡して撃たせたピストルは精巧な玩具であったのだ。

その種明かしで拓人が得意になっているところで、那奈が真顔であなたを逮捕しますときた。
麗良も葵も警察に確保される。縛られていたり伸びていたり、の状態であったのだ。
しかしそれにしては明らかに風呂に沈めたり首を絞めたりでこちら用の映像があからさま過ぎた。
(この手のサスペンス映画では、そういった肝心な部分は匂わせるだけでそのものの映像は見せない)。
その上、非常に感情的に拓人に接したりするところも多く、「もうわたしにはあなたしかいないのよ」とまで演技する必然性があるか?
ただこちらのミスリード用の子芝居ではないか。その辺が実にわざとらしい。コンフィデンスマン程ではないが。
もう少し那奈は飄々とした姿勢で彼らの行動に淡々と関ってよく、そんなに葛藤したり感情的になるのは不自然な光景に見える。
そこまでしなくても充分拓人たちは騙せるし、実際彼女が三十路に拘っていたことは分かるがこれとどうリンクしていたのかどうも分りにくい。ともかく立派に職務を果たしたことは確かだ。
まあ、最初の職場の光景を見てそれが警察だとは気付かなかった(笑。
最後に那奈は広報課に転属し幼い頃からの憧れであった美少女ヒロインとなって悪者をやっつける芝居を町内会みたいな場で披露していたが、どうなのか。これで何かが変わった感じはしないが、、、。
警察でこの先もずっと働いて行くことは分かる。
AmazonPrimeにて