フライト・クルー

Экипаж
2016
ロシア
ニコレイ・レベデフ 監督・脚本
ティホン・コルネヴ、ユーリー・コロトコフ、ニコレイ・クリコフ、アレクセイ・オニシチェンコ 脚本
ウラジミール・マシコフ、、、レオニード・ジンチェンコ(機長)
ダニーラ・コズロフスキー、、、アレクセイ・グシチン(副操縦士)
アグネ・グルダイト、、、アレクサンドラ(女性パイロット)
カテリーナ・シェピツァ、、、ビクトーリヤ(チーフパーサー)
セルゲイ・ケンポ、、、アンドレウ(男性キャビンアテンダント)
セルゲイ・ガザロフ、、、シェスタコフ
セルゲイ・シャクロフ、、、ニコライ
セルゲイ・ロマノヴィッチ、、、バレラ・ジンチェンコ(機長の息子)
所謂、ディザスター・パニックでもあり航空スペクタクル・パニック映画でもある。
兎も角パニックは間違いない(爆。
演出がかなりのもの。相当金もかけたのが分かる大作。
終始ハラハラドキドキであった。

とは言え、主人公グシチンの身勝手ぶりには閉口するところあり。
ルールや命令を無視すれば良いと言うものではない。
勿論、軍の上官が無茶苦茶であり、それに反旗を翻すのはよく分かるが。
(車を輸送機から投棄したのは、優れた判断だった)。

一般の飛行機会社に転職し、着陸した空港でその国が革命を起こして外国人だけ連れて帰還するというのは、どうにもなるまい。
これを飛行士単独で、その国の難民を勝手に乗せて帰る訳にはゆくまい。
人数も夥しいものだ。選別でもしたらパニックになる。
ここで機長に毒づいても仕方ない。
この主人公事ある毎に規則などどうでもよいというが、下らない規則はともかくとして、独善的で思慮が浅いところは観られる。
(男性客室乗務員を蔑視しているし)。
アンドレウが人間が出来た一番好感が持てるキャラであった。
グシチンも終盤には彼を認めているが、何よりビクトーリヤが彼を観直したことは嬉しい。

それはともかく、やはりこの映画のメインは救援を頼まれ不時着した火山島での大地震と火山噴火で逃げ惑う人々を救出するシーンだ。
まずは、地上での溶岩の吹き出て流れる中をバスで人を運ぶディザスター・パニックである。
溶岩ものは幾つか観たが、この切羽詰まった迫力は凄い。溶岩の燃える中をサブ滑走路から離陸というアクロバティックなシーンも秀逸。
そして空では何と突飛な。というかリスキーこの上ない賭けに出るのだ。
燃料が尽きて陸まで持たない先に出発したレオニード機長の操縦する貨物機に後方からグシチン機が迫り、前方を飛ぶ機は後ろの扉を開き後方機は床下の扉をこじ開けて、ロープで渡した間を人を乗せたコンテナで移動させるという航空アクロバティックショーでもやらないことをやってのける。

二機が止まってるかのように同じ速度で安定して飛行士中れば到底実現できないことだ。
三回の行き来で何とか移動を果たすが、三回目は残念ながら10人くらいは零れ落ちていた。
元々あり得ない試みである。
陸地の火山パニックと夜空の航空スペクタクルの一作品で二度美味しいというもの。
ここに恋愛と父子の絆のヒューマンドラマを入れ込んだテンコ盛り大作である。
ハリウッド映画は鉄板として父と息子の絆を入れ込むものだが、ここでもしっかり機長とその息子、グシチンとその父(恐らく旅客機の設計者か)との和解が描かれる。
そして恋愛の方も途中拗れてみたりしながら最終的にグシチンとアレクサンドラ、ビクトーリヤとアンドレウの恋愛も成就する。

極限的なパニックと体を張って怪我もしてヘトヘトになった後で、めでたいエンディングというのは確かに爽快で心地よい。
犠牲者は出たにせよ、行動をしっかりとらなければもっと多くの人が死んでいただろう。
だが、出来ればそれこそ命令無視だが、その島に着陸後、本部の指令なしに直ぐ乗せられるだけ人を乗せて離陸していれば、これ程の綱渡りをせずにスムーズに帰路につけ最小の犠牲者で留められたはず。
ずっと島で留まる間に噴火も激しくなり溶岩が島を覆い始め、飛行機は軒並み爆破され滑走路も使えなくなるというこれは現場の状況の見誤りと謂えよう。
そうしないとパニック映画にならなかったか。
(大概のパニック映画は、その直前の判断次第で防げる類のものである)。

だが充分に面白かった。
キャスト誰もが大奮闘という感じで、お疲れ様である。
WOWOWにて