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GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
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何者

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2016

三浦大輔 監督・脚本
朝井リョウ 原作
中田ヤスタカ 音楽

佐藤健、、、二宮拓人
有村架純、、、田名部瑞月
二階堂ふみ、、、小早川理香
菅田将暉、、、神谷光太郎
岡田将生、、、宮本隆良
山田孝之、、、サワ先輩


凄い豪華キャストに驚く。
ここまで有名どころを出すか、という感じだが、流石に安定している。
何の心配もなく観られる(笑。

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Twitterというネットツールは、どのようにもなる。
赤の他人にとっては匿名で箍の外れたことが言えてしまう。
知人であれば容易にアカウントがバレる可能性大で、そういった人を批判する場合、危険である。
それと絡み葛藤しながら就活に臨む大学生の物語である。
面接で、あなたは「何者」かが問われるという。
(ホントか?わたしはそんな経験はない。何者か、なんて、、、実存主義者に問うことではないわ(爆)。
どの企業でもそうではないと思うが、似たような心構えでも確認されるのか、、、?

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ツイッターが今激動しているところだが、この手のSNSの影響力は小さくない。
戦争の行方すら左右する(ウクライナVSロシアに見える新たな戦争形体だ)。
市場の動向は以前から情報戦如何であるし。

田名部瑞月が二宮拓人の(気色悪い)裏ツウィートを見ていながら、それに対し直接批判はせず、彼のかつての演劇の脚本が好きだと微笑んで謂うところ、素晴らしい。周りが内定を貰ってゆく中、独り何処にも受からず、猶更周りを扱き下ろして自分を守ろうとするドツボに嵌るところで、この救済力は大きい。前から好意を寄せている女性でもあったから。

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匿名で出来るため(知人であればメールアドレスからアカウントは検索可能だが)容易に人~他者を貶め足を引っ張ることはやり放題。そういう人間で巷~SNSは溢れかえってもいる。
彼は基本的に虚勢を張って人を批判し自分を守るタイプであり、神谷光太郎も似ている。その彼女でもある小早川理香もその姿勢に批判的だが自分も同じ穴のムジナであることに気づいている。知っている分、悲しい。
(但し、拓人の場合、裏垢でやっている分、当人たちには知られずに自己満足だけで済むレベルのものではあるが)。
二宮拓人は小早川理香からのもっともな強い批判に自己解体し、田名部瑞月の観音菩薩のような包容力により裸の自分を受け止める自己肯定感を得る。
そして、人が生き直す姿は美しい。

変な虚勢、自己欺瞞は打ち砕かれた方が良い。
宮本隆良は、田名部瑞に完膚なきまでにやられる(日頃、優しくおっとりした女性だと効き目は凄い)。
自己解体~再編成した隆良は、すっきりした表情で地に足をつけた行動を選ぶ。
愛ある叱責は実を結ぶのだ(だが言う方も覚悟が必要で、とてもキツイ)。

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承認欲求は誰もが持っている。
とても率直で自己防衛をせず飾らない神谷光太郎は友達や女の子にもてて、就活でも希望の出版社の内定を貰う。
(彼は拓人が密かに思いを寄せていた瑞月からの告白を二度も退け、翻訳家を目指し海外留学した憧れの彼女との再会を夢見ている。その点で絶対にブレない軸を持つ。有村架純から言い寄られて断るのだ!いい加減そうに見えて一番しっかりしている?)
その彼が拓人にボソッと謂うには、内定貰うと全てが受け容れられたような気持になる、裏を返せば落とされたら全否定された気持ちになろう。

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まだ二十歳かそこらで、残酷な経験ではある。
しかも「君は何者か?」なのだ。わたしは、こんな状況になったら茶化さずにはいられまい。アホクサイ。一生何者でもない。
その都度、何らかの役割は熟さざるを得ないが、何者かに固定されたらたまったものではない。断じて受け容れない。
しかしここでの彼らは何者たらんと真面目に考え取り組む。だが答えが出るわけでもないし、自己欺瞞に陥るほど偽善者でもない。
ただ、自分にとって誠実に歩む方向性は大事である。
拓人の親友であった演劇を只管やり続け就活など絶対にしない男もいるのだ。周りが彼の孤独な活動を徐々に認め始めている。

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あるべき自分で臨めた拓人の最後の面接は良かった。
一分間では語り切れません、と述べていたが、100分あっても所詮無理。
しかし一分間のその人の断片があれば見る人が見れば充分とも謂える。
結果がどうであろうと人として彼はもう大丈夫だ。


就活でいろいろと葛藤して悩んでいる人は観て損は無いと思う。



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シャドーワークに疲れる

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所謂、主婦の大変さがよく分かる今日この頃、、、。
しかも実家の外に暮らしていて、実家のこと~片付け、掃除、洗濯物干しと取り込み、猫、亀の水替え・餌やりなどはいつもしているが、、、
食事の支度とゴミ出しも時に応じ入って来る(その日のゴミが出されていないままなのだ)。
以前は調理は頻繁にしていたが、最近はそうでもなくなった。
娘たちがダイエットを気にして、あまり食べなくなったのだ。作っても仕方ない、ということに(トホホ。
だが献身的に出来ることだけをやっているのでは、足りない。

育ち盛りなので、食事こそもっとも重要な要素。
運動は適度にしてはいるみたいなので、そこがとても心配。
何とか対策を練らねば。以前は好物であったハンバーグも、お肉は太るし~とか言い出してるし。
勉強は自分のやり方がペースに乗れば何とかなるはず。
何においても、、、
主体的に意識的に論理的に、事象に対してもらいたい。

世の中、生理~感覚だけで動いている部分が多すぎるところが癌である。
感性、直観など糞くらえである。特に絵画においてはそこを脱脚しないと。絶対に!
感覚に流されると、簡単に無反省に絡めとられ取り込まれてしまう。
「人間」の外に出られない。

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今日見た映画がまさにそれ。
「ブランデッド」というロシア映画。ジェイミー・ブラッドショー、アレキサンドル・デュレライン監督。
アメリカ資本のハンバーガーと中国資本の菜食主義のファーストフードがロシアでバトルする。
大企業の電子広告、CMイメージビデオ、各メディアの宣伝により無意識に洗脳されてゆく人々の狂態に気づき、自らも広告代理店に勤めていた主人公が、それに反旗を翻し、商業戦略から人々を解放しようと闘ってはみるが、、、という御話。
ちなみに、このマーケティングの論理を最初に考えたのはレーニンだそうだ。

主人公は、その人間が欲しがるものが、その人から立ち上るブランドオバケの姿で分かるのだ(このVFXが実に微妙)。
ちなみに彼の息子は、バーガーチェーンのブランドオバケに憑りつかれて居て、とっても太っている(人のことは言えないが(爆)。
しかもカリスママーケッターが美の基準~価値観を変更させる戦略を練り、肥満こそ美しいという認識を植え付けロシア人を皆デブにしてしまう。アメリカファーストフード業界(ハンバーガー)が市場を席巻する。だがそこに中国が凄い勢いで参戦する(この参謀となったのが主人公。ハンバーガーを倒すためだ。そして全ての宣伝を廃止させるため)。
おもろいブランドのおばけCGがビルや人に憑りつき、(アメリカや中国ブランドが)欲望~購買欲を支配しロシア国民をパニックに陥れる(ロシアは被害者だったのね)。
危なっかしい主人公である夫を常に献身的に(時に呆れながら)支える美しい妻(リーリー・ソビエスキー)にも感心させられる。
(気の強いハリウッド女優ならハンドバックでひっぱたいてハイさよならかも(笑)。


真面目なのかギャグでやってるのか、よく分からないロシア映画であったが、ロシアの様々な街や田舎の光景が見られたので、わたしにとっては見る価値はあった。
そして、主婦はやはり大変なのだ(笑。



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ブルーロック 1~6

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BLUELOCK
2022


渡邉徹明 監督
岸本卓 脚本
上村泰 コンセプトアドバイザー

潔 世一
蜂楽 廻
國神 錬介
千切 豹馬
雷市 陣吾
我牙丸 吟
五十嵐 栗夢
久遠 渉
伊右衛門 送人
今村 遊大
成早 朝日
絵心 甚八、、、コーチ
帝襟 アンリ、、、日本フットボール連合新入職員


本日は、ギリギリで6話まで。
7~8は明日観るつもりだが、この物語は長く続きそう。
本ではどのくらい連載が進んでいるのか、、、。
まず1SEASONが終えたところで、改めて書きたい。
癖になる面白さであるのは、確か。

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またもや次女のお勧め。
絵心 甚八という破格のコーチと帝襟 アンリという日本フットボール連合の職員が日本のサッカーをW杯優勝出来るチームに育て上げる為、革命的で荒唐無稽な方法論で「ブルーロック」という特殊な施設に集めた才能ある高校生を鍛え上げる。
ここにまず300人の才能を全寮制で集め、過酷な状況~試合でどんどん篩にかけて行く。
目的は、現在日本に存在しないエースストライカーの育成である。
これはデスゲームの側面が強く、ここで負けて脱落した者は、日本代表選手としての将来は完全に閉ざされてしまうという。

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このアニメは、わたし(次女もそう)のようにサッカー自体に興味が無くても、大変面白く観られる点が驚き。
ちょっとサイコパスみたいな絵心コーチの課題分析や育成における論理がなかなか鋭く、なるほどねえと言った感じで観て行ける。
しかし、その理屈に沿った展開で何らかの成果があがるのかと言うと、また微妙に異なる流れが見えたりして、、、。
それぞれのキャラも回を追う毎にくっきり立って来て、彼らの関係性を追うドラマとしても充分愉しめる。
この点では今後の展開にワクワクだ。

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エゴを極めるとても過酷なデスゲームの中にあって、必然的に生まれて行く信頼関係~友情はかなり濃いものに映る。
そして目が凄い。一瞬、憑りつかれたような狂気の表情。確かにスポーツにはこの瞬間があるのだろう。
自分~意識を超える何かを察した時の目が、尋常でない悪魔的な光に包まれる。
この辺のオカルティックな雰囲気も加味され、、、。
空間認識に優れた潔 世一が何を掴んでゆくのか、この先の展開に期待したい。
スポコンというよりデスゲームを知力で勝ち抜く面が大きく、その点でサッカーに疎くても愉しめることは確か。

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特に気に入ったキャラは、蜂楽 廻。何とも言えない。


続きを愉しみにしたい。チェンソーマンと共に(ほぼ同じ感覚で観られる)。
次女の趣味も分かった気がする(笑。



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大掃除に巻き込まれる

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特に処分の対象になったのは、階段下の倉庫とウォークインクローゼットの中に、ずっと捨てられずに放置しておいた、わたしの職場用の膨大(ちょっと大袈裟)な資料だ。ただ、がさばるだけとも言える(この方が正確)。
暮でもあるし、改築の時期にも来てるし、娘が姉妹で隣り合った部屋は嫌だとか言いだしている(音が気になるそうで)ところで。

もう使い道のないものは一斉処分の対象とあいなった。
確かに、いまのわたしと我が家にとり、使い道は無い。が、必要な人には、これを作るにはかなりの時間と労力が必要となるのも確か。
でもねえ。そのまま他の人が使うには、どうだろう、と言うところもあって、、、結局、「処分」と妻の一存で決まる。

色々と処分している最中、昔の1000円札とか出て来て、そういえば少し前にファイルに何故か挟んであった1000円札を4.、5枚だか、あるのを見つけて、医者の支払いに使ったばかりであったが、今日見つけた札と同じものであるのに気づく。
夏目漱石のピン札は結構お値打ちがあるということを今日初めて知った。
ちなみにわたしが先日使った札はいずれもピン札だったが、今日見つけたものは、かなりヨレヨレなのだ。これはダメかも。
わたしの昔のファイルに入れてあったもので、自分がしまったに違いないのだが、とりあえず取っておいたこと自体忘れていた、みたい、、、。

ここのところの物忘れの酷さは尋常ではない。
毎日、iPhoneと眼鏡は探している。時折そこに鍵探しも加わる。ルーチン化してしまった。
これにかなりの時間を要しており、読書と創作がそこに入れば、随分創造的な生活が送れるはずなのだ。
とりあえず、Amazonで映画を観て、感想書いて寝るみたいな何とも言えない日々を送ることが増えてきている。
ただし、ウォーキングを始めたことは、良い影響が感じられるところ。
ここはもう少し充実させたい。

妻と言い合いとなったのが、歴代ガメラのフィギュアとかなり本腰を入れて集めた鉄人28号のフィギュアの件である。
妻がビニールゴミ袋にそれらを放り込むのを阻止するための作戦を練る必要にいよいよ迫られてきた。
一番古いガメラのソフビが今日見当たらなかったことが非常に不安であり、明日あちこち捜索しなければならない。
これらのソフビフィギュアに加え、わたしの魂の友であるLPレコードを今後どう守ってゆくか、気苦労が絶えないものである。


大掃除の台風は、今年はかつてなく強力なのだ。

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今日は「水辺の謎」という映画を観た。
ドイツの警察はこんなにも杜撰でいい加減で権力に結びついているのか、と呆れたが、どこもそんなものなのかもと思った。
ヒロインの体格の良い刑事が良い味を出していた。
権力による生贄的に犯人に仕立て上げられた男を救わんと立ち上がる担当でもない女性刑事。
ずっと孤軍奮闘していたがバディが後半からしっかり協力してくれたおかげで冤罪だけは防ぐことに成功する。
クライムサスペンスではあるが、この女性の個人的な悩みを事件解明と並行してどう解決してゆくか、のハラハラはしないが、ほっこりする展開が愉しめた。
やはり映画はキャストがかなりのウエイトを占めるのは確か。
例え凶悪犯を追い詰めるにせよ、そのヒロインが愛らしいクマのプーさんみたいな人だと、何やらほっこりムードの流れとなる。
面白いドイツ映画であった。


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夏の妹

Dear Summer Sister001

Dear Summer Sister
1972年

大島渚 監督
田村孟、佐々木守、大島渚 脚本
武満徹 音楽

栗田ひろみ、、、菊地素直子(中学生)
石橋正次、、、大村鶴男(ツルの息子)
りりィ、、、小藤田桃子(浩佑の婚約者、素直子のピアノ教師)
小松方正、、、菊地浩佑(素直子の父親、判事)
小山明子、、、大村ツル(浩佑、国吉の旧知の女性)
戸浦六宏、、、照屋林徳(唄者。鶴男の師匠)
殿山泰司、、、桜田拓三(船内で知り合った旅行者)
佐藤慶、、、国吉真幸(地元警察の部長、浩佑の旧知)


1972年に返還された直後の沖縄県が舞台。
特に政治的思想が前面に浮かぶような妙な力みは見られない。
本土と沖縄の人間との間の齟齬などと謂うより、沖縄に兄を探しに来た素直子と義母となる桃子との鶴男を巡る確執が軸になって動いているように見える。

Dear Summer Sister002

この2人の女性の良い意味で素人っぽい演技がとても魅惑的な展開を生み愉しむことが出来た。
大島渚監督はキャストに素人を抜擢することが多く、しかもミュージシャンを好んで選ぶ。
この映画でもまさにそうだ。
それが大当たりという感じである。
ベテラン女優がやったらこんなに瑞々しく擽ったい爽やかな雰囲気にはならないと思う。
もっとずっしり情感が重く圧し掛かるようなものになりそうだ。
鶴男が桃子を一度も逢っていない自分の妹、素直子と勘違いして、夏休みに沖縄に誘う手紙から始まり、出逢った3人の思惑がそれぞれ作用しあい動き出してゆく仕掛けである。

Dear Summer Sister003

カラッと明るい沖縄観光ムービー的には、勿論ならない。
沖縄独特の光の下で終始不穏な空気が漂っている。
この微妙なバランス感覚が異色の作品に感じられるのだが。
やはりヌーベルバーグか。そのしなやかさにおいて。
音楽(音響)が武満徹である。この演出効果がとてもマッチしている。
(大島監督の音楽の趣味は良い)。
野坂昭如とのプロレスラーの場外乱闘みたいなのをやらかすセンスが活きているのか。

Dear Summer Sister004

夜のホテルの宴会と真昼の浜辺の登場人物が全員集まり雑談を交わすシーンも、とても微妙で構図の動きも面白いのだ。
癖のある人物が集まり、どうでもよいようなところから噺出すのだが、語りも歌も間もそれぞれの動きも何とも言えない。
感覚的なことばでキャッチボールを愉しむようなものではないが、論理的に主題を突き詰めてゆくようなものでもない。
明るくも暗くも軽くも重くもないような。やはり一番の中心に成ってしまうのが素直子の兄探しを巡る話題となるところ。
栗田ひろみの菊地素直子とりりィの小藤田桃子が絶妙な立ち位置で混じっている作用は大きい。
脚本とか演出も意図したものだろうが、やはりキャストそのものの素材的な魅力であろう。

Dear Summer Sister005

飽くまでも自分の素性を明かさず勘違えを(実は気づかれているが)正さず、流れに身をもたせてゆく桃子の気持ちに、素直子同様惹き付けられてしまう。
桃子の後を尾行して彼らの様子~逢瀬の一部始終を盗み見するところなど、こちらも素直子と同じ視座で見てしまうのだ(笑。
いずれにせよ、鶴男は桃子(素直子ととりあえずしているが)が実の妹でないことが分かった前提であのように付き合ったのだろう。ホントに勘違いしたままでは、到底無理である。
また、鶴男は、自分が大村ツルと国吉真幸との間の子なのか菊地浩佑との間の子なのか、という疑問に悩み葛藤するような素振りが全くなかったが、その辺に囚われない性格なのか。沖縄が本土に還ってこようがそうでなかろうがどうでもよいといった感じの青年でもあった。

最後に、ロングショットで捉えられる、ずっと一貫して日本と沖縄の問題を抱え持っていた日本代表の桜田拓三と沖縄代表の照屋林徳が船の上で急にもみ合いとなり桜田が照屋を海に突き落として突然エンディングとなる。
この切り方がとても印象深い。
贖罪の言葉を神妙に語っていた桜田は、浜辺の集まりなどでは全くそんな気持ちなどないような会話を楽しんでいたものだ。
その男が最後に照屋を突き落とす。ちょっと監督のメッセージは感じざるを得ない。




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猫が教えてくれたこと

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Kedi
2017
アメリカ

ジェイダ・トルン 監督
チャーリー・ウッパーマン アルプ・コルファリ 撮影
キラ・フォンタナ 音楽


武者修行に出ていたトラも最近は落ち着いて暮らしているが、刺激に乏しいと感じているのが分かる。
どうしたものか、、、。
野生が疼くみたい(爆。確かにまだ爪を立てて来るし、、、。

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トルコのイスタンブールが舞台。歴史を感じる街だが高層ビルも立ち並ぶ。
野良猫と住人たちとの繋がりを描くドキュメンタリー。
家猫はむしろ少なく(猫らしさを失ってしまうから)野良猫、通い猫が圧倒的に多いようだ。
その猫たちの生態が様々で性格も皆異なり、それに接する人間たちもそれぞれである。
海が近いため、冬は海岸の岩の下で暮らしている猫もいるそうだ。
(海の熱で暖かいというのは分かる)。

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猫はホントに気まぐれで性格も我儘に見えて人の気を引くのが上手い。
街の誰もが野良猫(通い猫)たちの動向を気にかけている。
忙しくて一日餌やりが出来なかった老人は気が気でないという様子で翌朝サンタみたいな餌の袋をもって様子を窺いに出て行く。
ある男性は、とある一角に住む猫の5世代に渡る家系を知っているという。
名前もしっかり共有されている。
通い猫が誰の家をメインとしその他何軒を回っているかの情報も共有されている。
街全体が猫を介して濃密な繋がりを形成しているようだ。
そして、皆が猫によって救われたと述べている。

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わたしも猫とビートルズがいなければ、どうなっていたか分からない。
「もし猫を飼っていなければ、悲惨な少年時代を送っただろう」。全く同感。
猫は違う次元を観ることの出来る生き物だという。
その通りだろう。
猫を通じてそれを観てみたい。
感じてみたいものだ。
少なくともこの人間界~家庭や学校に縛られている必要などなかったのだし。
猫には神聖な音楽の波動を感じる。
そう、女性画家の描いていた猫がとてもよかった。この画家の絵画展を観てみたい。

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様々な関り、、、
「もしもあの世があるなら、真っ先にこの子に逢いたい」
まさにわたしもそうだ。
わたしもホキに真っ先に逢う。どういう形であろうと。
これは間違いない。

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イスタンブールの街の光景に溶け込んだ猫たち。
誰もが猫の世話をすることで自分を癒していた。癒されている自覚を持っていた。
猫との何らかの関りの中で変化する自分のこころに敏感であるのだ。
いや敏感になったのだろう。
猫とはそうした生き物なのだから。
猫には教えられる。

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しかし猫たちと毎日かなりの時間を過ごし、餌やりを欠かさず行っていても、まだ立ち直れずにいる人もいる。
本人曰く、よほど傷が深いのだ。
しかし自分を客観視出来るところまで行ったのだ。質問に答えているではないか。
それは成果であろう。
それまでは塞ぎ込んで外に出れず誰とも口を聞けなかったのだし。

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ここイスタンブールの人々は、土地開発がどんどん進み、ビルが増え緑や土が見えなくなり、猫の居場所が失われてゆくことを憂慮している。猫のいないイスタンブールは虚しいと。
猫との共存を模索する必要性を人々が切実に感じていることが分かる。
「猫たちは生きる実感を与え僕たちを幸せにしてくれる」。
そこに住む人々は皆、いい顔をしていた。




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神さまの言うとおり

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2014

三池崇史 監督
八津弘幸 脚本
金城宗幸、藤村緋二 原作

福士蒼汰、、、高畑瞬 (退屈を持て余す高校生)
山崎紘菜、、、秋元いちか (瞬 と同じ高校の幼馴染)
神木隆之介、、、天谷武 (瞬と同じ高校、身体能力の高いサイコパス)
染谷将太、、、サタケ (瞬のクラスメイト)
優希美青、、、高瀬翔子 (瞬やいちかの中学生時代の同級生)
入江甚儀、、、奥栄治
山本涼介、、、平良幹則
萩原みのり、、、田岡由実
大鶴佐助、、、真田ユキオ
高橋直人、、、前田小太郎
村上虹郎、、、吉川晴彦
大森南朋、、、タクミ(引籠り)
リリー・フランキー、、、長髪のホームレス(神)


昨日の映画と一緒にWowowでこれもやっていたので観てみた。
とっても似た感じであったが、こちらは映画自体は成り立っていた。内容はどちらも突然荒唐無稽な無茶苦茶な生き残りゲーム~レースに巻き込まれる点は同等なものか。昨日と同じように白い羽毛も舞っていたし。

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ここでは、ゲームの枠はそれと分かるものが用意されるが、ほぼ運と依怙贔屓で切り抜けて行くケースが目立った。
(どう見ても主人公と決められたものが生き残るように組まれている節がある。例えば当たる順番など。これがとても大事なところ)。
余裕綽々の自信家のインテリ少年が初っ端からやられてしまうというのも、どうか。
少しは彼にもそれなりの活躍をさせたい(その方が面白くならないか)。

ゲームは「だるま」→「まねきねこ」→「こけし」→「しろくま」→「マトリョーシカ」→「神」の(しりとりの)流れで行われる。
仕掛ける側も、嘘をつくと一人ずつ殺すと謂い、実は出題者が嘘をついているなど、常にメタレベルから考えて行かないといけない。
如何わしいゲームなので、これは分かるとしても、答える主人公が疋田天功ばりの脱出イリュージョンをやってのけるのだ。
もとは、この彼、無気力でアイロニカルな少年であり、機転を利かしたスーパーマン的な技で瞬時に切り抜ける人には見えなかったのだが。
主人公の切り抜け方がエグイ。

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「だるま」では、高校の各クラスに閉じ込められた生徒対象に「だるまさんがころんだ」が実施される。「~こ~ろんだ」の後に動いたら頭が吹き飛び殺されるのだが、後ろを向いて唱えている隙に、後頭部のスイッチを押せばゲームオーバーとなる。
しかしこのゲーム重大な補足が省略されており、押した者のみが生き残れるのだ。ここで貴重な役者、染谷将太がいなくなる。血が赤いビー玉というのが新鮮。各クラスひとり生き残れば成功となりここで数をうんと減らすというより一定の数に絞る主催者の目論みが分かる(何の目的でこんな暴挙に出るのかは、最後まで分からない)。

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「まねきねこ」では、クリアした者が体育館に集められ、猫に鈴を付けたらゲームオーバーとなる。
床に貼り出されているようにネズミの着ぐるみを着た者から猫に認識され喰われていくことに気づいた頃には生徒は半減していた。
悉くそうしたゲームなのだ。着ぐるみを脱いだ頃にはもう人間も喰うようになっていた。バスケットのシュートの達人もいたが、猫に手で鈴をブロックされ殺される。猫が背中が痒いと言うので掻いてあげると眠り出す。この隙に鈴を付けようとするが、付けた者のみが助かるのでは、という疑念が生じ仲間割れとなって猫が目を覚まし暴れ出す。最後は、瞬 といちかコンビのシュートで決める作戦に。どちらも布で包んだボールを投げるが、瞬はわざとボールを隙間から見せ、いちかのボールを猫にフォーカスさせたが、瞬の裂けたバスケットボールの中に鈴を仕込んでいたのだ。いちかのただのボールに気を取られた隙に天谷武がここぞとばかりにゴールをアシストする。この時点で生きてた生徒は皆クリア扱い。

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「こけし」では、すでに学校は関係なく50音で分けられた白い部屋で勝ち抜いてきた高校生が(名前を持った)4体のこけしによる「後ろの正面誰だ」をやり、外した者は殺される。瞬は自分の前に実施されたゲームのパタンを見切り、タイムアップの声を携帯に録りそれを一瞬早く再生させることで、それを受けて決まって反応するこけしの声から配列を確認して背後にいるこけしを特定する。
ここで身体能力に優れた優性思想をもったサイコパスの天谷武も瞬の幼馴染の美女秋元いちかも必ず各自の部屋から勝ち抜いてやって来る。かなり頭の回転も速いやり手であることも窺える。

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「しろくま」では、全体が凍った銭湯に集められ、質問に対し、本当の気持ちを答えるというもの。全員が本当のことを答えればクリア。これは、知識ものクイズと異なり、正解は本人にしか分からない。ここでわざわざ命を落とすために嘘を答える者が出るはずはない。しかしシロクマは嘘を言っている者がいると謂い、それに乗った生徒が仲間を責め誰かを嘘つきとして殺させる。これは最初から分かっていたという天谷の言う通り、生徒を減らすためのシロクマの嘘である。それを突いてシロクマが嘘をついたことを確認してクリアとなる(ここで疑心暗鬼になる方がおかしいのだが)。

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「マトリョーシカ」では、何故だか夕焼けのリゾート気分の味わえるような海辺の屋敷での勝負となる。日没までに缶蹴りで決着をつけるのだ。籤で鬼と逃げる者を決め、鬼が3人見つけて檻に入れるか、逃げる者が缶を蹴って助けるかである。但し感を蹴った者は缶の爆発により死ぬこととなるルールだ。
鬼になった天谷の優勢であったが、瞬 が納屋で見つけた鎧を着てやって来る。顔を見て名前を呼ばないとならないため(爆破の衝撃も緩和できる可能性もある)天谷が近づいた時、瞬が彼に鎖を巻き付け鎧のまま欄干から外の海へ身を投げる。
天谷が重みで欄干に引き寄せられているうちに瞬が鎧を脱ぎ、海から上がって来て天谷とタッチの差で缶を蹴る。しかし爆発はしなかった。天谷もこれで負けても罰は課せられない。爆破は嘘であり皆が安堵する。
だがその矢先、ご褒美に出されたアイスの棒に「あなたは生きる」「あなたは死ぬ」と印字されていた。ここは究極の運試しコーナーであったのだ。残ったのが瞬と天谷のふたりきり。

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「マトリョーシカ」までクリアすれば「神の子」に認定されるようだ。
そうしてどういう待遇を受けるのか、、、。
勝ち残った喜びより戸惑いを隠せない高畑瞬とまさに俺が望んだ世界が到来したと目を輝かせる天谷武。
しかしその他は無残にも皆殺されてしまった。
「だるまさん」から数えれば、何人死んだか分らぬほど、、、。
最後の最後にヒロイン秋元いちかも殺されてしまう。
血が赤いビー玉というのも何とも言えない演出であった。

こうした密室サバイバルゲームは、警察がどうしているのか分らぬものが多いが、この劇では警察や自衛隊が終始騒いでおり、マスコミによる中継も途切れずなされており世間は騒然としていた。そりゃ頭上に巨大なキューブが浮かんでいるのだ(宇宙人騒動になったもおかしくない)。
ふたりの勝ち残り生徒がキューブの外に出ると、長髪のホームレスの姿をしたリリー・フランキーが神と紹介される。それはまるで諸星大二郎の漫画に出て来る神みたいであった。
それなりの説得力がある。

最後、引籠り中年のタクミがパソコンで中継を観て意を決して世直しに飛び出て行くところがあったが、宙に浮くキューブの上で神と対峙する「神の子」ふたりとの間に乱入して来たりしたら面白いのに。
エンドロールに行ってしまったから分らぬが、神をバッサリぶった切りでもすれば良いと思うが。
一体だれがこんなゲームをでっちあげ主催したのか。
何にしても凄いお金がかかっているはずだし、巨大な組織~資本によるものだろうが(テクノロジーから言って宇宙人絡みの)。



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リアル鬼ごっこ

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2015
園子温 監督・脚本

トリンドル玲奈
篠田麻里子
真野恵里菜
冨手麻妙
斎藤工


わたしはこの監督の「ヒミズ」が好きだ。
だがこの監督は日本のアニメーションやゴジラやウルトラマンなどのリブートものが大嫌いなようだ。
わたしはそれらが大好きなのだが。

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突然の突風~かまいたち?によりバスが綺麗に切断され、床に落ちたシャーペンを拾おうと屈んだトリンドル玲奈だけ助かり、後の乗員(女子高生と担任とドライバー)は皆綺麗に胴から切断されていた。
そのシャープなシーンで、先を期待してしまったが、その後が何やらパラレルワールドに次々と乗り移ってゆくみたいな、、、。
突風に女子高生が体を切断されたり、何故かガトリング銃やショットガン武装した女性教師に女子高生がドンドン撃たれていったり、、、後にトリンドル玲奈が篠田麻里子に入れ替わり名前も変わっており、その後真野恵里菜へと変わり違う女子に成ってゆく。

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トリンドル玲奈のまま一度違う女子にも入れ替わっていたが、その辺の経緯というか理由を冨手麻妙が説明する。
この人は園子温のお抱え女優か。
どうやらトリンドルの身に起きた現象はパラレルワールドに移動によるものだと言いたいみたい。
その移動(脱出)には、自分が気付く前に意外な行動をとることだと。シュールな行動をせよ。シュールに慣れろ?何それ?
一体何を言っとるのか?そんな行動がとれる訳ないだろ。それとシュールを適当に使いすぎ。完全に雰囲気ことばである。
(彼女自身体を張った思い切った演技に挑戦してるが、そういった突飛な事をしろという彼女の心構えみたいに聴こえる)。
また、違う人に入れ替わったときも、ここをどう脱出するかとか、彼女に持ち掛ける女子が必ず出てくるが。
パラレルワールドなんだから、相互作用はしないのだし、完結した系にあって別の系を意識していること自体、矛盾である。
冨手麻妙~登場人物が説明すること自体がおかしい。説明が煩い。辻褄合わせや言い訳を一切せずにその系に飛んだというなら、そこだけで完結する動きをすべき。他にまた飛んだのなら、そこだけのドラマで行く。
それを俯瞰する超越的な視座などあり得ないので、単にそれの入れ替わったシーンで繋ぐしかあるまい。

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何がどう鬼ごっこでリアルなのか分からないが、なんだかんだでよく走り、突風に切断され教師に撃ち殺されるだけでなく、フィジカルな殺人バトルも起こる。そもそも何でこんな虐殺場面が続くのか、そこが全く不明のままなのだ。それぞれの系で何が起きているのか。何やら黒幕がいるようなニュアンスもあったが(最後にアンティークな機械を弄っていた斎藤工お爺ちゃんがそれなのか)。
教会に集まった女性が皆、突然下着姿になり襲って来るとか、そう展開するコンテクストの流れが見えない。
おそらくそれをもってシュールと言いたいのだろうが、シュールな内容でなく作り方がシュールなだけ。
単に監督の趣味の問題であろうが、趣味の盛り込み方が安易で下品。

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後半まで、女子高生とその関係者も全て女性で固めており、異常な数のエキストラも女性であった。
だが、急にマッチョな男のいる妙な裏通りみたいなところにトリンドル玲奈に戻って迷い込み、種明かしみたいな場に出るが、余計に混沌とする。
そしてその極みに、斎藤工がブリーフいっちょとなって現れ、トリンドルをベッドに誘うが、そこにあっては、これまでの過程が全て劇として行われたものに過ぎず、出演していた彼女~女優に惹かれ念願の、というものなのか、彼女はすでに死んでおりDNAから作ったクローンなのだとか、、、
何でもよいが何をやりたいのか、、、シュールならシュールで、その中での骨格と説得力がないとどう見たらよいか分からない。
しかし斎藤工のブリーフ姿は何なのか?もうそこまでシュールをやらなくてもよい。

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結局、人に見せるためのモノではなく監督の趣味でともかく何をか作ってみたかったのだ。
シュールな世界を人に愉しんでもらうというよりシュールに趣味を何でもかんでも盛り込んでみたかった。
ひところ女子が何でも言葉に「超~」をくっつけて喋っていたが、それくらいに軽く自己完結したもの。
観終わっても印象が残らず、確かにスプラッターで血が噴き出たり色々刺激的なシーンを羅列してはいたが、かするところがない。
何も感じず残るものがない。
しっかり対象化されてない他人の無意識的な趣向~趣味を無理やり披露されたような無意味さのシュールであった。





Wowowにて








竜とそばかすの姫

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Belle
2021

細田守 監督・原作・脚本

岩崎太整 音楽監督、Ludvig Forssell、坂東祐大 音楽
中村佳穂”millennium parade × Belle”主題歌
山下高明 作画監督・CG作画監督

声:
中村佳穂、、、内藤鈴(17歳の女子高生、作曲が趣味 / Belle )
成田凌、、、久武忍(すずの幼馴染み、バスケ部、女子に絶大な人気)
染谷将太、、、千頭慎次郎(すずの同級生、カヌー部)
玉城ティナ、、、渡辺瑠果(すずの同級生、吹奏楽部アルトサックス、全校生徒に絶大な人気)
幾田りら、、、 別役弘香(すずの親友、すずをメタバース〈U〉上で「Belle」としてプロデュース、リケジョ)
森川智之、、、ジャスティン(Uの中で自警団を組織し正義を振りかざすリーダー、Asを強制的にアンベイルするガジェット所有)
ermhoi、、、ペギースー(Uの歌姫、Belleを拒絶していたが、オリジンで現れた時から彼女を応援する)
津田健次郎、、、イェリネク(現代美術家、竜のオリジンと疑われる)
小山茉美、、、スワン(嘘で塗り固まれた婦人、竜のオリジンと疑われる)
宮本充、、、フォックス(メジャーリーガー、竜のオリジンと疑われる)
牛山茂、、、司会者
多田野曜平、、、野球評論家
宮野真守、、、ひとかわむい太郎 & ぐっとこらえ丸(YouTuberコンビ)
森山良子、、、吉谷(合唱隊のリーダー)
清水ミチコ、、、喜多(合唱隊のメンバー)
坂本冬美、、、奥本(合唱隊のメンバー)
岩崎良美、、、中井(合唱隊のメンバー)
中尾幸世、、、畑中(合唱隊のメンバー)
役所広司、、、すずの父親
石黒賢、、、恵・知の父親(息子を常時虐待する)
佐藤健、、、恵(東京で暮らす少年、メタバース〈U〉上で竜として暴れる)


細田監督お得意のメタバース空間内での壮大なオペラみたいな作品。
愉しい電脳メタ「美女と野獣」でもあるか。
惜しむらくは声優何とかしてもらいたかった。ホントの声優さんがやっていれば更にクオリティは上がったことは間違いない。
中村佳穂は歌のみに専念し声質の近い声優に普段の声を頼むのがベストではないか。

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”As”というアバターをメタバース〈U〉上に形成し、50億人がそれぞれ思うように愉しんでいた。
イヤフォンみたいなスキャニングガジェットを付けるだけで、高度にオリジン(現実界での身体~人格)から理想像を抽出しアバターを形成するテクノロジー。こりゃ凄いわい。
内藤鈴は幼いころ自分と同じ年頃の少女を水難事故から救い自らを犠牲にした母とのことに決着が付けられず悶々とした内向的な生活を送っていた。父とも口をきくことが出来なくなってしまっていた。密かな恋心を寄せる忍をも避けている毎日。
自己表出として作曲に打ち込んではいたが、作品を人前で唄うことは到底出来ずにいたのだが。
アバター”Belle”として解放された鈴は、自ら作曲した曲を思う存分メタバース〈U〉空間で披露する。
その直後の反応は見られなかったが、翌日途轍もないフォロワーが付いていった。

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一躍時の人となりメタバース中に噂が渦巻く。
50億人が取沙汰すれば騒然として大変だなどと言う呑気なものではなく、現実空間を脅かすレベルとなろう。
場合によっては、仮想空間が現実空間を規定する逆転現象が起きてもおかしくない。
と謂うよりそれはしばしば起きている。
そういう構造だ。人は現実より仮想空間にあって、自分の能力を伸び伸びと開花させることが出来るものだ。
この場にあって、秩序がどうのこうのと正義を振りかざしその力を委縮させようなどという輩は糞ウザいだけ。

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Belleの人気はとどまることを知らず、コンサートを開けば、やんややんやの大喝采。
勿論アンチも出るが、誰もが注目せざるを得ない存在となる。
そこへ「竜」と呼ばれるアウトサイダーが何処からともなく乱入し、コンサートは混乱を極め中断されるのだ。
仮想空間内でのバトルの描写も相変わらず鮮やかで迫力もある。
鈴~Belleは、「あなたは誰?」という問いを発する。(しかし彼もまた彼女の歌に引き寄せられて来たに違いない)。
何故、こんな無謀な行動をとるのか、何が彼をそうさせているのか。
邂逅したことは、引き合ったことを意味する。その目は怒りと混乱の底に救いを求めていた。彼女に対して。
彼女も竜に強く引かれる。
その後。仮想空間内で何度も出逢うが、彼は決して心を開かない。
しかし、もがき苦しんでいることはありありと窺えた。

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ここで彼女はかつて母親が泣き叫ぶ他人の子供を命を賭して水に飛び込み救いに行ったように、そのオリジンを救おうとする。
彼女を幼いころから守って来た信頼する忍が、鈴もオリジンをUの中で晒して唄うように諭す。
そうしなければ向こうも信用しないと。
ここまでBelleを育て上げて来た親友の弘香は猛反発するが、鈴は意を決してアバター群の中にたった一人オリジンを晒す。
決してここでは、誰もそれはしない。自分からかけ離れた存在となって、本来の自分を活き活きと愉しんでいるのだ。
ここに現実空間の重力を持ち込むことは暗黙の裡にご法度となっているはず。
だがそれを敢えてする。現実の人を救うために。かつての母のように。
彼女はオリジンの姿で歌うとかつてない喝采に包まれる。アンチの存在も彼女を励ます。
すると彼女の働きかけを拒絶していた竜である少年、恵からの配信画面が再開された。だが直ぐにそれに気づいた父が彼らを虐待しパソコンの電源を落としてしまう。

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いつの間にか集まっていた仲間が次々にアイデアや知識を振り絞ってゆき彼女の探すターゲットを割り出してゆく。
(ここはいつもの細田監督の流れだ)。
父に独りで東京に出かけることを知らせ、鈴は電車に飛び乗る。
家庭内暴力にただひたすら耐え忍んで暮らす兄弟を鈴は探し当てる。
Uにおける竜である少年、恵に実際に出逢い、彼を抱きしめる。
恵たちを暴力で連れ戻そうとする父から鈴は身を挺して守る。
抱きしめられたとき君が本当のBelle~鈴であることを確信したと少年は言う。
(Uの空間で彼女は打ちひしがれた竜を抱きしめていた)。
メタバースとこの現実空間はシームレスとなってしまっていた。
きっとそうなんだ。

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この結果、鈴は忍と素直に向き合うことが出来、父と以前のような関係に戻る。

これは、もう一回観たい。




Wowowにて












DAICON FILM版 帰ってきたウルトラマン

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1983

庵野秀明 監督
岡田斗司夫 脚本
赤井孝美 撮影・編集

庵野秀明、、、ウルトラマン
その他大勢


これまでにそのさわり、極部分的にちょいと垣間見る機会があったものを、完全に観れたのは驚きであった。
AmazonPrimeはそういうところが凄い。
レアものの極みみたいな作品に触れられる貴重な場だ。

庵野秀明監督主演の彼の大阪芸術大学在学時の作品である。
最近特に大学生の製作したものをかなり観る機会があったが、これ程本格的でオタク趣味を極めたものは観たことがない。

特に撮影~カメラワーク、編集、そして美術~模型・セットの緻密さ巧みさには驚く。
敢えて難を謂えば、役者の大根くらい。
しかし、隊長を除けば許容範囲か(隊長だけは恰幅が良いだけでその役が熟せると思っている節がある)。
庵野秀明の真面目なウルトラマン振りには圧倒された。
黒縁メガネの顔出しで絵の具で色を塗ったジャンパーに、軍手・スニーカーで自分の腕時計を普通にしているウルトラマンという奇想天外な出で立ち。
それで違和感ない「帰って来たウルトラマン」に成ってるのだから、、、彼は間違いなく主演男優賞である。

庵野秀明がこの短編大作の撮影終了直前に監督を辞めさせられたというが、その理由が何であるのか?
これだけの役を見事に熟して、どういう理由があったのだろう。
性格とかに問題があったのか。オタク過ぎたのか。そりゃ、飛んでも無いオタクだろう。
こんな途方のないものを作るのだから、携わった者全てが普通でないのは当然だが。

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しかし学生がこんなセットどうやって作ったのか。
金だって相当かかるはず。
それは大学から支給されるのか(部費?)
撮影~カメラワークも尋常ではない。
VFXにしても演出的にも、不自然さ?はない。
プロに限りなく近い。
ウルトラマンも完全に飛んでいて、(メタ)ウルトラマンとしか言いようもない。
惜しむらくは学生役者だけだ。(とっても)残念なのは隊長だけだ。

ともかく、一度は観る価値のある作品に違いない。
オタクパワーが炸裂している。


AmazonPrimeにて



スキマスキ

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2015
吉田浩太 監督・脚本
宇仁田ゆみ 原作
THE PRISONER エンディングテーマ曲

町田啓太、、、ヘイサク(夜間部の大学建築学科)
佐々木心音、、、文緒(1部の大学生、心理学科犯罪心理学専攻)
中村映里子、、、華(文緒の親友、文緒と同じゼミの委員長、写真部)
八木将康、、、まさじ(ヘイサクの学友であり親友)
久住翠希、、、きんた(ヘイサクの学友であり親友)
松野井雅、、、西原由紀(建築学教授)


テンポよくお気楽に観られるのが、良い。

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隙間フェチというのも面白い。
まあここでは、隙間越しに見える向こうの「モノ」に興味が惹かれるということだが。
「間」に注意が向くというのは、よく分かる。
間という概念はいよいよ重要性を増していくはずだが、、、
物と物との関係性における間というより、よそ見して面白いものを観たいという感じか、ここでは。

だとすると何で建築学なのか、まあそれは良しとして、、、。
道を挟んだ隣のアパートの窓から見える美女に一目惚れしてそれからというもの、その姿が気になり勉強に集中できなくて単位が取れそうもない、というしょうもないコメディドラマなのだ。
主人公のヘイサクはまるで勉強の出来ない素直だが軽い男として描かれる。
取り巻きの夜学の親友二人もほぼ似たようなもの。

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ヘイサクはいつも窓は開けっぴろげ、向こうは意味あり気に少しカーテンの隙間を開けてチラチラと魅せる(笑。
途中で彼女の意図に気づいても良さそうな気もするが、、、。
自分の関心~鼻息で相手の意思どころの噺ではない。

そもそも覗いている段階では、それは他者ではなく、自分のこころの投影に過ぎない(対象についての自分の妄想)。
その彼女が実際に眼前に立ち現れたことで、初めて他者としての彼女~文緒と遭遇する。
ことばを交わすことで現実の文緒に出逢う。
ここでホントの彼女を知るわけではない。あくまでも他者としての彼女との関係が新たに始まるのである。

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更にこの関係が特異であるのは、相手~文緒の側も自分の専攻である犯罪心理学のレポート作成も兼ね、ヘイサクを細かく観察し盗撮していたところ(笑。その現像を頼んでいたのが親友の華であり文緒に対し親友以上の感情を抱いているため穏やかでない。
ヘイサクは文緒に対し隙だらけとか言っていたが、自分も輪をかけて隙だらけなの男なのだ。

この隙だらけコンビがどんどん会うたびに親しくなってゆく。
彼女は、1部の学生との付き合いより、ヘイサクたちの呑み会に出ることが多くなって来た。
(お互いに以前から覗き合っていた仲で、姿を見慣れていたことも小さくはないかも知れない)。
こうしたふたりの接近は、鉄板の流れである。
ヘイサクの親友たちも後押しする(半ば面白がって)。
華は我慢できず爆発して立ち去る。
この際に、文緒と彼女との長い関係も終わりを迎えた。

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そして解放に向かうヘイサクと文緒のふたり。
文緒はずっとレポート提出後も撮っていたヘイサクの夥しい写真を床に散らばして見せる。
これには一瞬、圧倒されるが、直ぐに受け入れる。自分も同様のことをしていたからか(この時点ですでに打ち明けている)。
と謂うより、面倒なことは直ぐに受け流す性格みたいだ(笑。

そしてふたりは結ばれる。まさに予定調和であるがそうならないとこっちが面白くない。
覗き合いから始まり漸く深い直接的交わりというところだが、この領域も想像力が大きなウエイトを占める。
それは人が本質的に観念の動物(吉本隆明)だから、、、感動とかはそちらの産物だ。
だが、朝を迎え彼女の口から出た言葉は、あたし海外留学するの、である。
彼女がゼミで呑むより、ヘイサクたちと呑むことを愉しんでいたのは、一つは就職の事ばかりが話題となり鬱陶しかったのだ。
彼女が旅立つことで、ヘイサクも向かいのアパートのカーテンの隙間に囚われなくなり、レポートも合格点を取る(爆。
単位を落とすことは免れた。
まあ、最後まで能天気なヘイサクであった。

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佐々木心音は、独特のアンニュイな可愛らしさや笑顔も目立つが、プロポーションの良さが際立っていた。
この役には合っていたと思う。
町田啓太もヘイサクそのものを過不足なく演じていた。
ちょっと勿体ないのは、中村映里子がお堅い同性愛的趣向をもつインテリ女学生として大事な役柄ではあったが、もう少し出番が欲しかった。とても足りない。
カケラ」での魅力からするともう少し彼女に比重が欲しい。
「愛の渦」でもまた違う魅力が発揮されていたものだが。

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さらっと観られて何も残らないところが良い。
そうした映画を観たいときはあるものだ。




AmazonPrimeにて










美女缶

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2003

筧昌也 監督・脚本

藤川俊生、、、大町健太郎
吉居亜希子、、、美知川ユキ
木村文、、、マリ
小沢喬、、、隣人の富岡


小沢喬のインパクトがかなりのもの(笑。
健太郎が自分の美女缶を一個盗んだ事に気づきながらも、その使い方ビデオを彼の部屋に投函しておくなど、興味深い人格。
この掴みどころのない怪しさが、この物語を象徴している。

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美女缶を取り寄せると、中身をお風呂の湯に入れて30分蓋を閉めて置くだけで、美女が生成されて出て来るというもの。
しかし使用期限があり、それが背中に印字されている(知らないと気づかない場合もあるかも知れない)。
それまで仲良く一緒に恋人気分で暮らせるのだ(飽きる頃に消滅するという仕様であろう)。
刹那的に寂しさを紛らわせるには丁度良い消耗品であるか。
隣人の富岡は、詰め合わせで大量に缶を購入しており、30人ぐらいの美女たちと付き合っていた。
その経緯を知らぬ健太郎が驚くのも無理はない。
彼はこれまで付き合っていたマリと倦怠期みたいな関係になり彼女の出張中、独りでアパート暮らしをしているのだ。

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この荒唐無稽な設定~美女缶~を前提として呑めば、期限付の切ない純愛?物語となろう。
しかも、缶から生まれた女が自らが何者であるかを知らないだけでなく、普通の人間と信じて疑わない主人公自らも缶から生成された期限付き人間である(そのこと自体、本人が気づかぬままその時を迎えてしまう)虚しさがよく表されていた。
終盤まであくまでも人間と缶美女の物悲しい恋物語と思って観ていたが、主人公が帰って来たマリに雨に濡れた上着を脱ぐように言われた時に何と彼の背中にも使用期限が記されており、「とうとう温泉旅行に行けなかったわね」と言い残し元カノは立ち去ってゆく。
(健太郎はこの彼女が購入した缶から生成された人間であったのだ)。

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健太郎と相思相愛の仲となっていたユキが、隠してあった取説ビデオを偶然、観てしまう。
空き地に雨に打たれて呆然と座り込んでいる彼女。
やっと探し回って駆け付けた健太郎であったが、丁度彼の使用期限の切れる日でもあったという皮肉。
その先はあえて見せずにエンドロールへ、、、。
無常感を残すよい演出だ。


、、、とは言え、何なんだ、この「美女缶」ていうの(男もそうだったから「美男缶」もあったのか)。
これ程根も葉もないファンタジーは、、、そう魔法のレベルか。
まず前提となる、この飛んでも無いテクノロジーである。
こんな完成度の高い人造人間がカップヌードル的な手軽さで生成できたら大変なことであろう。

健太郎がその生成物であることから、それを知らなかったことは頷けるが、世界的に人々にどれくらいこの缶が浸透しているのか?
こんなに手軽に生成できる思いのままになる(記憶が植えつけられる)人造人間というツールが社会生活に馴染んでいるとすれば深刻な状況であろう。大金持ちだけが購入できる代物ではなく、こじんまりしたアパートの住人が大量に購入可能なコストのようだ。
生身の人間同士の関係が築けず(面倒で困難になり)安易に確実な関係が結べる相手でやり過ごすことが流行り出せば、、、
少子化が激しく進行し国が亡ぶはず。いや世界~人類が滅亡する。
(それから余計な事だが、クーリングオフ~返品は出来ないか?これを見たところ、主演の女性ふたり以外美女とは見えない人々に思える。風呂の湯でほぐれて出来てしまった者はちょっと返品し難い気がしたが)。

そのまま市場に野放しに出来ないのは、当然の理で、通常そんなテクノロジーが生まれた時点で、寧ろ国家~軍事産業が目を付け早急に独占管理し最重要機密に置くはず。
国家が人造人間生成過程の全データを取得保持した時点で、その開発者と製造過程に携わった者は全員、口封じに削除である。
(取説ビデオに解説で、にこやかに出演している場合ではない)。
他国に何らかの形で情報が洩れたら一大事だ。
その管理下で秘密裏に増産するのは、兵士である。
一気に自国の危険も顧みず核攻撃でケリをつける以外は、通常兵器で侵略するしかない。
通常兵器での侵略はどうしても多くの兵士が必要不可欠となる。ロボットやドローンだけで闘えるものではない。
使用期限で消滅することも効率的で秘密保持からも好都合だ。


このファンタジー、前提に余りにも無理な絵空事を置き過ぎている。
ガラケーで電話している彼らの世界で、こんな高度な人造人間がポンと手軽に生成されるところに、どうにもしらけるのだ。


しかし(普通の)人間とはそもそも何であるのか、、、
自分とは何であるのか、、、
超越的な(外部の)他者から観るとどう映るのか(最近流行りの高度な文明を持つ知的生命からは)。
それすらもひとつの観方に過ぎないとすれば、、、。

缶から出て来たのではないにしろ。
結構、われわれとて似たようなものかも知れぬ。
缶人間と同様、自分の死期も知らない(管理できない)ままであるし。





AmazonPrimeにて




世にも奇妙な物語で、豪華キャストを使いリメイクされたみたいだ。





シン・ウルトラマン

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ULUTRAMAN
2022

樋口真嗣 監督
庵野秀明 脚本
宮内國郎、鷺巣詩郎 音楽
米津玄師  「M八七」 主題歌


斎藤工、、、神永 新二(作戦立案担当官、ウルトラマン)
長澤まさみ、、、浅見弘子(分析官)
有岡大貴、、、滝明久 (非粒子物理学者)
早見あかり、、、船縁由美(汎用生物学者)
西島秀俊、、、田村君男(禍特対専従班の班長)
田中哲司、、、宗像龍彦(禍特対の室長)
山本耕史、、、メフィラス(外星人第0号)
岩松了、、、小室肇(防災大臣)
長塚圭史、、、早坂 (陸自戦闘団長)
嶋田久作、、、大隈泰司(総理大臣)
益岡徹、、、狩場邦彦(防衛大臣)
山崎一、、、中西誠一(外務大臣)
和田聰宏、、、加賀美(警察庁警備局公安課)
竹野内豊、、、政府高官

声:
高橋一生、、、ウルトラマン
山寺宏一、、、ゾーフィ
津田健次郎、、、ザラブ


とてもスッキリした綺麗なウルトラマンであった。
ほとんどスーツ感のない、ウルトラマンそのものを見た。
カラータイマーも無く、シャーッとか言う掛け声も無い。その分重みが増し、より外宇宙の生命体ぽくなった。
西島秀俊は最近よく観る。「 ドライブ・マイ・カー」、「仮面ライダーBLACK SUN」といい、立て続け。
安定しており、彼が出ていると、安心して観ていられる。
長澤まさみは何の役をやっても長澤まさみだった。
だがここの彼女は、コンフィデンスマンのダーコより魅力的。
米津玄師というミュージシャンは、映画やTVのテーマ曲をかなり作っている。
この人の曲の需要が高いことが分かるが、カリスマ性もあるのか。

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怪獣が、敵性大型生物「禍威獣」となっていた。ちょっと暴走族の当て字みたい。
この「禍威獣」は地球に放置されていた生物兵器で、メフィラスが目覚めさせたものだという。
「禍特対」と言うのもオドロオドロシイ。科学特捜隊はちょっと古さを感じるが、これではヤンキーじみていないか。

神永がウルトラマンの命をもらって蘇生したということは、ウルトラマンはもういないということになる。
「禍特対」の皆に迎えられてお帰り~であったが、ウルトラマンなしで闘うのきつく無いか。
巨人化する「ベーターシステム」がウルトラマンから託されたことから、今後は浅見弘子が巨人化して闘うのもよい。
「ウルトラマン」の続編とはならぬが、コメディタッチで、、、やっぱ違うか。
噺はかなりコッテリしている。終盤は少し端折った感はあるが、短時間でよく未知のシステムを解析して応用も効かすことが出来たものだと、ここのところの飛躍がちょっと、、、ではあったが、心残りはウルトラマンであった。(そのうち帰ってきて欲しい)。
ざっと述べると、、、

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前半に「禍特対」だけで倒した「禍威獣」の紹介~解説があり、その後、少年を守って命を落とした神永新二と一体化したウルトラマンが手強い「禍威獣」を倒す。彼は一躍頼みの綱となる。だが世界中が彼に注目するようになり軍事的な緊張関係が生じて来る。
その後、外宇宙から来た「外星人」が現れ、政府に不平等条約を締結させたりする。
このザラブ星人は、人類を自滅に導く陰謀を持ち、神永がウルトラマンであることをリークしたり、自らがウルトラマンに変身して破壊行為をし彼を悪役に仕立て上げようとする。しかしそれを見破った「禍特対」の浅見らの活躍で、一時幽閉されたウルトラマンが復活し、ザラブを倒す。だが、世間や政府、諸外国の様々な思惑もあり、神永~ウルトラマンの立ち位置が定まらなくなる。

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次いで現れたのが、堀北真希の旦那演じるメフィラスである。一見人類に対し友好的な感じだが、彼が譲渡する大型のベーターシステムを活用し、人類の巨大化によって「禍威獣」や「外星人」からの自衛を図る提案を意図も探らず直ぐに呑む総理大臣が余りに覚束ない。まあ、自分たちの科学技術をひけらかし、上位存在だと認めろと謂われ言うなりになるのはお粗末であるがしかたない。
このシステムで人類を自らの思うがまま生物兵器として使用しようというメフィラスの企みをこれまた阻止しようとするウルトラマンと「禍特対」であったが、結局ウルトラマンとメフィラスとの一騎打ちとなる。
そのさなか、光の星の使者ゾーフィが現れ、こりゃ面倒なことになったと事の成り行きを察知したメフィラスは自らのベーターシステムを回収し立ち去る。

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そして終盤の最大の山場となる。
人類がベーターシステムで巨大生物兵器として活用可能であることをメフィラスによって巨大化された浅見弘子により証明したことで、マルチバースにおける知的生命が人類の存続を危惧しはじめた。
それを受け急遽、ゾーフィが太陽系もろとも地球を消し去る使命でやって来たのだ。
それに反旗を翻すウルトラマン。地球人はこのまま残すだけの価値があるとわたしは思うぞ、と淡々と意思表明する。

ゾーフィがセットした天体制圧用最終兵器であるゼットンが作動する前にウルトラマンは闘いを挑むが全く歯が立たない。
彼は神永の姿で病院に昏睡状態で横たわる。それをただ見守るバディの浅見弘子。
そのころウルトラマンから託されたシステムの数式を基に滝明久が中心となり人類の英知も総動員しベーターシステムを解析応用したゼットンを異次元に移動させる方法を見出す。死力を振り絞り立ち上がるウルトラマン。
ウルトラマンのゼットンを押し出す一撃でその作戦は見事遂行されたが、彼も次元の裂け目に飛ばされてしまう。
しかしウルトラマンの生きたいという意思を辿ってやって来たゾーフィが彼を見つけ出す。
光の星に帰還させようとしたところ、彼はそれを断り自らの命を神永に返して欲しいと懇願する。そんなに人類に肩入れするのか、と戸惑うが、ゾーフィはウルトラマンの固い決意を汲みそれを承諾する。

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ウルトラマン(が帰ってきた)設定で、続編が是非観たい。
このキャストで、もっと観たい。




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不良少女モニカ

Sommaren med Monika006

Sommaren med Monika
スウェーデン
1953

イングマール・ベルイマン  監督・脚本
P・A・フォゲルストレーム  原作
グンナール・フィッシャー  撮影

ハリエット・アンデルソン 、、、 モニカ(不良)
ラルス・エクボルイ 、、、ハリー(モニカの恋人~夫)
ジョン・ハリソン 、、、レーレ(モニカの悪友、不倫相手)
ダグマー・エベッセン 、、、ハリーの叔母
オーケ・フリーデル 、、、モニカの父


イングマール・ベルイマン 初期作品。
道化師の夜」と同じころである。ヒロインもハリエット・アンデルソンだ。
撮影はスヴェン・ニクヴィストに似ていたが、違う人であった。
アップの顔の捉え方や何でもない景色が荘厳に切り取られていたり、イングマール・ベルイマン を感じる「絵」であった。
まだあからさまに重厚な神の不在は出てこない。

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とは言え、これはキツイ。
「道化師の夜」同様大変つらいが、こちらの方がキツイ。
ヒロインが不良少女と呼ばれてはいるが、家庭環境が劣悪過ぎるための犠牲者であることは、否めない。
薫育されていないことは言わずもがな、何より愛情が足りないのだ。根は素直で大らかな娘にも思えるが、直ぐに感情を爆発させ噛み付く。これでは、子育ては無理。

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ハリーでないと、とてもではないが務まらない。
こんなによく出来た男はそうはいない。弱気で優柔不断な面はあるが、やるときはやる。
映画を観ながらヒロインにこんなに憤慨することはあまりないが、モニカには呆れる。
気が強く自己中で我儘し放題。
最後は夫が重労働の出張が一日早く終わり急いで帰宅すると、そこには浮気相手と彼女が、、、(昼メロみたいなパタンでもあるが)。
夫は、家族の将来を見据え、耐えて耐えて耐え抜くが、彼女は勝手に出てゆく。
アンタのせいよとばかりに。
まあ到底、続くはずないし、何よりも子供が犠牲になる。すでに子育て放棄しているのだ。
子どもの為にも、別れた方が良い。

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前半、ハリーの父のボートで都会を離れ、モニカと二人きりのモラトリアムの逃避行を奔放に過ごすシーンは、後の映画監督へ大きな影響を与えたのでは、、、。所謂、ヌーベルバーグの映画である。
無軌道で刹那的な享楽的生活。確かにここでは本気で愛し合っていたのは分かる。
だがそのまま野生児でもあるまいし、続くものではない。
やがて季節が寒くなり燃料も食べ物もなくなり、おまけに子供がお腹に出来てしまう。

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彼は家に戻り、3人でしっかりした家庭を作るため再就職と勉強の決意するが、彼女の方は自由気儘な生活が出来なくなることに不満を漏らす。そのくせ物欲だけは強く、節約の必要な時期に借金して欲しいものを買ったりアパート代を使い込んだりする。
挙句の果ては、夫の仕事中の暇な時間に浮気と来た。
わたしとしては、絵はイングマール・ベルイマンだが、こういうのを撮っていたことが意外であった。
ハリエット・アンデルソンがホントの野生児みたいに暴れて弾けまくっている。
「道化師の夜」の方がまだベルイマンらしく感じた。彼女の役もまだよかった。

Sommaren med Monika004

しかし、イングマール・ベルイマンは「野いちご」、「処女の泉」、「魔術師」、「叫びとささやき」、「仮面 ペルソナ」、、、が好きだ。
マックス・フォン・シドーが主人公で、スヴェン・ニクヴィスト撮影なら言うこと無し。

それからモニカみたいな女性なら、ブリジット・バルドーあたりにやってもらいたかった。
圧倒的な美と言う点からも更に迫力と説得力が増す。
もうしっかり彼女も映画で活躍はじめていたし。
まあ、ベルイマン映画の女優ではないかも知れないが、これなら合う。

最後、子供を独り抱いてガラスに映るハリーの顔は、不思議に希望に充ちている表情なのだ。
絶望で終わらないベルイマンである。


余り書く気になれない映画ではあったが、一度は観る価値はあるように思える。




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凍った湖

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Der Tote am Teich
オーストリア
2015

ニコラウス ライトナー 監督
スザンヌ・フロイント 脚本
マシュー・ウェーバー 音楽

ヨーゼフ ハーダー、、、セップ・アホーナー(引退した警察官)
マリア ホフシュテッター、、、グレーテ オラー(捜査官)
ミリアム フッセネッガー、、、リサ ネメス(グレーテの相棒、若い捜査官)
エルニ・マンゴールド、、、マリア・アホーナー(セップの母)
フィリップ・ホックメア、、、ヤコブ・プラントナー(リンツから来た行楽客)
トーマス・ライジンガー、、、ハーバート・メイヤー(市長)


今日は昨日よりやぶ用が多く、観る時間が取れず、サムネイルから見て暗そうで比較的短め~1時間半のものをとりあえず選んだ。
何とも言えない。
余りにも異質な異国情緒というか人々の雰囲気から、何をやっているのかがほぼ掴めぬ状況であった。
しかし寡黙で引籠った雰囲気が妙に日常的で、ドキュメンタリータッチでもある。
何やらシリーズもののテレビ映画らしい。

Der Tote am Teich005

終始、青味がかった寒々とした陰鬱な雰囲気が漂う。
オーストリアの酷い田舎町と思って観ていたら、最初に殺人犯と疑われてしょっ引かれたのが市長であった。
ここは市なのだ。
だがどう見ても閉鎖的な村に映った。
人に対する頑迷な差別意識と排他的な態度が村意識をありありと示していた。
村八分にされている元警官セップは以前、妻と子供を轢き逃げされ、その犯人がどうしても逮捕できずに終わったことで、仕事を退くことになったという。とても影のある男だ。

Der Tote am Teich002

リンツ出身のヤコブ・プラントナーという男が凍った湖で死体で発見される。発見者は元警官のアホーナー。
殺された男はリンツから訪れた行楽客であった。
彼と休暇を過ごしたゲリ・プフォーザーがセップ・アホーナーの従妹であることから彼も捜査に加わる。
すでに年金受給者なのに捜査に加わるというのもどうなのか、、、
肝っ玉母さんみたいな捜査主任のグレーテ オラーが認めているなら関係ないと謂う所か。
彼女は、ちょっとした参考人、事情を聴くレベルのひと(容疑者ではないひと)を独断で逮捕してしまう。
そんなアホーナーと言いたいところだが、この強権に対し文句を言う人はいない。
(直ぐに釈放してしまうのだが、、、何とも)。
市長、宿の主人、果てはアホーナーまで疑われるが、、、。

Der Tote am Teich004

殺された男は、カーリングのストーンで頭を殴打されたことが直接の原因であったが、その前に毒を盛られていたことが解剖で判明する。かなり複雑な背景を感じる。
この辺の人たちは、カーリングは日常の娯楽で、コミュニケーションのツールでもあるようだ。
何処にでも誰でもストーンは持ってるみたい。
しかもそれに使われたストーンは、セップの亡くなった叔父のものであった。
彼がどうしても気になり関わろうとする気持ちは分かる。
それが必然的に親戚に捜査が及んでゆくこととなろうとも、、、

Der Tote am Teich003

この事件は連続殺人とかに発展するものではなく、一件の殺人事件を丁寧に荒っぽく追うもので、大変渋く地味な展開であった。
であるから銃や暴力によるアクションもない。
とても暗く静かな情念は感じる。

ここでいつもなら、犯人と動機までこの先に、つらつらと書いてしまうのだが(わたしが映画評という認識を持たぬため)しかしやはりこれからクライムサスペンスを見ようとする人にとり、そこを書いてしまっては身も蓋もない。こうした映画では雰囲気だけを書くくらいに留めたい(そういう指摘を以前頂いていることもあり)。

ただし一言、最後に明らかにされる、所謂隠し子には財産の相続権がないという法律がかなり効いた。
特に若い捜査官リサには。


何やらむず痒い(笑。





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SPY×FAMILY

SPY×FAMILY013

SPY×FAMILY

2022

遠藤達哉 原作
古橋一浩 監督
嶋田和晃 キャラクターデザイン

声:
江口拓也、、、ロイド・フォージャー(WISEのスパイ黄昏/精神科医の父)
種﨑敦美、、、ヨル・フォージャー(殺し屋/公務員の母)
早見沙織、、、アーニャ・フォージャー(エスパー/娘)
山路和弘、、、ヘンリー・ヘンダーソン(イーデン校アーニャの担任)
藤原夏海、、、ダミアン・デズモンド(国家統一党総裁ドノバン・デズモンドの次男、アーニャのクラスメイト)
加藤英美里、、、ベッキー・ブラックベル(大手軍事企業ブラックベルのCEOの娘、アーニャの親友)
小野賢章、、、ユーリ・ブライア(ヨルの弟、国家保安局少尉/外交官)
甲斐田裕子、、、シルヴィア・シャーウッド(WISEの女性管理官・黄昏の上司/大使館の外交官)


シーズン1:4話~19話一気に観る。
4月24日に次女の勧めで、1~3を観てからかなり置いたが、シーズン1だけは観ておこうと思い、何とか、、、
力尽きる。
ともかく、奇想天外なハチャメチャな疑似家族の御話であり、激しい予定調和に収束する。
(設定はあくまでも戦後の冷戦状態で緊張関係にある東国(オスタニア)と西国(ウェスタリス)との間の駆け引きを諜報部員~スパイや秘密警察などの暗躍のレベルから描くものであるが)。
描き方は「ミスター・ビーン」にお子様学園コメディを絡めた感じ。
東国バーリントが舞台(イーデン校はその名門エリート校)。

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ロイド・フォージャーとヨル・フォージャーが余りにもスーパーマン過ぎて笑える。
スパイコメディであるが、娘の入学した名門イーデン校での星(ステラ)獲得を目指したドタバタが絡み、噺はよりコミカルに大きな振れ幅をもつ。勉強嫌いの娘アーニャが、この無敵の疑似両親にとって最大の難敵となっている。
ロイド・フォージャーの使命はドノバン・デズモンドとの接触なのだ。その為にアーニャを名門イーデン校に入学させ、そこで優秀な成績を収めステラを獲得して総裁のパーティーに参加する権利を得ることである。これが前途多難でドラマを面白くする。
ちなみに、ロイド・フォージャーが西国のスパイであること、ヨル・フォージャーが凄腕の殺し屋であること、アーニャ・フォージャーが人の心を読めるエスパーであることは、互いに隠している(直ぐにバレると思うが、これがバレない)。
とは言え、疑似家族はうちより上手くいっている(苦笑。

SPY×FAMILY 1~3」ここに書いたことに付け加えることが、ほぼ見当たらないのが凄い。
穏やかな超能力犬”ボンド”が彼らの疑似家族に加わったことと、ヨルさんの弟で秘密警察の”ユーリ・ブライア”が登場したことで更に秘密~正体を隠しながらの探り合いなどのエピソードも増えて賑やかになる。
アーニャの心を読む能力とボンドの予知能力も重要なカギとして活かされている。

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この物語は特に秘密の素性を基調にして展開してゆくもので、毎回そこから派生する何らかの食い違いや思い違いが楽しいストーリを生むようになっている。
ロイド・フォージャーとアーニャ・フォージャーの二人を軸としたそれぞれの動きはよく描かれているが、ヨル・フォージャーはあくまでも付随的である。
ヨル・フォージャーが、殺し屋としてどういった組織でどのような活躍をしているのか、彼女サイドのエピソードが無いのが気になる。彼女も国の平和に貢献することを歓びとしており、具体的に何をやっているのか、分かった方がよいと思う。

SPY×FAMILY012

やはり一番、流れが気になりちょっとくすぐったいのは、アーニャとダミアンの関係である。
アーニャは父のこころを読み、ダミアンと仲良くして、父の使命を全うさせたいとあれこれ彼女なりに手を打つ。
どのように進展してゆくのか、方向性は見えているが、愉しみなのだ。
そこに絡んで、担任のヘンリー・ヘンダーソン先生が、アーニャたちをどう評価するのかが気になるところ、、、。
お友達のベッキー・ブラックベルも含めイーデン校の学園コメディの部分は面白い。
(少女漫画的であり)。

10分前に観終わったところで、書くこと自体もうタイムアップとなる(笑。
今日は、ここまでとし、シーズン2(まだアップされていない)を観てから、もう少しまとめたい。





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放蕩息子の帰還

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確かブリューゲルの絵にあったが、、、
(電話で知ったことだが)奴が戻ったらしい、、、。

これまでは玄関先に置いてある餌を食べて直ぐに何処かに消えていた(飼い)猫トラであったが、、、
そもそも彼がどうやって二階のベランダから外に出られたのかもはっきり掴めないままであるが、今日何と二階のベランダから長女の部屋、つまり自分の部屋に戻って来たという。わざわざ二階である。
まず、二階の網戸は爪研ぎによって出られる隙間を作っていたのは知っているが、どうやって下に降りたのかは不明。
だが何とか下に降りられたにせよ、下からよじ登ってベランダまでどういう経路で来たのか、不明。
ボルダリングはまず無理だし、隣から上手く屋根伝いに時折滑空しながらやって来たのか。
いずれにせよ、猫の身体能力~運動神経は神秘的。

わたしは家に3日帰っていないため皆目分からないが、ここ一カ月ばかり家にいる妻が鳴き声に気づきその方向に、上がってみると元の部屋に放蕩息子が帰還しているではないか、ということだという(笑。
餌をあげるといつもより凄い勢いで食べ、外にいたので体も汚れていると思い、除菌タオルで拭いてあげるとこれまでは嫌がったのに、拭いてもらいたいところを自分から傾けて気持ちよさそうに拭かれたとのこと。
しかし目を離した隙にクローゼットに入り込み(わたしの)服に包まり寝ていたそうだ、、、。
直ぐにファブリーズだけでもしてもらい、しっかり扉を閉めるように伝えた。

その後、驚くべきことに、、、帰って来た長女がトラを風呂に入れたそうだ。
わたしがこれまでに一番、人に馴染み賢いと思っていた真っ白な猫ホキでも、風呂だけは苦手であったが、、、。
トラは結構、ご機嫌であったそうな。
対応力~適応力のある猫なのかも、、、。
しかし受容性や順応性を余り感じたことは無い。
更に緊張感が常に窺えたのだが、それはもしかしたら自律的で自立性の高い性格が強くでていただけなのか。
いずれにせよ冒険もして寒くなったので戻って来たと受け取ってよいらしい。
素直にそう受け取っておこう(笑。

猫は時折、3カ月くらい旅をして家に普通の顔で戻ってくるようなことはある。
また、外に出てから、通いネコのライフスタイルを選ぶものもいる(トラはこれかと思っていた)。
更にいなくなったらそのままという猫も少なくない(他の家猫に収まっているケースもある)。

ということで、今夜また長女が猫を抱っこして眠れれば言うことなしか。


どうやっていきなり二階から入って来れたのか、、、忍者みたいなやつだ。ポテンシャルを感じる。




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シャドーハウス

SHADOWS HOUSE002

SHADOWS HOUSE
2022

大橋一輝 監督
ソウマトウ 原作
末廣健一郎 音楽

声:
鬼頭明里、、、ケイト
篠原 侑、、、エミリコ
酒井広大、、、ジョン/ショーン
佐倉綾音、、、ルイーズ/ルウ
川島零士、、、パトリック/リッキー
釘宮理恵、、、バーバラ/バービー
中原麻衣、、、マリーローズ/ローズマリー
小野賢章、、、クリストファー/アンソニー


「シャドーハウス・シーズン1」(13話)と「シャドーハウス・シーズン2」(12話)を一気に観てみた。
1日で観るのは流石にきつかった。オーバーフローしてしまい、何だか雰囲気的に残っているという感じだが、、、。
しかしまだ、結末には程遠く、シーズン3、4まで必要ではないか。
これからが面白くなるところ、、、
ゴシック調の広大な館が舞台。

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「シャドー族」というのが何とも荒唐無稽な存在。全身真っ黒の煤だらけの妖精?
それの顔の役目を果たす「生き人形」が従者として仕える。相手を選ぶことは本人たちには出来ない。
「生き人形」とは、特別なコーヒーで記憶を消されているが、実は麓の村から調達され洗脳された子どもなのだ。
シャドーという主と元人間の「生き人形」が対となり、一単位としての生活が巨大な館で育まれている。
だがそこでの生活は、班に分かれ過酷な仕事に励み、儀式などの試練がある。
このシャドーと生き人形は忠誠の関係だけでなく、協力し合い課題をクリアする中で関係を密にしお互いを切磋琢磨してゆく。
大人の館と子供の館に分かれており、子供が大人の館に行けるのは、お披露目とお呼ばれの時である。それ以外は基本的に自立しており、大人の意向を伝え統率する星付きが子供たちの管理を任される。
ヒエラルキーの頂点には誰もが尊敬する創造主であるおじい様が君臨する。館の頭首である。

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噺が大変特殊なものであるが、設定が細かく稠密な出来である。
ここでは何より掃除が大事な仕事になっている。来る日も来る日も掃除であり、これがハードなのだ。
シャドーがすすを大量に放出するため、館の中は絶えずすす汚れの状態である。
特にシャドーが怒りなどの感情を顕にすると大量のすすが出るためその掃除が生き人形の主な仕事となってしまう。
それが溜まると「こびりつき」となりその集合体を作る力のある者が亡霊を作り暴れさせる。
またこびりつきが口に入り、すす病になると命を落とす場合もある。
シャドーたちはその放出するすすの量がことなり、すすの操り方も個々に異なる。その能力が窮地に立たされた時に切り札として役に立つ。この辺のバトルもあり面白い。

そんな細かい設定、キーワードが幾つもあり物語をしっかり構築してゆく。
シャドー、モーフ、生き人形、顔の見えない人形、星付き
すす、すす病、こびりつき、亡霊、おじい様のすす入り珈琲、パン
洗脳、お披露目、喜びの会、婚姻制度、お呼ばれ、一体化
少年の棟と大人の棟、大人~「おじい様と共にある棟」は上の階がヒエラルキーの地位は高い、、、等々。

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モーフという黒い小人が出て来るが、これがシャドーの正体で擬態する妖精?だという。このモーフが特定の生き人形を従え模倣して人格形成してゆくようだ。ここで触れ合いに失敗するとシャドーは消滅してしまい、残った生き人形は主を失い、顔の見えない人形として給仕や洗濯などの雑用をすることになる。彼らは言葉は何も喋らない。全ての記憶もリセットされているようだ。

シャドーと生き人形のペアの適正をみるためのお披露目という通過儀式があるが、これがかなり過酷なものであり、ヒロインであるケイト~エミリコの組は5組中4組だけ受かり、ラムとシャーリーの組は脱落している。シャーリーは生き人形との関係が築けず消滅してしまった。ラムの今後は次のシーズンで明らかにされるはず。

上手く関係性が結べ成長が認められると、大人たち~支配層に評価され、お呼ばれされてしまう。
そうなったら、シャドーが完全に生き人形~人間にとりつき、一体化してしまうことで、人間の精神~自我は消え失せてしまうこととなる。シャドーが完全体となる。それが彼らの狙いなのだ。「生き人形」という意識を持たせるのもそれを抵抗なく行うためだ。
これをもって「大人」と呼び、おじい様の棟で暮らせることとなる。そして評価を得た者が上の階に移ってゆく。
人間の子供を村に降りて補充しているのはこのためであった。

「お呼ばれ」の真相を知って、理想的なシャドーハウスを一時築いたクリスとファーという星付きは自害してしまった前例があり、ハウスではその事実はひた隠しにされ、少数のものしか知らない。

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自分が人間であったころの記憶が残っている生き人形と自分がモーフであった頃の記憶を持つシャドーがおり、こうした存在が珈琲の秘密も知り、それを飲まずにシャドーハウスの恐ろしいたくらみを暴き、この体制を打破しようとする。
だがそれらの計画は大人たちに悉く潰されてしまう。
脱出を図ったローズマリーたちも失敗してしまい、飛び降り自殺を図るが、アンソニーとケイトのすすの力で命は助かったらしい。
ほとんどのシャドーも生き人形も、(元凶である)おじい様を神のように崇拝しており、その体制は揺るがない。
自害したクリストファーの生き人形であったアンソニーは、単独でゲリラ的な活動を始めているようだ、、、

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この後のシーズンでどういう展開をしてゆくか、愉しみである。
明らかに反旗を翻しているのは、ケイト~エミリコのペアとジョンとショーンのペアであるが、記憶を消され洗脳が深いペアはどうにもならない状態である。
記憶を持ち自ら思考する者は苦しむこととなる。
これは何処であってもそうなる宿命。



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猫との関係

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猫との関係は、彼がうちの玄関先に必要な時に餌と水の食事をしに来ることのみに更新された。
今のところ4軒ばかりに通いをしている情報が入っている。
今後、彼は外で自由に過ごす。
それもきっと楽しかろう。自分で選んだ新たなライフスタイルだ。

これまでに長女の部屋に大きなゲージと隠れ家の小屋を3つ、更に爪とぎコーナーを設置しておいたが、これらをどうするかである。
もう中で暮らすことがなければ、撤収であるが、彼女が内猫を新たに欲しがれば、ゲージだけは食事と排泄と睡眠の為の空間になる為、外せない。
大きめのゲージで、かなりのスペースを占拠していることから、これからどうするか、である。

今日から次女の勧めで「シャドーハウス」を観始めた。
「チェンソーマン」の方は、まだ5話までしかアップされていないため、もう少し観てから書きたい。
「シャドーハウス」は独特の発想であり設定だ。
よくこのような舞台~世界観を思いついたものだと感心する。音楽にも力が入っていた。
ディテールの仕掛けも細やかで、展開が楽しみだ。
いきなり13話は無理なので、明日もし見切れたら、ソレについての感想を、、、と思っているがどうなるか分からない。


ただし、わたしにとり最も重要なことは、十分な休養である。
それから運動。
このふたつを最優先に考え、暮らしてゆきたい。
明日については、まずはゆっくりと起きて公園の散策。
それからどうするか、これまたゆっくり考えたい。
散策が済んだら睡眠かも(笑。

以上。



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昨日の映画でわたしが一番印象的であったのは、肉屋であった(他もよかったが)。
あの実に味のある熟練の手さばきもそうだが、やはりあの空間である。
空間の質に魅せられるのだ。
サルトルがかつて肉屋は店を閉めれば空っぽになる、という実存レベルのしゃれをいっていたが、肉屋という機械は面白い。
おまけに彼らも夢を見る。




ダゲール街の人々

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Daguerreotypes
1975
西ドイツ、フランス

アニエス・ヴァルダ 監督

パリ14区のダゲール通りの人々

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ドキュメンタリーであるがかなり作り込まれている。
パリ14区のダゲール通りの商店街の人々をその店と仕事ぶりを丁寧に写し取って描いたもの。
彼女の事務所もこの小さな通りのなかにあるという。
よく行くお気に入り香水店に買い物に来ていた可愛い彼女の娘さんも映っていた。
(この香水屋の年老いた奥さんがまるで猫のよう)。
もうホントに親密度の高いキャストとの仕事に思える。

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5時から7時までのクレオ」、「幸福」、「顔たち、ところどころ」等観て来たがアニエス・ヴァルダはとても好きな監督だ。
ともかく情報量が多い。濃密なフィルムで、さらっとながら見など到底出来ない。だが幾度か観たら部屋に流しっぱなしにしておくのも良いかも。お洒落な環境Videoにもなろう。好きだわ、こういうの、、、。
そう、気になったのが、パリの人って(他の国でもそうか?)店内に丸出しで置かれたり引っ掛けられているバゲットを手掴みで貰ってそのまま何にも包まず手で持って帰るのね。そのまま何軒も他の店にも寄ったりして。でかいから何処かにぶつけたり汚れたりしないかちょっと心配になった。

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何よりパリの小さな通りの小売店の中の空気にたっぷり浸れるのが贅沢。
個々の店がそれぞれの固有時をもっている。とてもゆっくりとした時間とそこだけの空間が広がる。
この裏の政治関係の新聞の買える、大通りの煌びやかな要素は全くないが、とても深い味わいのある「日常と言う劇場」がひっそり息づいている。
アコーディオンの音がいつも聴こえて、時間になるとそれぞれの店の扉が開く、、、店に入ればその店独自の時空が存在する。そして、いつもの棚、いつもの壁、いつもの商品、いつもの飾り、いつもの店主に、いつものレジが客を安心させる。
客は必要なものだけを買うが、どの店もいつも来るお得意様で成り立っている。
店主は客の名前を知っているのだ(直ぐ隣の店の人も買いに来るし(笑)。

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通りで人々は立ち話もするが、政治の噺はしない。仕事柄それは邪魔になるし、向こうの大通りでないとそういった新聞は買えないそうだ。よいことかも。
ずっと同じ商売、同じ商品を頑なに守って来た。自家製のモノもある。監督の娘は香水屋店主の独自に調合した香水が好きでよく買いに行くという。店ならではの伝統的な商品をもっている。その店独自の味であったり、、、。
監督曰く、このパリ14区の歩道は農村の香りがするそうだ。
ここにいる人々は皆が地方の小さな村の出身者である(外国からの労働者もいる)。
自動車教習所、アコーディオンの教室、フィギュアスケートの練習リンクの様子も窺え結構充実している。

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後半からは、商店街にやって来た、余所者のマジシャン、ミスタグのマジックショーを皆で愉しむ様子がメインとなる。
しかしここは監督が絶妙なカットでマジシャンの巧妙な手さばきとそれぞれの店主のいつもの熟練した手さばきを交互に編集して描いてゆく。ただ彼らが観客としてマジックにやんやと喝采を送るだけではないのだ。ここがポイント。
またちょっと驚きなのだが、かなりマジックも高度なものだ。これは奇想天外で面白いはず。
だが、それぞれの店主~肉屋、パン屋、仕立て屋、、、の仕事場での年季の入った技術も負けてはいない。
誰かがマジックショーに参加して暗示にかかると、それを見守る客~他の店の人々が大盛り上がり。
会場の密度と熱気はすこぶる高い(今では考えられない3密)。
味のある人々へのインタビューも挟まれる(どこから来た?伴侶とのなり染、どんな夢を見る?)
思わず肖像画にしたい年輪を感じさせる人々なのだ。

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店とは監督の謂うように「無為の時間、空っぽの空間を味わう」場所なのだ。
それもこのダゲール街の店だからこそ殊更に味わえるような気がする。

ともかく、良いものを観た。
以前の職場で、しょっちゅう娘さんを連れてパリに買い物にゆく同僚がいたが、何やらその気持ちが今になって分かる気がした。
彼女は小さな裏通りまでよく知っていて、必ずババールを沢山買って帰って来たものだ。もう何年前の事だろう、、、。
少なくとも、1975年のパリはもっとずっと昔であり、このダゲール街の光景はもう見られないはず。
貴重な記録である。





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planetarian~雪圏球(スノーグローブ)

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2020

玉村仁 監督
Key 原作
ヤスカワショウゴ 脚本


すずきけいこ,、、、ほしのゆめみ(プラネタリウム解説員)
佐藤利奈,、、、倉橋里美(ゆめみの先輩)
櫛田泰道、、、三ヶ島吾朗(ロボットエンジニア)
石見舞菜香、、、森見由香(里美の同僚)
五十嵐裕美、、、古賀茜(里美の同僚)
滝知史、、、館長
ファイルーズあい、、、秋野晋(少年)
八代拓、、、秋野晋


planetarian~星の人~」は大変感動的な物語であった。まだ印象に残る。
本作は、その作品よりもう一つ前の5話で構成される「Planetarian ~ちいさなほしのゆめ~」の(更に)前日譚となる。
この真ん中の作品は観ていない。

小品だが、ほしのゆめみの魅力が堪能できる素敵な映画であった。
秘密の上位命令を約束通りに実行しているゆめみが実に健気で愛おしい。
まだ、戦争前の人々がそれなりに平和に暮らしていた時代の噺である。
ほぼ今と地続きの世界に見える時代だ。
人型ロボットの排斥運動が始まっており、社会矛盾はかなり噴き出しているようで、きな臭さはあるが。

planetarian010.png

ここでの噺は実に単純なもので、プラネタリウム解説員ロボットのゆめみがしばしば職場から離れて、街中で呼び込みをしているプログラムに無い行為を先輩の倉橋里美は心配する。担当エンジニアにメンテを頼むが、システムに異常は見つからない。
実は小さな男の子がゆめみに恋をして、結婚の許される歳になる9年後に内緒で外に自分を迎えに来て欲しいと頼まれていたのだ。それを秘密重要命令として記憶し(職場放棄して)実行に移していた。
しかしゆめみ就任10周年記念日にその男の子は青年となって彼女を伴い訪れ、あの話はなかったことに、と告げる。
ゆめみは解放される(笑。
その様子を見て先輩の倉橋里美は彼女を見直す。

planetarian012.jpg

情景の美しいとても丁寧に作られた絵であり世界観でもある。
色々な事を詰め込まず、シンプルな線で詩情豊かにまとめた物語には好感がもてた。
ゆめみは勿論、里美も周囲の館内のスタッフたちも人物像がしっかり描かれている。
この良い人たちが皆、滅んでしまう兆しはまだ見えてはいない。
世界が今後どうなり、ゆめみの運命も先に知ってこれを見ると何とも苦しく込み上げて来るものがあった。
晋少年のようにゆめみに恋をするなんてことは十二分に有り得ることだと思う。
素敵なロボットであり、世界は哀しい。




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「Planetarian ~ちいさなほしのゆめ~」も機会を作って観ておきたい。



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彼女と彼女の猫 - Everything Flows -

Everything Flows006

2020

坂本一也 監督
新海誠 原作
伊藤真澄 作曲・編曲、松井洋平 作詞、花澤香菜 歌 オープニングテーマ「硝子の瞳」
ミト 作詞・作曲・編曲、クラムボン歌 エンディングテーマ「ソナタ」


花澤香菜、、、彼女~ミユ(就活中の短大生)
浅沼晋太郎、、、黒猫ダル(オスの老猫、語り部)
矢作紗友里、、、ともか(彼女の小学生からの友人、ルームシェアをしていた)
平松晶子、、、彼女の母(小学生の時、ダルを娘にプレゼントする)


うちの猫が出て行って今日で3晩目を迎える。昨日3日目と書いたが、、、何だか時間があやふやなのだ、、、
今日の夕方に玄関に出しておいた餌が減っていたというから、彼が食べたのかも知れないが、他のノラかも知れない。
首輪を付けた猫もあちこち散策しているのを見るので、その辺も考えられる。
うちの猫は大きな声でよく鳴くので大概それで分かるが、呼びかけの声は聞こえなかったという。
部屋の中で何かしていれば、外の声は聞こえにくいのは当然だが、、、。
わたしは、家には短時間帰っているだけで、状況は分からない。
ベッドと餌はそれ以来ずっと外の日当たりの良い場所に出しているため、食べた後、ベットで和んでいれば、良いのだが。

恐らくもらい受ける前、幼少時に身の危険を覚える外傷経験を経て来たのではないか。2歳のとき保健所を介し譲り受けた猫だ。
自分からは、鳴いてこちらの気を引き、寄って来ては頭や口を擦り付けたりはするが、撫でられていても膝に乗っていても、こちらにこころを許すところまでいかず、常に緊張感があり、噛み癖、引っ掻き癖は治らなかった。こちらの愛情表現を無条件には受け入れがたいのだ。身構えてしまう。受容性がないというところに、リラックスしていない状況は充分感じられた。
わたしは子供のころから14匹ばかり猫と暮らした経験がある(同時には3匹以上はない)。
どの猫も、仰向けに腹を見せて寝ていて、撫でても膝にいても喉を鳴らして寛いでいたものだ。
かなり間隔を置いてであるが、今回の猫は初めての経験であった。

わたしが家から距離を持ってから、どうなっているかと思っていたら、猫の方からも自主的に距離を持ったようだ。
猫に任せるしかない。ご近所にも顔は見せているらしいが、どの辺に落ち着くか、このまま離れてゆくのか、、、。
ただ、何らかの縁はあったのだ。環境はそのままにしてあるし、何時でもお帰りと迎える用意は出来ている。
長女も流石にいなくなると淋しいはず。餌、水、トイレ関係はこまめに世話はしており、一緒にベッドで寝ることもあった。
(今回の事件後から彼女には一度も会ってはいないが)。
ベランダに光る外の世界を眺め、出てみようと思う気持ちは分かる、、、。出たら帰る気持ちがなくなるということもあるだろう。

亀も直ぐに出ようとする。外に出ようとすること自体、生命にとり自然な姿なのかも知れぬが(爬虫類は特にそうらしい)。

Everything Flows004

本作のもととなった新海誠による自主制作短編作品を観てみたい。
モノクロ映像だという。

これも短編の部類だが、別の監督のカラーの作品。
この猫はしっかり人~彼女に付いている。家ではない。
とても詩的な感受性をもつ猫だ。
わたしが以前一緒にいた猫も大変詩的な猫であった(猫とは本来そういうものだ)。
この彼女は、就活で苦労し虚しい毎日を送っている。
元気がない。こころの隙間に耐えていて、淋しそう。
猫もその痛みを共有している。
確かにそういう関係は生まれるものだ。
背筋を正して出かける彼女の後姿に、彼は「扉の外、不完全で残酷な世界を好きになろうとしている、そんな彼女が好きだ」と内心エールを送る。
これだけでも充分ではないか。確かな味方だ。

Everything Flows002


ことばそのものは分からなくても同じ気持ちを共有することは出来る。ズレてはいても絶妙だったりする。
(同じ言葉を話す人同士、親子でも全く不可能であることは少なくないが、猫とは繋がることはある。確かにあった)。
これはたぶん間違いない。

この彼女、子供時代から生き難い子であったみたい。そこはわたしにもよく分かる。
しかし、この黒猫ダルを介して生涯の親友とも巡り合う。
そして、ダルと「お腹空いたね」で一致する。お互いの固有時が交差する瞬間。
こんな瞬間の共有が重なるにつけ、彼女と彼はかけがえのない仲になる。

Everything Flows001

だが、お互いの時間は異なる。
ダルはもうおじいさんとなっていた。
彼女も(ある意味、その若さから)傷つき、その痛みと苦しみから先に進めないでいる。
そんなときでも、相手を思うちょっとしたズレが、それが生んだ笑顔が、お互いを救うことはある。確かにある。
ちょっとした暗闇でのジャンプなのだ。きっと。
ダルは思いを遂げて旅立つ。

Everything Flows005

だがダルの魂の時間は再び彼女の時間に交わる。
白猫として。
勤め帰りの大人の彼女に彼は見出される。
また新たに彼女の猫になった。
わたしの最も深く繋がっていた猫も真っ白な猫だった、、、。
今も忘れることがない。

そして、、、

Everything Flows003

わたしをいま世界に繋ぎとめる存在は、最も手強い猫である反抗期真っただ中の二人の娘なのだ。
ふいにそう確信した。



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天気の子

Weathering With You001

Weathering With You
2019

新海誠 監督・原案・脚本
RADWIMPS 「愛にできることはまだあるかい」、「グランドエスケープ (Movie Edit) feat.三浦透子」、「風たちの声 (Movie Edit)」、「祝祭 (Movie Edit) feat.三浦透子」、「大丈夫 (Movie Edit)」 主題歌


声:
醍醐虎汰朗、、、森嶋 帆高(16歳)
森七菜、、、天野 陽菜(15歳、空と繋がる)
小栗旬、、、須賀 圭介(K&Aプランニング経営)
本田翼、、、須賀 夏美(圭介の姪、大学生、K&Aプランニングでバイト)
倍賞千恵子、、、立花 冨美(天気の依頼主の老婆)
吉柳咲良、、、天野 凪(陽菜の弟)
平泉成、、、安井刑事
梶裕貴、、、高井刑事
佐倉綾音、、、アヤネ(凪の彼女)
花澤香菜、、、カナ(凪の彼女)


新海誠アニメーション久しぶり。「天気の子」ていう着想、面白い。鳥居とか装置が用意されている。
こうした装置~ガジェットこそ今誰もが希求するものなのかも。
装置とか機会とか、そうしたものに飢えている気が充満して最近雨が降ってる気もする(笑。
反面、登場する主人公と支える面々、気持ちが良い。
瑞々しくて若々しく、何やら環境がどうであれ健やかに活き活きと生きることは可能だという希望が貰える。
良い事だ。
そういう見返りが無ければ自分の時間を使った甲斐がない。
間違いなく、観てよかった。

Weathering With You003

ずっと雨が降り続く。
”ブレード・ランナー”にせよ、酸性雨がずっと降り続けていた。
今も何かとポツポツ雨が降ることは多く、、、。

東京がいつか水没してもおかしくはない。

それはそれでよい。

廃ビル屋上の神社の鳥居を潜ることで、空~天気と繋がるというのも、何とも言えない。
強く祈れば、何かと繋がる。
それは有り得ること。

Weathering With You004

故郷や親を実質、失い、何処にも居場所がない、ということは充分に有り得る。
おまけに未成年で、お金も無い、不運も重なる、ときたらどうするか。
(帆高は疲労困憊して眠っているところを起こされ殴られた挙句に拳銃まで拾ったことで警察にも手配される。帆高にとって親も島の生活も息苦しいだけ。外に出るしかなかった。陽菜は親に死なれて、小学生の弟と共に暮らさなければならない。施設に離れ離れで暮らすことは出来なかった)。

そこに、面倒な法が覆いかぶさって来る。
邪魔にしかならないことが断然多い。足を引っ張るだけの余計なお世話。これは確か。
わたしもその手の機関に対し大激怒している。馬鹿に何が分かる!
(プライベートな件だからここには書かない)。

陽菜が天気を自由に操れることで、「晴れ女」のサービス業を帆高と一緒に始める。
まずは彼らにとり、お金が必要なのだ。
100%ハレ女の陽菜の力で依頼主の願いを叶え、喜ばれ感謝され称賛を受ける。
やはり「晴れ」の齎すものは大きかった。
需要も高まる一方であったが、彼女の体調を心配し仕事は中断することに、、、
しかし晴れにすることの、代償が悲痛であった。

Weathering With You005

東京が晴れ渡ったとき、陽菜はこの世から消えてしまった。
彼女を人柱とすることで、天気が晴れているのだ。
このことを知るのは帆高だけであった(伝承の謂う所であった)。
彼は陽菜に逢うことを一心に祈り、彼女との再会を目指す。
晴れなどいらない。この先ずっと雨続きであっても彼女と共に居たい。
そりゃそうだ。元々雨続きだったのだから、戻るだけの噺ではないか。

陽菜が上に昇ってしまい体が透明となり、帆高の誕生日プレゼントの指輪が指からすり抜け、それを受けとめようとする一方の掌からも抜け落ちて行くところの描写は素晴らしく切ない。


結局、警察に追われながらも、帆高は強く祈り例の鳥居を潜って彼女に逢いに行く。
そして上空の雲のなか、壮絶な水の世界を潜り抜け彼女と再会を果たす。
地上に降りて、保護観察処分のもと別々に過ごして学校を卒業する。
その後は晴れて堂々と再会するのみ。
生き難い人生を辿って来た彼らにとりこの経緯~経験はハレの世界に生きるためのイニシエーションであるか。

Weathering With You006

ずっと雨が続こうが、自分たちの幸せこそが全てである。






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仮面ライダーBLACK SUN 1~10

BLACK SUN012

2022

白石和彌 監督
高橋 泉 脚本
松隈ケンタ 音楽
今村 力 美術
田口清隆 特撮監督
樋口真嗣 コンセプトビジュアル
「Did you see the sunrise?」主題歌


西島秀俊、、、南光太郎/仮面ライダーBLACK SUN
中村倫也、、、秋月信彦/仮面ライダーSHADOWMOON
三浦貴大、、、ビルゲニア(古代甲冑⿂怪⼈)
平澤宏々路、、、和泉葵(女子高生、怪人に改造される)
吉田羊、、、ビシュム(翼⻯怪⼈)
中村梅雀、、、ダロム(三葉⾍怪⼈)
音尾琢真、、、コウモリ怪⼈(⼤蝙蝠怪⼈)
濱田岳、、、クジラ怪⼈(⽩⻑須鯨怪⼈)
プリティ太田、、、バラオム(剣⻭⻁怪⼈)
黑田大輔、、、ノミ怪人(人間を怪人に改造)
芋生悠、、、新城ゆかり(人権擁護運動家)
木村舷碁、、、小松俊介(雀怪人、葵の親友)
今野浩喜、、、井垣 渉(怪人排斥運動リーダー)
尾美としのり、、、仁村 勲(内閣官房長官~総理大臣)
ルー大柴、、、堂波真一(内閣総理大臣)
寺田農、、、内閣幹事長


昨日に続き、3~10まで一気に観た。
「仮面ライダーBLACK」が元になっているということだが、ほとんど記憶にない。
引き込まれたが、1970年代の回想シーンの尺がちょっと長すぎる気がした。出来事をもっとかいつまんで見せてよかったのでは。
社会の実情を取り込み反映させているのは分かるが、新城ゆかりの立ち位置が最終的にもっと明確になると説得力も増したか。
(「創世王」の存在により、怪人が長生きし増えることで、人類とのバランスの崩れを危惧したのか)。
ルー大柴と寺田農のコンビが安倍総理と麻生大臣であるか。ここは微笑ましかった。
ただしゴルゴム党というあんな政党が政府というのは、流石に荒唐無稽(いや自民党と大差ないな)。
何度も繰り返し語られる人権スローガンみたいなのは、その虚しさで葵の転向を印象付ける役割はあるか。

BLACK SUN015

50年に渡る人間と怪人を巡る様々な利害、確執の絡む攻防が繰り返され、登場人物の陰謀や裏切りや疑心暗鬼がよく描かれていた(しかも怪人は旧日本軍が人間兵器として人体を改造して作ったものが起源なのだ。それを秘密裏に指揮したのが現総理の祖父ということ。何とも、、、)。
しかし、それぞれの信念のぶつかり合いのなかで、主人公BLACK SUNは確固たる思想、信条はなく、顔の見える相手に対する信頼と愛に応え動いていた。一番相手構わず全く変わらぬ価値観と行動原理で動いていたのは堂波真一総理であろう。
最後に、汚い路地裏でたちしょんしたところで、怪人に首をちょん切られて死ぬところなど如何にもであった。それを腹心が窺ってニヤッと冷笑して車で立ち去るところなど、なかなか良いシーンである。
ビルゲニアは確固たる信念を持った兵士であるが、潔く総括して転向しており、それを9話の最後にしっかりと魅せ立往生である。
葵は彼をずっと憎んでいたが、その死に様には敬意を払っていた。そうまさに人は死に様である。
信彦の意識の流れも決断もよく分かる。
そこなのだが、BLACK SUNとSHADOWMOONとの対立が決定的なものへと収斂する過程がどうもしっくりしない。
彼らが共鳴している亡き新城ゆかりの思想がどういうものであり、どのように受けとめているのか、「創世王」とは結局何なのか、その辺がもう少し分からないと、、、何であそこまで行くのか理解しずらい。

BLACK SUN014

全体を通して、ビルゲニアに際立った存在感があった。
戦国武将みたいな風格である。
ただし、ビルゲニアの変身後の怪人造形がもうちょっと何とかならなかったか。人間の姿の演技が良かっただけに惜しい。
怪人でも迫真の演技でシリアスに見れたが、他の役者だったらコントみたいになってたかも。
井垣 渉の怪人排斥リーダーの言動も下手をするとコントの領域に入ってしまうところで、かなり物語を危うくするところがあった。
それを受ける怪人がコントにしないように受けていたのでそれなりに流れていたがグロテスクな誇張というよりやり過ぎ感が強い。
(とは言え、現実にこういうのはいないか、と言われれば、いる、と答える(爆。そういう現実だ)。

BLACK SUN013

それより気になったのは、和泉葵が南光太郎や秋月信彦みたいに変身ポーズをカッコよく決めて、怪人になる10話終盤シーンでどんな第二形態に成るのか期待していたら、普通にボウっと変身した時と変わらなかったこと。しかも力も変わっていない。本来ならあの変身ポーズでずっと強くなるのでは、、、違うのか。ポーズが決まって良かった分、ちょっとがっかりしてしまった。

葵は差別のない世界を理想を込めたスピーチで語っていたが、自らが怪人と成ることで、薄っぺらい理想に酔っていたことを悟る。
結果的にビルゲニアからのキツイ教育的な仕打ちともなった。人間と怪人という単純な対立構造ではない、欲望による対立~抗争が人間も怪人も関係なくあらゆる局面で起きていることを闘いや身近な者の死を通して知ることとなる。明るく単純なスローガン優等生から他者(今自分が他者でもある)という闇の恐ろしさを感じることで、一歩踏み出してゆく。そう変身自体、自己解体ではないか。

BLACK SUN011

仮面ライダーは確かに他の怪人より、一段強い存在だと分かるが、圧倒的な強さという訳ではない。
キングストーンというものが、強さの秘訣なのかとも思ったがBLACKはお腹に入れていない。ストーンが何なのか今一つ分からない。
闘いに重みはあるが単調だし、もっと飛び道具や技があってよいような。
ここでも一度だけ見られたが、初期の頃のライダーはほとんどライダーキック一発で決めていた。
SHADOWMOONは「創世王」の使う念動力みたいな力をもっていたが。
全体に、重くて地味で残酷であった。

BLACK SUN010

最後、せっかく身体が治り、闘いに辛くも勝利したのに、あの結末は如何なものか。わたしの感想は、ありゃ~勿体ない。である。
「創世王」というのは超絶存在なのか。葵が博士から聴きとったあの伝説のサーベルでしか倒せないことを予めBLACKに伝えていればそれで殺せたのに。どうだろう。ビルゲニアの持ち物になっていたから無理か。

ヘブンという「創世王」の分泌する青い液体と人間の何かを混ぜたゼリーが怪人に活力を与えていたが、わたしも最近電池切れで、ぜひあれを食べてみたい。口に入れた途端、煙まで出て、とても激烈に効きそうである。人間には効かないのか。元気溌剌が一番なのだが(笑。
一番と言えば、一番共感したのは、クジラ怪⼈(濱田岳)である。雰囲気、表情からして良い。あの渋さがこの物語のカラートーンに馴染んでいる。

BLACK SUN016

改めて、平澤宏々路、恐るべし。
(2歳から女優をやっているとなれば、芸歴13年のベテランである。歳がずっと上でも芸歴が2,3年ならば遥か後輩となる。そういう人から先生とか呼ばれてペコペコされているのだろうか)。





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仮面ライダーBLACK SUN

BLACK SUN001

2022

白石和彌 監督
高橋 泉 脚本
松隈ケンタ 音楽
今村 力 美術
田口清隆 特撮監督
樋口真嗣 コンセプトビジュアル
「Did you see the sunrise?」主題歌


西島秀俊、、、南光太郎/仮面ライダーBLACK SUN
中村倫也、、、秋月信彦/仮面ライダーSHADOWMOON
三浦貴大、、、ビルゲニア(古代甲冑⿂怪⼈)
平澤宏々路、、、和泉葵
吉田羊、、、ビシュム(翼⻯怪⼈)
中村梅雀、、、ダロム(三葉⾍怪⼈)
音尾琢真、、、コウモリ怪⼈(⼤蝙蝠怪⼈)
濱田岳、、、クジラ怪⼈(⽩⻑須鯨怪⼈)
プリティ太田、、、バラオム(剣⻭⻁怪⼈)
黑田大輔、、、ノミ怪人
芋生悠、、、新城ゆかり
木村舷碁、、、小松俊介(葵の親友)
今野浩喜、、、井垣 渉
尾美としのり、、、仁村 勲
ルー大柴、、、堂波真一

仮面ライダーBLACK SUNの1,2話まで観る。
渋い。
渋すぎる。
青味がかったトーンに禍々しい雰囲気。何とも言えない重厚感。
端からお子様仮面ライダーではないことがはっきり分かるダークさ加減。
主役からして、西島秀俊と中村倫也である。大人のカッコよさである。
更に中村梅雀と吉田羊が固める。貫禄で物語を締める。
芋生悠が盛り上げる。怪人の人権擁護の運動家である。
そして平澤宏々路という15歳の女優を知った。誰なのこの人?
(若手女優の凄いのがどれだけいるのか、競争率高いわ)。

今日は、オリジナルマザーHDDが読み出しが危うくなったことで、急遽新しいHDDを用意し、何故かこちらの(家庭事情から)分散コピーしておいた複数のHDDから新たな4TBHDDへ孫コピーを行った。ホントはマザーから直接コピーしたかったのだが、セクターに既に何らかの異常があった場合、奇麗に素早くコピーを取るのが難しくなるため、不幸中の幸いと考えることとした。
今日は一度も実家に戻らず、独りアパートに籠り、小さなHDD2つに分散して、更に4TBHDDにまとめて、データーを全て保存した。
これでこの先10年は最低限、もたせるつもり。
コピー前に無駄なデーターを選別排除も行った為に、時間は随分かかった。

それから、長女が飼っていた猫のトラが脱走していなくなったらしい。
メールで知る。
2階のベランダに出て、そこから庭に降りて何処かに行ってしまったという。よく降りれたものだ。
犬は人につき、猫は家につくというが、そのうち帰ってくることを祈るのみ。

キャストがとても豪華なのだが、ルー大柴の総理大臣というのがいまひとつしっくりこない(出番もやたらと多い)。
BLACK SUNとSHADOWMOONは言うことなしだが、他の怪人のフィギュアの造形も申し分ない。
非常に力が入っていることが分かる。
主演のライダーは初期の造形をブラッシュアップしたインパクトのある究極形体だ。

BLACK SUN002

人間と怪人がとりあえず共存する形の社会にはなっているようだが、「怪人は日本から出てゆけ~」という差別運動も激しい。
一触即発の危うい場面が続き、緊張感を増す。
そんな状況下で、日本からニューヨークの国際会議で差別撤廃と共存を訴えるスピーチを行った高校生が和泉葵である。
彼女は怪人からも怪人差別運動家からも攻撃の的にされ家を失い、南光太郎と共に過ごすこととなる。
謎のブレスレットを首にかけているが、これが怪人たちが狙っているストーンなのか、、、。
「創世王」という女王蜂みたいな存在がエキスを流していてそれを呑んで怪人は生き長らえているのか。
その「創世王」の命が尽きる間際で、彼らがかなり焦って行動をしていることも分かる。キングストーンというものが手に入れば活路が見いだせるのか、、、ともかく時間を作り続きを観たい。


「怪人」と怪人が自分たちを言っているのはどうしたものか。もう少し誇りを持った呼び方があって良いはず。





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ピーカン夫婦

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2005

元木隆史 監督
永森裕二 原作・脚本


山本剛史、、、尾藤(レコード会社ディレクター)
のはら歩、、、光子(白昼の外でしか交われない女性~妻)
山下敦弘、、、演歌歌手のマネージャー
葉月螢、、、花形さゆり(演歌歌手)
北川明花、、、木田(専務の娘)
渡辺憲吉、、、上司
吉永秀平、、、チンピラ
かでなれおん、、、チンピラヤクザの彼女
愛染恭子、、、バーのマダム


一番びっくりしたのは、エンドロールで「斉藤飛鳥」という名を見た時。
ええうっそ~と、しばし思い返すが、、、名前を改めて確かめると、乃木坂の飛鳥女史は「齋藤飛鳥」と難しい「さい」なのだ。
いくちゃん繋がりで乃木坂関係には敏感になってしまったことを感じる今日この頃。
今日は晴れ晴れとした天気で心地よかった。

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本作、ここ最近観た邦画では一番爽やかであった。
やってることは全てズレてる感じなのだが、何故か清々しいのだ。
時折入る文字がとても効果的なのだ。物語そのものになくてはならない要素とも謂えるほど。
しっかり文脈に溶け込んでおり、このセンス面白い。

誰もが趣向、性癖はもっており、偶然の孤独な者同士の出逢いからお互いを理解し合って受容する過程がくすぐったく楽しく描かれる。
初めての経験が昼の晴れた空の下だったので、もうそこでしか出来ないというのも、、、帯状回を根拠に刷り込まれた無意識の影響なのですと言われても、、、。
晴れた青空の下とは謂え、叢である。虫に刺されたり、動物や時には人が紛れ込んできたりする可能性もあり気が散らないか。
どこぞのヨーロッパのプライベートビーチとかなら分かるがグランドの裏手の野原でほぼ全裸で日光浴はさすがに感覚的に無理がある(犬のうんちとかありそう)。ただ、そういう奇想天外なところでの出逢いだからこそ、価値があるのだろう。この先は、外限定であるなら、特別にそういった環境をふたりで作るのも愉しい作業ではないか(人目を気にせずいられるところだ)。
気難しい毒舌家で浮いていた尾藤が周囲とコミュニケーションを図る為に草野球チームを作るというのも突飛だ。
誰も来ないのは当然だと思うし、本人がそもそも下手なのだ。どういうつもりか、分からない。
このズレた者同士で出逢うには、あの球場裏の叢しかなかったのだ、きっと。
(日常の極普通の文脈の中ではまず出逢えまい)。
お陰で尾藤に明るさが出て仕事にも前向きになるのは、自然に思える。そういうものだ。

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ちりばめられたセリフもクスっと笑えるものが多い。
デカいオムスビを期待を籠めて作る若妻となった光子も面白いがそれを二人で交互にかじり合うのも良い。
演歌歌手を売り込むマネージャーも実に味があり、尾藤とのやりとりはもっと続いても飽きさせないものがある。
バーのマダムは少々固かった。
ここでもボカシが必ず入るが、はじめから分かっているなら、入れないでよい構図で是非撮影して欲しいものだ。

バーのマダムに演歌歌手の歌を聴いてもらう時に絡んできたチンピラをピックで刺し殺すというのも、この時点では不可解である。
尾藤はもうかなり人としての柔軟性と受容性が高まって来たところではなかったのか。
ウザいチンピラではあったが、そこまでするか、である。はみ出したところ、ズレが面白かったのだが、ただの犯罪者に収まってしまったらシャレになるまい。
ムショで模範囚として過ごし、光子に早かったわねと出迎えられ、職は失うも二人だから何とかなるわと、最初に出逢った叢で愛し合う、、、。役者の個性で何か説得された感じでもあった(笑。

山本剛史という役者の個性は面白い。他ではどんな演技をするのか観てみたい。
この語り口、癖になる。ちょっと田村正和入っているような(笑。

演歌歌手の役者の歌唱力がイマニであった。『うれのこり』が『半熟の人』になったことでブレイクするが、これが尾藤と光子の関係にも重なる。ただし歌は吹き替えでも良かったのでは。紅白に出るひとには思えない。
(彼女の営業スマイルがキッチュでよかったが)。



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ディストピア2043

Night Raiders002

Night Raiders
2021
カナダ、ニュージーランド

ダニス・グーレ監督・脚本

エル=マイヤ・テイルフェザーズ、、、ニスカ(ワシースの母)
ブルックリン・レテクシエ=ハート、、、ワシース(鳥と話す少女)/エリザベス(アカデミーでの呼び名)
アレックス・タラント、、、レオ(レジスタンスの兵士)
ゲイル・モーリス、、、アイダ(レジスタンスのリーダー)
アマンダ・プラマー、、、ロベルタ(ニスカの親友)
ショーン・サイポス、、、ランディ(ニスカをエマーソン州に誘う)


この”2043”という微妙な数値はどこから来たのか?
2043年の噺なのだろうが、何故そこに設定したのか。
「ブレードランナー2049」の方の数値は分かるが。
「夜襲部隊」という題であるが、いつ夜襲かけたか覚えていない(苦。
(娘を助けに3人ほどでアカデミーに潜入したのが夜の気もするが)。

Night Raiders003

アメリカ先住民側から見た戦後(第三次世界大戦ではなく南北戦争後)の世界のよう、、、。
彼らのコミュニティ(クリー族?)のレジスタンスと政府軍との闘いを少女とその母親を軸に描く。
闘いはとても局所的な小規模感があった。
主人公母娘も含め役者が皆、エキゾチックである。音楽もそうだ。
(監督もクリー族出身だという)。
戦後映画に観られる打ち捨てられた人々の暮らす荒廃し退廃した市街地の情景が描かれる。
選ばれた人々が住み、政府のあるエマーソン州の描写はない。
アカデミーを優秀な成績で卒業すれば市民権が得られるというが。

政府は5歳になれば子供を国に提供させ、洗脳し兵隊など国のために動く人間にしてしまう。
アカデミーのプロパガンダ広告の看板など既視感たっぷり。忠誠を誓わせる宣誓にしても。疫病を流行らせ街を遮断するなども似た構図はたくさん見た。ことばを一つに統一する政策は定番だがそれは入って来るのは分かる。ここでもワシースはエリザベスと呼ばれる。
(デストピア映画の類型性にはそろそろうんざりしてきた)。
アカデミーを出て成人した後、母親に会ってももう認識できない別人格となっている。
その為、子供を差し出さず、森などに隠れて生きている主人公母娘のようなケースも少ないがある。
だが大概、偵察ドローンに見つかり折角隠れて生きて来たのに捉えられて連れ去られてしまう。
主人公についても11歳まで育てたが、怪我をした足を治す医療が必要なため、母は泣く泣く娘を政府軍に渡す。
この苦渋の選択は分かる。

Night Raiders004

この娘が生得的に持った特殊能力なのか、彼女は鳥と意思疎通が可能のようだ。
母にはそういう能力がない、というより興味もない様子であった。
それが何に役に立つのかと思っていたら、最後にレジスタンスを急襲した政府軍のドローン戦隊を鳥のように自分の思うように操り、軍勢を怖気づかせ退却させるのだ。
鳥とAIは同じなのか?(ドローンはAI自立型)。
母親もビックリして「どうやったの?」と娘に聞いていたが、視聴者も同じだろう。
しかしこれでコミュニティが救えたと謂えるのか?皆喜んでいたが、、、。

ディテールの描写が弱く、設定にせよストーリー自体もスカスカな感じは否めない。
クーリー族コミュニティーの雰囲気はよく出ていたが、全体的に描き込みが足りない感じだ。
母親が親友が成人して兵士になった息子に撃たれて死ぬことで、クーリー族と共闘する決心をする場面などはよく分かるところ。
(母は彼らの占い師による予言から、北方から来たため、守護者扱いされ優遇されている)。
感情的に訴える描写がアカデミー内においても欲しいところ。
余りにも淡白で、娘がそのせいかとても影が薄く感じた。
彼女が野生児と陰口を謂われて虐められてる様子は窺えるにせよ、、、。
アカデミーに潜入した母とレジスタンスが当然幾つもの困難に遭遇すると思っていたが何ともあっさり子供を逃がしてしまったり、、、
何をしようがもうひとつ密な展開が欲しいもので、緊迫感がいまひとつなのだ。

Night Raiders001

この娘が鳥に話しかけるシーンがどうも好きではない。
とても表情共々わざとらしくて嘘くさいのだ。
おまけにドローンまで言うこときかせてしまって。
母の方は兎も角、娘にはほとんど共感出来ない映画であった。
どちらかといえば母親が主役の作品である。

ドローンに裏切られて一度退却したにせよ、その後政府軍にミサイル攻撃でもされたらひとたまりもあるまい(ミサイルを操ったら笑える。もうこの娘自体が兵器であり政府が放っておけまい)。そこまでしなくても通常の歩兵隊でも一掃できるはず。
この先の場所~彼らが約束の地とするビックストーンも特定されるのは時間の問題ではないか。
そこで初めてこの母娘が守護者であるかが問われるのかも。
でも、何だかねえ、、、。



Wowowにて








お嬢ちゃん

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2019

二ノ宮隆太郎 監督・脚本

萩原みのり、、、みのり(21歳の女性)
土手理恵子
岬ミレホ
結城さなえ


何で「お嬢ちゃん」というタイトルなのか?

鎌倉が舞台。
と言っても余り鎌倉らしさのプンプンしたロケーションはない。
わたしもしょっちゅう鎌倉に行っていた時期があったが。

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カフェで「和風らーめん」が人気の店でウエイトレスを務めるみのりがヒロイン。
何に対してもしっくりせず、折り合いが付け難い。

彼女は幼少期に父から受けた虐待によるトラウマで苦しんでいる。
その経験を殊更意識化することで悪循環を生み、更に生き難くしているか。
トラウマというよりそれも関与する物事に対する認識~感受性のパタンが彼女に生き難さを突き付ける。
常に生じる齟齬。違和感を増幅する桎梏。環界に対するヒリツキ。

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しかし、彼女の持つ誠実さ正義感に惹きつけられ慕う友人もいる。
ただしその関係が多分に共依存的であるが。
容姿に恵まれているせいもあり、彼女が外界~他者に対して抱くほどの敵意を向けられることは少ない。
(喧嘩を吹っ掛けない限りにおいて。寧ろ親和的関係を望んで近づく人間の方が多い)。
彼女の姿勢としては、基本的に他者に対する壁を作って日常を送っている。

大変、共感できる存在である。
わたしもほぼこれに近い。
彼女と同様にわたしも毒親による幼少期~少年期における虐待(主に精神的)により随分精神の基盤に痛手を負った。
それは修復不可能なレベルである。だが、生きてゆくには次の場所に展出してゆくしかない。

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さて彼女はこれからどうしてゆくのか。
別に何も起こらないドラマであるが、われわれにとっても実際にあるのは、淡々と反復する日々の生活だけである。
何が変わるでも、起こる訳でもないことも知っている。
どうにもならないし、また明日も実に下らない連中が下らない話をし下らないことをして一日を終えるのだ。
誰もそれほど変わるものではない。人間である以上。
彼女の謂うように、「どいつもこいつも下らない!」のだ。
泣きたくなるのも分かる。わたしはもう歳でカラッカラに乾き切ってしまったが。喧嘩も面倒でやる気がしない(笑。

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人間と言うレベルがそもそも宙吊りで寄る辺なくぼんやりし過ぎているのだ。
わたしもこれまで社会~家制度、法やパラダイムをかなりの元凶と制約として感じて来たが、そんなレベルで解消できるものではないように思える。
人間と言う幻想形式そのものが、余りにあやふやであるところから来る本質的な受苦なのだ。きっと。
だからと言って宗教に縋れば何とかなるなんてことは断じてありえない(更に後退し疎外を深めるだけ)。

人間と言うのは、不可避的にあらゆる枠からはみ出てしまうもの。つまり身体性(知覚認識)では感知できないことを知ってしまう。
そこでは感覚や直観は一切役には立たない。人間的な身体性に飼いならされた表象からは気づけないそれが立ち上がる。
実体は、今一番展望のある統一理論、量子重力論が見出してくれそうである。芸術にも期待は掛けたいが。
勿論、紀元前300年ごろにすでにその理論に直結するほどの認識を得ていたデモクリトスのような大天才はいるのはいたが、例外中の例外であろう。
プランクスケールでは、時間も空間もなく、場の量子の相互作用により初めて時空間が生み出される、この共変的量子場という実体が世界を現象させている。量子という最小単位は離散的に存在しており、連続性はない。つまり永遠とか無限とか言う概念も消え失せ、特異点も無くなる。多くの宗教が依拠する概念も全く説得力を失う。輪廻転生とかカルマとか前世だの、、、の戯言も全て消え失せよう。当たり前だ。人間は一回生きて一回死ぬだけ。それ以外の何ものでもない。死ねば量子に解体するだけ。意識~情報の保存に関する理論は、今後に待ちたい。「情報」が今一番のトレンドであろう。

われわれ人間の通常の感覚~知覚などでは、地球が球体で重力により地表に張り付いており、その地表が大変な速度で自転し公転していることなど感じられない。太陽系自体天の川銀河の辺境にあって、凄まじい速度で(太陽が自転と公転して)2億年くらいで一周するようだが、その銀河はアンドロメダ銀河に接近しておりそのうちに衝突してひとつの大きな銀河を形成するという。我々の銀河は、ケンタウロス座(ウミヘビ座)の方向にある巨大重力源(確か1億5000万光年先であったか)グレートアトラクターにこれまた大変な速度で引っ張られて移動している。
しかし実は更にその奥、(数値はうろおぼえであるが6億5000万光年先の)シャプレー超銀河団に引き寄せられているのだ。
だが、その引っ張りを一方で押し戻すダイポールリペラー(双極反発子)と呼ばれる力も発見されている。
何が言いたいかと言うと、われわれは飛んでも無い速度で宇宙をピアノ曲線を描くように飛び回っているのだ(太陽の周りをのんびり回っているだけではない)。
静かに椅子に座っていなさい、とは謂うが。それは飽くまでも地表に対して止まっていろと言っているだけである。
(余りに当たり前のことを言っているが、微視的にも巨視的にも、これが人間~身体性の限界である)。

大変粗雑に思いついたことを激速で書き連ねてしまったが、、、要は、人は中間領域~近似的というかぼやけた領域に現象している存在であり、何もかもがあいまいでしかないのだ。その次元に初めて析出してくるのが時間と空間のようだ(熱力学~エントロピーが関与するため)。この時間と空間をアプリオリな枠と前提して生きているうちは、なにも変わりはしない、救われない恐らく。多くの戯言に囚われ虚妄に塗れて生きてゆくしかない。人間として。
恐らく、人間的な苦悶は全て「人間」のレベルに囚われた意識と思考によるものだと考える。
人間をまず止めることから始めたい。

ほとんど映画とは関係ない(ないわけではない)話になった。細かいところが雑になったがそのうち整理して書き直すつもり。


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AmazonPrimeにて












バンカー・パレス・ホテル

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Bunker Palace Hôtel
1989
フランス

エンキ・ビラル 監督・脚本
ピエール・クリスティン 脚本
フィリップ・エデル、アルノー・ドゥボ 音楽

ジャン=ルイ・トランティニャン、、、オルム
キャロル・ブーケ、、、クララ
マリア・シュナイダー、、、ミュリエル
ジャン=ピエール・レオ、、、ソラル
ブノワ・レジャン、、、ニコライ
ヤン・コレット、、、オルシニ
フィリップ・モリエ=ジュヌー、、、デトゥープ
ロジェ・デュマ、、、ザルカ
ハンス・メイヤー、、、大統領


一切説明的なものはなく、淡々と物語が人形劇を連想するような雰囲気で進む。
どうやら政府軍とレジスタンスの間の戦闘が続いているようである。
政府要人が列車で運ばれ安全な地下のホテルで過ごしているらしい。
その厳重に守られた場所にスパイが紛れ込む。
そこにいるべき大統領はずっと不在のままで、、、。
(何か昼寝の時に観る悪夢みたいなシュールな世界であった)。

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これ程音楽、音響が前に出る映画は観たこと無い。
大変なインパクトである。
魅了された。

空間トーンも青味がかった暗いもので建造物やマシンが未来的と謂うよりアンティークな風合いで独特の個性である。
人物も何処か人間離れしたアンドロイドの雰囲気があり、アニメ調のスタイリッシュな感覚だ。
アンドロイドそのものも登場していたが。グロテスクなメイドが独特な空気を醸していた。
特異なジャズ~現代音楽を奏でる楽団もアンドロイドらしい。
この無機的な雰囲気は「イカリエ-XB1」に通じるものを感じた。こちらも音楽が魅力的。

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そして禁止された言語というのが興味深い。
それを語るのがレジスタンスか。
政府はその言語を固く禁じている。
端から皆にスパイ扱いされている女性クララと整形手術でニコライの代わりに入り込んだ男がレジスタンスのスパイのようだ。
ニコライ(偽)は誰からも疑われていないが、クララは何故か周りの迫害からオルムが庇い続ける。
スパイとは言え、特に何をやるでもない(恐らく大統領が見つからなければ任務も果たせないのか)。
楽団の演奏がとても印象的。

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快適な地下ホテルの環境が次第に崩壊してゆく。それに従い不穏な空気が濃くなってゆく。
これが時間の流れを表していた。
いくらプール付き高級なホテルであろうと地下に幽閉されているようなものである。入れても外には出られない作りのようだ。
そこにずっと留まっているとなれば鬱積して精神的なストレスはいやが上にも高まるというもの。
こういう場で何より肝心なのは、外界に関する新しい情報である。
これがあれば、何処かに閉じこもっていても生命~精神にとって不可欠な代謝が保たれるが、ここでは電話、テレビが使えない。
時折ブラウン管テレビが一方的に何らかの情報めいたものを映し出しはするが、、、
今地上がどうなっているのか、闘いの勝利はどちらに傾いているのか関心事が掴めずストレスフルになるだけ。

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中盤以降は天井や壁が崩れ、異様な音が響き渡り、気温が急速に下がり、水道の蛇口からは真っ黒なタールみたいなものが出て来る。
もうこうなると終末観や破滅感情が溢出する。
誰もが打ちのめされた気持ちになりパニックも引き起こす。
そして何故大統領はいないのかと叫ぶ者も、、、。
何故かオルムの会社の製造したジェットモグラがホテルの壁を突き破って侵入する。
これに乗って皆逃げるのかと思ったらそうでもなかった(この巨大モグラが何の役なのか不明)。

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確かに大統領執務室に入れたが、当の大統領は不在のまま。
彼らは完全に見捨てられた気持ちになる。
ニコライ(偽)はピストルで要人たちを撃ち自殺をする。
オルムは頭を撃たれたが、クララをタイミングよく逃がす。
そこで彼女は大統領に逢い、彼から禁じられた言語で上の同志に向けたメッセージの伝言を頼まれる。
彼に助けられ地上に戻ることとなったが、彼女は何故自分を救うのか尋ねると、大統領は「君は新しい世界の人間で、下にいる旧世界の人間は滅ぶしかないのだ」と述べる。
地上に出ると、何とオリジナルオルムが運転手として彼女を迎える(どうやら地下ホテルのオルムはアンドロイド)。

結局、旧世界の人間が淘汰され新世界の人間が地上を支配するということか。
言語も変わるのだ。

何と言うか癖になる映画かも。観る価値あり。
きっとカルト人気の高い作品だと思う。



AmazonPrimeにて





おろかもの

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Me & My Brother’s Mistress
2019

芳賀俊、鈴木祥 監督
沼田真隆 脚本

笠松七海、、、高城洋子(女子高生)
村田唯、、、深津美沙(健治の愛人)
イワゴウサトシ、、、高城健治(洋子の兄)
猫目はち、、、榊果歩(健治の結婚相手)
葉媚、、、小梅(洋子の親友)
広木健太、、、倉木宗介(健治の先輩、友人)


まさに「わたしと兄の愛人」の物語である。そのまんま。「おろかもの」というのは兄のことか。ホントへたれだし。

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自主製作ポイ映画であるが、とても面白かった。賞もたくさん取った話題作らしい。
とても感覚的に分かる映画である。
であるため、観る苦痛がなく、心地よく鑑賞出来た。
高城洋子と深津美沙の関係性が微妙でその変化の過程が素敵。
シスターフッドムービーとか言われてるそうだが、こういうの新鮮で良いと思う。

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女子が絡むとジトジトする噺はやはり多いが、これは至って爽やかである。
女子高生洋子と兄の愛人美沙の相性が良いみたい。
ここに出て来る男は皆ヘタレだが、女性はなかなかのもの。
洋子は利発で独特の個性があり、親友も回転が速い。愛人の美沙も魅力的な人だ。
兄の結婚相手の榊果歩はブレない意志をもった包容力のある頼れる人で、到底美沙の叶う相手ではない。
それに比べ何と言っても兄の健治のだらしないこと。しかしその優柔不断のだらしなさがモテる一因にもなっているようだ。
浮気ばかりして妹をはじめ周りは呆れかえるが、何故か不思議に憎まれない得な性格である。

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その困ったヘタレ兄貴を軸に愛人と妹が奮闘する形で物語は進展する。
最初は単なる兄の浮気相手として洋子は美沙に強く当たるが、噺をしてゆくうちに兄の不甲斐なさと愛人の気持ちに同情が生じる。
時にそれぞれのエゴがぶつかり批判し合ったり、相手に共感したり、協力し合ったり、、、その過程が自然な流れなのだ。
面白かったのは、洋子が進路の三者面談に果歩ではなく美沙を義理の姉として同伴するところ。
もうかなり感情移入してしまっている。美沙も大真面目に保護者として語っていた(笑。

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兄の浮気を果歩にバラしてみたり、結婚式を当日滅茶苦茶にする計画まで愛人・妹のタッグで立てるに至るが、兄が本気で結婚相手を愛していることを知り、とりやめになる。
結局妹としては、もうこれ以上美沙に傷ついて欲しくないと願い、結婚式に赤いドレスで登場した彼女の手を取り式場から脱走する。
赤いドレスと青いドレスの女子がずっと手を繋いで走り、立ち止まったところで、お腹空いた。何食べます。中華。である。
美沙と洋子が仲良く去ってゆきエンドロール。
撮影~演出もとても的確に思えた。

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しかしヒロインのひとり高城洋子の表情の大きく変わる特異な顔芸は印象的だった。
この映画にはぴったりのヒロインであったが。
ピッタリと言えば、洋子の兄の結婚相手である果歩は願っても無い相手であることは間違いあるまい。
健治に浮気の隙を与えない人だ。
この先何があっても、家庭をしっかり守るはず(笑。
村田唯の愛人の立ち位置という寄る辺ない憂いの表情も果歩と好対照で際立っていた。

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これから先も洋子と美沙はしっかり者の妹とちょと甘えん坊の姉みたいに仲良くして行けるだろう。


後味が良いので何も言うことなし。




AmazonPrimeにて









”Bon voyage.”



金沢国立工芸館「ポケモン×工芸展」6月11日まで。人間国宝の実力派作家たちが新たな解釈でポケモンを創造。

金沢城公園、兼六園、金沢城、ひがし茶屋街、近江市場も直ぐ近く。
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