アジャストメント

The Adjustment Bureau
ジョージ・ノルフィ 監督・脚本
フィリップ・K・ディック『調整班』原作
マット・デイモン、、、デヴィッド・ノリス(スラム出身の元下院議員)
エミリー・ブラント、、、エリース・セラス(バレエダンサー、デヴィッドと運命的な出逢いをする)
アンソニー・マッキー、、、ハリー・ミッチェル(調整員、デヴィッドに協力する)
ジョン・スラッテリー、、、リチャードソン(調整員、ハリーの上司)
マイケル・ケリー、、、チャーリー・トレイナー(会社経営者、デヴィッドの友人)
テレンス・スタンプ、、、トンプソン(調整員、通称ハンマー)
フィリップ・K・ディック原作のSFだと知らずに観た。
「誰もが気が付かない内に会っている」という「議長」という存在は何?
わたしも是非逢いたい。文句がある(爆。

「調整員」という世界のバランスを監視し、調整する役目を果たす存在が登場する。
主人公のデヴィッドのように将来、上院議員~大統領になる「予定」の人物は、何かの拍子に道を外れたらアメリカの運命が変わることにもなろう。それが不味い形での混乱を呼ぶようなことになれば、事前に危険因子を除いておかねばということか。
ところでこの「調整員」とは、何者なのか?
人間ではないみたいだが、それほどの超越者にも見えない。走って後を追いかけたりして肉体労働をしている(笑。
しかし何処にでも通じるドアを開けることが出来る帽子を被り、運命の書という人のこれから先の運命~行動を読むパッドを持ち歩く彼らは「場」に対する相当な科学力を持った存在であることは分かる。
平たく言えばドラえもんみたいな人たちだ。
ただし、そのシステムは、水に弱いらしい。
だから水上(船上)とか大雨の中だと追跡が難しいみたいだ。

彼らの一番上の指令を与える存在が「議長」と呼ばれる。
謂わば、運命の管理者か。
ここでそれ~運命に対抗する人間としてデヴィッドとエリースというカップルが現れる。
デヴィッドの肩には将来のアメリカの運命がかかっているのだが、調整員からすれば、エリースと結ばれることによりバングリー精神が失せ、大統領になる気がなくなるらしい。
しかしデヴィッドとエリースは尋常ではない電撃的な出逢いをし、2人ともこの相手以外にはいないという確信を得ていた。
(普通はこんなケースはほぼ無いものだ。特に異様な権威と力を誇示する妙な団体に圧力を掛けられたらそれに従ってしまうものだろう)。
この物語は、そのような圧倒的で超越的な組織に対して恋愛の力で対抗するカップルの噺である。
確かに科学力や知識でどうにもならなければ、それで立ち向かうしかないというものだ。

元々デヴィッドはスラム街出身の若者であり、両親を子供時代に亡くし逆境パワーで異例の出世をしてのし上がってきた男だ。
素晴らしい女性を得て満足してしまうと先がない。
調整員によって離れ離れにされたことで、デヴィッドは以前のように自分の夢に向かい励んでいた。
最初の上院議員の選挙では優勢であったにも関わらず、直前のパーティーで不始末をしてしまい忽ち支持を失い落選をしてしまう。
だが、選挙幹部の友人の会社の役員に就任し、再び万全の構えで立候補する。
一方のエリースはバレエの世界で才能を開花して成功を収めていた。

共に順調であったが、再び2人は邂逅してしまう。
デヴィッドが彼女と二度目に出逢ったバスに3年間しつこく乗り続けていることで見つけることが出来たのだ。
ここから更にしつこく付き纏い調整員たちが、2人の間に介入し悉く邪魔をしてゆきまたもや二人は離れ離れとなる。
そして世界的なバレリーナとなったエリースが結婚を決めたというニュースが入る。
デヴィッドはここで本気に彼女を取り戻しに行動に出て行く。
,最初に彼を担当していたハリーがデヴィッドに協力するようになる(ハリーは自らの仕事に疑問をもっていた)。
ハリーは、この2人が結ばれることで、異なる運命が開ける可能性に賭けたのか。

ハリーから帽子を借りてエリースと逃げ惑うデヴィッド。
この辺は、なかなか面白い絵である。
扉を開くとあり得ない場所に繋がって行くのだ。
ここが結構楽しめる。
そして通常はドアノブは右回しなのだが、調整員の組織の空間に侵入するときは左に回す。
彼等は左に回して、その組織内に入り込み、議長に逢おうとする。
しかし議長室には辿り着けず屋上に追い詰められる。
そこで2人は抱擁しながらお互いの愛を示すキスをする。
すると追手は皆掻き消え、ハリーが書き換えられた「運命の書」を持って現れ、差し出して見せる。
「これからは君たちの自由だ。行きたまえ」と言い残し彼はそこを立ち去ってゆく。
先が白紙になっていた。
安堵する2人。

恐らく大統領と世界的バレリーナの夫妻が誕生するのだろう。
強い愛があれば運命も変わる。
(いずれにせよ、ハリーから何故、エリースを遠ざけるのかを聞いた彼は彼女と結ばれても堕落せずに大統領となりアメリカを救うはずだ。要するにアドヴァイス~説得すればよいことでは。追いかけっこするまでもなく)。
WOWOWにて