何者

2016
三浦大輔 監督・脚本
朝井リョウ 原作
中田ヤスタカ 音楽
佐藤健、、、二宮拓人
有村架純、、、田名部瑞月
二階堂ふみ、、、小早川理香
菅田将暉、、、神谷光太郎
岡田将生、、、宮本隆良
山田孝之、、、サワ先輩
凄い豪華キャストに驚く。
ここまで有名どころを出すか、という感じだが、流石に安定している。
何の心配もなく観られる(笑。

Twitterというネットツールは、どのようにもなる。
赤の他人にとっては匿名で箍の外れたことが言えてしまう。
知人であれば容易にアカウントがバレる可能性大で、そういった人を批判する場合、危険である。
それと絡み葛藤しながら就活に臨む大学生の物語である。
面接で、あなたは「何者」かが問われるという。
(ホントか?わたしはそんな経験はない。何者か、なんて、、、実存主義者に問うことではないわ(爆)。
どの企業でもそうではないと思うが、似たような心構えでも確認されるのか、、、?

ツイッターが今激動しているところだが、この手のSNSの影響力は小さくない。
戦争の行方すら左右する(ウクライナVSロシアに見える新たな戦争形体だ)。
市場の動向は以前から情報戦如何であるし。
田名部瑞月が二宮拓人の(気色悪い)裏ツウィートを見ていながら、それに対し直接批判はせず、彼のかつての演劇の脚本が好きだと微笑んで謂うところ、素晴らしい。周りが内定を貰ってゆく中、独り何処にも受からず、猶更周りを扱き下ろして自分を守ろうとするドツボに嵌るところで、この救済力は大きい。前から好意を寄せている女性でもあったから。

匿名で出来るため(知人であればメールアドレスからアカウントは検索可能だが)容易に人~他者を貶め足を引っ張ることはやり放題。そういう人間で巷~SNSは溢れかえってもいる。
彼は基本的に虚勢を張って人を批判し自分を守るタイプであり、神谷光太郎も似ている。その彼女でもある小早川理香もその姿勢に批判的だが自分も同じ穴のムジナであることに気づいている。知っている分、悲しい。
(但し、拓人の場合、裏垢でやっている分、当人たちには知られずに自己満足だけで済むレベルのものではあるが)。
二宮拓人は小早川理香からのもっともな強い批判に自己解体し、田名部瑞月の観音菩薩のような包容力により裸の自分を受け止める自己肯定感を得る。
そして、人が生き直す姿は美しい。
変な虚勢、自己欺瞞は打ち砕かれた方が良い。
宮本隆良は、田名部瑞に完膚なきまでにやられる(日頃、優しくおっとりした女性だと効き目は凄い)。
自己解体~再編成した隆良は、すっきりした表情で地に足をつけた行動を選ぶ。
愛ある叱責は実を結ぶのだ(だが言う方も覚悟が必要で、とてもキツイ)。

承認欲求は誰もが持っている。
とても率直で自己防衛をせず飾らない神谷光太郎は友達や女の子にもてて、就活でも希望の出版社の内定を貰う。
(彼は拓人が密かに思いを寄せていた瑞月からの告白を二度も退け、翻訳家を目指し海外留学した憧れの彼女との再会を夢見ている。その点で絶対にブレない軸を持つ。有村架純から言い寄られて断るのだ!いい加減そうに見えて一番しっかりしている?)
その彼が拓人にボソッと謂うには、内定貰うと全てが受け容れられたような気持になる、裏を返せば落とされたら全否定された気持ちになろう。

まだ二十歳かそこらで、残酷な経験ではある。
しかも「君は何者か?」なのだ。わたしは、こんな状況になったら茶化さずにはいられまい。アホクサイ。一生何者でもない。
その都度、何らかの役割は熟さざるを得ないが、何者かに固定されたらたまったものではない。断じて受け容れない。
しかしここでの彼らは何者たらんと真面目に考え取り組む。だが答えが出るわけでもないし、自己欺瞞に陥るほど偽善者でもない。
ただ、自分にとって誠実に歩む方向性は大事である。
拓人の親友であった演劇を只管やり続け就活など絶対にしない男もいるのだ。周りが彼の孤独な活動を徐々に認め始めている。

あるべき自分で臨めた拓人の最後の面接は良かった。
一分間では語り切れません、と述べていたが、100分あっても所詮無理。
しかし一分間のその人の断片があれば見る人が見れば充分とも謂える。
結果がどうであろうと人として彼はもう大丈夫だ。
就活でいろいろと葛藤して悩んでいる人は観て損は無いと思う。
AmazonPrimeにて