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GOMA28

Author:GOMA28
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山猫

Il gattopardo001

Il gattopardo
1963
イタリア、フランス

ルキーノ・ヴィスコンティ 監督・脚本
スーゾ・チェッキ・ダミーコ、エンリコ・メディオーリ、パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ、マッシモ・フランチオーザ脚本
ニーノ・ロータ、ジュゼッペ・ヴェルディ音楽

バート・ランカスター、、、ドン・ファブリツィオ(サリーナ公爵)
クラウディア・カルディナーレ、、、アンジェリカ
アラン・ドロン、、、タンクレディ
パオロ・ストッパ、、、ドン・カロージェロ・セダーラ
マリオ・ジロッティ、、、カヴリアーギ伯爵
リナ・モレリ、、、マリア・ステラ(サリーナ公爵夫人)
ロモロ・ヴァリ、、、ピローネ神父
セルジュ・レジアニ、、、チッチョ
ローラ・ブラッチーニ、、、ドンナ・マルゲリータ
イヴォ・ガラーニ、、、パラヴィチーノ大佐
ジュリアーノ・ジェンマ、、、ガルバルディ軍将軍
ルッチラ・モルラッキ、、、コンチェッタ
オッタヴィア・ピッコロ、、、カテリーナ
アイダ・ガリ、、、カロリーナ
ハワード・ネルソン・ルビエン、、、ドン・ディエゴ


観終わったばかりで直ぐ書けるものではないが、、、元々備忘録である。
お気楽に書きたい。

Il gattopardo003

3時間越えの豪華絢爛な大作であったが、長いという感じは受けなかった。
自然光が美しい。屋内は夥しいキャンドルがこれまた豪勢に並び。
所謂、人の住むお城の中身がこれだけ長時間見られるのもありがたい気がする(笑。
華やかに着飾った貴族が長回しでこれでもかと映されてゆく広大な広間は壮観であった。
ヴィスコンティ自身、イタリア名門貴族であり、このような貴族階級の斜陽を内側から描くには最も適任であろう。

舞台は、シチリアを300年の長きに渡って統治してきた“山猫”の紋章を持つ名門貴族サリーナ公爵家。
1860年春、統一戦争最中のイタリアである。
サリーナ公爵は新たな勢力にも人格と科学の業績が評価されており政府の貴族院議員のポストを用意されるが固辞する。
自らの属する貴族の時代の終焉は充分認識しているが、新たな波に迎合する気もなく、「シチリアは眠りたがっている」と述べ、そのままの状態を後100年は維持しようとする。ここに何とも言えぬダンディズムを覚えてしまう(バート・ランカスターだからか)。

Il gattopardo002

彼が期待する若者で甥のタンクレディは、ガリバルディの革命軍に参加し、華々しく活躍するが、新たに国王の政権が始まると素早く政府軍に入り地位を得る。
この辺の身のこなしが機敏だ。彼女も気品と知性あるコンチェッタから誰をも惹き付ける小悪魔的魅力の資産家の娘、アンジェリカにすんなりと鞍替えする。二人は誰もが羨む美男美女カップルとなる。
タンクレディを高くかっているサリーナ公爵はふたりの仲を認め仲人にもなる。
これは、先代が蕩尽し財産を失っているタンクレディの救済にもなる縁であった。
だが、アンジェリカは小賢しく資産を増やし貴族の仲間入りをした俗物の市長セダーラの娘である。
サリーナ公爵自身も彼を良くは思っていない。タンクレディがアンジェリカを見初めてしまった手前、付き合っている人物だ。

Il gattopardo004

舞踏会が延々と続くが、エキストラはホントの貴族の末裔~素人であるという。
道理でパーティーも踊りもしっくりいっていた。
ヘタな役者がやるより、身に着いた習慣である。
バート・ランカスターとアラン・ドロンのイタリア語の流暢さにも驚いたが、調べてみると吹替だったそうだ。
いくら何でも自然過ぎる話し方だった(笑。
しかしバート・ランカスターの老いた貴族の威厳と品格はまさに絵に描いたよう。
アラン・ドロンの若い貴族も申し分ない。目を怪我したと言って眼帯をしていたがほとんどコスプレイヤーのノリであった(笑。
更にジュリアーノ・ジェンマの若いこと。まるでジャニーズの新人みたいではないか(爆。
歌はホントに唱っていたのか?とても声量があって上手かったが。
クラウディア・カルディナーレも若いこと。圧倒的な美のオーラを発していたのは確か。しかしちょっとワイルドで悪女っぽい。

Il gattopardo005

凋落する貴族の終焉の美というものが香しく漂っていた。
(ルキーノ・ヴィスコンティが描く説得力である。)
舞踏の名手として名を馳せたサリーナ公爵とアンジェリカのワルツもそのシーンの重さから見どころであった。
だが外の騒音、女の下品な笑い声、腹立たしい突風、楽隊のタイミングの悪い演奏、等々の不協和音も不吉なノイズのように挟まれている。これがまた妙に心地よいバランスを生んでいる。
豪華絢爛なタペストリーをも想わせる味わい深い傑作であった。

長いけどまた観たい。
テーマが重くても何度でも観られる清々しさがある。




WOWOWにて




ノマドランド

Nomadland001.jpg

Nomadland
2021
アメリカ

クロエ・ジャオ 監督・脚本・製作・編集
ジェシカ・ブルーダー『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』原作
ルドヴィコ・エイナウディ 音楽
ジョシュア・ジェームズ・リチャーズ 撮影


フランシス・マクドーマンド、、、ファーン・製作
デヴィッド・ストラザーン、、、デイブ
リンダ・メイ、、、リンダ
シャーリーン・スワンキー、、、スワンキー
ボブ・ウェルズ、、、ボブ
ピーター・スピアーズ、、、ピーター


フランシス・マクドーマンドとデヴィッド・ストラザーン以外は、素人。ホントのノマド。
そして役者のふたりも見事にノマドしていた。
ホントのノマドの人たちも素敵な演技で驚く。
広大な砂漠の光景が、人間であるが為の宿命としての孤独と相まって枯れた絵として定着していた。

Nomadland002.jpg

フランシス・マクドーマンドが出ると一気に彼女の醸す世界に惹き込まれる。
ファーゴ」と「スリー・ビルボード」が圧巻であったが、これもまた、、、。
ちなみにこの三作すべてでアカデミー主演女優賞を獲得している(キャサリン・ヘプバーンに並ぶ4回目もあり得る)。
アカデミー賞、エミー賞、トニー賞の演劇の3冠を達成し、本作では「作品賞」も取っており製作と主演女優賞のダブル受賞は史上初という。
それが充分納得できるものだ。

Nomadland003.jpg

ノマド生活などと聞くと思想的に惹かれるところがあるが、更に最近では車中泊が流行っている、ここでのノマドは、高齢者たちが経済的な余波を喰らい家を失い車で移動しながらそれぞれの土地で慣れない日雇い仕事や季節労働をして生きてゆくと言うもの。
若者も時折いるが、弾んだ感じはしない。自由の謳歌などというものではない。
しかし、ひとつの場所に縛られるのはどうしても苦しくなる(彼女は大企業の倒産により街が消滅したことが大きな原因だが)。

こうするしかなかったという気持ちと出来る限り縛られずに生きたいという願いが窺える。
しかし実際、根無し草で生きて行けるかというと、それは難しい。
ファーンも車の故障でしっかりした家庭を持つ姉に借金に行っている(支援リーダーが説く通貨からの解放はない)。
テクノロジーと衣食からは自由ではないことから制限は色々と生じてくる。

Nomadland004.jpg

ノマド生活を続けて来た友人が、いつしか息子の家に入りそこでゆったりと孫の世話をしながら暮らしていた。
招待されてそこに赴き、皆に歓迎され、彼にずっと一緒に住まないかと誘われるが、家の生活には戻る意思はなかったようだ。
定住が向かない人はいると思う。
単に経済的な理由から車中生活をしているのなら、チャンスがあれば抜け出て家に住むはず。
そういう人も勿論、いるはずだが、一度ノマドになると戻れないというのも分かる気はする。
いや定住生活には戻れないという(彼女の場合、夫と共に過ごした地に拘り過ぎ、それを吹っ切るために外に出たのだ)。

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高齢のノマドの人々を支える活動をしているリーダーがこの生活には「さよなら」はなく「またいつか」だけがある、と言っていた。
彼も息子を5年前に自殺で失い、その喪失感に耐えながら生きて来たが、今この活動をすることで供養になると考えてるという。
いつかまた、息子に逢えると、、、。彼女もまた亡くなった夫にまた逢おうとしているのだろうか。

どうしたって物悲しい。
物悲しい重い空だ。
リリカルなピアノが響き渡るBGM。

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とても品格のある作品で、この監督の他の映画も確認してみたい。
監督も本作で、アカデミー監督賞をアジア人で初めて獲得している。



WOWOWにて





*特別価格



スケアスリーアパートメント

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Malasaña 32
2020
スペイン

アルベルト・ピント 監督
ラモン・カンポス、 ジェマ・R・ネイラ 脚本

ベゴーニャ・バルガス、、、アンバロ(17歳の娘)
イバン・マルコス、、、マノロ・オルメド(父)
ベア・セグラ、、、カンデラ(母)
セルヒオ・カステヤノス、、、ペペ(吃音の長男)
イバン・レネド、、、ラファエル(5歳の次男)
ホセ・ルイス・デ・マダリアガ、、、ミゲル(クララと名乗る悪霊)
マリア・バレステロス、、、スサナ(悪霊ミゲルの姉)


1970年代のスペインの噺。家庭に拘ったホラー映画。
都会のマドリードに出て来て心機一転頑張るぞという父に引っ張られ皆で上京してきた家族が散々な目に遭う。
スペインでは、事故物件という押さえとかないのね。一家の災難は完全にアパートの4階のその部屋のせいなのだが。

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最初にバラしてしまうとホラーが台無しみたいに思われるが、これは予め内容が分かっていてもそれでどうと言うものでもない。

この幽霊であるが、性同一性障害から世間や家族(特に父)から疎まれ、悩み苦しんだあげく孤立して亡くなる。
偏見から来るマイノリティーが迫害の対象でしかないのは今もあまり変わりないところだが。
そして悪霊が見え、そのメッセージを伝える能力のある人が、ここでは筋萎縮性側索硬化症の女性なのだ。
悪霊からメッセージを洗濯干しロープを介して貰うペペは吃音。悪霊の存在に気付いている祖父は認知症。
そもそも元の村から出て来たのは成功を掴むという希望からだけでなく従兄妹同士である母と父が不倫から結ばれて白眼視されたのが原因だとか。そして息子のラファエルが行方不明になっても仕事の休暇の取れないローンの圧し掛かった貧困家庭であること、、、。
更にこれが肝なのだが、17歳のアンパロがすでに妊婦ときた(未婚である。相手は村からの手紙の主か)。

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ジャンプスケアも使い基本に忠実なホラー作品であるが(線の切れている電話が鳴って行方不明の弟が助けを求めたり)、特別な怖さや不気味さなど、お化けの悪さ自体は印象に残らず、この現代にも充分通じる家庭~人々に限りなく重く圧し掛かる社会的諸問題がテンコ盛りなのにまず気づく。
これだけ盛り込み、どう持ってゆくのかと思うと父親が死にローン返済が出来たというオチである(苦。

そしてこの家族の人それぞれに様々な形でアプローチをかけ、各自の目線で追い詰められるところを描いている。
ここもこの映画で重視している部分であろう。
だが大きな流れとしてグイっと収斂して来るところが弱く、全体にやや散漫な雰囲気になってしまっている。
そして尻切れトンボで、終わった気がしない、、、。

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大概のホラー映画は、ここまでマイノリティーや社会問題をズッシリ盛り込もうとはしない。
テーマもあやふやになり、何で怖がらせるのか分からなくなってしまうところだ。
もっと単純な図式で今こうなっているとした方が、スッキリ怖がることも出来よう。
それにこの家族、他人の怨念に怖がっている暇や余裕も本来ないのだ。
この悪霊は単なる弱いもの虐めをしている。
母の謂うように「わたしたちが何をしたというの」である。

下の男の子を攫ったり、他の誰にもこれ見よがしな脅しと嫌がらせをして恐怖に陥れる。
そしてもう限界となった奥さんが勤め先で偶然出会った客である霊能者に助けを乞う。
かなりの御屋敷でお金持ちの母娘のようだが、快く応じてくれ自宅にまで訪問してくれた。

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そもそもこの悪霊が何に拘りこの家族にここまでちょっかいを出して来るのかというと。
男でありながら女となったのであるが、当然子供が出来ない。
そこで17歳の娘の胎内に宿る赤ん坊が欲しくなったのだ。
当初は5歳の一番下の子を狙っていたのだが。

子どもが出来れば女性としての存在証明とはなるまいが、どうやら本気で母になりたかったようだ。
不憫である。

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車椅子の霊能者も身体をはって頑張ったが、除霊とかは出来ず、メッセージ~言いたいことを伝えたに過ぎない。
この霊の力~ポルターガイストも強く、家族は皆それぞれ壁まで吹き飛ばされ、痛い目に遭う。
そしてこの霊の姉のところに正体を探りに行っていた娘が帰り、子どもは渡さないと宣言しガラスの破片で自らの腹を刺す。
霊が怯み家族にかけていた力を解いた瞬間、父が彼女にタックルをかまし4階の窓からダイブする。
父は絶命するが、霊はそこから立ち去る。
人は死ねば現世からは消えるが、霊は基本、何ともないはず。
もともと死んでるのだ。この世界にのこのこ現れているのがおかしい。

Malasa006.jpg

これで何かが解決したとは思えぬが、娘のお腹の子はどうなったのか、一家は父の生命保険でローンは完済することが出来、元居た村に戻ることになった。戻ったところで居心地は悪かろうが。
何とも悲惨なだけの噺である。
誰も彼も何もかもが悲惨なのだ。
あの不動産屋の男が憎たらしく思えてならない。

音楽が明るい(笑。



WOWOWにて




#フォロー・ミー

FOLLOW ME010

FOLLOW ME/NO ESCAPE
2020
アメリカ

ウィル・ワーニック 監督・脚本・製作

キーガン・アレン 、、、コール(人気ライバー)
ホランド・ローデン 、、、 エリン(コールの彼女)
デンゼル・ウィテカー 、、、トーマス(コールの友達)
ローネン・ルービンシュタイン 、、、アレクセイ(ロシアの脱出ゲーム主催者、大金持ち)
パシャ・D・リチニコフ 、、、アンドリュウ(アレクセイの仕掛けのスタッフ)
ジョージ・ヤンコ、、、ダッシュ(コールの友達)
サイヤ、、、サム(コールの友達)


ライバーのやり過ぎ配信の悲劇である。

FOLLOW ME011

日本では、二次元キャラで配信を行うVチューバーの勢いが凄い。
バーチャルユーチューバーという抽象的なレベルであれば、こういった危険性は少ないだろう。

これはサヴァイヴァルデスゲームというところか。
動画配信10周年企画として派手なことをやらかそうぜ、というノリでロシアの金持ちに招待されそこで企画された脱出ゲームに参加する。
しかし皆が妙に間が抜けた行動をとったりしていて、今一つ緊張感の欠けたところがあった。
特に主人公のノリの良いだけのお調子者ぶりがよく描かれている。

FOLLOW ME012

人気ライバーのコールは、ロシアに招待され究極の脱出ゲームを友人と共に生配信することになった。
有名になったことで調子に乗りまくっているが、確かにこういう時は落とし穴も思わぬところに在り、ちょっとは落ち着いて考えるところは欲しい。
これまでにない秘密の過酷な脱出ゲーム。それが凝りに凝ったセットとキャストで練られたもので、主役のコールだけが内容を知らないというもの。ゲームの過酷さも友人のドッキリ演技に支えられたものである。
所謂、通常の脱出ゲームの枠から外れた「ドッキリ」企画であった。
と、これだけならよいのだが、余りにエスカレートしたもので、一緒にゲームに参加した仲間が皆殺されてゆく残酷なものなのだ。
わたしも終盤までほとんど真に受けてコールと共に騙されて観ていたのだが、、、。

FOLLOW ME013

何もあそこまでやらなくてもよかろうに。
心底本気になって絶望と怒りの虜になってしまった彼は、主催者のアレクセイが最後にゲームの説明をしようと出て来たところで彼を殴り殺してしまう。
他の関係者たち~友人と恋人のエリン含む~は、何やってるのと驚いて全員出て来るが、一番驚き呆然としているのはコールに他ならない。

しかし何も知らされていないコールにとっては、自然の感情であり憤りであっただろう。
仲間が皆殺されているのだ。
半狂乱である(ライバー視聴者には大受けで日本なら「投げ銭」がポンポン効果音とかと共に入るところか)。

最後にホントに殺されてしまったデスゲーム主催者も銃で撃たれたのなら、何でもなかっただろう。
他の者も銃で撃たれて死んでいたものだ。
だが固いものでリアルに殴られたのなら、死にもする。
とてもよく出来たドッキリということだが、これだけリアルな演出をするのは、映画を撮るよりも遥かに大変となろう。
通常、映画の場合は編集とCGなどで加工した結果を見せればよいが、ここでは同一空間内でライブでコールに見せるのだ。
その様子をライバー視聴者たちは見ていて、その全体をわれわれ映画鑑賞者が作品として眺めている。
コールに対しては、ほぼイリュージョンレベルの細工も多用しなければ騙せないはず。
ライバー視聴者はドッキリを知ったうえで観ているようで、ただ愉しんでいる。
やはりアレクセイは相当な金持ちであろう。

FOLLOW ME014

だがやはりコールを追い詰め過ぎて身を滅ぼしてしまった。
勿論、コールも世界中の物凄い数のファンの前でライブ殺人を犯してしまったのだから破滅である。
そんな、アホなという映画だ。

出て来る連中が皆して軽い。
お気楽映画ではあるが、主催者はせめて、ホントは元気に生きている他の皆と一緒に仲良く登場すべきであった。
そうしたら頭を抱えて唖然とするコールを全員で冷やかして終わりであったのに。
(実際それでもよかったと思うが、どうしても悲惨な結果に持ってゆきたかったのだろう。SNS世界もエスカレートするとこんな場面に立ち会うことにも成り兼ねないという警告もあるか)。

FOLLOW ME016

ライバーを主役に作ることは、今日的なテーマで面白さは分かるが、、、
やっちまったよ、の世界である。
だが、それにしては緊張感が足りない。
練り足りない部分が途中気になった。

アレクセイの彼女が凄い。
この女優で映画を作って欲しいものだ。




WOWOWにて











ライトハウス

The Lighthouse001

The Lighthouse
2019
アメリカ、ブラジル


ロバート・エガース 監督・脚本
マックス・エガース 脚本
マーク・コーベン 音楽

ロバート・パティンソン、、、イーフレイム・ウィンズロー / トーマス・ハワード(新人の灯台守)
ウィレム・デフォー、、、トーマス・ウェイク:(イーフレイムを監督するベテランの灯台守)
ワレリヤ・カラマン、、、人魚
ローガン・ホークス、、、本物のイーフレイム・ウィンズロー:


1890年代のニューイングランドの孤島の灯台が舞台。
孤絶した地で4週間、灯台の管理を行う。
灯台守は主任と新人の助手で2人だけ。
やたらと意地の悪いベテラン上司に只管耐える新人であるが、、、
登場人物は薄汚い空間に、この男たち二人だけである。モノクロである。

The Lighthouse002

しかしこの映画は凄い。
神々のたそがれ」を想起してしまう質感を覚えた。
勿論、キャストとこちらの距離まで侵犯する過激さはないが(形式的には所謂、普通の映画である)。
大荒れの海で、息詰まりむせかえるような腐臭漂う灯台の閉塞空間のなかに男二人がぶつかり合いながら揉み合う光景が延々と続くのは観たくもないが、観てしまう。
ちなみにアスペクト比は初期の映画の頃のものと同じか。ほぼ正方形である。
怪しい魔物さながらの人魚も絡み、狂暴なカモメや前任の助手の不可解な死、そして荒れ狂う海に、トーマスが助手にはどうしても見せない灯の管理。

The Lighthouse003

ただ、何故この老人は、何でも呑み込み仕事を身を粉にしてやる新人をここまでいたぶるのか。
イーフレイム・ウィンズローの方も、金が欲しいため、グッと堪えて我慢して従うが、限界が来るのは分かる。
こうした暗く不気味な海鳴りの続く小さな孤島の灯台という気の滅入るような空間に男二人で過ごすなら、互いを労い楽しく仕事も同等に分担してやって行かねばどうにも続かないではないか。
ワザと破滅に向けているように思えてならない。
仕事も過酷な体力仕事は、皆新人任せで、常に不平不満ばかりぶつけている。
そして灯の管理の部屋には絶対に通さない。

大しけで帰りの船が迎えに来なかった後からは、転げ落ちるように破壊的で悲惨な状況に向ってゆく。
浸水で貯蔵食料はダメになり土に埋めたストックは皆酒であった(通常灯台守は飲酒禁止となっている)。
大酒を呑み続けるうちに狂気は増してゆき、水の中から老人の日記・評価簿が見つかり、新人が怠惰で何もせず給料は無給が相応しいと書いてあるのを見て、我慢のタガが外れる。

The Lighthouse004

ここで起こる全ての事に禍々しい幻想が纏わりつく。
特に人魚の怖さは、他のマーメイドモノとは次元が異なる。
人魚は美しく果敢なく描かれたものが多いが、これは狂気のクリーチャーだ。
カモメも狂暴だが、全てが幻想であり悪夢にも思えて来る。
死んだ漁師の魂が宿る海鳥を殺すと不吉な事態になると言われていたがイーフレイム・ウィンズローは不気味で攻撃的な海鳥を殺してしまう。このような行為と相まっていよいよ恐怖と不安が入り混じる様相を呈して来る。

トーマス・ウェイクの謂うように、イーフレイム・ウィンズローを見殺しにして彼に入れ替わり再生を図り森の樵から海の灯台守に転身したトーマス・ハワードは、未だに森の中を発狂して彷徨っているのかも知れない。
非常にディテールの明瞭な悪夢と言われれば納得も出来る。

The Lighthouse005

更に恐ろしいのは、老トーマスを痛めつけ、犬のように這わせたうえで、穴に突き落とし土をかけるところだ。
顔にも土がどんどんかけられているのにずっと喋っている。途轍もない演技である。
土に埋められた後でまた刃物で魔物のように襲ってくるのも圧巻であった。
そして老人にとどめを刺し、彼から奪った鍵でトーマス・ハワードは念願の一番上の部屋~灯の管理の場に立つ。
一体そこで彼は何を観たのか?
ムンクみたいに絶叫して下に転げ落ちる。
明くる朝、浜辺で海鳥に食われている彼がいた。

The Lighthouse006

アニヤ・テイラー=ジョイ主演の「ウィッチ」の監督であった。
圧倒的な完成度の映画であったが、これも生半可なものではない。
共に息の詰まる幻想が支配する敢えて言えば、サイコロジカルホラーか。



WOWOWにて





落下の王国

The Fall001

The Fall
インド、イギリス、アメリカ
2006

ターセム・シン 監督・脚本・製作
ダン・ギルロイ、ニコ・ソウルタナキス 脚本


カティンカ・アンタルー、、、アレクサンドリア (山賊の娘)
リー・ペイス、、、ロイ・ウォーカー (黒山賊)
ロビン・スミス、、、 ルイジ(片足の俳優)
マーカス・ウェズリー、、、オッタ・ベンガ(氷配達人)
ジートゥー・ヴァーマ、、、オレンジ摘み / インド人
レオ・ビル、、、ダーウィン(病院職員)
ジュリアン・ブリーチ、、、オレンジ摘み / 霊者(ミスティック)
ジャスティン・ワデル、、、エヴリン看護師 / エヴリン姫
ダニエル・カルタジローン、、、シンクレア / オウディアス総督
キム・ウィレンブローク、、、医者 / アレクサンダー大王
エイダン・リスゴー、、、アレクサンダー大王のメッセンジャー
ショーン・ギルダー、、、ウォルト
エミール・ホスティナ、、、アレクサンドリアの父親 / 黒山賊
グラント・ブレット・スワンピー、、、オーガスティン司祭
ロナルド・フランス、、、オットー
ニコ・ソウタルスキ、、、ホラス


カメラアングルとか、撮影がなかなかアートしていた。
「絵」に拘りがある。所謂、映像美の追求がよく分かる。そして何と言ってもベートーベンの交響曲第7番である。
ここぞというときにかかる。まさに感動もの。
(ベートーベンの交響曲の中では一番好き)。

The Fall002

映画の撮影中に脚を骨折し彼女にも去られたスタントマンが自殺するために、腕を骨折して入院中の少女に即興で作った叙事詩を聴かせ、病院の薬を持ってこさせようとする。
弟の仇をとるためにオウディアス総督を殺しに行く勇者6人。その中に進化論のダーウィンもペットのサルと共にいる。
序盤は皆強く頼もしい英雄譚となっているが、、、少女が見舞いに来る度に断続的に何日もかけ続いて行く。
しかし肝心のモルヒネは、粒が足りなかったり中身が砂糖に代えられていたり、彼女が棚から落下して零れてしまったりで、結局、3回の自殺のチャンスは皆ダメになる。と謂うより命が救われる。
自暴自棄の彼の話す大叙事詩も終盤に向き、どんどん悲劇の極みとなってゆく。
結局、皆死んでしまうのか、、、。

The Fall003

ロイ・ウォーカーとアレクサンドリアの2人だけになってしまい、ロイ・ウォーカーもオウディアス総督に殺される一歩手前までくる。
だが、アレクサンドリアが泣いてどうか殺さないで。死なないでと懇願する。
スタントマンのロイもそれを受け容れて、生きることにする。

The Fall004

この映画も叙事詩に出て来るキャストは皆、ロイの映画関係者か病院関係者である。
ひとり二役で頑張っているのだ(笑。
叙事詩の思い切りビビットな舞台とくすんだ病院の日常が交差しながら進んでゆく。
こういったタイプの映画はよく観る。
ただこの映画は、撮影効果や衣装、美術に力を入れていることがしっかり伝わってきた。
(特に衣装はすっ飛んでる)。
こなれたアニメーションも無理なく入って来る。
絵的に惹き付けるものだ。
ベートーベンの第7番の入るタイミングも良し(笑。

The Fall005

そしてこの映画の肝は、ヒロインの5歳のアレクサンドリア演じるカティンカ・アンタルーである。
近年稀にみる庶民的な女優である。
看護師と姫役であるジャスティン・ワデルは綺麗な如何にもお姫様役向きの女優であるが、カティンカはピザマンみたいなギャグアニメキャラの娘である。
ただし、物語はちょっとこの歳の女の子には過酷な内容となっており終盤はシンドイ。

The Fall006

この想像力を解放した強調単純化された極彩色の遠慮ないストーリーはホドロフスキー監督にも通じるところ。
しかしその分、極普通の幼い女の子には負担が大きかった気がする。
最終的に生きる希望を見出して退院したことは、良かった。
少女はまた骨折の原因となったオレンジ農場に戻り元気に暮らしており、スタントマンは、相変わらず派手で危険な落下技を銀幕に存分に披露していた。
最後に続けて観られるモノクロフィルムは、まさにお宝級。
The Fallであった(笑。

The Fall007

やはりロケ舞台の抽象性も凄いが衣装が圧倒的なインパクトであった。



WOWOWにて









スーツケース・マーダー

Suitcase Kille001

Suitcase Killer: The Melanie McGuire Story
2022
アメリカ

ニコール・L・トンプソン監督

キャンディス・キング、、、メラニー・マグワイア
マイケル・ローク、、、ビル・マグワイア(メラニーの夫)
ジャクソン・ハースト、、、ブラッド・ミラー医師
トリスタン・ローレンス、、、ジョー
ニッキー・ガーザ、、、セレーネ
ウェンディ・マリック、、、パティ


久々にAmazonPrimeを開いたので、そこから新しいのを、、、。
なんせ、「ブルー・ロック」が面白いのだ。水曜のアップが待ち遠しくなっている今日この頃(笑。
映画の方は、サスペンスかと思うと実話ベースの物語のよう。

Suitcase Kille002

2004年に実際にアメリカで起きた『ビル・マグワイア殺人事件』を元に作られた映画だという。
日本でもよくやっている「再現フィルム」みたいな感じ。
映画ならではの魅力は無い。

これを観て思うことは、くれぐれも不審な死に方をしないことだ。
病院に運ばれて死ぬのが何かと穏当かも。
(ベストという気は無いが)。
殺されたりして犯人が分からなかったりすれば、親族が疑われたりする。
特にその前日に喧嘩をしていたとか。
愛人が出来ていたとかなると、伴侶が邪魔になるという連想は固い(笑。
ここでも夫が車で7時間のビーチでトランク二つ分に分割され遺体で見つかる。

Suitcase Kille003

ここでは殺された夫はもうずいぶんと浮気を重ねギャンブルで大金を使い込み闇金融から借金もしていて夫婦間はぎくしゃく、というか半ば終わっていた。ただ妻は自分が子供時代両親の離婚で苦労したこともあり子供の為に別れずにやっていくつもりであったという。
しかし彼女の状況証拠が、夫の派手な浮気に仕返しの意味もあったか勤め先の医師と不倫関係を始めていた。
夫が殺害された日の近辺で、護身用にピストルを買い(夫に頼まれ渡したきりというが)、睡眠薬も夫の浮気相手の筆跡で買っており、前日、夫が家を買ったことで怒り暴力振るって家を出て行ったと証言するが、睡眠薬の入ったワインを飲ませていれば、それ自体無いことになる。眠ったままの夫を子供が幼稚園に行っている間に殺害して切断し夜に捨てに行けばよい。
この殺害に使われた銃の弾も事前に購入した銃で使えるモノであった。
更に彼女の車の運転席シートに旦那の皮膚の一部が付着していたことがDNA検査で分かる。

Suitcase Kille005

これを検察にまくしたてられれば、陪審員はそちらに靡く。
映画自体も、その方向で作られてる気がした。
サスペンス映画は、余りに状況証拠が揃っている側は大概、白であり冤罪ぎりぎりのところで、敏腕弁護士(場合によっては検事の場合もある)が、真犯人の仕掛けた巧妙なトリックを鮮やかに解き、もう少しで極刑にされそうであった主人公を救うというカタストロフものになるが、これはそうはいかない。

Suitcase Kille004

どうしたってこの裁判の流れでは、妻が有罪で順当だろう。
弁護士側も手の打ちようが無い。愛人に対しても一切犯行めいたことは明かしておらず、その点で一貫している、と言っても弱い。
この女優の演技のせいか演出によるものかよく分からないのだが、この女性とても虚無的な人に思える。
夫がビーチで遺体で見つかったと報告が来たときは泣くが、冷酷とは言わぬがニヒルな雰囲気はいつも醸しているのだ。
この辺が夫の姉にも悪印象を持たせる一因にもなっている。
義姉の言うように正直に伝えなくても幼い二人の子供を葬儀に参列させないのはおかしい。
父の葬儀である。

Suitcase Kille006

これが仮に冤罪だとしてもこの女性、ちょっと何らかの災いを呼び込みそうな気がする。
綺麗な笑顔とか言われているが、昨日のイモージェン・プーツには、悪いが遥かに及ばないな(仕方ないけど)。
噺の方も実話ベースでは、仕方ないか。この女性、結局終身刑となり、今もずっと無罪を主張し続けているそうだ。
わたしの印象では、闇金融業者との金のトラブルなども考えられるところではなかろうか。
ギャンブルも女性との浮気もド派手にやっていればこれもまた危ない。
マフィアとかが絡めば、如何にも奥さんがやったように始末出来るのでは。
ともかく証拠が奇麗に揃い過ぎているのが、ちょっと不自然な気もする。
(自分でやったならもう少し上手くやるはず。でも虚無的な人だからこうなってしまうのかも)。

微妙。



AmazonPrimeにて





ファーザー

The Father001

The Father
イギリス・フランス・アメリカ
2020

フローリアン・ゼレール 監督・脚本
クリストファー・ハンプトン 脚本
フローリアン・ゼレール『Le Père 父』原作
ルドヴィコ・エイナウディ 音楽


アンソニー・ホプキンス、、、アンソニー(父)
オリヴィア・コールマン、、、アン(娘)
マーク・ゲイティス、、、男性
イモージェン・プーツ、、、ローラ(介護士)
ルーファス・シーウェル、、、ポール(夫)
オリヴィア・ウィリアムズ、、、女性
アイーシャー・ダルカール、、、サライ医師


音楽が良い。
ビゼーの曲でマリア・カラスの唄っているものとか、、、
クラシック選曲のセンス良い。ピタリと来た。

The Father002

認知症の老人アンソニーの視点から徹底して描かれる。
気難しいとは謂うが、こんなに滅茶苦茶な表象に投げ込まれては、イラついておかしくなるのは当然。
(周囲の人間も充分にイラつかせるが)。
でもホントにこんな風に記憶~物語が切れ切れになり改竄され時間を失いランダムに入り混じる症状があり得るのか。
下の娘の亡くなった事実や自分が認知症であることを、認めたくないということが大きな要因となり現実を歪め介護士を追い出すことに繋がっているのは分かる。
飽くまでも無意識に、無自覚にである。

The Father007

彼にとっては、この表象自体が暴力でしかない。
自分のお気に入りのフラット~自宅が娘の自宅であったり、娘が離婚したはずなのにしていなかったり、パリに行くはずなのにロンドンから離れないことになっていたり、しかしそれらは直ぐにひっくり返り入れ替わるのだ。
そのなかに一つだけ現れた光といってよい存在が、亡き娘とそっくりの介護士ローラである。
他の介護士は追っ払っていたが、彼女だけは受け容れられる余地があった。
しかし後に改めて観ると全く異なる女性なのだ。似ても似つかない。ローラはどうしたと怒るアンソニー。
(イモージェン・プーツみたいな人が来てくれたら娘似でなくても病状が好転するかも(笑)。

The Father004

突然現れるあの娘の夫のポールではない男は何者なのか(アンではない女もそうだが)。
あからさまにどれだけわれわれをイラつかせる気か、と悪意の眼差しで言い放つ。
終盤は悪魔のように暴力まで振るう。これには堪え切れず泣く。
ずっと献身的に父を世話してきた長女のアンはポールと共にパリに行き、父は施設に入所させた。
(それ以外に方法はあるまい)。
そこで、突然現れ彼に暴力まで振るった男がその施設にリアルにいる。
娘婿のポールはともかく、あの男(アンの代理も)はどういう意味をもつのか。
アンソニーの些か幼いが自己対象化を図った彼の理性による自己批判の表れか。
そうした作用から生じている節はある。

The Father006

ここで何よりも混乱をアンソニーの精神に齎しているものが「発狂した時間」である。
寄る辺なき彼は頻りに腕時計を気にし、時間を人に尋ねる。時計~時間に縋るのだ。
他者が家に入って来て自分の時計を盗まないかが何より気にかかる。
ヘルパーに対してもその嫌疑をかけて追い出していた。他者は正しい時間を盗むものなのだ。彼の自立を妨げる存在。
詰まり彼の日常~物語が破綻を来すのは、「線状的時間性」が欠落し過去も未来もなく循環し円環の中に閉じ込められてしまうことにある。原因と結果が結びつかず、前提が立ち消えたかと思うといつの間にか復活している。
その結果、安定した物語を生きる~自立が削がれ、苦痛と恐怖に苛まれ途方に暮れるばかり。
彼を見守る人々も彼に翻弄され疲弊しきっていた(特に娘のアンと夫のポール)。

The Father005

この円環から抜けるには、ひとつは次女そっくりのローラと共に過ごすこと。
しかし彼女は一過性のアンソニーの改竄した表象の結果に過ぎずホントのローラは全くの別人であった。
この幻想に安定的に逃げ込むことは不可能だ。、
過去から遊離した記憶の辺片と歪められた現実認知と彼特有のバイアスを経ない表象が複雑に絡んで閉じた世界で藻掻いて来た訳だが、その霧の晴れた瞬間に現れた人に救いを求めるのが、残された道であろう。
もう一つは、退行してママに縋ること。
施設の担当介護士は前にアンと名乗った女性であるが、彼女に身も心も任せて再生するのだ。
「自分から葉が全て落ちてしまった」。「天気が良いから散歩に行きましょう」。
幼児から初めて、時間を紡いでゆく。まるで精神においてはクローン人間さながらに。
80年の総括は出来ず、85まで生きたら5年の生のまとめとなるかも知れぬが、それもひとつの人生だと思う。

The Father003

アンソニー・ホプキンスだから通して見れたのかも。
相当シンドイ噺である。
やはり彼は芸達者だねえ。オーラが違うし。娘役のオリヴィア・コールマンという女優さんも凄い。
だがわたしとしては、イモージェン・プーツが観れて得した気分(笑。
爽やか過ぎる。介護にこんな人が来たら、認知症も治るかも(いや認知症でも楽しく余生を送れるかもだね)。

良い映画には違いない。





WOWOWにて








コンフィデンスマンjp 英雄編

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2021

田中亮 監督
古沢良太 脚本

長澤まさみ、、、ダー子
東出昌大、、、ボクちゃん
小手伸也、、、五十嵐
小日向文世、、、リチャード
松重豊、、、丹波
瀬戸康史、、、マルセル真梨邑
城田優、、、ジェラール・ゴンザレス
生田絵梨花、、、畠山麗奈
広末涼子、、、韮山波子
織田梨沙、、、モナコ
関水渚、、、コックリ
赤ペン瀧川、、、ちょび髭
石黒賢、、、城ヶ崎善三
梶原善、、、奪われた男(出番を赤星に奪われる)
徳永えり、、、海上自衛官
高嶋政宏、、、政府官僚
生瀬勝久、、、ホウ・ナムシェン
真木よう子、、、謎の女(本物のマルセル真梨邑)
角野卓造、、、三代目ツチノコ
江口洋介、、、赤星栄介


今日もWOWOWから撮っておいたものからババ抜きの要領で。

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マルタ島ヴァレッタが舞台。ホントに?だとすれば金はかけてる。キャストも豪華だし。
絡みも多い。「おさかな」はスペイン人マフィアのゴンザレスの「踊るビーナス」を3人がそれぞれ狙うが、インターポールのマルセル真梨邑も「ツチノコ」逮捕に乱入し、日本からは、警察官丹波が詐欺師トリオの逮捕に、更に彼らのライバルでもあるマフィアのボスの赤星も加わる。そして最後には本物のフランスのインターポールエリート捜査官が乗り込む、、、。駒が多い。
だが、実はそれも最初に取り決めた役割であり、ホントの目的は偽ツチノコ退治にあった、、、。
凝っているというか胡散臭い噺である。

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いつもこんな感じに逆戻ししながら辻褄あわせをして見せるのが~これは伏線回収とは違う~お決まりのようだが、どうもそこを分かっているならこんな子芝居必要ないだろ、みたいなところが見つかったりする。
今回も一点ばかりかなり変なからくり証がある。
偽ツチノコが森の中に作っていたお宝部屋の偽の建物を近くに予め作っておき、偽標識で誘い込んだ彼から指紋認証とパスワードを抜き取る細工をして、直ぐ隣の本物の部屋からまんまとお宝美術品を全て奪うという説明があったが、偽の部屋の作りは分からないはずなのに何故作れたのか。全く違えばツチノコもこれはおかしいと気づく。

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この映画、前にも想ったが、よくこんな複雑な取り決めを事前に練ることが出来たのか、という点。
状況や流れの変化でパタンも幾つか用意しておく必要もあろう。
どの時点で仕掛けた罠に嵌るとか、気づくとか、たまたまとか外れる場合もあろう。
それに合わせて3人がこうも臨機応変に動いたり、シンクロしたり出来るか?
そもそも上記の建物突き止めてから偽物を作るまでどれくらいなの?ほとんど時間も経っていない。
向うで作るのだからその道の専門家に頼んで、コピーと設計と資材調達と大工まで集めてどれくらいかかるか。
変なものを作れば直ぐバレて計画も台無しだし。
そういうところが、イージー過ぎる。
この変な種明かし?をここまでする必要はない。

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噺自体が騙しの世界だが、映画そのものがインチキ臭いのだ(笑。
もっと普通の映画で良い。
だが何故観たのかといえば、イクちゃんが出ているからに決まってる。
最近では一番弟子の久保さんが大河ドラマにも出るという。
(久保さんがどんどん逞しくなっている。一緒に何かやればよいのに)。
イクちゃんにも是非、主演で映画に出て貰いたい。齋藤飛鳥嬢みたいに主役で頼む(もう二度も主役やってる)。

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ただ、こういう感じで人を派手に騙し大金を稼ぐ飛んだ人生も気持ち良かろう。
超人的な仕掛け作りや打ち合わせ(何処でどういうタイミングでやってるのか分からん)や学習が必要だが、楽しくやれれば言うことない。
まあ、これくらいお気楽に生きて行ければ、多分相当なことが出来ると思う。
仲間であるぼくちゃんをいつも騙して利用するし。
五十嵐は八方美人で皆を騙すし、でもダーコに上手く使われてる、それが彼の狙いか。
最終的に誰もかれもが「こねこちゃん」(笑。
(このお膳立て自体が本来は物凄く大変なはずだけど)。

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ここが一番、わたしにとって肝心な部分。
ここにフォーカスしたい。
皆、騙して派手にやってるのよね~。
芸術~創作自体が騙しの世界でもある。
騙す!
わたしも頭を切り替えてゆかなければ、、、もっと気楽に、大胆に!






WOWOWにて








スレイト

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SLATE
2020
韓国


チョ・バルン 監督・脚本

アン・ジヘ、、、ヨニ(女優の卵)
イ・ミンジ、、、キム・ジナ
パク・テサン、、、フィリップ
チョ・ソンギ、、、鬼剣
イ・セホ、、、司祭
ジョンホ、、、山賊王
パク・インス、、、テピョンソ
イ・ダヨン、、、スア
ジョン・ジンウ、、、ゴースター
ナム・イスル、、、ガラガラヘビ
シム・ウソン、、、映画監督


WOWOWで録っておいたものを順繰りに観ることに。
今日は韓国アクションファンタジー。
気軽に観れそう、、、。
「カチンコ」である。

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気軽に観れた(笑。
孤児院育ちのヒロインが「主役」目指してアクション俳優を頑張ると言うものなのだが、、、
「強く念じれば願いはきっと叶うのよ」と先生に言われたことを胸に、なかなか目が出ない彼女は希望は捨てずに頑張る。
まずスタント俳優として頼まれるが、その現場に友人の車で着くと、誰もいない。
どうしたのかと思っているうちに、彼女はパラレルワールドに来ていましたとさ、、、

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コメディタッチということもあり、安易な設定に感じる。
パラレルワールドが途中から我々の世界から分離したものらしい。
ここで面白いのは、元の世界とこちらの世界で同じ役者が違う役を演じ分けているところ。
3年前に元の世界で失踪したユーチューバーがこちらでも細々と活躍しているが、、、
何かと「登録」と「いいね」をくれとヨニにねだる。

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彼の謂うところでは、同じ人はいるが分岐した先、歴史が全く違う世界になっているとのこと。
だから元の世界でのあの人が、こちらでは全く違う立場~パーソナリティとして生きている。
ユーチューバーとヨニだけは、途中で来たのであくまでもアウトサイダーとしているのだが。
ユーチューバーは目立たずアップする動画をこそこそ撮りため、ヨニは村の守護者~主役として迎えられる。

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主役であるのは良いのだが、ここは映画の撮影ではない。現実であり、大変血生臭い。
皆が剣などを持ち、普通に殺し合いをしている世界なのだ。
最初撮影だと思って気軽に殺陣をやって見事な腕前を披露したことで「鬼剣」と間違えられ村人の守護神に祭り上げられる。
しかし実際は本気の殺し合いであった。アクションスター気取りではいられない。
ホントに切れる刀を持たねば殺される。

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だが、さして悩まず「主役」に拘り、突進して行くところがシンプルな女性である。
映画自体もスッキリしたものだ。敵も、強いもののみ生きる価値があり弱者は死ねという価値観。
剣術アクションも吹っ切れていて見応えはあった。
本物の鬼剣はやはり剣術も見事で、強かったが、子どもに化けた敵に殺される。この辺、韓国映画らしい。
最後にヨニが急に強さを増し圧倒的な強さを誇るフィリップを倒すが何故だか分からなかった。
ユーチューバーの撮った一連のヨニの本物の殺陣映像データがUSBで手渡され、木製のカチンコをパチンとすると彼女は元の世界に戻る。ここが如何にもフィクション染みている。実はこれがホントの撮影風景であったとかなるのかと思ったのだが、そうではなく、これから普通に撮影が始まるところで、彼女はスタントが何処へ行っていたと監督に叱られるだけであった。

しかし向うでユーチューバーの撮った映像を見たこちらの世界の映画監督(向うでは鬼剣)が、素晴らしいアクション女優を見つけたと喜び、次の映画の主役に決める。
パラレルワールドに命がけで行った甲斐もあったと言うもの。
これも強く念じれば宇宙が叶えてくれるパタンなのか(かなりリスキーであるが)。
結果オーライの噺であった(笑。

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アン・ジヘは確かに素敵であったが、昨日観たヒロイン女優に似た感じの美女で、どうも応援するほど乗り切れないものがあった(笑。



WOWOWにて



ローグ

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Rogue
イギリス南アフリカ
2021

MJ・バセット監督・脚本
イザベル・バセット脚本

ミーガン・フォックス
フィリップ・ウィンチェスター
ジェシカ・サットン
キャリ・テイラー
ブランドン・オーレ
アダム・ディーコン


最悪の状況でどうやって助かるのか、、、ハラハラしながら見届ける映画。
特に前半の緊張感はなかなかのもの。
サバイバルアクションとして面白いのだが、感情移入はし難い。
つまり誰かを応援しながら観るような気持には、なれないところ。

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テロリスト、ヒロイン率いる傭兵部隊、ともに大量に死ぬ。
今度は彼が、そろそろ死ぬぞと分かってしまう。その通りに死ぬので、意外性はない。
兎も角、テロ軍団と知事の娘救出に来た傭兵チームとライオンの三つ巴の闘いである。
ライオンが圧倒的に強い。闇に塗れて瞬時に襲うのだ。これでは勝てない。

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傭兵チームは相手のテロ軍団よりライオンに襲われ死んでゆく。
密林でその地に慣れたテロ軍団も急襲してくる。
しかしどうもわたしは、ヒロインを応援する気にもなれない。
彼女は最初から死なないことが確定し過ぎている。
そういう雰囲気の女なのだ。余り肩を持てない(笑。
そこが思いの他この映画に浸るうえで大きく作用する。

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助けられた知事の娘も微妙。
余り可愛げが無い。酷い目に遭わされたから無理もないか。気が強い。
マサイ族の黒人戦士の身の上話ばかりが大きく取り上げられ、ドラマ性をそこで出すか、という感じ。
この男がセンシティブな部分を持って行ってしまった感があり、ヒロインと準主役的な娘と最後まで何とか生き残った隊員は、然程印象的でもない。
(ここで政治性を出してはいるが、余りそういう映画でもないことが分かる。とは言えアクションがそれ程見せ場でもない)。

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アフリカでライオンの繁殖が行われており、そこで密漁などを愉しんだり毛皮を剥いだりして稼いでいた輩がいたという、動物愛護協会が聴いたら(協会でなくとも)許せない実態があったらしい。
この映画の舞台は、かつてライオンを繁殖させていた廃屋である。
テロ組織から辛うじて人質を奪い逃げて身を潜めた傭兵たちに次々に襲い掛かるメスライオン。
弾薬も底をつき、医薬品も食料も、助けを呼ぶため通信する電力~バッテリーもない。
(何とかガソリン発電機を稼働させることに成功し救援は呼べるが、朝まで持たないに対し、朝には行く、である)。
銃撃戦でかなりの人数を失って、ここでライオンに襲われ、ヒロイン(隊長)以外に生き残る隊員が1人だけという悲惨さである。
人質は途中の川で鰐に襲われ死んだ娘が1人で残りの2人は生き残る。
どうしてもサバイバルには、鰐を出したいのだ。

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ライオンは勿論、CGであるが、もうちょっと頑張って貰いたいところ。
最後に、何故この雌ライオンがこの繁殖場の廃屋に残っていたかが分かる。
助けのヘリが朝に到着し、ライオンも漸く歩けるようになった幼い子供を引き連れ何処かに去って行く。

こうした映画はヒロインの魅力によっている部分は大きいものだ。
ちょっとその点で弱い気がした。
マサイ族の黒人傭兵を主役にした方が良い。



WOWOWにて




キッズ・オールライト

The Kids Are All Right001

The Kids Are All Right
2010
アメリカ


リサ・チョロデンコ 監督・脚本
スチュアート・ブルムバーグ 脚本

アネット・ベニング、、、ニック (医師)
ジュリアン・ムーア、、、ジュールズ (景観デザイナー)
マーク・ラファロ、、、ポール (精子提供者、レストラン経営)
ミア・ワシコウスカ、、、ジョニ (娘18歳)
ジョシュ・ハッチャーソン、、、レイザー (息子15歳)
ヤヤ・ダコスタ、、、タニア (レイザーの彼女)
ザーシャ・マメット、、、サシャ(ジョニの女子の友人)
クナル・シャーマ、、、ジャイ(ジョニの男子の友人)


レズビアン・カップルが精子の提供を受けてそれぞれに男子と女子の子供をもうけて幸せに暮らすことなど普通にあって何の問題もない。
多様性、個性はもっともっと認められ受け容れられなければならない。
その形そのものはよいのだが、ここで繰り広げられる話にはかなり問題を感じる。
この形体を守るために非道とも取れる排除を行い、硬直した閉鎖的な態度をとるのだ。
これは、本質的にLGBTや多様性を尊重する精神~姿勢であろうか。

The Kids Are All Right002

まず、両親(両母)が子供に過干渉で彼らを支配し過ぎ。
それで父とも謂える立場の精子提供者に逢ってみたくなる。
(単なる好奇心もあるにせよ。閉塞感から他者を求めたくなるのは自然)。

両親(両母)が、お互いの問題~確執を子供の前に平気で晒す。
結果、ふたりの子供を大いに悩ませ混乱させる。
ポールと子供たちの関係性は、ちょうど離婚した父親と決められた日に逢うようなものに似ていると感じた。
(ここの関係性はかなり良好なものになっており、そこから彼らが得るものはあったはず)。
親の都合で子供が築いた関係性を一方的に壊し、傷つける。飽くまでも自分たちの問題であるのに子供を巻き込む。
子どもに自立~別の人格を認めていないとこのような態度が容易に取れるものだ。

The Kids Are All Right003

一番、引っ掛かったのは、精子提供者の男性を振り回し放題振り回した挙句、まるで仇みたいに排除すること。
これは、あんまりだ。
彼はそもそも彼女らに逢うつもりなど元々なかったところに、子どもたちが逢いに来て、その繋がりで両親とも逢うこととなり、そのままズルズルと親子との関係がそれぞれに続き、ジュールズとは肉体関係にまで進んでしまう。
しかしこれも大人同士の同意によるものである。つまりジュールズの浮気に過ぎない。
だがそれが元で本気になってしまったポールを家庭を壊した悪質な侵入者扱いで追っ払うとは、どういうこと?

The Kids Are All Right005

ポールが一番気の毒に見える。
このレズカップル、あっけらかんと生きているように見えて、マイノリティーであることに(今はそれほど特別視されるわけではないが)過剰に防衛的になっているのだろうか。
この辺、複雑である。
だが、権利を大事にするのは良いが、自己中になること、排他的になることは明らかに違う。
自分たちを守ることは当然であっても、他のストレートの連中も尊重しないと。

The Kids Are All Right006

つまり、何であってもお互いの自然な感情を尊重することが大切なのだ。
ここでは、それがなされているようには思えなかった。
このカップルの家庭を描くことでそのような状況~課題が析出されていたと思う。

The Kids Are All Right004

キャストは大変芸達者なひとばかりであった。
アネット・ベニングとジュリアン・ムーアみたいなカップルほんとにいそう。
大変リアル。
リアルと謂えば、このような家庭に突然引きずり込まれた精子提供者の立ち位置の微妙さ難しさである。
家族4人が皆、彼にどう対応したらよいか戸惑いを隠せない(元々呼ぶべき人ではないのだ)。
それが実に上手く自然に演じられている。
その辺、言うことなし。
わたしとしては、ミア・ワシコウスカを久しぶりに観られて、得した気分(笑。




WOWOWにて











かつて観た映画をまた観てしまう

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もうこれだけ幾つも観ていると、そういうことも起きよう。
ザ・マミー」である。
勿論、途中からこれ観たわ、とは気付くが、そのまま観てしまうのだった。
大概、直ぐにこれ観たと思った瞬間、止めて違うものを探すのだが、これはそのまま見入ってしまう。
ストーリーなどは途中からこうなったな、とか次々に思い出すのだが、新鮮な魅力にも取り付かれる。

ここでは、ふたりの主人公だ。
最初観た時は、特に強い印象は持たなかったかも知れぬが。
何とも両者が共に綺麗なのだ。男の子の方はそこに精悍さが加わり、女の子の方は凛として。
真正面からしかと対象を射るように見つめる、その眼差し。
ふたりともクールである。
(それから音楽も良いことは、付け加えておきたい)。

確かに最悪の環境である。誘拐や臓器売買、麻薬絡みの殺害は日常茶飯事。
これだけ国自体が腐敗していれば、警察などに頼ってはいられない。
というよりも敵と同じだ。
警察は麻薬組織と深く繋がっており、議員に立候補してる男も組織のボスである。
選挙の障害となる情報や関係者などは全て抹消しに何処までも追って来る。

何でここまで来てしまうのか、、、そんななかでも、、、
親兄弟を殺され家を焼き出されストリートチルドレンとなり、寄る辺ない身となっても、、、
子どもたちは、身を寄せ合い逞しく生き抜こうとする。
これがひりつくようにリアルなのだ。
何と言う現実なのか。

そこに更に死者の浮かばれぬ霊が無念を晴らそうと子供に縋って来る。
このVFXは、どうなのだろうか。血が線状に走って行ったり、囁きやミイラ化した生々しい母とか、、、。
お伽噺的なクリーチャーも出て来るが、ファンタジーに逃避するよりホラー度の方が高く感じる。
ママは味方とは言えない。
(つまり緊張と恐怖からの逃げ場というより不安を増しているように見えるのだ)。
わたしは、特に無くてもよかったと思う。
そのシーンでギレルモ・デル・トロ風とも謂われたのか。
あの美学まで昇華されているかどうかは、微妙だが、、、。
確かに現実と黄泉の混迷は起きてもおかしくはない。
そう、ここでは境界は崩れ去っていた。

悪事の証拠データが入っている携帯を取り戻しに来たギャング(と立候補者)に彼等は追い詰められるが、、、
特にあたふた逃げ回っているばかりではなく、その場その場で生を噛み締めている。
夜のアジトの子供たちの姿には、静かに張り詰めた美すら感じられた。
特に主演のふたりには魅せられる。
この歳で沈黙の演技とは、、、。

確かに、パンズ・ラビリンスのメキシコ版かも知れない。
「戻ってくる」
美しい作品だ。それで途中で止められず観てしまった。
(何かと間違えて観てしまうことを狙ったような邦題は止めたい。トム・クルーズやグザヴィエ・ドランのものとか)。
まあ、こんな名作であればだが、これからも結果的に、このパタンあるかも(笑。





AmazonPrimeにて




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アライバル-侵略者-

THE ARRIVAL004

THE ARRIVAL
1996
アメリカ

デヴィッド・トゥーヒー 監督・脚本


チャーリー・シーン、、、ゼイン・ザミンスキー(天文学者)
テリー・ポロ、、、シャー (ゼインの彼女)
ロン・シルヴァー、、、フィル・ゴーディアン(NASAの上司)
リンゼイ・クーパー、、、イレーナ・グリーン(気象学者)
リチャード・シフ、、、カルビン(ゼインの同僚)
トニー・T・ジョンソン、、、キキ(黒人少年)


チャーリー・シーンが大汗かきながらの暑苦しい熱演である(笑。
地球は今や尋常ではない温暖化が進行していた。とてもリアルで説得力ある。
このSFは今観ても大変面白い。
科学機器は勿論、アンティークだが、噺はよく出来ていて、VFXもかなりのもの。
土台が崩れてゆくパラボラアンテナの上でのゼインとシャーのシーンなどよく出来ていた。

THE ARRIVAL001

出て来る連中が皆、エイリアンが人に擬態した連中ばかりというのが「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」を直ぐに連想させる。
フィル・ゴーディアンなどマトリックスのエージェントを彷彿させる不気味さがあった。
兎も角、主人公の疑心暗鬼が高まり、どんどん追い詰められてゆくのがひしひしと伝わってくる。
この映画は先駆的な価値がおおきく、つくづく、似たような映画が以降、量産されたことが分かる。
お陰でこれにかなりの既視感を覚えてしまったではないか(笑。

カリフォルニアの電波観測所でゼイン・ザミンスキーは地球外から届いた電波信号を観測しビデオに記録する。
知的生命体がわれわれに何か有難いメッセージでもくれるのでは、と期待するゼイン。
彼は自分の飛んでもない発見を報告しビデオを渡すが上司に握りつぶされた上にクビにされてしまう。
文句を言いに行った際に耳にした講義で、他の惑星をテラフォームする計画が彼のこころを妙に捉えた。
職を失い恋人のシャーにも逃げられた彼は、例の電波の件が諦められず、周辺の民家のアンテナを利用して受信装置を作り電波の受信にまたしても成功する。
(身が軽く行動力が凄い)。

THE ARRIVAL002

そして電波が宇宙からだけでなくメキシコ・ユカタン半島からも発せられていることを知り直ぐに飛んで行く。
そこでかつての上司であったフィルと同じ顔の警備員を見て驚く。
これまで彼は人を疑うことを知らず、上司や仲間、女性そして子供には無防備に大事な事を何でも打ち明けてしまっていた。
(黒人の子供は唐突に彼の自宅研究室に無邪気に飛び込んで来て、好奇心から彼の下で手伝いを始める)。
幸い女性は彼の仲間で同志とも謂える気象学者であったがサソリにより無残に殺されてしまう。
自分もホテルの浴室で殺されかけ、自分にとり重要な人も殺されてゆく、、、。
尋常でないことが起こっており、彼は警戒心を募らせる。
しかも自分を何度も襲ってきた男が脚の関節が逆に曲がり飛んでもない跳躍力を示すのだ(マジかよ)である。

既にエイリアンがかなり深く浸透していることを知り、彼は電波の発信されている旧発電所(現在オムニテク社)に忍び込む。
そこで電波を確認している最中に、途轍もないアンテナが上空に伸びてゆくのを見て、腰を抜かす。
入り込むと皆、人間の姿に擬態したエイリアンに他ならなかった。
そして生々しいエイリアンそのものを観てしまう(これがよく出来ている。脚の関節が逆である)。
圧倒される設備であり、巨大な機械が作動していた。何やら上空に向けて次々に発射している。
しかし要塞の中の警戒態勢は緩く、スパイでもないただの科学者のゼインが然程苦労せず逃げ出すことは出来た。
追って来たフィルそっくりのエイリアンを轢き殺すが、その後彼は逮捕される(警察もエイリアンに支配されていた)。

THE ARRIVAL005

脱走後にフィルに詰め寄ると、呆気なくエイリアンが地球を支配しようとしていることを認める。
明らかに地球を彼らに適した環境に変えているのだった。急激な温暖化は彼らの仕業であった。
これまでの粛清も自分たちにとり邪魔な者を対象にしていたという。
フィルも否定するより凄むことで威圧し彼を大人しくさせるつもりか。
この様子をゼインは監視カメラを利用し録画しており、それを世界に向け放送することを企てた。

その後、自宅の機器を全て破壊し吹き飛ばすなどの妨害工作にもめげず、電波ジャックにより世界に真相を知らせようとする。
心配になって帰って来たシャーと好奇心旺盛な黒人少年のキキと共に巨大パラボラアンテナの観測所にやって来るが、ずっと傍で協力を装ってきたキキもエイリアンの1人~監視役であったことを知る。
連中もここぞとばかりに襲って来た。その時液体窒素のボンベを利用し彼らを凍死させる。やはり低温が苦手なのだ。
その後、自宅の機材も破壊した装置が作動を始め、物を片っ端、吹き飛ばして破壊してゆく。
2人はアンテナの上にまで逃れて何とか助かる。
この白いアンテナの上の光景がスリリングでもあり好きだ。
シャーも彼のやって来た事を理解し、見直す。
そして下にいるキキに向い、叫ぶ。
もうお前たちの事は誰もが知っている。甘く見るなと伝えろ。
キキは神妙にそれを聞き取ると、例の脚に変形して走り去ってゆく。

THE ARRIVAL003

この映画に当てられたであろう予算と当時の技術からしてかなり頑張ったVFXだと思う。
エイリアンの姿とあの逆に曲がる脚(動物の後ろ脚)で走る姿は、脳裏に焼き付くものだ(笑。

(その後にかなりの影響を与えた)よく出来たSF映画だと謂える。





WOWOWにて





惑星戦記 G-LOC ジーロック

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G-Loc
2020
イギリス

トム・ペイトン 監督・脚本
マックス・スウェイリー 音楽

スティーブン・モイヤー
タラ・グベイア
マイク・ベッキンガム
キャスパー・バン・ディーン
ジョン・リス=デイビス


かなりメカと奮闘するハード系SFなのだが、何で題名がGによる意識喪失なの?
噺はそこじゃないでしょ。
確かに派手にGがかかって酷い目に遭っているが、それがメインならどんな映画なの。
頓珍漢な邦題みたいな原題だわ。邦題も「惑星戦記」と言う投げやりなモノで、どっちもどっちだけど。

氷河期は過去に何度もあったが、これまでの動植物とは違い、人類はそこで滅亡しては叶わんということで、じたばたする。
だが究極のご都合主義なのか何なのか、ワームホールが現れ、「レア」という惑星に移住が可能となった?
しかもサバイバルモノによくある噺だが、お金持ちしか行けない(笑。

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それで平民は全く農作物の育たぬ不毛の極寒の地で、残った食物を奪い合い殺し合いをしながら地球上に暮らしていた。
中には難民として貨物船?に乗り込んで侵入しようとするが、船毎破壊されてしまうケースが続いていたようだ。
噺は、宇宙船内での頼りがいのある2DアニメキャラのAIエジソンの指揮のもと過酷なサバイバルを生き残るヒーローとヒロインの奮闘振りを描く。時折、地球上に主人公がいた頃のこれまた大変な生活と悲劇を回想するシーンが丁度よく挿入されてゆく(このシーンの切り替えは、徐々に主人公に感情移入して行ける流れに繋がり上手い)。

しかし親戚の娘に帰りに食料を持たせたら、暫くたって残りの食料と金をよこせと親戚一同で襲って来るとはもう世も末だ。
環境が冷え切ると人のこころも冷え切るのか、、、確かにそういう傾向は出てこようが、、、ここまで行くか?
そこで撃ち合いとなり、娘だけでもレアに行かせようと金を貯めていたのに肝心の娘が撃ち殺されてしまうとは。
こりゃ夢も希望もない酷い荒み切った地となってしまったものだ。
この娘の為にもお前が代わりにレアに行けと父に諭され行くことに。

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この映画、主人公の泣きがかなり入るイギリスモノには珍しい映画である。
ただ、エジソンというAIの可愛らしいキャラのお陰で楽しく観られるところが大きい。

このAIは主人公の亡き娘さんがスマホに父の為に入れておいてくれたものだという。
凄いプログラマー~エンジニアなのね。
このエジソン君は非常に優秀なのだが、軽妙でフレンドリーな絶妙なキャラで父はもう娘と同様な存在に感じているような。
これほどのAIなら無理もない。
(かなりこなれたAIエージェントは2016あたりからスマホアプリとしても使われ出したが、それの究極版か)。

主人公のボロな船は直ぐにダメになるがエジソンのアドバイスに従い貨物船に乗り込むことに成功する。
そこでレア人に出逢い、お互いに酷く反目する。
敵同士みたいな関係なのだが、政府にそう仕向けられ洗脳されてきた経緯があったようだ。
このレア人とは先に地球から惑星レアに移住しそこで適合した者たちを指す。
つまり見た目は地球人と全く変わりが無い。ただし地球上とレア上の時間の進み方はかなり異なる。

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ずっと険悪なままであるが、船のトラブルや仕組まれた罠を回避するため、ふたりは作業を協力して行わざるを得ない。
更に眠っていた地球人がポッドから出て来て、何やら破滅的なことを言い破壊活動を始め、それとも闘わなければならなくなる。
主人公がこの船に乗り込んだ時に既に船員が彼女を残して皆死んでいたのは、この男が犯人であった。
この男を止めながら次々に困難な作業を進めるが(ここがサバイバルの最大の要素)、この男を拘束もせず放っておくものだから、起きては悪さをする(当然だ)。そこでも再三に渡り酷い苦労を強いられるのだが、、、。
何だか色々な点で抜けているのだ。

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エジソンのお陰で危機を幾たびも切り抜けてゆくが、遂に繋いだシステムを全部初期化しなければならない事態となり、エジソンも消えてしまう(バックアップとか取ってないのね)。
破滅的地球人が暴露したレア政府による不正移民虐殺計画を語った録画はロード出来るようにして彼は消えてしまう。
ここでも主人公は娘を失った時みたいにメソメソする(よく泣く男で珍しい)。
そういうところもあってか、レア星人の彼女には気に入られ(主人公も気に入っていることをエジソンは彼女に伝えていた)、とても仲良しになっている。

だが、例のレア政府に操られていた地球人が死ぬ前に船に核爆弾を仕掛けていた。
それを運んで船外に捨てようとしたらハッチが開かない。
もうここまでに相当なダメージをこの船は(外からも内からも)喰らっている。
そこでポッドに乗り主人公が爆弾を持って出ることとなった。
もうこれでお別れという事かと思うのだが、遠方で核爆発が起こるが主人公は暫く後に船に戻って来る。
どういう形で爆弾を処理しどうやって戻ったのかの詳細は無い。だが、ここはかなり肝心なところではないのか!
ちょっとムッとするが、その後は船を2人で修理してレアに向かうだけとなる。
レアに通信すると向うからあなたは英雄よと言われ迎えられる。
レア星の環境などについての映像も一切なし。

低予算から来る省略の多い噺であったが取り敢えずハッピーエンドで締めくくられた形だ。
もう少しシビアに詰めるエンディングもアリかとは思うのだが。
まあ、意外さや新しさは感じないが、AIのエジソンの存在がエンターテイメントを支えていた。
可愛いキャラ登場の肉体酷使系SFである。



WOWOWにて








サイレンシング

The Silencing002

The Silencing
カナダ
2020

ロビン・プロント 監督
ミカ・ラナム 脚本

ニコライ・コスター=ワルドー、、、レイバーン・スワンソン(野生動物保護区の管理人、アルコール依存)
アナベル・ウォーリス、、、アリス・グスタフソン(保安官)
ヒーロー・ファインズ・ティフィン、、、ブルックス・グスタフソン(アリスの弟、不良)
ザーン・マクラーノン、、、カール・ブラックホーク(警官)
メラニー・スクロファーノ、、、デビー(レイバーンの元妻、カールの妻)
ショーン・スミス、、、ブーン(医師、サイコ)


古い槍?を使った狩りを少女に対して行い、何人もの犠牲者が出る猟奇殺人事件が起きていた。
しかも娘の喉には声帯にメスを入れ声が出ないようにしてあるのだ(この辺から医療関係者も当たる必要性があろうに)。
(ここの村は一体何処なんだ?)
それまでにも少女失踪事件があり、主人公レイバーンの娘も5年前、14歳で誰かに連れ去られたままであった。
彼はその後、ずっと酒浸りの自堕落な日々を送りつつ離婚もし、野生動物保護区の管理人の仕事をしている。
ある日、管理区のカメラに不審な毛もくじゃらの衣装に身を包んだ者が映り込み、それが少女を槍で狩ろうとしていることが確認された。
ここからレイバーンが事件に深く関わって行く。

The Silencing003

まずこうしたサヴァイヴァル系サスペンスでいつも当惑するのは、主人公がやたらとタフな事(爆。
人だろうか?と思う。
凄い矢で深々と胸を射られ、変な保安官に拳銃で撃たれても、その後ちょいと治療すれば直ぐに格闘もしちゃってる!
人だろうか?と思う。
呆れる。

ターミネーターなら分かるが、普通の人なら6か月の静養だ。わたしなら8か月は欲しい。
だがタフなだけなら許せる。

The Silencing007

ここに出て来る奴でもっとも好かんのが、アリス・グスタフソンという保安官。
警官のカール・ブラックホークにここでは保安官など必要ないと謂われていたが、ホントに必要ない女だ。
少女を槍で突き刺し、レイバーンと対峙し襲おうとしている犯人を前に、保安官の身を案じ注意まで促している彼の方を平気で銃で撃つのだ。
その犯人がどうやら弟に思えたからだ(この保安官、悪事に手を染めている弟が心配でこの地に赴任してきたのだ)。
しかし飛んでもない糞女である。こんな保安官がいたら治安もなにもない。
そしてまんまと犯人を逃がし、少女を犯人から守っていた、レイバーンは深手を負いその場から逃走するが、彼を指名手配する。
この女は縛り首が相応しい。カールたち警官はこのブルックスを疑っていた(彼女も何よりそれを恐れている)。

The Silencing005

病院に連れて行けないため、カール警官が死にそうなレイバーンを車に隠しブーン医師に緊急に手術させ命を取り留める。
ブーンは腕は確かな頼れる医師なのだ。
そしてカールに追われていたブルックスが逮捕され、尋問を受けるが、白と判断される。
アリバイがあったのだ。つまり少女を重症に追いやりレイバーンがえらいとばっちりを喰らったその時の犯人は弟のブルックスではなかったのだ。
レイバーンは指名手配から解かれる。
普通ならこの保安官タダでは済まされない処だが、レイバーンが証言を犯人に撃たれたと訂正したため、罪は免れた。

そしてレイバーンが自分の管理区で襲われたときにボディに傷をつけておいた犯人の乗っていた車についに出くわす。
常にレイバーンの方が警察より動きが早い。
(こうした映画の定番であるが。ここで真っ当な警察はカールくらいか)。

The Silencing004

その車を降りる男を見るとどう見ても不死身のレイバーンと互角にやり合う男ではないやっと歩いている老人である。
彼に息子さんはいますかと尋ねると、いやいない。車は丘の上の男に時折貸すことがあるが、と答えた。
その丘の上の屋敷に犯罪の全てが隠されていたのだ。
忍び込むと丁度ベッドには、喉を引き裂かれた娘が横たわっていた。
壁にはこれまでに失踪した少女たちの情報が貼り付けられており、自分の娘のものもあるではないか。
間違いなく、これまで探し回って来たサイコキラーの巣窟である。
調べている最中に、その男に不意を突かれ気を失う。

The Silencing006

車から降ろされると何とその男はブーン医師ではないか。
そして例の衣装を着こむと彼に行け!と言う。
必死で逃げ出すレイバーン。
槍を放つブーン。彼は飽くまでも狩りで仕留めたいのだ。飛んでもないサイコキラーだ。
その頃、警察もその屋敷を調べて真犯人が判明し、保安官がレイバーンのもとに知らせに行く。
そして彼の部屋のモニタを確認するといままさに彼が毛もくじゃらの黒い男に狩られかかっていることを知る(ここのタイムラグは気になるところだが)。

The Silencing001

そして現地に行くが、もみ合いにより、今度はレイバーンが優勢で猛禽類を捕らえる秘密の罠のところに彼を引きづってゆく。
丁度そこに現れた保安官が大人しく犯人を差し出せと命令する。
彼は当然の如く、お前に言えた事かと聞く耳もたない。当然!
犯人に、お前だけは許さないと謂い、男を罠に突き落とす。奴は串刺しになるがまだ声は出せる。
助けないのかと聞くが、動物なら助けるがお前は絶対に助けないと返し、重い扉を閉ざしてしまう。
「これで貸し借りなしだ」に保安官も一言もない。

そして親戚一同、これまでレイバーンが拒み続けて来た娘の葬式を正式に行う。
ブーン医師が真犯人であることが報道されるが、彼は逃げてしまい見つからないということになっている。

もう一つ気になったところ。この女保安官の車の運転する姿が実に気に食わない。
こういう運転の仕方をする女は大嫌いだ。




WOWOWにて









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追憶の森

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The Sea of Trees


ガス・ヴァン・サント 監督
クリス・スパーリング 脚本
メイソン・ベイツ 音楽

マシュー・マコノヒー、、、アーサー・ブレナン(大学教授、物理学)
渡辺謙、、、タクミ・ナカムラ(会社員)
ナオミ・ワッツ、、、ジョーン・ブレナン(アーサーの妻、アルコール依存症、不動産業)


久々のナオミ・ワッツ登場の映画で、これは大丈夫だと思って観てゆける(笑。
主演キャストは、マシュー・マコノヒーと渡辺謙である(ナオミ・ワッツは回想)。
安定している(笑。
富士の樹海が舞台である(ホントに行ったのかアメリカの何処かなのか)。
わたしも行ったことはないが(笑。コンパスが効かない処なんて。ただでさえ方向音痴なのに。

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ちょっとしたボタンの賭け間違いで何もかもが悪く巡り、言い合いの絶えない険悪な状況に落ちることはある。
ブレナン夫妻もその悪循環に絡み取られていた。
そう言ったことも、病気などのアクシデントがきっかけでリセットされることもある。
しかし不運にもその時は既に遅い、場合もあるのだ。

このケースでは、奥さんは病ではなく、自動車の救急車への衝突というこれまた不運な事故によるものであった。
病気の脳の腫瘍は良性のもので手術で確実に助かるものであり、安心しきっていた矢先のことである。
漸くお互いに相手を思いやる気持ちの溢れ出た時期に。
人生とは皮肉なモノ。

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妻は生前、病院では死なないでね、と夫に念を押していた。
だから片道切符で、青木ヶ原樹海を選んだ。
しかし自殺しろとは言ってない。
それでタクミ・ナカムラが現れたのか。
とは言え微妙過ぎるだろ(ナオミ・ワッツが渡辺謙ってそれはちょっと。夫は絶対気づかないのは確かだが)。

夫はつくづくこれまでを思い返し反省する。
妻について事務的なことは、しっかり押さえていたが、彼女の好きな色とか好きな季節など知らないでいた。
死のうとしていた矢先に、タクミ・ナカムラに出逢い、彼がただ道に迷っただけで死ぬ気はなく助けてくれと縋る。
自分は死ぬつもりでいたが、相手は助けてやるしかあるまい、ということで二人して出口を必死で探すことに。

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だが、探し回ることでどんどん樹海に深く嵌って行く。
この試練~彷徨は妻との泥沼生活の再現にも想える。もう一度確認し直すための。
雨に降られ凍えそうになったり、防寒のためとは言え自殺者の服を剥ぎ取り着たり。
池を見つけて水を得るが今度は洪水に流されたりして過酷な環境に翻弄される。
かなり酷い怪我もして体力も尽きた当たりでガイコツ入りテントを何とか見つけ携帯も確保した。
ライターもあり暖を取ってどうにか命は繫ぎ止める。

今やここを脱し、生き抜くことで、二人の気持ちは一致していた。
アーサーはタクミに、これまでの経緯を語って聞かせた。タクミの表情は彼を超えた感情に支配されているかに見える。
妻を失った悲しみを嘆くとタクミは常に愛する魂は一緒にいると諭す。
だがそれを振り払うように妻もう死んだとアーサーは叫ぶ。
タクミが謝るとアーサーは、いや自分が悪かった、許してくれと何度も何度も泣いて繰り返す。
これは明らかにタクミを超えて妻に対する謝罪というより悔恨の情でもあろう。

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タクミは、自分の名前の他に妻はキイロで娘はフユだという事だけを伝える。
そして世話になったと語り、もう動けなくなったことを悟らせるのだ。
アーサーは必ず迎えに来ると言ってジャケットをかれに被せ、助けを求め携帯をかけ続ける。
すると電波の繋がるところに出て、レンジャー部隊が気づいて動き出す。
結局アーサーだけが救急車で運ばれ助かる。

2週間くらい後に退院して彼は再び樹海に入り、テントの傍のナカムラを寝かせた場所を見出す。
だがそこには、かつてナカムラが魂があの世に行くときに咲くという花が綺麗に咲いているだけだった。
彼はその花を自宅に持ち帰る。
大学に戻り学生の質問に答えている時、その学生が教授のメモをみとめる。
彼は日本にいたことのある学生で、その意味が掴めた。
アーサーが人の名だと思っていたのは、色と季節の名詞ですよと教えられる。

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やはりあれは、妻の霊であったのか。
ここで彼女の好きな色と季節を知ることになった。
「水辺にいると幸せ」というタクミの言葉も亡き妻の言っていたことだ。
あなたと愛する者は常に共にいます。今やアーサーもそう感じている。

こういう噺はアメリカ人は嫌うのか。
上映が終わるとブーイングの嵐だったとか。
(いくら何でもそれは、ねえ)。

わたしはとても過酷な試練を潜る再生への爽やかな映画だと思った。
あの花を自宅の鉢に植えた頃には、彼の表情は、はっきり生き返っている。
「楽園への階段」でもよかった(ナカムラが唄う示唆的な歌、わたしは題からLed Zeppelinをちょっと連想したが)。

わたしは、好きだが。こういう映画。
(アメリカだとブーイングなのね)。




WOWOWにて








鹿の王 ユナと約束の旅

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2022

安藤雅司、宮地昌幸 監督
岸本卓 脚本
上橋菜穂子『鹿の王』原作
富貴晴美 音楽
milet『One Reason』主題歌


堤真一、、、ヴァン(「独角」最後の戦士)
竹内涼真、、、 ホッサル(天才医師)
杏、、、サエ(アカファ王国の刺客)
木村日翠、、、ユナ(身寄りのない少女)
阿部敦、、、ヨタル(ツオル帝国皇帝の次男)
安原義人、、、トゥーリム(アカファ王の懐刀)
櫻井トオル、、、マコウカン(ホッサルの従者)
藤真秀、、、オーファン(火馬の郷を守る兵士のリーダー)
玄田哲章、、、アカファ王(ツオルへの反乱を企む)
西村知道、、、ケノイ(山犬を従える犬の王)


堤真一のヴァンは、役者の声優としてはすこぶる良かった(大概、人気俳優より本業のベテラン声優がやればよいのにと思うものだが)。杏のサエもクールで素敵であった(この人はこういう役が多い)。

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『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』更に『君の名は。』においてキャラクターデザイン及び作画監督を務めた安藤雅司が監督と謂えばもうワクワクするもの。しかも製作は『攻殻機動隊』のProduction I.Gだという。
原作は本屋大賞と日本医療小説大賞を受賞した上橋菜穂子『鹿の王』である。
わたしは、原作を読まずに映画だけのパタンが圧倒的に多いのだが、これは見終わった後、原作に当たらねばと思った。
決して映画が物足りなかったというのではなく、小説による文字入力を脳が欲したのである。
恐らくほんの数秒のシーンにかなりのページが畳み込まれていると察するところがあったからだ。

原作を知らないと掴みにくいのは確か。それにこのスケールなら2部か3部作にして無理なく描いた方が良いと思う。
2時間一本に詰め込むとなると、どうしても省略や端折りが出てしまうもの。

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岩塩鉱で主人公が奴隷として働いているところから始まる。
そこに幻想的な山犬の群れが襲ってきて、支配者側が全滅する。
どうやらこの山犬は疫病の象徴でもあるようだ。
死体を調べた医者ホッサルは、それがかつてパンデミックを引き起こした黒狼熱(ミッツァル)であることを確認する。
何故今と驚くが、ツオル帝国の属国となっているアカファの王が復権を企み仕掛けたものであった。
アカファの民はこのウイルスに対する抗体を持っているが、支配者のツオル帝国の民は懸かると直ぐに死んでしまうのだ。
運命的な出逢いをしたヴァンと幼い女の子のユナは岩塩鉱からふたりして脱出する。

ツオル帝国の医術師ホッサルは、山犬がこの疫病の原因をまき散らしていることと、それに噛まれても生きているヴァンの血液から抗ウイルス薬が作れることを見抜く。そして岩塩鉱から生きて脱出したヴァンを探す。
同時にヴァンによって特効薬が作られてしまうことを危惧したアカファ王は、後追いのスペシャリストの刺客サエを使って彼を殺害しようとする。
このサエのこれからのこころの流れ変化はとてもしっかり伝わって来る。
彼女は完全にヴァン~ユナ側についてしまう。
ヴァンもユナによってかつての自分に戻れたことを実感し、彼女を実の娘のように感じていた。
(ただし、それは分かるが、ユナのこの描き方からはそれだけの魅力を覚えない)。

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闘いのシーンは、アカファの戦士オーファン率いる部隊がツオル皇帝を殺害せんとして攻め入るシーンもあるが、それほどの迫力でもない。あくまでもアカファ王はウイルスのパンデミックによる勝利を狙っていた。
だが、天才医師ホッサルはヴァンの血液から見事抗ウイルス剤を合成してしまう。
更に食生活、ピュイカ(飛鹿)の乳を飲む習慣が非常に大きいことも発見する。
一定期間、ツオル帝国で過ごしその乳を飲まなかったアカファの者でもその病に罹っていたのだ。
ホッサルの医師としての闘いも共感できる描き方である。
この災厄を病と捉えるかアカファの呪いとみるかの鬩ぎあいも描かれてゆく(勿論、闘いを再び煽るための政略にも使われる)。

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そうしたなか、、、
後継者をヴァンに定めたケノイの誘いに応じて山犬の王になることをはっきり断り、一人の男として生きることを選ぶヴァンであったが、王となる資質を同じように持つユナが、山犬の王となってしまうことから救うため、自分がその役を引き受けることにしたのか。
彼は山犬を引き連れユナを独り置き去りにして山へと走り去る。
その後、ユナはサエと共に暮らすことになったようだ。
ある日、ユナがヴァンに作って貰った犬笛を山頂で吹くと遠くの山に鹿の王(ピュイカ)が威厳を持って現れる。
ヴァンの姿は見せない(彼がヴァンなのか)。
ユナの笑顔が広がる。

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miletの歌は説得力がある。

この描き方であるとユナの魅力が弱い。
ヴァン、サエ、ホッサルの流れは同調できるが。
「玉眼来訪」というのが権力の象徴であるのは分かるが、ちょいと謎である(笑。


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火曜サスペンス劇場 新・女検事 霞 夕子 ペルソナ・ノン・グラータ

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1994

木下亮 監督

鷲尾いさ子、、、霞夕子(横浜地検、検事)
平田満、、、山野検察事務官
姿晴香、、、緒方しのぶ(小料理屋の女将)
朝丘雪路、、、霞瑞江(母)
村田雄浩、、、霞友行(夫、住職)
高林由紀子、、、綾瀬英里(伸之の妻)
寺田農、、、綾瀬伸之(パレスデパート 役員)
ロニー・サンタナ、、、フィリップ(外交官)
斉藤暁、、、熊井(所轄警部)


AmazonPrimeにあった、昔のTVシリーズのひとつ。
ちょっと観てみることに。
「火曜サスペンス劇場」とかいうものは、実はTVで観たことない(笑。
初めて観た。勿論、TVドラマは(1:30モノのドラマも)、これまでに幾つか観たことはある。
如何にもTVドラマというものであった。
映画ではない。何処が違うのか、、、。

ストーリーの組み立てが根本的に違うという印象を受けた。
CMで区切られる短い尺の内に常に起伏(盛り上げ)を持たせ全体になだらかな流れを持つTVドラマと2時間から4時間以上の長い尺を制限なしに自由な組み立てに使える映画では、一本の塊感が違う。
長時間かけて豪華なセット、ロケで金をかけて撮ったことが分かるかどうか、という点もあろうが、最近よく観る自主制作映画は、TVドラマより明らかに金がかかっていない。更に短編映画はTVドラマより短い時間で撮っているようなものもある。
だが、映画とTVドラマは違う。
これを観てつくづく思った。

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TVドラマは全編に渡りそつなく撮ることが要求されるように思える。
たまたまそのチャンネルを見て、ただずっと単調なシーンばかり続いていたら、他に移ってしまうかも知れない。
するとスポンサーが困る。
常に小さな起伏と面白味が必要なはず。
映画は最後の最後にドンときても良い。それまで只管耐えて観ていても。

このドラマは、色と構図~絵に特に訴えるものが無い。何やら画面がボヤっとしている。カラーなのにくすんだモノトーンに思える(単にフィルムが古いだけか。ライティングなどによるものか)。1940年代のモノクロ映画がとてもビビットだったりする。
いずれにせよ余りにストーリー、脚本にだけ依存している。
それから、ノイズ~余地が無い。隠喩的な表現性はない。皆、そのものずばりその意味では実に平易。
そう「意味」で埋め尽くされている感じがドラマに平板さを生んでいる。
その分、きっちりと作られているとも謂えようが、少し息苦しい感じはする。

TVだと誰が観ているか分からない。基本、家のTVでお気楽に無料で観られる点で、何となく家族で見ていたり、、、
映画だとまずその作品をある主体が選択し、観ることになる。映画館に出向いて有料で観るのが、基本。
勿論、アマプラなどを利用し(会費で)パソコン視聴も充分あり得るが、これとて誰かの作品の選択が前提である。
何となく観るのとこれだと言って観る違いは制作自体に反映されている。
予算とか以前に。

しかしTVドラマが味気ないという訳ではない。平易だが単純ではない。
ここで扱われているテーマは複雑だ。
色々な人間の苦悩の要素が詰め込まれている。
追い込まれ犯罪に手を染める綾瀬伸之、その妻英里の絶望感からの享楽的な生活への逃避、緒方しのぶの綾瀬への切ない思い、フィリップの自己中な特権を振りかざした日本人蔑視(これは苦悩ではない)。
鷲尾いさ子と平田満のお仕事コンビも良いが、村田雄浩とのほのぼの夫婦が良い味を出していた。
そういえば、思い出したことがある。
鷲尾いさ子のデビュー時のイメージCMだったか自分で「鷲尾いさ子ちゃん17歳、耳が動くの」と言って、耳をピクピク動かしていた。「ふ~ん」とだけ思ったものだ(笑。

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その後、 大林宣彦の「野ゆき山ゆき海辺ゆき」でブレイクしたっけ。あの作品は良かったが、演技は凄い大根のままで暫くの間、突き進んで来たモノだ。このTVドラマでは上手いわけではないが、よくここまで来たと感心されられた(時折噛みそうになってはいたが)。




AmazonPrimeにて










ある用務員

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2021

阪元裕吾 監督
CrazyBoy 主題歌

福士誠治、、、深見晃(用務員、深見の息子)
芋生悠、、、真島唯(女子高生、真島の娘)
山路和弘、、、真島善喜(暴力団組長、晃の育ての親、光男の兄弟分)
前野朋哉、、、本田優介(真島の息子)
北代高士、、、殺し屋・稲岡(本田の配下)
伊能昌幸、、、ヒロ(高校生、唯の幼馴染)
野間口徹、、、深見光男(晃の亡き父、暴力団組長)
波岡一喜、、、遠藤(高校教師)
般若、、、西森(暴力団組長)
伊澤彩織、、、殺し屋・シホ(本田の配下)
髙石あかり、、、殺し屋・リカ(本田の配下)
一ノ瀬ワタル、、、村野(西森の腹心)


ダークでハードボイルドで乾いていて、雰囲気はとても良い。
ジョン・ウィック」を彷彿させるところがある。
ただし、こちらの方が物語の構成要素が多く、多彩であった。
伊澤彩織と髙石あかりのコンビ主演で、この直ぐ後に『ベイビーわるきゅーれ』が撮られたという。
何でも3部作になるとか。こちらも観てみたい。

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兎も角、福士誠治演じるダークヒーローがとてもいい線を行っている。
口下手で寡黙な頼れる男。
芋生悠もお嬢様役はお似合いだ。
(未だに印象としては山田杏奈の相手役が残っているが)。
なかでももっとも気になった役者は、般若。これは癖になる芸風。今後注目したい。
(薬中の組長であったが、観ているこちらも中毒になる)。

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真島善喜は今や経済ヤクザとして国外に大きく事業を拡大してもう表向きはやくざ色を払拭しようというところ。
そこで自分たちヤクザが切り捨てられては堪らんと、西森が配下のやくざ衆代表で真島に食い下がる。
しかしやくざの看板降ろせとまで言われてしまう。完全に切り捨てられたと悟った西森は、真島を取ろうと画策する。
ヒットマンは、深見晃が適役であった。何しろ真島と同格のヤクザであった深見光男を権力抗争で殺し、その遺児である晃を親代わりの名目でアサシンとして訓練し飼い慣らして来たのだ。
西森は深見に洗いざらい真島の所業について話し、これからヤクザや闇稼業の者をどう扱う気かを説いて聴かせ、お前の父を背後から撃って殺させたのは真島であることを伝える。
真相を知らなかった深見は激しく動揺する(これは組織の上の人間は誰もが知る事実であった)。
ここで印象的であったのは、真島が晃に教育を受けさせなかったことだ。やはりそうなる。そして本田優介と何かと競わせある意味、本田に闇の帝王学を学ばせたのだ(これは西森の洞察による)。

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真島のもとに乗り込み真相を彼の口から聞き出そうとする深見。
この育ての親は、あっさりと彼の父を抹殺して組織の天辺に立ったことを認める。
俺たちはこういう世界に生まれたんだ。それが当然なのだと。また、仇を討つのも道理だと。
しかし真島に手渡された拳銃で彼を撃とうとするがどうしても出来ない。
そこへ西森の腹心である村野が突然現れ真島を撃つ。虫の息の真島は晃に溺愛してきた唯のことを頼む。

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ここら辺から激しく動き出す。
西森を撃ち殺した冷酷無比サイコ野郎の本田優介、真島の愛人の子が本格的に動く。
死んだ父親の金庫を開ける為、大切に育てられてきた真島唯を狙う。
彼女の成体認証が必要なのだ。
そして彼女のガード役でずっと用務員として潜んでいた深見晃はもっとも邪魔な存在である。
唯共々憎しみの対象であった。
凄腕の殺し屋、稲岡が自分独りで充分と謂うところ、用心深い本田は8人のこれまた強力な殺し屋をかき集め、休校日の補習にやって来たほんの僅かばかりの教師と生徒の集まる学校を狙う。

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つまり校内での大殺戮が派手に行われるのだ。
それぞれ必殺技の違うアサシンが次々に深見に襲い掛かってくる。スナイパーもいる。
強敵揃いで悪戦苦闘するが、やはり稲岡のモンスターみたいな不死身振りが圧巻。
死んだかと思ったら生きている(笑。
女子高生ペアの連携の動きには確かに発展性やバリエーションが感じられる。
シホのアクションは既に秀逸なものであったがその進化形がスピンオフで観られるならこりゃ楽しみである。
そして本田優介の冷酷な表情の下に隠した深い怒りも理解できる。

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結局、深見は満身創痍でありながら死力を尽くし奮闘し、殺し屋とその親分の本田まで全て殺して真島唯を守り切り、力尽きる。
生き残ったのは唯独り。
お父さんを殺したのは俺だと謂い、彼女にピストルを手渡すが、唯はわたしはあなたや父とは違うと言って断る。
最後に壁に寄り掛かかったまま煙草を吸おうとするが、指から零れ落ちる。
「ついてねえな」と独り呟き事切れる。

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なかなかスタイリッシュに決めている。
こういうアウトローものは最後が肝心。
その前に唯が抱えて連れ出そうとした時、「あなたの将来に自分は邪魔になる。これからは独りで生きていかなければなりません。」と彼女だけで外に出て行かせる。この辺は任侠物の世界に通じる。
絶妙な線を行っている映画だと思う。



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ローマの奇跡

Forget You Not001

Per non dimenticarti/Forget You Not
2006
イタリア

リサンドロ・ドゥケ・ナランホ 監督・脚本
ガブリエル・ガルシア=マルケス 原作・脚本

フランク・ラミーレス
ヘラルド・アレジャーノ
アマリア・ドゥケ・ガルシア


わたしは、病院に入院するなら絶対に個室を取るが、この映画のように妊婦であれば、沢山同志のいる相部屋の方が心強いのではないか。
そう思わせる作品である。
物悲しいストーリーでもあるが、不思議に清々しい映画であった。

Forget You Not002

わたしに妊婦の心境は分かろうはずもないが、皆殊更に過敏に神経質になって不安と動揺を隠せない人もいた。
中には過酷な経験から、妊娠できなくなり想像妊娠で入院しているという人もいたが。
それぞれが色々と問題を抱えており、生活面での気苦労も多いようだ。
誰もが重苦しいドラマに生きていたがそれぞれの成り行きも丁寧に描かれていた。
群像劇になっている。
何であれ、よいお仲間がいれば、励ましあうことも出来よう。
実際、とても濃密な関係性が結べたのだ(これがよくあることなのか、レアなケースなのか、わたしには分からぬが)。

第二次世界大戦直後のイタリアの産婦人科病棟での噺。
ちょっとびっくりなのは、夜に病棟の何処かの部屋に密かに集まり病院では出されない物を食べたり、飲酒や喫煙をしていたことだ。
(秘密の合図で入れるというのは、子供じみていて可愛らしいのだが)。
極めて妊婦にとっては、不味かろう。
胎児の脳がダメになってしまうし、流産や突然死や早産の確立も高まる。
(とはいえ、大変な時期に親密な関係が結べる機会は大切なものだ。せめて食い物だけにとどめておけば良いのだが)。

Forget You Not005

ヒロインもそこに呼ばれてはいたが、酒・タバコは控えていたと思う。
だが、9か月目にしては胎児の動きが大人し過ぎるということから帝王切開で早期に取り出すことにする。
結局手術は成功するが、未熟児ということで、ずっと新生児集中治療室N ICUに入ることに。
しかし実際は低出生体重児というだけではなく、輸血も必要な深刻な事態にあった。

夫は良く出来た人で、大変細やかな気を使い、その件についても穏やかな報告を彼女にするばかり。
彼女が子供に逢えない分、子供のための機材を他の病院から借りてきたり、付き添いをして見守ってきたが、妻の退院の前日担当医に彼は呼ばれる。
そして彼女と共に帰宅する朝、子供は死んでしまうのだ。

Forget You Not003

しかしそれとほぼ時を同じくして、想像妊娠という扱いをされてきた女性が無事に女の子を出産する。
彼女は、自分が近いうちに女の子を産み落とすと確信していて、ヒロインの産む男の子と遊ばせたい、将来恋人同士になるかもと噺を膨らめてときめいていたものである。
この「ローマの奇跡」は、この一件にもかけられているか。まあ邦題であるが。

「彼女たちは人生で一番辛くて美しい時間を共にしてくれた亅と彼女は独白して夫の車に乗って去ってゆく。
ヒロインの凛とした爽やかさが映画の基調を支えていた。
夫も素敵な人である。
一人一人の個性が活き活きとしていた。




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愛と闇の物語

A TALE OF LOVE AND DARKNESS001

A TALE OF LOVE AND DARKNESS
2021
イスラエル、アメリカ

ナタリー・ポートマン 監督・脚本
アモス・オズ 原作
ニコラス・ブリテル音楽

ナタリー・ポートマン、、、ファニア(母)
ギラッド・カハナ、、、アリー(父)
アミール・テスラー、、、アモス(息子)


ナタリー・ポートマン 監督・脚本とあっては、観ない訳にはいかない(笑。
1945年。少年アモス(原作者)と現在の彼の独白~ナレーションが時折入る。
英国統治下のエルサレムが舞台。
音楽が良かった。ピアノ曲、何度か聴き直したい。

邦題は直訳であった。良いと思う。

A TALE OF LOVE AND DARKNESS002

しかし難しい映画作ったねえ~(苦。言語も、英語、ヘブライ語、アラブ語が入り混じる、、、字幕が無ければワケわからん。
この人インテリだから、自分で作るとなると、こうなっちゃうのね。

ヨーロッパにおいて、4世紀にキリスト教教会が勝利した後、反ユダヤ主義は様々な形で断絶することなく続いている。
しかし歴史の教科書を見れば、セレウコス朝シリアのアンティオコス4世が紀元前2世紀に、エジプトのプトレマイオス朝を倒して、ユダヤ人を弾圧支配するが、彼はユダヤ種を根絶やしにせねばならぬと言っていたとか。ヒトラーより随分早い。
民族的に、宗教的に、人種的にずっと迫害、弾圧の対象となり続ける身とはどんなものなのか。

無宗教空間に生まれた事だけは、取り敢えずホッとしてはいる。八百万の神がいるではないか、と謂われそうだが、わたしにとっては無いも同じ。いい加減で融通が利くのでとても助かる。多様性とか高尚なものではなく、何でもよいというところが(爆。
何よりも一神教が問題なのよ。それで血で血を洗う戦争を彼らは絶えず続けて来たのだから。
勿論、様々な形の「信仰」があるのは、言うまでもない。
例えば無理数の発見をしてしまったヒッパソスがピタゴラス教団により処刑されたのは有名である。
教団は宇宙を構成する数は、調和した比を保っているという「真理」を掲げており、それを根底から揺るがす数学的発見は、即ち死を意味した、みたい(怖。ホラーだ。

A TALE OF LOVE AND DARKNESS003

この宗教脳とは、何なのかね。自らの宗派の教義は唯一絶対であり、他宗派~異なる論理体系は皆滅ぶべき悪であり、神聖なるわれらが宗教のもとでは敵に対するどんな殺戮も讃えられる。
この論理~正義で全て行われたら堪ったものではない。命が幾つあっても足りない。

アホな自分の正義を振り回す糞バカは、ここら辺にも幾らでもいるが、やはり激しい殺意は覚えるね。
(断じて許せないバカもハッキリいるし)。

これが民族の歴史的な根深い憎悪であるならば、解消など断じてあり得まい。
反ユダヤ主義という形~事態で識別されるのは、やはりキリスト教をヨーロッパ諸国が受け入れたところからか。
しかし何故、ここまでユダヤが激しい憎しみの対象とされるのか、生粋の日本人のわたしにはどうも分からない。
(うちの近所にも、こんなところにと驚くような場所にも教会はあり、その数は実際かなりのものだ。彼らも皆、反ユダヤなのかしら)。

A TALE OF LOVE AND DARKNESS006

結局、何を信じてきたにせよ、どの宗派のもとで生まれてしまったにせよ、その個人~人間が個としてどう捉え直すかの問題だと思う。
生きる過程~事とは、そうしたもののはず。絶えず前提を覆して異なるモノへと進展してゆく。
誰もタブララサで生まれて来る訳ではない。
子宮にいる時から胎児は母親のことばを聴いて育っている。
生まれ出るとは、特定の枠に幾重にも嵌められる運命を受け容れることに他ならない。
そしてその枠に成形されてゆくに応じて成長したとか周囲から評価される。
立派な宗教者となり異教徒を立派に殺戮しに行く。
だが、違う生き方も選択できる。

A TALE OF LOVE AND DARKNESS005

物語は、ユダヤ民族国家への取り組みは少しずつ進んではいたが(テオドール・ヘルツル~バーゼルにおける世界シオニスト会議)、ついにパレスチナに彼等の為の国家を建設すると決議される。
彼らに国家を与えるべきだというのは真っ当な理屈に思える。
とは言え、すんなりと事が運んだわけではなく、アラブ先住民の土地没収、労働機会の奪い合いも生じた。
この映画でも強く訴えられているように上からの抑圧とは異なる、同じ立場の弱い者同士の対立の激化を呼んだ。
元々アラブはシオニズムに対し共感と理解を寄せていたにも関わらず(飽くまでも知識層と指導者の立場からだが)。
この対立にイギリスがビビった様子も描かれている(笑。

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そして何とも呆気なく、(彼等にはそう感じられたらしい。少なくともアモスたちにとり)イギリス委任統治終了の翌日に、イスラエル国家樹立である。
もうずっと(紀元前から)彷徨い続けて来た彼等である。何であろうがまずは歓喜の渦に、、、とはいかなかった、、、ようだ。
余りに永い時を待ち続けて来たからか、このまさかの展開に「何千年も故郷を求め続けたユダヤ人の熱意が、燃え尽きた。」という。
過酷な試練に耐え続けて来た強靭な民族であり知性も非常に高い彼等であるが、、、。

もう無気力に呆然としてしまって、、、でも分かる気がする。
そういうものだと。

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アモスの母であるファニアは片頭痛に長年苦しめられてきたが、この頃は食事も喉を通らなくなり、実家に戻り療養していたが症状は悪化するばかりで、真夜中に雨の中ずぶ濡れで座り込んでいて、、、
父息子のもとに緊急の知らせが届く。

40代で母は亡くなってしまった。
今息子はその時の母の祖父くらいの年齢に達している。

想像力豊かでいつも自分の作った物語を息子に語って聞かせてくれるとても魅力的な母であった。
その母との何とも言えない関係性を激動の時代背景の中で描いた作品と謂えるか、、、。
音楽が良かった。

現在、彼が作家なのは多分に母からの影響(遺伝子的にも)であろう。

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ナタリー・ポートマンの実に抑制の利いた静謐で病的な狂気を秘めた演技を堪能した。
まあ、自分のルーツから言っても経験的に共感は難しいが、一般的な(哲学的な)領域に広げると理解は出来る噺である。





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おるすばんの味。

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2017

武石昂大 監督

本田七海
平岡まい
小林万里子
片岡礼子.


今わたしの娘たちとの繋がりは、食べ物~料理にあるか。
アニメでちょっと話すネタはあっても、それはとっても儚い。
食べ物も食べてしまえば、それまでだが、唯一愛情の籠められる場である。

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味覚が強烈に記憶に残るかと謂えば、あれは美味かったということばに収められ、その味や香りそのものが再現されて来るわけではない。親和的感覚~イメージがことばに纏わりつくとしても。
だが何よりその食べ物~料理に対する愛おしさはどこか残る。好きな食べ物として。
パパのスパゲティは美味いとか。ハンバーグは嬉しいとか。何度も出すと飽きて逆効果となる(レパートリーは必要(笑)。

これくらいだな、繋がりと呼べそうなものは。
ほんの些細なことに過ぎないが、確かな拠り所は、その他にない。
こころのありかたとは、こういったものだとおもう。
暖かく心地よい親和的な在り方も悪意と殺意漲る関係性も。

モノには記憶が畳み込まれている。
(食べ物もそのうちのひとつで)。
この作品では、「カレー」だ。
ヒロインが幼い頃、母子家庭で母が仕事で遅くなる時はいつも作り置きのカレーが鍋にあった。
これたべておいてね、と。

ある朝、母がカレーを丁寧に作っており、幼いヒロインが今日もママ遅いの?と聞くと、そうよ、と答える。
幼稚園児である彼女は咄嗟に、そのカレーを鍋ごと流しにぶちまけてしまう。

それから20年後、幼い娘のいるコンビニ勤めの彼女は、同じようにカレーを作り置きしていた。
母との関係を、今は自分の娘と反復している。
こういったケースは少なくない。

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母の日、勤め先の昼食時に、同僚の若い女性が店長から残ったカーネーションを貰ったが迷惑だと、ほっぽって言う。
そして、コンビニカレーを食べ始める。
それにハッと気づくものがあったヒロインは、直ぐに自転車を飛ばして家に帰り、カレーを作って母の仏壇に供え自分も頂きますと手を合わせて食べるのだ。
お昼休みの余裕がある職場には見えなかったが、たまにはよかろう(笑。


深い慈しみと共に、潜み巡って還って来る料理はきっとある。


「お弁当を食べながら」(管野よう子)を思い出した。ヴォーカルは清浦夏実。
曲ははっきりと頭の中に鳴るものだと改めて確認したものだ(笑。









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女霊館

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Malicious
2018
アメリカ

マイケル・ウィニック 監督・脚本

ジョシュ・スチュワート、、、アダム・ピアース(数学科教授)
ボヤナ・ノバコビッチ、、、リサ・ピアース(アダムの身重の妻)
デルロイ・リンドー、、、ロナルド・クラーク(盲目の学部長、数学者、超心理学者)
メリッサ・ボローナ、、、ベッキー(リサの妹)
ルーク・エドワーズ、、、ジェームズ・ハーパー(妻殺しで服役中)
イヴェット・イェイツ、、、エミリー・ハーパー(ジェームズの妻)
ベン・ファンダーメイ、、、デイビッド(学生、大学の施設管理者)


うっかりホラーを観てしまった。
というより、単純であっさり観れるのも時には選びたくなる。
およそアメリカ映画らしからぬ出来。詰めの甘い薄い内容。音で脅かす派。
とてもローカル色が強い。というよりも低予算映画特有の匂いが漂う。

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怖い顔の年齢様々な女性の霊がテーブルの席に着くシーンがあるが、怖がらせたいのか笑わせたいのか、というものであった。
ちょっとギャグではないのだし、演出には気を遣って欲しいところ。

それからヒロインの妹。
映画でこれほど気に障る役というか女優は見たことない。
役柄がそういう役だからというだけでなく、その存在自体が気に障るのだ。
その態度、立ち振る舞いに表情、、、。
お祝いに変なプレゼントを送ってよこし、遊びに来ては好き勝手に振舞い、霊を見た途端黙って帰ってしまう。
「舐めてんのか?」と思わず言ってやりたい女優だ(いや役なのかな?(微妙)。

という感じで、どうもすんなり観られない座り心地の悪い映画。
いきなり妻を殺害する夫のシーンから入る。
彼は其の凶行の後、もっと早くやるべきだった、と呟く。
どうやら木箱はこの夫婦から流れて来たモノのよう。

たしかにホラーらしい怖いところはある。
まだ生まれてないのに泣き声に導かれてベッドを覗きに行くと、恐ろしい顔の赤ん坊がゴロンとしていたら、そりゃ母も死にそうになるわな。
お陰で流産し、もう子供も産めない体となり、、、。
こんな災難に何で遭わなければならぬのか、と謂えば妹が変な木箱を送ってよこしたからだ。
そこに呪われた悪霊が潜んでいたのだから
そもそも、出産祝いに何で不用品セールで買った如何わしい古い木箱など送ってよこすのか。
その箱を開けてしまったことで起こった禍である。まさか箱を貰って開けない人間はいまい。
諸悪の根源は間違いなくこのプレゼントセンスのない、人を舐めた妹である。
(姉にしても妹は唯一の理解者とか言っていたが、これでは処置無しだわ)。

数学者の夫も、問題は正しい方程式を見つければ必ず解ける、と豪語していたのに、、、。
こちらも呪いに打ち勝つ理性を観たかったのに、あっさり負けてしまう。この不甲斐なさ。
1+1は2とは限らないとかいう愚にも付かない負け惜しみを言って。
それでも数学者か。である。

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兎も角、人はやはり視覚・聴覚に訴える表象に弱い。
暖炉の上に飾った絵が少しずつ変化して行ったり、子どもの走る足音や赤ん坊の泣き声、更に各世代が母を呼ぶ声とか、、、。
実際の赤ん坊や少女や思春期の女性や中年女性、老婆などが次々に現れたり(鏡に映った自分の姿が独自の動きをするところなど面白い)、全員そろってテーブルを囲んだりされては、夫も気のせいだとか迷信だと突っぱねてはいられなくなる。

そしてリサに対しそれらの女たちが呼びかけて縋って来る。
クラーク教授によれば、これらは全て流産した娘の各世代の霊であり、それを箱に戻さないとならない、という。
(何で各世代の娘がご丁寧に登場するのか分からぬが)。
クラーク教授のもとで、皆でテープレコーダーで各部屋の音を録り再生して確認する作業は緊迫感があって良かった。
盲目の教授が霊をはっきり見てしまうところなど、なかなかの演出。
しかしここがこの映画のピークか。

この後は、もう呪いに対する理性~知性の挑戦ではなく、呪いを終わらせるには妻を殺して流産した子供を昇天させるしかない、とかいう訳の分からぬ結論に従い話が収束してゆく。
それでは、この奥さんはもう踏んだり蹴ったりどころの悲惨さでは無かろうに。
夫の教授は妻殺しで投獄されそれに面会に行くクラーク教授も何なのか。もうちょっと頑張れなかったのか、である。
この夫、例の木箱はどうしたと教授に聞かれ妻の妹に送ったと答える。それが良いとわたしも思う(笑。
しかし結局、最初の夫婦の惨劇を反復してしまっただけではないか。
空しすぎないか。


他にも変なバザーで古い木箱とかを買って酷い目に遭う映画『ポゼッション』(イザベル・アジャーニ主演ではない方のもの)があった。
その手のモノには何か憑いている可能性あるかも。
買ったりプレゼントはしない方が良いと思う。





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劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス

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PSYCHO-PASS

2015

塩谷直義 監督
虚淵玄、深見真 原案・脚本
菅野祐悟 音楽
主題歌「Who What Who What」作詞・作曲・編曲 - TK / 歌 - 凛として時雨
エンディングテーマ「名前のない怪物」作詞・作曲・編曲 - ryo / 歌 - EGOIST

声:
関智一、、、狡噛慎也(元厚生省公安局刑事課一係執行官、反体制勢力の戦術顧問)
花澤香菜、、、常守朱(厚生省公安局刑事課一係監視官)
野島健児、、、宜野座伸元(厚生省公安局刑事課一係監視官)
有本欽隆、、、征陸智己(厚生省公安局刑事課一係執行官)
伊藤静、、、六合塚弥生(厚生省公安局刑事課一係執行官)
沢城みゆき、、、唐之杜志恩(厚生省公安局総合分析室総合分析官)
櫻井孝宏、、、槙島聖護(シビュラシステムによる社会制度から逸脱した存在、既に死者)
神谷浩史、、、ニコラス・ウォン(東南アジア連合国家憲兵隊大佐)
佐々木勝彦、、、チュアン・ハン(東南アジア連合国家議長、既に暗殺済みで義体として存在)
諸星すみれ、、、ヨー(朱の身の回りの世話係)
木村昴、、、セム(反体制勢力のリーダー)
石塚運昇、、、デスモンド・ルタガンダ(傭兵部隊リーダー)


凄く長く続いているシリーズ物のようで、少なくともテレビアニメ版を観てこないと、単に途中の展開を魅せられたというところである。
それでもキャラがとんがっていてカッコよいことは伝わる(笑。
登場人物の誰もがスーパー・マン(ウーマン)的で、只管強い。
何となく分かる範囲でメモリたい。劇場版のファイナル的な形のものが近いうちに発表されるという。

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「人々の精神が数値化され、管理される」という前提でまずアウト~ナンセンスなアイデアなのだが、予防的治安維持をうたうマイノリティ・リポートに近いものも感じ、ちょっと観てみることに。
向うはプリコグ、こちらはシビュラシステムという強大なAIのようだが。
ドミネーターという銃みたいなガジェットが直ぐに相手のサイコパス度を計量し執行対象になるか判定を音声で出す。出れば北斗神拳を喰らったような感じで死ぬ(ヒデブウとは言わないが)。
しかしその音声メッセージを聞く前に撃たれたりしないのか、ちょっと心配になった。
変形したりして凝ってるが(仮面ライダーよりカッコよい)。

攻殻機動隊の雰囲気は特にない。格闘シーンは迫力充分。ちょっとタフで強すぎな感はするが。
兎も角、徹底した管理社会であるには違いない。
その時点で、ギブアップだね。
槙島聖護という故人に共感する部分はある(よく知らないが。回想で出るだけだし)。

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東南アジア連合(シーアン)にシビュラ・システム(更に軍事ドローン)を導入させたい日本政府と手を組んだ軍閥の長チュアン・ハンが議長の座を射止め、支配体制を作る。
しかし既に彼は日本政府に暗殺され(実行犯はデスモンド・ルタガンダをリーダーとする傭兵部隊)義体が命令通りに動いている傀儡政権。
こんな覇権政策をシビュラ・システム(犯罪抑圧システム)という正義による治安維持装置を餌にして進めるとは、日本が如何に偽善的悪質な国家かということを言いたいの?
しかも金でどのようにも動くハイエナみたいな傭兵部隊を雇ったり日本のシビュラ・システム内にテロ組織をワザと送り込んで捕らえられた男の脳内から狡噛慎也の姿をモンタージュで再現させ、当地に常守朱を向かわせる工作をしたり、これでは陰謀政府ではないか。回りくどいやり方だが。そういえば、あなたは遠回りしたがるんです、みたいなことを執行官の誰かが常守に言っていたな。

彼等の謂うには日本政府要人もほとんどが義体であると。
では、この偽善AIの配下にスッポリ治まっているということか。
槙島聖護や狡噛慎也に共感するのは、自然な真っ当な感性となる。
反政府ゲリラにならないのがおかしいくらい。

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TVシリーズを始めから観ていれば、もっと複雑な事情があるのだろうが、、、。
兎も角、2015年までのまとめは観られた。
今度、また上映される劇場版で、それ以降の動きが観られるのを楽しみにしたい。
(ただ本作も初期の事情とか流れはほとんど分からない。中ほどから始まっている)。
キャラに惹かれる物語でもある。


声優、花澤香菜の仕事がたっぷり堪能できた。やはり凄い。



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マザーズ

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SHELLEY
2022
デンマーク、スウェーデン

アリ・アッバシ 監督・脚本
マレン・ルイーズ・ケーヌ 脚本

エレン・ドリト・ピーターセン、、、ルイス(中年女性)
コスミナ・ストラタン、、、エレナ(シングルマザー、住み込み家政婦)
ピーター・クリストファーソン、、、カスパー(ルイスの若い夫)
ビョルン・アンドレセン


終始、不穏な空気が流れる緊張感の途絶えない映画。
”SHELLEY”は、エレナが代理母となって生む女の赤ちゃんの名である。
この赤ちゃんが何者なのか、分からぬがルイス以外の人間は受け容れないのだ、、、。
「絵」~撮影がかなりエッジが効いていて禍々しい。

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家政婦として住み込みで働きだした家の女主人から代理母の依頼を受けるエレナ。
電気も水道も無いが湖畔の大きな家を持つ金持ちの夫婦で、家族のように打ち解けてきたころに話を持ち掛けられる。
条件としては、息子と共に住むアパートを提供してくれるというもの。
元々それを目的に、息子を預けて出稼ぎに来ているのだ。
雇い主の子供を産めば直ぐに帰って息子と好きなアパートで暮らせる。
手っ取り早いし、気心の知れた夫婦を助けたい気持ちも生じていた。

やりましょうと承諾すると、とても感謝され、勿論仕事も免除されアパートの件も約束される。
そして、、、
一度妊娠してみると、自分の子供の時とは大きく異なり、非常に体調が悪い。
明らかな異常を感じ、自分がお腹に宿した子供に殺される恐怖に苛まれるようになる。
周りは、医者も含め皆、この時期よくある事と見做し真剣に取り合わない。

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この女主人、既に何度も流産を続けており、今や子宮も摘出しているという。
その前に卵子を凍結保存しており、誰かに託す思いはしっかり持っていた。
だが、そんなに何度も流産する原因がやはりあったのか、と思わせるところである(演出上も)。

そしてルイス、カスパー夫妻が色々と気を遣いエレナの不安と苦痛を和らげようとするが、彼女の様子はおかしくなるばかり。
大変危険な様相を呈して来る。
彼女の苦しみや恐怖は高まるばかり。
エレナは今や自分が代理母となったことをはっきりと後悔して「間違った」と何度も言う。
それは呪われた卵子であったのか、、、?

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そしてエレナはベッドで悪夢に魘されながら、編み物をしていたルイスが席を立った隙に、編み針を直ぐに抜き取り、その針を自ら子宮に刺してしまう。
もはや彼女にとりアパートどころの話ではなく、お腹にいる化け物を退治することが先決となっていた。
それを見つけたルイスに救急で運ばれるが、エレナはすでに手の施しようが無かったが、赤ん坊は無傷で取り上げられる。
(エレナは散々苦痛の中をのたうち回り、自ら命を絶って解放されたという形である)。

赤ん坊さえ無事なら夫妻にとって何ら問題は無かった。
待望の子供を持って、これから3人家族の幸せな日々が始まると思いきや。
その赤ん坊が明らかに異様であることが分かって来る。
ルイス以外、その子に接する誰もが表情を凍てつかせ遠ざかって行ってしまう。
夫のカスパーもその子から聞こえる音が気になり眠れず、その子を遠ざけ、ついには何処かに連れ去ろとまでする。
その子は絶えず呪いの音を立てているのだ。ルイスだけには聴こえないらしい。
更にその子と目を合わせると、瞳が明らかに人間のものではなかった。ルイスには普通の瞳のようだ。

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カスパーからその子を取り戻し、ルイスは独りその子を抱きかかえ立ち尽くす。
当然『ローズマリーの赤ちゃん』を途中から嫌でも連想してしまうが、、、
この映画はある意味、大変地味である。

特に何があったとか、赤ん坊が具体的に何をやったとか、特別な何かの姿を示したというものは一切ないが、異様な禍々しさその雰囲気だけが過飽和状態になったまま終わる。

SHELLEY006.jpg

この母娘は二人で完結し、究極的に孤独である。
この先、どうしてゆくのか、、、。

こういうのも有りか。



WOWOWにて








犯罪河岸

Quai des Orfèvres001

Quai des Orfèvres
1947
フランス

アンリ=ジョルジュ・クルーゾー 監督・脚本
スタニスラス=アンドレ・ステーマン原作
フランシス・ロペス音楽

ルイ・ジューヴェ、、、アントワーヌ (警部)
シュジー・ドレール、、、ジェニー(流行歌手)
ベルナール・ブリエ、、、モーリス (ジェニーの嫉妬深い夫、ピアノ弾き)
シモーヌ・ルナン、、、ドラ(モーリスの幼なじみ、写真家)
シャルル・デュラン、、、ブリニヨン(好色な老実業家)
ピエール・ラルケ、、、エミール(タクシー運転手)
ジャンヌ・フュジエ=ジール、、、パケレット(「エデン」のクローク係)
ロベール・ダーバン、、、ポーロ(自動車泥棒)


巴里の下町。
良い雰囲気が出ている。如何にも古典の名作の風情。
たまにはこういうものも観たくなる(笑。
全く無駄が無いというか、職人芸みたいな構成と展開。

Quai des Orfèvres002

年下の若い流行歌手である妻の奔放な振る舞いに悩む夫が巻き込まれる殺人事件を描く。
夫も嫉妬深く、妻が色目を使ったとかでいちいち詮索し彼女もそれに対してブチぎれて喧嘩も絶えない。
夫としても、妻に対する誘いは多いしそれを利用して成り上がるとは言っても、気が気ではないのだ(分かるような分からぬような)。
それを見守るジェニーとモーリス共通の友人、ドラの立ち位置がとても微妙(最近こればかり爆。

Quai des Orfèvres003

恐らくこの映画が最初なのかも知れぬが、、、
ここではブリニヨンという好色の金持ちが、これからもっと世に出たいという歌手のジェニーのような美女を、わしの力でなんとかしてやろうという口実で、たぶらかそうとする。それに対して憤った彼女がワインの瓶で殴ってその場から逃げ去る。しかし翌日のニュース、新聞とかで、彼の殺害報道が流され、てっきりあの一撃で死んでしまったのねと悟る(ここで不思議なのはニュースで犠牲者の死因がはっきり知らされなかったのかどうかである。警察の秘密にしていないかどうか)。

ここでまた話を拗らせるのは(警察泣かせなのは)、その事件現場にわざわざ出かけて容疑者になる人たちである。
1人は疑い深い夫である。確かにこの時は、怒鳴り込んでも当然のケースであったが、その時はすでに奴は死んでいた。
もう1人はジェニーに泣きつかれた真面目な世話役といったところの写真家ドラである。
ジェニーが現場にマフラーを置き忘れてどうしようと縋るので、わざわざタクシーで駆けつけマフラー処分と指紋まで消して来てしまう。これが後の捜査を困難にすることになる。

Quai des Orfèvres004

思い込みというのは、どの立場からでも見る目を曇らせる。
警察側も現場にのこのこやって来た人間は片っ端、怪しく思えて当然。容疑者扱いとなる。
ジェニーは自分が犯人であることを自覚していて、周囲に迷惑がかかり夫と親友が疑われ出したのを知り自首を決意する。
だがそこはドラがもっと様子をみようと思い留まらせる。
夫の方は、実際はピストルを隠し持ち浮気現場を押さえたら撃ち殺すことも辞さない思いで出掛けたこともあり、途中で仕事仲間のホールにアリバイ作りに出掛けている。これがかえってわざとらしく疑いを深める原因ともなる。痛かったのはその時に停めていた車を盗まれたことである。そこで犯行現場にその時間に来ていたことがバレてしまう。

その後で、来た時は死んでいたと主張してもそれまで嘘をついていたことで信用されない。結局逮捕され拘留される。
ジェニーもやはりその場に行っていたことが分かり、裏切られたと悟りモーリスは牢屋で自殺を図ってしまう。
ドラもタクシーで駆けつけた事を、しらばっくれていたのだが、その夜乗せたタクシー運転手から顔がバレてしまい重要参考人に。
しかも指紋までご丁寧に拭き取っていたことから捜査は難航する。

Quai des Orfèvres005

だが、真犯人はその少し前に殺人を犯しており、今回もブリニヨンを行き掛かり上銃で撃ったポーロであり、その銃弾が一致した。
つまり殴打したワインボトルでは気を失ったに過ぎず、騒いだことで車を盗んで逃げたポーロに銃で殺されたのだ。
最後まで、当事者が死因を知らなかった為、縺れて停滞するこの流れ、実に良く出来ていたが、これ以降のクライム物ではよく観る手法であり展開である。これ以降の数本の映画で既視感を持っていた。
その最初の発明であれば、その後の作品は、本作に対するリスペクトでありオマージュでもあろう。
流れが実に自然で鮮やかであったことに感心する。

Quai des Orfèvres006

噺とは直接関係ないが、わたしとしては、どう見てもジェニーよりドラの方が素敵であり綺麗で凛々しくもあったが、、、。
配役は正しいとは思うが、ドラのシモーヌ・ルナンがヒロイン的に見えた。
夫のモーリス演じるベルナール・ブリエと謂い、ルイ・ジューヴェのアントワーヌ警部の渋さ味わい深さはちょっと最近の役者には感じないものであった。
兎も角、途中で一休み入れたくなる映画の多い中、一気に見せてしまう監督のこなれた職人芸みたいなものを強く感じた。
よく出来た映画である。




WOWOWにて








カーム・ビヨンド/漂流者

The Calm Beyond001

The Calm Beyond
香港
2020

ジョシュア・ウォン 監督
ヘザー・ゴーナル 脚本

カラ・ワン(サバイバル女性)
サリンナ・ボッグス(迷い込んだ少女)
その他:凶悪な略奪者たち


この大水害は何であったのか?
香港の大都市が壊滅状態で、ビルの上の階以外、ほぼ水没している。
生存者もほとんどいない模様。
ラジオ放送が怪しげな情報を垂れ流すが信憑性はない。

The Calm Beyond002

それよりも、、、
破壊的で鋭い妙な(サメのような生き物を思わせる)波が立っていたが、あれは何であるのか?
解明はされていない様子。
あのような波が立つのであれば、水上に出て行くのはかなり危険な気がする。
北斗神拳で繰り出される拳みたいだ(アリスも使っていた)。
ここについては、全く何の言及もない。

つまりこの水害は単なる気象異変だけのものではないようだ。
原因が何なのか?異星人などはいないみたいだが、どこかの国が何かの実験とか大きな事故でもやらかした結果なのか。
ともかく危険な人間の略奪者があちこちウロウロしているようだが。
(こうした都市壊滅状態になられば、生き残った輩が海賊みたいに略奪に動くのは目に見えている)。
香港以外がどうなのか、一切描写はないが、外国の援助がみられないということは、全世界的な災害なのか。
地球規模の、、、えらいこっちゃ。

The Calm Beyond003

そんななか、生き残った女性が自分のアパートに立てこもりサバイバル生活を続けている。
流れつく荷物を窓から矢を放ち捕らえ、それを引き寄せて中身を探るが、なかなか気の利いた物は出てこない。
美味しいジャムが見つかったのが一番の御馳走か。
食料もどれだけ残っているのか。燃料系、電池などもそうである。水は雨次第であるが。
何時までも一所に籠っている訳にはゆくまい。
外に助けを求め酷く危険な目に遭ってから只管籠り続けて来たようだが。

The Calm Beyond004

そこへまだ幼い(まあ、7歳くらいか)少女が何処からともなく迷い込んでくる。
(幼い少女が一人でこれまでどうやって生きて来たのか微妙な設定だが)。
当然、招かれざる客で、最初はいがみ合うが、徐々に精神的な支えとなってゆく。
そういうものだろう。相手はそんなに食べない小さな少女で良かった。
(宇宙サバイバルもので、壊れた宇宙ステーションからクルーを自分の船に助けたはよいが、後の食糧難などで殺し合いになるとか、よくあるケースだ(笑)。
助ければ良いというものではない。ちゃんと後先を考えて行動しないと。

The Calm Beyond005

とは言え、この少女の存在によって、サバイバル女性に覇気と受容性、そして柔軟性いや解放感が生まれる。
最愛の妹を水害から守れなかったトラウマもあり、この少女は自分が守ってやりたいという気持ちも高まっていた。
そんなところに例の悪質な海賊が雪崩れ込んで来る。
悉く中を荒らし遂に隠れていたところを見つけられてしまう。
両親がミイラとなっている家族の想い出の籠った開かずの部屋も、逃げ込んでいた為見つかってしまう。
この部屋が重石となり、いつまでも離れられなかったが、暴かれたことで彼女のこころが解放に繋がることとなる。
中盤までと打って変わり、サバイバルアクションの様相を呈する。次々に苦戦しながらも様々な武器で相手を倒してゆく。
ここのアクションシーンは派手さはないが(カンフーではない)、まずまずの緊迫感であった。

The Calm Beyond006

監視役を海に突き落とした少女と合流し、敵の船を奪い、二人は共に外の世界に向けて旅立ってゆくことに。
とっても予定調和の分かり易いお話であるが、安定感です~っと最後まで観られた。
一回観れば充分なタイプの娯楽映画である。
演者、ストーリー、演出については可もなく不可も無し。
面白いサメ映画を観た時と同じような心地かな。




AmazonPrimeにて





”Bon voyage.”

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