ソウル・フラワー・トレイン

2013
西尾孔志 監督・脚本
ロビン西 原作
上原三由樹 脚本
:少年ナイフ 主題歌「Osaka Rock City」
平田満、、、天本薫(定年退職した男)
真凛、、、あかね(スリ)
咲世子、、、天本ユキ(娘、大阪の女子大生)
大和田健介、、、あかねの彼氏
駿河太郎、、、幻の電車の運転手
大谷澪、、、ユキの親友で恋人
和田めぐみ、、、あかねの姉
噺がよく出来ている。短編の監督作品が幾つもある上原三由樹が脚本を本作監督と共に書いている。
このパタンの長編映画が何本かあった。この映画を観たら、それらも近いうちに観たくなった。
ふたつの父と娘を巡る物語が絡みながら進行する。

大分の田舎から都会の大阪に娘に3年ぶりに逢いに来る父。
家で採れた野菜と梅干、それからまとまったお金を持ってやって来たところでいきなり怪しいオヤジに色々と付き纏われ詮索されやたらと荷物を持たれる。これはもう金やお土産を持ち逃げされるパタンだとこちらもやきもきしながら観てゆくが、何とか被害には遭わずに済む。だがすかさず今度は、金髪の弾けたねえちゃんに大阪案内だと言って連れまわされることに。途中のロッカーで金の入ったバッグを預ける。これも冷や冷やである。ともかく人が良く無防備過ぎるカモにうってつけのおとうさんなのだ。
その後は、面白楽しく大阪巡り、然もかなりディープな体験をする。
だがしっかりあかねに用意してきたお金は取られてしまう。いつ気付くかそわそわしてしまうのだが。
そして夜には無事に娘に逢うことが出来る。この時、この威勢の良いギャルが怪訝な表情を浮かべた。

久しぶりに逢ったところで、娘の親友の女の子と3人で外食をし、とってもいい気分の一日が終わるところであった。
だが、娘の部屋に戻ってみるとふと妙なモノを発見してしまう。それは今日の昼間にあちこち連れて行かれたところの最もディープなスポットで初めて拝んだグッズそのものであった。
それからいつまでも寝付けなくなる、、、。
そう、気になるとどんどん疑念と妄想は膨らむばかりなのだ(笑。
かなり責めている映画だ。
究極の子離れをやり遂げるべくもがき奮闘する父。
わたしも娘を持つ親として、結構どぎまぎした(爆。

不思議なのは、二度ほど父の夢~幻想の中で電車に乗ってその運転手と対話をするところ。
その男は、大阪案内をしてくれたあかねの話していた彼女の父であろうが過剰にファンタジックで怪しく鬼気迫るのだ。
その運転手像は明らかにあかねからの情報を超えるものであり、これもまた平行世界に乗り換えであろうか。
(「娘がもうすぐ生まれるんですけど、人のものを取るような子にならなければいいです」って、この系の流れではない)。
勿論、その花電車から降りたくても降りられず、叫んで起きるのだが。
この悪夢が終盤のあかねの行き倒れて死んだ父の遺灰を軽トラの荷台から撒くところにまで収斂して行く。

この辺のちょっと一息ついた後の不穏な空気を~女の子の親友と「まだ話せないわね」の秘密のキスから本当のアルバイト~まで膨らませ最後に自分の娘のステージ~これはバレエの発表会ではない~にまさに命がけで参加する(あかねと彼女の彼氏に必死に幾度も止められながら)カタストロフまで。
この流れに見事に乗せられる。
あかねは後半から黒髪の素顔を見せる。
彼女は、娘のユキのことを知っていた。「有名なストリッパーじゃ」。
ここから前半のスリの常習犯のギャルから非常に重い父との物語をもつ寄る辺ない孤独な女性の姿となる。

しかしよく行ったものだ。
娘の職場に。
物凄い勇気がいる。警察に父の御骨を引き取りに行ったあかねもそうだ。
その御骨を(啖呵切って)受け取った勢いで、娘のもとに(3人で)向かう。
花電車で繋がる。
(自立とか解放とか謂っても、結局何であるのか)。
ユキは仕事のことは父に認めてもらったが、もう一つ先にハードルが控えている。
そう自立と解放と多様性が要請される。だが何にしてもそうだ。うちの娘たちの要求も全てそれが絡んでくる。
それをしっかり受け止め受け容れることしかない。
われわれに出来る事はそれしかないのだ。
平田満の演技には泣けた。良かった。
真凛も言うことなし。
咲世子という女優さんがやたらと綺麗であった。
もっと観たい女優である。
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