アブダクション 忘れられた少女誘拐

Mommy Is a Murderer/Forgotten Abduction
2015
アメリカ
リンジー・ハートリー 監督
ケイト・ハニオク 脚本
ブリー・ウィリアムソン、、、カリーナ(子供用品店オーナー)
ヘザー・マコーム、、、リナ/イザベル(誘拐犯、マリーの偽母)
ジェイソン・セルマク、、、ライアン(カリーナの恋人~夫)
ブルック・カー、、、キャメロン(カリーナの親友)
デヴィッド・ケルシー、、、アイバン(イザベルの元夫)
ジョージー・M・パーカー、、、マリー/エミリー(誘拐されて育てられている娘)
ジェニー・リン、、、エマ(ママ友のボス)
TVドラマみたいな映画。
2時間ドラマの風合い。
内容的にもそういったサスペンスもの。

訳アリ母娘を巡り、どうもしっくりこない洋品店店主の女性がその疑問を追求する。
日本ドラマでもよく素人の家政婦さんとかが事件に首を突っ込んで解決に導くとかあるが、、、
このヒロインの女性も偶々出逢ったリナとマリーの母娘に深く関わって行く。
母が娘に対し異常に過保護で、パーティーにも参加せず写真も撮らせないのだ。
それも世の中が物騒であるからという。確かに誘拐事件は多発している。
そして彼女らが店に買い物に来た時にホントに娘が誘拐されそうになったのを阻止したことから、関りを深めてゆく。
だが危うく誘拐されそうになったのに警察に通報することは頑なにさせず、母娘共々引き籠ろうとしている。
ライアンに相談すると元夫から身を隠しているのだと言われるが、それにしても過剰な外界遮断なのだ。
娘の読書感想文のメダル授与式にも出席しないと言う。
そのマリーと会話をしているうちに以前の家ではエミリーという名前だった、などという不可思議な事を時折言うのだった。
この母の姿勢と娘の言動が気になり調べてゆくと、丁度マリーと同じ年になる娘が5年前に誘拐されて捜査がごく最近打ち切られ失踪扱いとなっていた。写真を観るととても似ていた。
更に背中に痣がありその位置もピッタリである。
彼女の両親はその2年後、高速道路走行中、車が制御不能となり事故で亡くなっている。
ここでちょっとばかり常軌を逸した関りというか情熱を感じるのは、ひとつはカリーナのマリーへの関心の強さである。
確かに目の前で危ない目に遭った娘であり、関心を持つのは分かるが、その心配の仕方が自分の娘に対するもののよう。
そこまで赤の他人の娘に拘る理由がはっきりしない。
この娘がいよいよ5年前に誘拐されたエミリーである確信を持ったところでその意志~情熱は危険を顧みないほど激しいものとなる。
度々、ライアンが間に立ち僕たちは親ではないからと冷静にさせるのだが。
もう一点は、エマというその一帯のママ友を仕切るボスの存在と彼女のネットワークである。
大変な圧力組織を形成しており、情報伝達力の早さは凄いもので忽ちのうちに仲間にされたり排除されたりしてしまう。
特にカリーナがマリーの件で親友のキャメロンに相談しているところに突然現れ、その件をリナに直ぐに連絡し相談相手の住所も調べあげて伝えてしまう。恐ろしいものだ。この共同体に睨まれたらこの地では暮らしてゆけまい。
そしてリナ~イザベルの尋常でない精神状態である。
元夫が言うには16で妊娠して子供を産んだが担当医から精神疾患の疑いがかけられ、アビーという娘を福祉機関に取り上げられてしまう。
エミリーは、その子の代償的存在に他ならない。社会的規範の感覚は無く、自分の母性の欲望に従うことに躊躇なかったのだ。
精神的な混乱は深まり、衝動的で制御が利かず、一歩間違えば殺人も犯しかねない暴力を厭わなくなっていた。
キャメロンは自宅のガス栓を開けられ重体になり、ライアンは殴られ気を失い、カリーナはナイフで襲われ、殴られて入院もしている。そして元夫のアイバンは危うく撃ち殺されるところであった。
自分のイザベルという名前も、さらった子と同様に変えて生活を送って来たのだ。

確かに今のリナにエミリーを預けてはいられないことは確かであろう。
その点においては動機がなんであろうと、カリーナの動きは必要であったことが分かる。
最後は、カリーナとライアンのカップルに挟まれて幸せそうにしている娘のエミリーという構図で決まった。
このエミリーがとても夢見がちである意味現実逃避的なのはそれによって自我を防衛していることの現れに思える。
幼い彼女が生きてゆく知恵と謂えよう。前はエミリーという名前だったと言う他を覚えていないのも、意識下にその他の記憶を抑圧した結果か。
エミリーの下に子供が生まれると言うが。
まあこのカップルの養女ということなら長女として問題なく育ってゆけそうである。
映画と謂うよりTVドラマのノリであった。
このエミリーを演じた子役はなかなかのものである。
クロエ・グレース・モレッツのこの位の時期を彷彿させる女優であり今後の活躍が楽しみである。
AmazonPrimeにて