TUBE チューブ 死の脱出

Meandre
フランス
2020
マチュー・テュリ 監督・脚本
ガイア・ワイス、、、リザ
ペーテル・フランツェーン、、、アダム(凶悪犯)
ロマーヌ・リベール、、、ニナ(リザの亡くなった娘)
「蛇行~あてもなくさまよう」確かに、その通り。
”TUBE ”とすることで”CUBE”感覚で飛びついてくれるのを狙ったのね。せこい。
確かに”CUBE”系映画とは謂えるが。

始まりが何とも、、、。
ヒロインが周囲には何もない路に横たわり死のうとしているのか。
そんな殺伐としたシチュエーションから始まる。
そこにたまたま通りかかった車が救いの主かと思いきや。「10キロ先までスタンドもない」。
車に誘われ乗り込むとその男は、何と凶悪殺人犯であった。
カーラジオからその男の特徴が伝えられたところで(右手に十字のタトゥー)急に車が停車され、彼女は刃物で襲われたようであったが、遥か上空から光が現れ、、、。

気が付くと狭い無機質な空間に閉じ込められていた。壁のスリットからは光が漏れている。
左手首には丸い大きな光を発する腕時計がはめられており、ボディスーツに着替えさせられていた。
そしてハッチのような扉が開くたびに彼女は空いた空間に誘われ移動して行くのだが、、、。
どうにか這いずって動けるくらいの幅しかなくその閉塞感は半端ではない。だから開くたびに移動する。
しかし何処に行ってもしつこくトラップが仕掛けられており、腕時計はカウントダウンして行く。
時間的にも圧迫してくるのだ。
兎も角、留まることが出来ず、ハッチが開けばその外に向かう。

天井が下って来たり、腐乱死体をどかさないと進めなかったり、ガスバーナーの放射口がせり出して来たり、水攻めにあったり、何でも溶かしてしまう液体の上を僅かな縁を渡って移動したり、何でも粉砕するミキサーが迫って来たり、、、そんななか、男の助けを呼ぶ声がする。
その声の方へと徐々に近づいてゆくと、その男は自分を襲ったアダムであることを知る。
彼もこの迷路につかまり酷い目に合っていたのだった。
間もなく、腕時計が赤く光りガスバナーの噴射口がせり出して来た、2人はサイドにある1人がやっと避難可能なスペースを巡り小競り合いをするが、何とか彼女がそこに入り込み、アダムは腕をガラス扉で切断され、残った身体は炎で焼却されてしまう。
ただこの噺は単にデストラップをかまして徹底的にターゲットをいたぶるばかりでなく、妙な要素が入り込んでいて戸惑いを覚える。
変なクリーチャー(主催者側の)が出て来て傷を治してくれたり、死にたいというと死ぬための注射を打とうとしてくれたり、この過酷極まりないチューブ状の死の迷路に放り込んでおきながら、何のつもりのお節介だみたいな。
更に彼女の意識~記憶に入り込み、亡くなったばかりの娘の姿を出現させたり。亡くなった状況をありありと回想させたり、、、
それで何をか激しく揺さぶって来るのかと思いきや、そうでもない。
詰まりこの超越的な主催者側の意図が何であるのか。

彼女は一度は振出しに戻されるが、アダムの腕の印を思い出し、自分の腕にもそれが付けられているはずだと気づく。
時計を無理やり強酸に付けて外すと自分の腕にも徴が付いているのが確認された。
その徴が×と◇なのだが、その形を分解すると右左を示すことに気付き、それに従って進んでゆく。
目の見えぬ妙なクリーチャーにも襲われ逃げ惑うが、何とか安全な進路を選択しながら進むことが出来る。
最後の岐路に死んだ娘が出て来て、彼女を違う方向に導こうとするが、彼女はそれを断る。
娘は違う語り口で「よくやった。お前を誇りに思う」と述べた。
いよいよ出口と分かる口に近づくが、最後の関門で上から鉈が3段階で降りて来るのだ。
4秒、3秒、2秒間隔である。流石に最後の2秒はきつく足を切断して何とかそこを通過することが出来た。
だが青空と思っていた面はただの投影であったようだ。
やるだけのことをやり遂げ、そこで完全に諦めの境地に入ると、天井が突然開き、彼女は抱えられ外に出される。

気付くと傷は癒えており、滝が何本も落ちて来る緑豊かな河原にいるではないか。
そして対話の相手が娘の姿をした何者かである。
「わたしは死んだの」に対し「肉体は何度も死んだ」と返す。
「生きなさい」と二ナはリサに告げる。
意図のハッキリしない超越者は出てこない方が良い。
途中の妙な介入も意味が分からないため緊張感も途絶え噺のまとまり~方向性を失う。
ただ、過酷なトラップを独力で潜り抜けて生還とした方がシンプルで小気味よい。
(黒幕は匂わせる程度にして)。
WOWOWにて