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GOMA28

Author:GOMA28
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バイオハザードIV アフターライフ

Afterlife001.png

Resident Evil: Afterlife
2010
アメリカ、イギリス、ドイツ

ポール・W・S・アンダーソン 監督・脚本・製作
トムアンドアンディ 音楽


ミラ・ジョヴォヴィッチ、、、アリス・アバーナシー
アリ・ラーター、、、クレア・レッドフィールド(アリスの友人、デバイスでレッドクイーンに操られる)
ウェントワース・ミラー、、、クリス・レッドフィールド(ロサンゼルスの刑務所生存者、クレアの兄)
ボリス・コジョー、、、ルーサー・ウェスト(ロサンゼルスの刑務所生存者、元NBAのスター選手)
キム・コーツ、、、ベネット・シンクレア(ロサンゼルスの刑務所生存者、元映画プロデューサー)
ノーマン・ヤン、、、キム・ヤン(ロサンゼルスの刑務所生存者、ベネットの部下)
ケイシー・バーンフィールド、、、クリスタル・ウォーターズ(ロサンゼルスの刑務所生存者、料理担当)
セルヒオ・ペリス=メンチェータ、、、エンジェル・オーティス(ロサンゼルスの刑務所生存者、技術作業担当)
ショーン・ロバーツ、、、アルバート・ウェスカー(アンブレラ社上級幹部)
シエンナ・ギロリー、、、ジル・バレンタイン(元S.T.A.R.S.隊員、アリスの友人、デバイスでレッドクイーンに操られる)
スペンサー・ロック、、、Kマート
クローンアリス
中島美嘉、、、日本第一感染者


監督は1作目の監督に戻り、舞台はいきなり雨の降る夜の東京渋谷交差点から始まる。
傘も差さずに交差点の中程に立ち止まる中島美嘉の横顔。そこに近づくサラリーマン。牙を剥き襲い掛かる。
スローモーションが多用されシーンの速度の緩急による印象も深い。
これ名シーンかも。

Afterlife000.jpg

今作はまた更にオドロオドロしいクリーチャーが出て来て愉しませてくれる。
これまでのケルベロスと違い、顔が花弁みたいに割れて襲ってくるものとか、袋を被り断頭斧を振り回す巨漢のクリーチャーなど獰猛な破壊力もスケールも増している。ゲームと呼応した関係なのだろうが。
中島美嘉もアリスと闘う栄誉に輝く。良かったねと謂いたい。

Afterlife002.jpg

アリスが前作で宣戦布告したアンブレラ社をクローンと共に急襲するのだが、、、。
何と本社が渋谷の地下だと。途轍もない巨大建造物がホントに地下にあったら、たまったもんじゃない。
クローンはアリスと同等の戦闘能力を持ち、日本人社員はどんどん倒されてゆく。
ジャケットの背中の文字がカタカナの「アンブレラ」だ。ちょっとダサいぞ。
これでは、Tウィルス投与でアリス並みの戦闘能力を持つウェスカーくらいしか歯が立たない。
本社は壊滅状態にされ、またもや核で気前よく証拠隠滅~施設廃棄とくる。ウェスカーがヘリで逃げた直後に爆破である。
核では渋谷もろとも消滅であろう。クローンアリスも参加者は全員死亡に違いない。
ただし、オリジナルアリスはウェスカーのヘリに乗り込んでいた。
ここで、アリスはTウィルスの血清を注射され、獲得していた超能力を失う。
このゴタゴタを操縦もせずやっていた為、ヘリは墜落で吹き飛ぶことに。まあアリスもウェスカーもこの程度では死なないが。

Afterlife003.jpg

この一件の後、アリスはアラスカを訪問。例のアルカディアを探す旅を孤独に続ける。
展開が極端で派手である。景色がガラッと変わり、これなら飽きない(笑。
ここで旧友クレア・レッドフィールドと再会を果たす。
だが彼女の胸には如何にもといったデヴァイスがくっついている。誰が見てもそれはヤバいものと分かるこれ見よがしの装置である。それによって彼女が操られているのは一目瞭然であり、それを外せば何とかなるのも分かる(分かり易いことは良い)。
そして正気になり記憶が少しずつ戻りかけたクレアと共に、セスナでロスに向かう。結構楽しそう。
ずっと一人旅であったから、お仲間がいることは、こころ強い。
するとビルの屋上に人影が、、、。
刑務所に隠れた生存者発見である。狭い屋上に強制着陸だ。カッコ良いが一番カッコよかったのは、花形プロバスケ選手ルーサー・ウェストである。セスナが止まり切らずに落ちそうなところを尾翼にジャンプし機体を屋上に残した。流石はNBA!
ここでアリスは、アルカディアが船の事だと知らされた。クレアは、兄と再会する。だがまだ記憶の回復は途上であり、すんなり受け入れられる状況ではなかった。しかし戦闘力は以前のままで頼もしい見方である。

Afterlife004.jpg

結局、アラスカにアルカディアという非汚染地帯がありそこで人々が平和に過ごしているという情報は、この船に生存者を集める為のウェスカーの罠であったことを知る。
何とTウィルスを投与することで彼もアンデットになる可能性をもっており、それを防ぐために人間のDNAを採取していたと。
ふざけたやつだ。Tウィルスに適合するのはアリスだけのよう。そのDNAを今欲しがっているのか。
ここで捕らえられ冷凍保存カプセルに入れられていたKマートとも再会し、彼女に肝心な時に助けてもらう。
(その後、彼女がどうなったか追えなかった。ちょっとそれが残念)。
生存者がこの船に2000人くらいいたようだ。

痛快なのは、アリスたちにやっつけられたウェスカーが子分になったベネットを捕食して蘇りヘリで逃げるが、今度は自分がアルカディアに仕掛けたと思っていた爆薬がそのヘリに仕掛けられていたことに気付くところ。
この映画で二度目のヘリでの爆死と、渋谷は成功したが、こちらでアリスのリベンジに遭ってしまう。ざまあである(爆。

Afterlife006.jpg

そしてアルカディアに向って来る夥しい軍用ヘリ。
これまた戦闘力の高い旧友ジル・バレンタインが例のガジェットを胸に付けて司令官として襲ってくるではないか。
レッドクイーンに操られているのだ。アンブレラはこの超人工頭脳に乗っ取られたようである。
主要なメンツが集まっては来るが、このシリーズ主役級でもなかなか生き残れない。
怒涛の一難去ってまた一難である。観ている方まで疲れる。

さてこの闘いどうなったっけ。やはりこちらも記憶喪失である。
いよいよ第5章へ。大詰めとなる。

Afterlife005.jpg


どうもこういったエンターテイメント映画は、観た直後に忘れている。
その時だけの刺激で後に残らない。
それで良いのだろうが何とも言えない。
観る意味において、、、。





Wowowにて










バイオハザードIII

Extinction001.jpg

Resident Evil: Extinction
2007
アメリカ、イギリス、ドイツ

ラッセル・マルケイ 監督
ポール・W・S・アンダーソン 脚本・製作
チャーリー・クロウザー 音楽


ミラ・ジョヴォヴィッチ、、、アリス・アバーナシー(元アンブレラ社特殊部隊員)
アリ・ラーター、、、クレア・レッドフィールド(「クレア車団」のリーダー)
オデッド・フェール、、、カルロス・オリヴェイラ(元アンブレラ社バイオハザード対策部隊長)
スペンサー・ロック、、、Kマート(クレア車団の一員、14歳)
マイク・エップス、、、ロイド・ジェファーソン・ウェイド(カルロスと共にクレア車団に入って行動する)
アシャンティ、、、ベティ・グリア(クレア車団の一員、救護担当)
クリストファー・イーガン、、、マイケル・ファーバー(クレア車団の一員、IT担当)
リンデン・アシュビー、、、チェイス・マラヴォイ(クレア車団の一員、物資管理担当)
イアン・グレン、、、サミュエル・アイザックス博士(アンブレラ社北米支部科学部門ヘッド)
マシュー・マースデン、、、アレクサンダー・スレイター(アンブレラ社科学部門部長)
マデリン・キャロル、、、ホワイト・クイーン(レッド・クイーンの妹、超人工知能)
アリスクローン(アリス計画の過程で作られたアリスの大量のクローン)


シリーズ3作目。
今回はやたらとアリスの血液から生まれたクローンアリスが出て来る(クローンの場合胎児から始まらなくてはならないが、どうやらアリスの年齢から生まれているみたい。あり得ない)。
監視されている自分といると危険ということで独り離れたが、カルロスとロイドと再会することに、、、。
砂漠の旅団みたいな人々と行動を共にするアリス。
超能力を使って二次感染カラスの急襲から彼らを守ることによりアンブレラ社の人工衛星に発見されてしまう。
Tウィルスは世界中に広がり続け、自然も破壊され、多くの土地が荒廃し砂漠化していた。

Extinction002.jpg

ホラー要素もあるサバイバルアクションのシーンとしてはやはり暗い空間の方が演出面でもやり易いと思うが、昼間の砂漠での攻防が繰り広げられる。
ホラーテイストは抑えられるが、その分アクションは観易い(暗いと何やってるのか分らぬことが多い)。
逆に言えば、暗ければ何やらごたごた見せて居ればそれなりに映るところ、しっかりディテールまで作り込まなければならない。
アクションも手は抜けない。

Extinction005.jpg

その点、とてもしっかり出来ていた。
この砂漠の死闘を見ていて、その緊張感から、よく出来た西部劇を思い浮かべた。
後半はラスベガスの砂漠で動きの素早い狂暴極まりないゾンビと死闘を繰り広げるが、、、とても似ているのだ。
(どこでそうなったのか知らないが、アリスは実験にかけられたとき、人工衛星上からシャットダウン出来るようにチップでも埋め込まれたのか、そんなシーンがありロボットでもないのに、とびっくりした)。

Extinction003.jpg

この映画前回の終りからするとガラッと変わった画面のトーンで始まるが、風景自体が荒涼としていて他の映画みたいだ。
生存者は荒廃した地を基本的に移動し続けることでしか生き残れない形となっていた。
一所に留まるとアンデッドの集団にやられてしまう。確かにそうだろう。
生存者は皆、水や食料、ガソリンを求めて彷徨う砂漠の放浪者と言える。
それでも連帯を求め、ラジオで生存者に呼びかけを続ける者もいるが、それを逆に悪事に利用するゴロツキもいた。
(ゾンビより悪質な生存者も当然いるということだ。こうした糞輩は他のサバイバルものにも必ず出て来る)。
そして面白いのは、サミュエル・アイザックス博士の観察により、アンデッドは肉への欲求はあるが、栄養は必要としないことが分かり、この形だけの食欲を抑制出来たら飼い慣らしが可能であると。つまり都合の良い労働力に変換出来るというものだ。
こんな糞輩を見ていると、やはり全的崩壊こそが善であると思う。

Extinction004.jpg

アラスカに感染が届いていないのでは、というアリスの拾った資料による推測から「クレア車団」はヘリでアラスカを目指す。
アリスは独り残り、宿敵?サミュエル・アイザックス博士との決戦に挑む。
(直前に旧友カルロス・オリヴェイラが全員がヘリに乗れるようにゾンビを蹴散らし道を開けるため、タンクローリーで爆死している)。
サミュエル博士はオリジナルアリスのDNAと血液が実験に不可欠ということで人工衛星を使い彼女の居所は突き止めるが、頭が良いのか悪いのかよく分からない結構雑な行動によりゾンビに噛まれる。
そして過剰な抗体投与により彼は残忍なクリーチャーへと変身する(変身前も残忍だったが)。アリスは地下研究施設で、このアリス同様の力を使う変身博士と闘い苦戦するが、クローンアリスに助けられ例のレーザーグリッドで勝利を収める。
ここでは最初の映画に出て来た超人工頭脳レッド・クイーンの妹のホワイト・クイーンも現れるが、どちらかと言えばアリス側と言える立ち位置であった。単にサミュエルが邪魔になったというだけかも知れぬが。

Extinction006.jpg

何やらアンブレラ社は東京の地下に本社があるようだ(もう忘れてしまってたが)。
最後に、アリスがホログラフィで東京本社に喧嘩を売る。

さてこの次どうなったか、さっぱり覚えてない(笑。




Wowowにて










バイオハザード2 アポカリプス

Apocalypse001.png

Resident Evil: Apocalypse
2004
アメリカ、イギリス、ドイツ

アレクサンダー・ウィット 監督
ポール・W・S・アンダーソン 脚本・製作
ジェフ・ダナ 音楽


ミラ・ジョヴォヴィッチ、、、アリス・アバーナシー(Tウィルス投与により更にパワーアップ)
エリック・メビウス、、、マット・アディソン(ネメシスに改造される)
シエンナ・ギロリー、、、ジル・バレンタイン(特殊部隊S.T.A.R.Sの隊員)
ラズ・アドティ、、、ペイトン・ウェルズ(ジルの上司隊員)
デイブ・ニコラス、、、ライアン・ヘンダーソン(特殊部隊S.T.A.R.S.の隊長兼ラクーンシティ警察の署長)
マイク・エップス、、、ロイド・ジェファーソン・ウェイド(民間人、アリスたちと行動を共にする)
サンドリーヌ・ホルト、、、テリ・モラレス(女性ニュースキャスター)
ソフィー・ヴァヴァサー、、、アンジェラ・アシュフォード(チャールズの娘、Tウィルスにより筋ジス治療)
オデッド・フェール、、、カルロス・オリヴェイラ(バイオハザード対策部隊U.B.C.S.の隊長)
ザック・ウォード、、、ニコライ・ジノビエフ(U.B.C.S.の軍曹)
トーマス・クレッチマン、、、ティモシー・ケイン(ラクーンシティ隔離部隊指揮官およびCSA少佐)
ジャレッド・ハリス、、、チャールズ・アシュフォード博士(T-ウィルス開発者、研究成果をアンブレラ社に奪われる)
イアン・グレン、、、サミュエル・アイザックス博士(アンブレラ社科学部門ヘッド)


バイオハザード」の続編である。
更に充実。エンターテイメントとして、よく出来ている。
脚本が良い。

Apocalypse005.jpg

アポカリプスって「アリス計画」にかけているのか。
最後の救世主来るみたいな、、、
そうか、前作で何で外の都市に漏れたのかそれが今一つ謎だったのだが、アンブレラ社の特殊部隊が再度ハイブに入り調査をしたところで、中のゾンビに襲われその高濃度汚染空気が一気に外界に放出されてしまったのか。
その後、捕らえられ実験にかけられていたアリスが外に出たらラクーンシティが、ああなっていたわけね。

Apocalypse002.jpg

印象的なシーンも多く、よく出来たサバイバルアクションホラーだ。
本作もかなりドキドキする怖いシーンとアリスのスタイリッシュなアクションである。
まずは夜の教会である。そこに何と3体もリッカーが潜んでいて襲い掛かかって来るのだ。
リッカーは一体でも強力であり、3体一緒となるとアリスでないと倒せない。
絶妙なタイミングで教会のステンドグラスをバイクで破って乗り込むアリスが素敵。その後のピタゴラスウィッチ的銃さばきも。

Apocalypse004.png

アンジェラが身を隠す学校には、ケルベロスも出て来るし普通の人間では、なかなか太刀打ち出来ない。
他のゾンビは夥しい数で来る怖さであり、キャスターのテリも小学生のゾンビに囲まれ殺されるが、この猛スピードで襲い掛かるところが、もうひとつの肝である。生々しい姿が実に禍々しい。怖いと謂うより生理的な気持ち悪さだ。
テリは自分が殺されるビデオが撮れ、それに証言も入れてジルとカルロスがメディアに訴えるがアンブレラ社に逆に情報操作され、虚偽罪で追われる身に。

Apocalypse006.jpg

今回は、アリスの妹分的なジルが似たようなアクションスタイルと性格で頑張る。
新たな相棒になれそうな器のカルロスとも邂逅する。
Tウィルスを開発した博士が登場するが、そのウイルスは娘の筋ジスを治療するために作ったものなのだった。
それを奪い悪用したのがアンブレラ社であった。更に見せしめにケイン少佐は娘の前で博士を銃殺する。
ネメシスとの闘いをアリスが拒んだためだ。他の仲間を守る為、彼女は闘いを決心するが。
実験計画の成果を少佐は、確認したいのだ。生体変異せずにウィルスを取り込む彼女の体質に彼は瞠目する。

Apocalypse007.jpeg

このビルの屋上でのアリス対ネメシスのバトルが、今回の目玉である。
ネメシスは圧倒的な強さで、まさに生物兵器の完成形と言った姿。
勿論、その前からの市街での戦いは経験してきており、超ド級な重量感と破壊力と速度は凄まじいものであった。
互いに動きは互角ではあるがいつになく苦戦を強いられるアリス。しかし辛くもネメシスを追い詰めることに成功する。
その間、彼女の脳裏では、ハイブの出口で引き離されたマット・アディソンの姿がフラッシュバックしていた。
彼こそが「ネメシス計画」で改造されたモンスターであったのだ。
アリスとネメシス~マットが闘いの終盤でお互いにそれに気づき、アリスは彼に詫びて闘いを放棄する。
襲って来るCSA少佐の残る部隊をネメシスとアリスが協力して叩き潰してゆく。

Apocalypse003.jpg

そして敵のヘリを奪いケイン少佐をゾンビの群れに蹴落としラクーンシティを脱出する。
だがそのすぐ後にウイルス漏洩の証拠を消す為、アンブレラ社の核ミサイルがシティそのものを抹消させるのだった。
その衝撃葉波を喰らい乗っていたヘリはコントロールを失って墜落。アリスはアンジェラを庇い重傷を負う。
(アンブレラ社はすかさず原子炉のメルトダウンの為だと情報を流し、素早い対応策を示し世の賞賛を得る)。
現場に独り残されたアリスを救出したサミュエル・アイザックス博士は、彼女に更なるTウィルスを投与して「アリス計画」を実行に移す準備にかかる。だがアリスは想定以上の回復力と戦闘能力の増強を示し、研究室でこれまでにない力で暴れ脱出する。そこへ新たなチームとなった3人~ジルとカルロスと運転手としてロイドが特殊部隊員として迎えに来る。そこにはアンジェラの姿も。

さて、Ⅲが楽しみとなる。

ともかく基本はファッショナブルなミラ・ジョヴォヴィッチのバトルアクションを観る映画であろう。





Wowowにて





コンプリートパック





バイオハザード

Resident Evil000

Resident Evil
アメリカ・イギリス・ドイツ
2002

ポール・W・S・アンダーソン 監督・脚本
カプコン『バイオハザード』原作
マリリン・マンソン、マルコ・ベルトラミ 音楽

ミラ・ジョヴォヴィッチ、、、アリス・アバーナシー(アンブレラ社特殊工作員)
エリック・メビウス、、、マット・アディソン(環境保護活動家)
ハイケ・マカチュ、、、リサ・アディソン(マットの妹、環境保護活動家、アンブレラ社に潜入)
ジェームズ・ピュアフォイ、、、スペンサー・パークス(アンブレラ社の特殊工作員、アリスと偽装結婚)
コリン・サーモン、、、ジェームス・P・シェイド(アンブレラ社特殊部隊隊長)
ミシェル・ロドリゲス、、、レイン・オカンポ(アンブレラ社特殊部隊女性隊員)
マーティン・クルーズ、、、チャド・カプラン(アンブレラ社特殊部隊隊員、IT担当)
パスクエール・アリアルディ、、、J.D.サリナス(アンブレラ社特殊部隊隊員)


Wowowでシリーズ全作品を放映し始めているため観てみた。懐かしい。ミラ・ジョヴォヴィッチ若い。
恐らく書いていると思っていたら、以前、見ただけであったようだ。
まあ、その時分はブログもやっていなかったし。
ゲームも一切やっていない。

Resident Evil001

デストピア世界観がしっかり分かり、シリーズ第一章として文句なし
後の映画に与えた影響もあちこちに散見され(レーザーグリッド等)、今観ても渋いが安定した滑り出しだと思う。

アンブレラ・コーポレーションみたいな企業はあってもおかしくないが、こんな巨大資本が可能となる国となると限られるな。
全米最大の企業というのも頷ける。資金力と政治力がモノを言う。
“ハイブ”という地下の巨大研究施設で秘密裏にバイオ兵器の研究・開発をしている、なんて如何にも悪の権化みたいな組織である。

それに目を付けたのが環境保護活動家の組織と、T-ウィルスを奪って高く売りつけ大金を稼ごうという内部の裏切り者であった。
その金に目のくらんだ裏切り者が、T-ウィルスを地下研究所に撒き散らし地上に出ようとするが、超人工知能”レッド・クイーン”により研究所が完全閉鎖され、研究員は全員殺傷処分される。T-ウィルスを奪ってアンブレラ社の暗躍を世に知らしめんとした活動員もこの事件で命を落とす。社としてはウイルスは空気感染もすることで、外部に情報が一切出ないようにすることが原則である。
(”レッド・クイーン”の管理力がそれほど冷酷とも言えず、ボードを引き抜かれたり、またアリスに戻され再起動し、彼女らが助かるヒントを与えたり、微妙な超人工知能ではあった)。

Resident Evil002

社の特殊部隊にアリスとスペンサーは記憶喪失で発見されるが、死んでから蘇る研究員や犬のゾンビたちから逃げるうちに徐々に記憶が戻って来る。
夥しいゾンビとの闘いに関しては、わたしとしては些か食傷気味であり、面白くはない。
この映画以降も嫌という程ゾンビ映画は作られている(何でこんなにゾンビ好きなのか)。
アリスはスペンサーと共に行動する中で、急性の記憶喪失から覚め、自分たちがハイブの入り口を守る館で偽装の夫婦としてアンブレラ社の仕事をしていたことを思い出す。そして金儲けのためにバイオハザードの大惨事を引き起こした元凶こそスペンサーであることを知る。

Resident Evil003

最初研究所に入ったときは死体だらけであったのに、きれいさっぱりそれらがなくなっていることで、恐怖と不安に突き落とされることはよく分かる。
皆、リヴィングデッドとして襲い掛かって来るのだ。この辺、上手い。
そして寄ってたかって食われてしまうのはまだしも、レインは腕を噛まれ、ゾンビ化するのを不安と恐れの中で待つこととなる。
これがやはりゾンビものでは、一番辛い事。
一方アリスは記憶の蘇りと共に凄い戦闘能力も覚醒・起動する。三角蹴り一撃で犬ゾンビであるケルベロスを倒す。
ミラ・ジョヴォヴィッチのファッション共々、戦闘シーンがやたらとカッコよく、ほとんど汚れもなく涼しい顔をしているところが、そういう映画なんだと思い知らされるところ(笑。
そこにばかり目が向くが、終盤の貨車に乗り込んで脱出するシーンからスリル的には圧巻と言える。

演出面で幾つも上手いと思うところがあったが、特にアリスが”レッド・クイーン”に反逆しモニタを壊したと同時のタイミングでチャドが”レッド・クイーン”を過電流で停止させたり、ついにゾンビ化したレインを撃ち殺して倒れた先に開閉スウィッチが押され、貨車の床の扉が開きリッカー(T-ウィルスによって作られたモンスター)を貨車と線路の間に挟み焼き殺すところなど、見事な流れ。

結局、外に独り出られたアリスが目撃したのは、ウイルスのパンデミックで廃墟化した街であった。
ちょっと早すぎという感じであったが、、、。

ともかくアリス中心のアクションが決まっていた。
折角だからWowowで全部見直したい。このシリーズは何も記事は書いていないようだし、備忘録のつもりで。



Wowowにて





コンプリートパック:6作全て入っている。





HOMESTAY (ホームステイ)

HOMESTAY000.jpg

2022

瀬田なつき 監督
菅野友恵、大浦光太 脚本
森絵都「カラフル」原作
mio-sotido 音楽
ずっと真夜中でいいのに。「袖のキルト」主題歌

長尾謙杜、、、シロ/小林真(真の体にホームステイした魂)
山田杏奈、、、藤枝晶(真の幼なじみ)
八木莉可子、、、高坂美月(真の高校の先輩)
濱田岳、、、管理人(シロにホームステイ先を告げる人物)
石田ひかり、、、小林早苗(真の母、カフェレストラン勤め)
望月歩、、、小林満(真の兄、法曹界を目指す)
佐々木蔵之介、、、小林治(真の父)


山田杏奈のいつもの破壊力はちょっと影を潜めていたが、まあそういう役だし、、、とても普通な。
だけど些か物足りなさはあった。
次作に期待しよう。彼女に対してはやたらとハードルを上げてしまう(爆。

HOMESTAY003.jpg

八木莉可子の演技は初めて観た。
本人に合った役柄だなあ、とは思ったが、微妙な立ち位置の女子であったな。

長尾謙杜はジャニーズの若手タレントらしい演技であった。
素直な雰囲気には好感が持てる。

HOMESTAY001.jpg

輪廻も転生も早々消え去るべき概念であるが、この生(受肉)が魂のホームステイという表現はしっくりする。
このほんの一時に何を経験するか、認識するか、であろう。
その情報だけが自分~魂として蒸発せずに保存されるものであろうし。

兄の満が、「お前はその目で一体何を観て来たんだ」と叫ぶところがある。
まさにそこだ。どういう情報を得たのか、に尽きる。
多様性~個性がカラフルな色で現わされるが、単に個々の色を認め合うというだけでなく、青に赤が重なったときの紫にも注目しなければならない。いや紫が実は赤と青の重なった色であったことにも気づくこと。
個々の個性という形でスタティックに見るだけでなく、絶えず関係性~相互作用の過程の内に様々な様相を認めてゆくことである。

HOMESTAY002.jpg

思春期は承認要求ばかりが強く視野狭窄に陥り易い。一面の真理と言えばそれまでだが。余りに貧しい。
絵を描いている真がこのような表層的人間関係で追い込まれるというのは考えにくいのだが、失恋は絶望に短絡する面は大きいか。そのショックで全的崩壊も確かに有り得る。それで自殺する詩人などもいるし。
信じていたり頼っている身近な人間が自分の期待を裏切る(裏切ったと思い込む)と、もう極端に振れてしまう。
カラフルであった色彩が無彩色のグラデーションになってしまう。
自分で自分を追い込む。悪循環の果てに、、、

HOMESTAY006.jpg

誰も自分を見てくれない、誰も自分を気にしてくれない、、、幼馴染の晶は常に寄り添っていてくれたのでは。
一緒に映っている写真が沢山あったのに。彼女との花火大会は何であったのか、、、(羨ましい(笑)。身近過ぎて無意識になってしまう面はある。(山田杏奈が傍にいて気づかぬアホはいないと思うが)。
美月先輩も彼を認めていたのは間違いない。気持ちの色合いが異なっただけである(恋愛対象が女子であったに過ぎない)。
人間関係はこの微妙な色合いの違いとそのアンサンブルを愉しむものでもある。最後の彼らのマスゲームの発表のように。
そして家族である。兄も母も父もそれぞれの気持ちで気遣っており、ないがしろになどしていたわけではなかった。
ただ、正面から向き合い、ありったけのことばで気持ちを伝えあうことからは逃げていた面は確か。
(これが皆に出来ていれば、真の自殺はなかったはず)。
母の事故を機に、小林家ははっきり各自の色を認め合う姿勢は整う。

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シロは真を客観視する役目と言える。誠は実は愛されていたということを認識するための。
妙な管理人は砂時計とクイズ(何故、真が死んだのか)で、シロが他人事としてお気軽に真の身体にステイして過ごすことを禁じる。
面白い仕掛けだが、文化祭の発表とも同期してとてもテンポよく展開する(上手い!)
もうひとつ面白いのが乗り移ったシロが真の才能~身体性をそのまま引き継ぐこと。これはこのような魂の入り込みが可能であればこの通りであると考える。才能~技量は身体側に大きな比重を持つ。だから運動神経など猶更そうである。

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最後の処がよく分からなかった。
原作をみなければダメなのか?
結局、真に体は返せなかったが、自分~シロは真として生きることが許されたのは、何故なのか。
俺は真だ。俺が真を殺した、という認識は、何処から生じたのか?真として生きるという決意にも取れる。
何であっても真~シロが真として生きている事実が少なくとも彼の家族と晶にとってはこの上ない幸せであり文句はないのだ。
面白かった。



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裏アカ

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2021

加藤卓哉 監督
高田亮、加藤卓哉 脚本

瀧内公美、、、伊藤真知子(アパレルショップ店長)
神尾楓珠、、、ゆーと/原島努(大手デパートの営業)
SUMIRE、、、新堂さやか(後輩のカリスマ店員)
田中要次、、、北村(アパレルメーカーのオーナー)


職場でやり手の後輩に仕事を奪われ、自分の意見など誰も耳を貸さなくなってきた。売り上げも落ちている。
仕事一途でやって来て気が付けば、相応に歳もとっている。あらゆる面で行き詰まり感に襲われた。
焦りと鬱積を晴らすべくSNS上で違う自分になる
Twitterの裏カウントを作りそれにきわどい自分の写真を投稿することでフォロワーが増えてゆきそれにのめり込んでゆく。
承認要求をそれで満たせるものか。
その過程で会いたいという男性と会う。
そこで思い切り自分を解放出来たことは良かった。

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一度切りという約束だったのに、未練があって引き摺る。
所謂、自分の殻を破り、躍進の為の第一歩にするというのではなく、寂しさを紛らわすというより、自分を受けとめ認めてくれる対象が欲しい。あわよくば恋愛対象として、、、という気持ちが膨らむ。
この辺の流れは分かるが、この相手では無理であり、だからと言って惰性で他のDMをよこす有象無象と関係を持っても虚しさが増大するばかりであろう。
最初の出逢いでさっと切り上げるべきであった。
裏の虚構世界に長居は禁物だ。
表で勝負できるチャンスに賭けるためにも。

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ダラダラ続けることで、ドンドン沼に嵌ってゆくし、劣情を刺激しついには大事なところで病的なオタクに足を掬われる。
ここでもやっぱりな、というところで被害に遭う。
折角の大手デパートとのコラボレーション企画で大成功を収めたそのレセプションパーティーでこれである。
大恥どころではない事件である。人目や評価ばかり気にしている人間にはたまったものではない。
この顛末がどうなったのか、はっきり噺の中で描かれていなかったが、普通はヒロインなのにそれなりの処分が下されてしまうだろう。

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「ゆーと」という裏パーソナリティこそ原島努の本質であり、極めて虚無的で退廃的で刹那的な男である。
全てに価値が見いだせない。何をやっても虚しい。
何をやってもそこそこ出来て認められて必要とされてきたが、それが何なんだという感覚。
この「ゆーと」の感覚は良く分かるし、それ自体何も特異なものではない。普通だ。
寧ろ問題なのは、自分が何にも感動出来ない無感覚なところに耐えられず刹那的な衝動に突き動かされ無駄に生きていることである。能力があるなら、そういう自分を形成している社会の構造に目を向けたり、心理学的な追及をしてみたり、哲学的な分析に及んだり、芸術的な昇華・探究を図ったり、自分の事などに囚われず、物理的なレベルからこの世界の本質を見極めようとする方向に進むのも充分ありではないか(勿論何をやるにも何からも中立した思考運動を必要とする)。

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今、何をおいても面白いのは、量子重力理論系の噺である。この話題に首を突っ込む価値は無限大である(無限は否定されたが(笑)。
自分が認められない受け入れられない大事にされない、などという詰まらぬ欲求などに足をとられている場合ではない。
もうどのような感覚も直観も遥かに及ばない世界の実相についての真理が明かされそうなのだ。
地球が平たく静止していて、空を太陽や月が回っていると思っている人間は、流石にいなくてもほぼその感覚で生きている人間がほとんどだと思う。
何とか、身体感覚~認識レベルを理論的に探究・解明された世界の実相に近づけたい。
(日常感覚を超えるのは理論をもってするしかない)。
これはワクワクするワークでもある。


ともかく、下らんことに囚われてる暇などない。
勿体ない。

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この映画で好感を持ち得たのはカリスマ店員の新堂さやかくらい。
後は、好きにしなさい、ってとこ。
SUMIREという女優さんには今後、主演でバリバリやってもらいたい。
リバーズ・エッジ」で観てるけど、もっと出て来てもらいたいものだ。
そういえば、瀧内公美は「 グレイトフルデッド」でハチャメチャの熱演であった。若いころから見ると随分落ち着いた感じになったものだ。
彼女は体当たりの熱演が多いみたいだが、他の映画も観てみたい。

いずれにせよ、わたしって何?とか、本当の自分とは、、、など、もっとも下らん問いである。
内容的には、監督の意図はほぼ達成された作品だと思われるが、その意図・目的自体、わたしにとってはどうでもよい。





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いとみち

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2021

横浜聡子 監督・脚本
越谷オサム 原作
渡邊琢磨 音楽
人間椅子「エデンの少女」主題歌


駒井蓮、、、相馬いと(津軽三味線が特技の女子高生、メイド)
黒川芽以、、、葛西幸子(メイド長、シングルマザー)
横田真悠、、、福士智美(メイド、漫画家を目指す)
中島歩、、、工藤優一郎(津軽メイド珈琲店店長)
古坂大魔王、、、成田太郎(津軽メイド珈琲店オーナー)
宇野祥平、、、青木(津軽メイド珈琲店常連客)
ジョナゴールド、、、伊丸岡早苗(いとの親友)
西川洋子、、、相馬ハツヱ(いとの祖母、いとの津軽三味線の師匠)
豊川悦司、、、相馬耕一(いとの父、文化人類学教授)


青森のメイド珈琲店というところがミソ。
そして、お小遣い欲しさでバイトに入った友達の少ないヒロインと津軽三味線である。
設定がちょっと面白そうで興味を引く。

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いとは他の同級生やメイドの先輩たちが標準語を普通に喋る中、強烈な津軽弁である。
他にこの物語で津軽弁なのは、津軽三味線の師匠である祖母ハツヱ。
このふたりが喋っているとほぼ何言ってるのか分からない。
そういうシーンが所々あるが、噺の粒は分からないが雰囲気で察するくらいの了解は出来る。
いととしては津軽弁がキツイ為、内向的になって独り籠ってしまう部分が大きいようだ。
しかし津軽三味線ですでに賞を取っており、無口で不器用でも周囲を皆保護者にしてしまうオーラがある。これこそ人徳か(笑。
父は東京出身でゼミの学生相手にペラペラよく喋る。子煩悩で娘のバイト先に客でやって来る(恐らくわたしもそうするとは思うが)。
流石に安定感は抜群だ。

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そう、キャストが皆良い。
いとの祖母役の西川洋子はホントに津軽三味線奏者であり、この映画の演技で日本映画批評家大賞新人賞を受賞したが頷ける。
とても自然な骨の或る優しいおばあちゃんになっていた。見事な演奏も披露する。
中島歩が「平成真須美 ラスト・ナイト・フィーバー」の息苦しい役から観ると、とてもしっくりくる配役で嬉しい(笑。
如何にも真面目で誠実な店長であった。

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古坂大魔王のうさん臭さがしっかり発揮されていて面白い。オーナーの立場で、薬事法違反で逮捕され店を存続の危機に追い込むが(店長は皆に退職金を支払い店をたたむ決心をする)、彼の場合ご愛敬という感じで済んでしまうような、、、ピコ太郎のイメージが未だ抜けない?
横田真悠は流石にモデルの洗練された雰囲気でこの青森のメイドカフェを都会的に照らしていた。いとと正反対に自己主張がしっかり出来、理屈も決まっている。
黒川芽以の姉さん肌はこれまた板についており、この店一番の評判のアップルパイが彼女のお手製であるというのは説得力がある。歳を胡麻化しシングルマザーで頑張る気合が窺える。

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楽しい職場は人が作る。
いともこの職場(と同僚)をどうしても守りたいという気持ちから、店で津軽三味線を弾く決心をする。
思い切ってバイトを始めて、自分の考えを持ち、それを発信し、実行する娘となった。
相変わらず凄い津軽弁だがコミュニケーションに滞りはない。
工藤がカメラで三味線を抱えるいとの写真を撮り、智美がパソコンに取り込みポスターを制作し、皆で街角に貼ってゆく。
常連客はチンドン屋で練り歩き宣伝する。彼らのそれぞれの職業とかは最後まで分からず仕舞いであった。

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新メニューで三味線コーナーも設けて再起を図る津軽メイド珈琲店に客がぞろぞろやって来る。
集まった客の前でいとが笑顔で津軽三味線を弾いく。ホントに愉しそうに演奏をしてエンディング。
実際かなりしっかり弾いてたみたいな熱演であった。楽器さばきがとても綺麗なのだ。
楽しい時間が過ごせた。

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75歳の三味線奏者が演技で新人賞というのは、素敵である。
若い駒井蓮にも期待したい。




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無限ファンデーション

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2018

大崎章 監督
西山小雨 音楽
西山小雨「未来へ」主題歌

南沙良、、、未来(服飾デザイナー志望、演劇部衣装担当)
原菜乃華、、、ナノカ(演劇部ヒロイン)
小野花梨、、、演劇部員
片岡礼子、、、未来の母
西山小雨、、、おばけ(演劇部顧問の元カノ)


西山小雨(シンガーソングライター)のMVを作る企画が長編映画になったそうだ。
で、セリフとか即興なのだと。ちゃんと本は書いた方がよい。超ベテランがやるなら別だが。
まあ、間の悪い映画だわ、と思っていたら、そういうことか。
セリフも練れてないし、どうもこういうのは、、、ちょっと呆気に取られてみていた(笑。
ホントに、素人劇であった。
先生のシーンなどこちらがどうしようとたじろぐくらい。
(これ程間抜けなシーンは未だかつて見たこと無い)。

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ところで「無限ファンデーション」ってどういう意味?
さっぱり分からん。
「無限」というものは物理学的に言って無いことになった、のだが。
この世(の全て)は完全に「有限」である、と。つまり特異点というものもメデタクなくなった。
まあ、いいけど。

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素人劇とやかく言う気も無いけど、、、もう少しセリフとかの膨らみが出ないかね。
貧しすぎないか?いくら何でも。とっても貧しい。
展開も流れも滞る。そしてスカスカ。あんまりだ。
特に気になったのは、スプレー娘の一件である。
あの行為と当人に対する周囲の反応と対応が何だという感じ。
やった当人が直ぐに現場に現れるのにも驚いたが、未来に「どうして!」と詰め寄られて、あの返しはないだろう。
それに対する周りの受けも。
更にその後もスプレーは、部活のメンバーでいて、普通にみんなと活動(衣装の修復をやっている)。
あり得ない光景に見えるが、、、。

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シンデレラ役のヒロインも、オーディションの二次に落ちたら帰って来てその役出来るとは、普通思わないはず。
発表まであと少しというところで、部長を中心にシンデレラの急遽代役か配役の変更で対応を図っているはず。
そこに、のこのこやって来てやっぱりやらせて、うんいいけど、って対応策も何もとってなかったのかい?
そういえば、スプレーで台無しにされた未来作の衣装をのんびり皆で直していたな、、、。
どうなってんのか、この部活?見通しってもんが無いのか。というか部員皆がおばけみたいだ。

信じられない時空間である。
その訳の分らぬ時空間にホントにおばけまで堂々と出て来たではないか。
確かにおばけが出て来ても無理もない。出て来たおばけもQ太郎みたいなもんだが(古。
また、このおばけの弾く曲が刺さらない。元はこのMV作りが目的であったようだ。
他の音と比べ曲の音は別録りで大変クリアであったが。
最初の予定通り、MVで良かったものを、、、。その場合はカメラワークも何とかして欲しい。
大体、数学教師で演劇部顧問の元カノのおばけが何で生徒の未来とお友達になっているのか、、、
その彼女のことを何を思ってこの教師は未来に話して聞かせたのか補習のタイミングで(未来とおばけのことなど何も知らぬのに)。
しかも未来はおばけに自分の作った服を着せて喜んでいるのだ(普通この手の映画でもそれはやらない)。

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まっさかこれをもってファンタジーだなんて言わないだろうな~?!


最近稀に見る呆れてモノも言えない映画であった。
最後まで付き合ってしまったことが悔やまれる。



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クワイエット・プレイス 破られた沈黙

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A Quiet Place: Part II
2021
アメリカ

ジョン・クラシンスキー 監督・脚本・製作
ブライアン・ウッズ、スコット・ベック 原作
マルコ・ベルトラミ 音楽

エミリー・ブラント、、、エヴリン・アボット(母)
キリアン・マーフィ、、、エメット(旧知の人)
ミリセント・シモンズ、、、リーガン・アボット(長女)
ノア・ジュープ、、、マーカス・アボット(長男、弟)
ジャイモン・フンスー、、、島の長
ジョン・クラシンスキー、、、リー・アボット(父)


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この音に過敏なエイリアンだが、人を瞬殺するだけである。食用にしないのなら、意味はない行為に思えるが、、、。
まあ、共存という訳にはいかない手合いであるが。何か邪魔なのか、ウザいのか、、、。よく分からん。

パート2の本作は、冒頭に前作の前日譚を導入部に入れてくる。
いきなりこんなことになって、ああなったのか、が分かるので入り易い。
そして前作の続きに一気に飛ぶ。ずっとこういう生活を、この一家は続けて来たのね、と確認。
子供時代をこんな環境で過ごす経験というのは精神的に良くないなあ~と思いながら見てゆく事に、、、。

A Quiet Place Part II001

音をうっかり出したらもうおしまいという設定でのパニックものというのは、より息が詰まり緊張感も増す。
親が奮闘した前作から、こちらは長女と長男も凛々しく頑張り活躍する子供の成長譚にもなっている。
そして生まれたばかりの赤ちゃんまでいるではないか。これはシンドイ。酸素マスクを上手く使ってはいるが。
移動は難しいし、夜泣きなどはどうなのか、、、経験者は心配になって当然。
冒頭からずっとハラハラさせられるが、終盤に差し掛かり、リーガン・エメット組とエヴリンさらにマーカスの3つの別行動のクロスカットはドキドキ3倍でかなり強烈な演出であった。最後は、リーガン・エメット組とエヴリン・マーカス融合組のシンクロファインプレーで締めくくる。
続編、が予想されるデンディングだ。

A Quiet Place Part II003

全編に渡り、弛むところなくタイトに進展する。
相変わらず、エヴリンは逞しく頼りがいがあるが、赤ちゃんがいて、マーカスが足に酷い怪我を負ってしまった為、必然的に籠もっている旧知の間柄の生存者、エメットの尻を引っ叩かなければどうにもならない。
当初はエメットにとっていい迷惑であったが、リーガンの前向きな姿勢と行動に触発され、闘志を沸き立たせてゆく。

兎も角、基本設定がしっかりしている為、丁寧に作れば面白いものになるというもの。
何でこう動くのという疑問も生じる場面はあったが、それはそれでハラハラ効果はあった。
リーガン演じるミリセント・シモンズが実に説得力のある演技で緊迫感を出している。
逃避的で内向していたエメットもそれに引きずられ勇敢に立ち向かってゆく姿は、感動的。
ただ髭のせいで、キリアン・マーフィなのか誰なのかよく分からない点が惜しい。

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このエイリアン、スピードが凄いので、分かっていてもビックリする。
ほぼ来るなと思うところで来るが、それまで何処に潜んでいたかは謎である。
いきなり作用する場に実体化するみたいで、量子的な動きなのだ(笑。

そのフィギュアもなかなかのもので、如何にも音を頼りに活動している感がしっかり窺える。
であるから気に障る音も当然ある訳で、リーガンの補聴器の音(ハウリングの方?)が気に入らない。
というかその音がすると身悶えして苦しがる。音が逆に武器となる。
更に金槌である。水に溺れてしまう。泳げない。
これは良いこと知ったというもの。
この弱点を積極的に戦略的に利用しない手はない。続編に期待である。

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最初の作品もこのパート2もかなりのレヴェルであった。





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ペトルーニャに祝福を

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Gospod postoi, imeto i’ e Petrunija
北マケドニア・ベルギー・スロベニア・クロアチア・フランス
2019

テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ 監督
エルマ・タタラギッチ 、テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ 脚本
モニカ・ロルベル 音楽


ゾリツァ・ヌシェバ、、、ペトルーニャ(引籠りの女性)
ラビナ・ミテフスカ、、、スラピッツァ(ジャーナリスト)
シメオン・モニ・ダメフスキ、、、ミラン(検察長官)
スアド・ベゴフスキ、、、司祭
ステファン・ブイシッチ、、、ダルコ(警官)
ビオレタ・シャプコフスカ、、、ヴァスカ(ペトルーニャの母)


男性だけが参加する祭りに女性が割り込んで、司祭の投げた十字架を取って祭りを混乱に陥れ、この後のゴタゴタがずっと続くが最後は唖然とするような呆気ない終わり方。
これって結局、どういう映画なのよと言うしかない変なもの。

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ペトルーニャは単に大学出て32まで職に就かず、彼氏もいないだけの女性であり、特にどうこういうような変わった人でもない。
それくらいの引籠りの人などかなり日本にもいる。それがどうした、という感じ。(籠って食べ過ぎたきらいはあり、かなりの体重はありそう。食べ過ぎについてはわたしも同じで、人のことは言えない)。

それよりも問題なのが、彼女の母親である。これは典型的な毒親であった。
もうペトルーニャが生理的にもヒステリックに嫌っているが、よく分かる。
幼少時から娘の全てを支配し自分の思うようにして来て今現在も細かい事まで指図してくる、鬱陶しいことこの上ない存在だ。

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彼女が外に容易に出れず、会社に勤めることが出来ないのも、この母との幼少時からの経験によるものである。
これは間違いない。そしてその当てつけに過食となり、太ってより外に出にくくなる。
彼女を独立した一個の存在として認めなかった母に対する怒りの表現でもあろう。

最後にはペトルーニャが大人になり、理解は決してし合えないけど受け容れるわと母を抱き寄せる。
大したものだが、それはこの十字架ゴタゴタ事件の際に若い警官ダルコと気持ちが通じ合ったからか。
自分を認め大事にしてくれる人が現れたのだ、精神に余裕が出来ると人は寛容になる。人を許せる。

彼女が男祭りに司祭の投げ入れる十字架を一番に取ってしまい、祭り自体を滅茶苦茶にしたのは事実。
これで教会や警察が動き、彼女を拘束したことから、ジャーナリストがここぞとばかり差別とか訴えて絡んでくる。
教会や警察は歯切れが悪い。ジャーナリストは男女差別としてセンセーショナルに騒ぎを広げようとする。

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単にこれは伝統的に続けられてきた男性の祭りであるというだけのもので、イデオロギーに絡めて批判する事柄ではない。
結局、内容がチャチな為、特に議論も生むことなく、滑る。男性(父権)社会がどうのとか騒ぐ類のモノか。
当のペトルーニャもずっと十字架は取ったわたしのもの、と訴え続けて来たが、警官の彼氏が出来たとたん、司祭に返却している。

そもそも、何故彼女は男性だけの祭りに乱入し、十字架を取ったのか。
本人も騙るように、無意識に川に飛び込んで取ってしまったのだ。理由もなく。
母に無理強いされた就活で失敗、落胆した帰りの混乱の中で思わずしてしまった事故だ(心身喪失したみたいに歩いていたし)。

しかし、取ったことで、何かのご利益があるという希望も芽生えたはず。
宝くじに当たったみたいな意味で。だからツキを手放したくない気持ちから十字架を誰にも渡さなかったというところか。
更に母親が世間体を気にし、それを凄まじく批判したことで余計に意固地になったのだ。

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結局、ペトルーニャに彼がようやくできたというだけの噺か。
どうでもよい祭りに女性がひとり乱入したことで、男どもが過剰に反応し、警察と司祭が中途半端な対応で混乱だけ大きくし。
ジャーナリストがチャンスとばかり絡もうとしたが成果も出ず、、、何なんだという映画であった。

ユーゴスラビアの風景と感性というか、感覚みたいなものに触れた気がした(笑。
面白いといえばそうだが、退屈でもあった。




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ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館

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The Woman in Black
2012
アメリカ・カナダ・スウェーデン

ジェームズ・ワトキンス 監督
スーザン・ヒル 原作
スーザン・ヒル 、ジェーン・ゴールドマン 脚本

ダニエル・ラドクリフ、、、アーサー・キップス(弁護士)
キアラン・ハインズ、、、サム・デイリー(村の富豪)
ジャネット・マクティア、、、エリザベート・デイリー(デイリー夫人)
リズ・ホワイト、、、ジャネット・ハンフリー


ゴシックホラーということで観てみることにした。
様式美みたいなものは感じられる品のある作品である。

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弁護士アーサー・キップスが、ロンドンから遺産整理の仕事で訪れた田舎町クライシン・ギフォードの館というのが、満潮になるとそこに行く道が水没するという、陸の孤島みたいな場所にあるのだ。古びた館そのものだけでも充分不気味であるのに。
この館の夫人が首つり自殺をしたのだが、その原因が彼女の息子を彼女から引き離した上に沼で亡くなったその子の遺体すら上がらず、関わった村人を深く恨んでの事件であったという。
いわくつきの館であり、その後その館だけでなく、黒衣の女の幻?を見た子供は何処であっても皆、悲惨な死を遂げてきた。
かなりの数の子供が変死しており、それだけで大事件として扱ってもよいはずだが。
村人は寧ろその件を直隠しにしようとしており、やって来たアーサーを直ぐにロンドンに追い返そうとする。

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村の富豪サム・デイリーだけが、他の村人に同調せず(迷信として退け)、アーサーに協力する。
(彼も幼い子供を不慮の事故で亡くしており、生きていれば丁度アーサーの歳であった)。
村の多くの人々も子供を幼くして怪死で失っており、過度に閉鎖的で排他的になっており、アーサーに対しても敵愾心を持つ者もいた。(何故逆に、外から来た人に何とか事態の打開を委ねようと思う人がいないのか不思議ではあるが)。
その原因が、アーサーが任された遺産整理の館の主アリス・ドラブロウ夫人の祟りによるものと受け取られている。
村人も夫人に対して後ろめたさ~罪悪感を抱いているのだ。
夫人を精神病者として息子を取り上げ、その後決して彼女に逢わせることなく、彼は幼いうちに村の沼で不慮の死を遂げたのである。それを知り深くその関係者を恨み呪って彼女は自殺した。それから次々に黒衣の女を見た子供が死ぬこととなる。
村人は子供を家に閉じ込めて、外に出さないようにして怯えていた。
しかし幽霊は何処にいようと出て来るものだ。アーサーのもとにも何度も出て来る。

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根本的な解決を図るしかないであろう。
流石に弁護士アーサーは、沼に沈んだまま上げられなかったドラブロウ夫人の息子を引き上げ彼女に逢わせ、同じ棺に埋葬することで、夫人の怒りを鎮めることを思いつく。
サムと大変な苦労をして、やっとその息子の遺体を沼から探し出し引き揚げ、夫人と共に埋葬し安堵したのであるが、、、
夫人は確かにその息子を確認している。
だが、呪いは続いていた(この辺、日本のホラーもそうである。執念深いのだ)。

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アーサーに逢いに約束通りにメイドと共にやって来た幼い息子が、父が少し目を離した瞬間にヒョイっと線路に降りて歩き出したではないか、咄嗟に息子を庇って線路に飛び降りたところを列車に父子共々轢かれてしまう。
アーサーはサムの名を呼ぶがそこに彼の姿はないが、代わりに亡くなった妻が微笑んで待っているではないか。
親子三人で念願の邂逅を果たし、彼等はにこやかに手を繋ぎ歩んでゆく、、、。
その姿を見やる黒衣のドラブロウ夫人。
サムは、駅に並んでいたこれまで死んだ子供たち全員と夫人の姿をしかと見てしまった。
そして列車に轢かれたアーサー父と子も。

The Woman in Black004

バッドエンドが、とても幸せなハッピーエンドにも見えた。
息子にとれば、微笑む母と父に抱かれて歩くことが夢であったのだから、、、。
これには、ドラブロウ夫人も手は出せまい。
サムにとってはショックだろうな。
恐らくこれで収まるのではないか。
(夫人もやり過ぎたと思うのでは。自分もあのように息子と昇天すれば救われるのだと気づくはず)。


ダニエル・ラドクリフがすっかり大人になって凛々しかった(笑。
サム・デイリーがとても包容力ある頼れる男であった。彼にかなり助けられていたことは確か。
こういう相棒なくしては、到底独りで頑迷な輩相手に対抗出来るものではない。




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選ばなかった道

The Roads Not Taken001

The Roads Not Taken
2022
イギリス、アメリカ

サリー・ポッター 監督・脚本

ハビエル・バルデム、、、レオ(元小説家、認知症)
エル・ファニング、、、モリ―(レオの娘)
ローラ・リニー、、、リタ(モリ―の母、レオの元妻)
サルマ・ハエック、、、ドロレス(レオのかつての恋人)


どう見ても「選ばれなかった道」だが。モリ―がその修正を図るか。いや実は選ばれていたのか、、、
メキシコ移民作家のレオの内閉し交錯する心象世界が重々しく描かれる。
かつて捨てられた娘モリ―が縋るように何とか触れようとしても悉くすり抜けていってしまうその父の世界。
孤独を極める個々の時が過ぎる、、、。

The Roads Not Taken002

時間~思いがそれぞれの場所(ニューヨーク、ギリシアの海辺、メキシコ砂漠地帯)を彷徨う。
ある意味、とても現実的な世界の描写だ。吐息や肌触りまで感じるような、生々しい感触。
実際、認知症を内面から描くとあのようにトリップしているのだろうし、親族~娘もほんの僅かでも直接の触れ合いを期待し絶望的な介護を献身的に続けてゆく、、、。
時には父のしまっておく写真や小物などを観て何とか彼の心象世界を理解したいと探る。
医者に全く従わない父を、歯医者、眼科の検査に連れてゆき、途中で彼が頭を打ち、CTで診てもらう寄り道をして結局自分は大事な仕事を失う(重要な会議を結果的にすっぽかしてしまうのだ)。
終盤まで心底この娘の姿勢に感服し同情してしまった。
エル・ファニングだから尚更である(笑。
(小説の執筆の為、家族を捨てた男に何故ここまでと思うが、それだからこそ父に対する幻想も大きいのだと思う)。

The Roads Not Taken003

このハビエル・バルデム演じる父は、自分がその都度望んだ道を独り選んで歩んでゆく。彷徨いながらではあるが、、、。
小説を書くには何かを犠牲にしなけらばならない、、、と。
娘に対する気持ちがいくら待っても現れてこない。
そして恋人に縋り、愛犬の死を悼み、、、娘を捨てたことは、ギリシャの海辺で同年齢の娘に語ってはいたが。
しこりはあるのだろうが、後悔は犬の事故死に対してのみか、、、涙を流して嘆くのは。
(レオの健常時の姿~言動と現在の虚ろで無表情で衝動的な様子の落差が凄いものだ)。

The Roads Not Taken004

ギリシャの海辺での想い、メキシコでの恋人との重苦しい想い、そしてニューヨークと、、、。
何れも強い思い出と深い感情が突き上げレオを衝動的に突き動かす。
日常習慣、常識、規範意識等が消えうせてしまうと、特定の時間や空間から自由になった「場」に必然的に向かうのであろう。
そして家に帰りたいと謂うが、、、レオにとっての家とは、戻る場所とは、、、
最終的には娘~モリ―のところか、、、
レオの後悔の念とは、彼女に対してもあるのか、、、それがわたしには一番気になっている。

The Roads Not Taken005

レオがモリ―という名を遂に口にした瞬間、こちらも彼女と共に胸が熱くなった。
実はそうなのか。
しかし、その後も、同じように異なる「場」にいる父に寄り添う娘の生活は続くのだろう。
だが彼女はそれまでの虚無感とは異なる気持ちで父を支えて行けるとは思う、、、。
そうであっても、モリ―自身の生活~彼女の生のことばかりが気になった。
何であってもレオの病状は更に進行して行くのであろうし、、、。
残酷な関係である。
しかしこのような残酷な関係は何処にでもある。わたしも常にその関係を生きている。

The Roads Not Taken006

独り深夜に自分のアパートを抜け出し、自分の行くべきところを目指しまた放浪を始める。
裸足で歩く虚ろな老人をとてもこころの暖かいタクシーの青年運転手が保護してくれた。
ここで彼は命拾いしたと謂ってもよい。
このような救いなしに、到底この世ではやって行けない。絶対に。




Wowowにて






恋する寄生虫

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2021

柿本ケンサク 監督
山室有紀子 脚本
三秋縋 原作
Awich「Parasite in Love」主題歌


林遣都、、、高坂賢吾(極度の潔癖症)
小松菜奈、、、佐薙ひじり(視線恐怖症の高校生)
井浦新、、、和泉(瓜実の病院の医師、ひじりの担当医)
石橋凌、、、瓜実裕一(佐薙の祖父、病院長)


BGMがかなり粒が立っており、なかなかのセンスである。
セリフ同様の役割を果たしていた。ミニマル・ミュージックも来るものがあった。
設定が全て荒唐無稽で強引なのだが、小松菜奈に免じて我慢することに(笑。

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虫。とは何か。寄生する虫。その虫が宿主を乗っ取るのか。
人の体に虫はどれほどいるか。菌まで入れると途轍もない数の虫がわれわれを活かしているのだが、、、。
脳を支配する虫がいるのか。ひじりは鼻血が出る。高坂は吐く。幻想的な表現でソフトにしていたが、わたしは丁度ソフトクリーム食べながら見ていたではないか、、、頼むわ。
虫が脳に取りつくと社会に適応困難になるそうだ。潔癖症になったり視線恐怖になったり、、、この着想は面白い。
どうして自分は生まれたのかを悩む者同士。生き難さに悩む人は多い。毒親をもったりもそう。
強度の潔癖症と視線恐怖のふたり。
この2人が虫をもっていることから、接触させた和泉医師。

和泉が2人を近づけたのは、両者の虫を成長させて摘出し易くするため。
成程、虫が惹き合うのか。虫が合うのだ。
しかし親密になってゆき、ふたりが虫の誘導で結ばれたりすると、宿主に卵を産み付け最後に宿主を自殺に追い込むそうだ。
ひじりの母、瓜実院長の娘も同じケースで自殺したという。
仮に虫が脳に取りつき何らかの操作を加えたとしても、どれだけの影響が人間~精神に及ぶものか。

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こころがなくなるという確信は、大変恐ろしい寄る辺ないものだが、何処から来るのか。
そこは憶測に過ぎまい。小松菜奈の迫真の演技が冴える。潔癖症は地ではないかと感じる林遣都も自然(笑。
恋愛は頭でするものではなかろう。
頭から虫を取っても大丈夫じゃない?
そう想う方が自然だと思う。わたしだったらこんなにパニックにはならないが。
双子虫だとしても、、、冗談で言っていたが(笑。

もし仮に主体が虫だとしてもそれを無視して生きれるのが人間という次元だ。
DNAにとっては、彼らの存続の為の、人間はその乗り継ぎの舟に過ぎない。
であっても人間は個として自らの精神活動を全うしている、思考を働かせている、気でいる。それで良いのだ。
それで確かな実績をあげて来た。

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ここでも、、、
感情が変わっていないのは、問題ないってことだろうに。
高坂がクリスマスに放ったコンピュータウィルスも失敗に終わり、それを楽しみにやって来たひじりと再会というのも乙なもの。
ふたりとも虫が摘出され普通の人同士として、改めて遭うというのも面白い。
虫の支配とはどれ程のものか。
脳がどれ程のものか。
普通にデート出来れば文句なしのはず。

恋ってもんは、その身体性からして似た者同士と直覚したときに陥るものか。
多分そういうものだろう。



Wowowにて








最後にして最初の人類

The Last And First Men007

The Last And First Men
2020
アイスランド

ヨハン・ヨハンソン 監督、音楽、脚本、製作
ティルダ・スウィントン 朗読
オラフ・ステープルドン 原作


ヨハン・ヨハンソンとあれば、観ない訳にはゆくまい。
大変な決意で臨んだ鑑賞であったが、無念にも90%寝てしまったではないか。
恐らく睡眠学習ではなく、睡眠鑑賞が出来たのでは、と期待する。
二度目の鑑賞をまたいつか決行するつもり。

The Last And First Men001

環境ビデオとして流し続けておくのも良いかも。
籠ってほとんど動かなくなるかも知れない。
それならずっとじっとしていて光合成でもしはじめると面白い。
人が訪ねてきたころには、植物化しているのも一驚。
ホントは鉱物となって結晶化していたいが(笑。
(そうしたら、このモニュメントみたいだ)。

The Last And First Men004

20億年先も前もない。厳密に言えば。あるのは相互作用のみ。
聞いてください。助けてください。助けますから。
そう、そういったものだと思う。時間も何もない相互関係とは。
そして人間とは不安定なものだと、、、。(そう生命自体とてもフラジャイルな存在。すでに4回あわや絶滅という危機を乗り越えた)。
最後の人類によるメッセージ。
淡々とした滅びの詩。

旧ユーゴスラヴィアにある巨大な建造物って、何なのこれ。ヱヴァンゲリヲンか。
”スポメニック”!「戦争記念碑」って、初めて聞いた。途轍もないモニュメント~オブジェだ。
全ての意味から逃れている。色々言われてるようだが、世紀末なんてチャチなもんじゃない。
これにヨハン・ヨハンソンの音楽が絡み、ティルダ・スウィントンの朗読が絡めば、、、
沈み込んで、もう眠るしかない。神聖で荘厳な宇宙に。

The Last And First Men005

そもそも人間、詰まらぬものに接して、眠ることなど出来ない。
やたらとイライラして不快になったり憤ったり、である。
もう理性や知性を超えたところで受け止めようとしたら自然にこうなるという感じ。
お陰で疲れも取れた気がする。
あ~あ、スッキリ。だが本格的に眠くなって来た、、、。

本質力をもつ波動に癒されたという感触。
これ程の画像と音楽とことばの融合は滅多にない。
ひとつの場だ。

The Last And First Men006

また観るしかない。
寝ながら。眠りの中深くで、、、。


ヨハン・ヨハンソンが映像作品を作っていたとは知らなかった。亡くなって4年半。
この映画も彼の夭逝して2年後に世に出たもの。そんな時間はさしたる意味はない。
親友の尽力によるところが大きいらしいが、こういった形で残ってよかった。
とっても貴重な財産である。
彼のCDも聴き返してみたい。今物凄く聴きたい。



AmazonPrimeにて



特捜部Q カルテ番号64

Journal 64005

Journal 64
2018
デンマーク、ドイツ

クリストファー・ボー 監督
ボー・Hr・ハンセン 、ニコライ・アーセル 、ミケル・ノルガード 脚本
アントニー・レド 音楽

ニコライ・リー・コス、、、カール(“特捜部Q”主任警部補)
ファレス・ファレス、、、アサド(カールの相棒、移民)
ヨハン・ルイズ・シュミット、、、ローセ(“特捜部Q”の女性刑事)
ファニー・ボールネダル(少女) / ビルテ・ノイマン(老婦)、、、ニーデ(女子収容所被害者)
エリオット・クロスセット・ホーブ(青年) / アンダース・ホヴ(老人)、、、クアト医師(強制不妊手術医)


人気TVシリーズの映画化ということで、無駄がなく実に見易い。
とてもテンポよく集中して観て行ける。

Journal 64001

ここでは元が人気TVシリーズということもあり、カールとアサドという「相棒」刑事コンビの活躍が痛快に描かれてゆく。
とは言え、華麗なカーチェイスやガン、ラフファイトのアクションが楽しめる娯楽系ではなく、反発し険悪になりながらも結局はお互いを尊重しつつ難題を解き事件解決に向かう渋い展開である。
但しチームプレイよりも独断個人プレイが目立つが、カールの顔を見れば誰もが納得であろう。
タフで一匹狼のカールと理知的で寛容なアサドのコンビと謂うところか。そこに紅一点のローセが加わる。

デンマーク警察で、未解決事件を扱う捜査班を“特捜部Q”と呼ぶ。
コペンハーゲンのアパートにある壁に覆われた謎の部屋にミイラが3体発見される。
IDを調べるとナイトクラブの経営者リタ、スプロー島の収容施設にいたニーデ、行方不明のフィリップ弁護士の3人であることが分かる。1980年代の犯行であった。
部屋の持主はスプロー島の収容施設の看護師ギテであり部屋代はずっと支払われていたが彼女の所在は明らかではない。

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スプロー島の収容施設は不良の女子が収容される更生施設という名目であったが、中で行われていたのは人権無視の強制中絶と強制不妊手術であり、残虐な体罰もなされていた。
強制不妊手術の対象は、優生学的に劣るとされた移民の女性に対して主に行われる。
それ以外に知的障害、反社会的な傾向を持つ者、依存症者等々。
「寒い冬」という医者や警官、政治家の組織する大きな力が働いていた。まるでKKKみたいな。
デンマークのそういう禍々しい側面を見せつけられたものだ。
当時、クアト医師が中心となりその手術を行っていたが、今でも老齢の彼が変わらず実施していた。
実際に、1934年から1967年までに1万1000人以上の女性がその被害を受けたという。

Journal 64003

フィリップ弁護士は「寒い冬」を裁判にかけようとする被害者の訴えをもみ消す仕事を任されていた人物と分かり、リタはニーデを売ることで外に出た女性であり、強制不妊の被害者ニーデと思われたミイラの正体は看護婦ギテでありニーデは彼女に成りすまし、暮らしていた。
全てニーデによる犯行であり、復讐であった。であればクアト医師こそがそこにいなければおかしいのだが、彼を誘い込むのは難しく彼女は一度離れ離れにさせられた恋人と再び愛し合う関係となりもう復讐を虚しく感じ辞めてしまっていた。

現在クアト医師は不妊治療の名医として世に広く認知されている。
スプロー島の収容施設にかつて勤めていたブラントは組織を訴える為の証拠集めを秘密裏に行い用心深く潜んでいたが見つかってしまい、ローセに助けを求めるが彼女が駆け付けた時は殺害されており、彼女も襲われるが辛くも逃れる。
同時に、フィリップ弁護士の妻に食い下がって漸く生前の彼の仕事の資料を手に入れたカールとアサドもバイクに襲われ、資料のほとんどが焼失してしまう。
これだけでも組織の大きさが分かるというもの。

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終盤は、ローセだけでなく、近所の娘がやはり騙されて手術されてしまい抗議に病院に行ったところを捕まり、救出に向かったアサドが何と同僚の警官に撃たれてしまう。この同僚警官も組織の一人であったのだ。カールが駆け付け何とかその娘とアサドも助けられる。ここのシーンはドキドキであった。
この娘がメディアに顔出しでこの根深い件を暴露し、組織の医者や警官が次々に逮捕され中心人物のクアト医師も漸く逮捕となった。
被害者のひとりニーデは、先だった伴侶の灰を船から海に撒き、何処かに消え去る。
カールは敢えて彼女は追わない。


思想の怖さである。
ヒトラーの優性思想はまだ地下に脈々と息づいている。




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デス・プラン 呪いの地図

I BURY THE LIVING001

I BURY THE LIVING
1958
アメリカ

アルバート・バンド 監督・製作
ルイス・ガーフィンクル 脚本

リチャード・ブーン、、、ボブ・クラフト(クラフトデパート社長、墓地管理委員会今年の管理当番)
セオドア・バイケル、、、アンディ・マッキー(実質的な墓地管理人)
ハワード・スミス、、、ジョージ・クラフト(ボブの叔父、クラフトデパート重役、墓地管理委員会)
ペギー・マウラー、、、アニー(ボブの婚約者)
ハーバート・アンダーソン、、、ジェス・ジェサップ(新聞記者)
ロバート・オステルロッホ、、、クレイボーン警部補
ケン・ドレイク、、、ホネガー(墓地管理委員会、名士)
ラス・ベンダー、、、トロウブリッジ(墓地管理委員会、名士)
マット・ムーア、、、ベイツ(墓地管理委員会、名士)


かなり際どい線を渡っている映画であった。
墓地の地図に黒ピンだと埋葬済み、白ピンだと契約済みで、契約したのに誤って(わざと)黒ピンを刺すとその後すぐに死んで埋葬~黒ピン通りとなってしまう。
最初は友人の新婚夫妻。それから立て続けに黒ピンを地図の墓地に刺してしまった知人や親族までが次々に亡くなり埋葬されることに(ボブがピンのせいで死んだと主張する為、試しに刺してみろと謂われるままに刺してみたら、その通りに死んでしまう)。
結局、墓地の管理委員会のメンバーが自分を残し全て死んでしまった。
警察にも知らせるが、ボブの訴えは合理的な判断を越えており、警察は独自の捜査を裏でやる。
ボブはかなり憔悴し混乱を極める。
であればと、終盤に最近埋葬した7つの黒ピンのところを白ピンに刺し換えれば、生き返るかと試すところがある。
画面では悉く、墓が内側から押し上げられ外に出た形跡があったが、当の本体は映されていなかった。
危うくゾンビに対面するところであった(笑。

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この映画はあくまでも死んでいるのか生きているのか分からない代物が暴れるのを描くものではなく、シュールな墓地の地図(クレーの絵に似た図)にピンを刺すことで死の予約が出来てしまうという、何ともデスノートみたいな無常で気味の悪い噺として進行する。
ただデスノートのような超越的な存在が背後で支えているのではなく(背後に何やら蠢いていようと)、あやふやで不確かな主人公の力及び特殊な地図によりこうなる(こうなっているように展開するのだ)。
物語の最後で、墓の(実質的な)管理人が身を引き年金暮らしを勧められた為に、墓地管理委員会メンバーを恨み、ピンを白から黒に刺し換えるなどして、相手を殺害するに至った犯行動機を警察によって説明されるが、すでにその男は死んでおり実際どうであったのかスッキリせずに終了する。

I BURY THE LIVING002

警察の目の付け所は、地域的に狭い範囲での死亡(事件)であったこと。
パリに出張していた人物を試しに黒ピンにしてみたが死ななかったこと(警察が試しにやることか?)
職を退くように言われた管理人が動機をもつ可能性が高いと。
主人公に対しその男も犯行を仄めかしたが、実は全員殺せたわけではない。
しかも自動車事故、脳卒中、心臓発作、、、等であるが、どのように殺したかは具体的には不明。
ともかく尋問する前に彼は死んでしまった。

つまり核心部分はあやふやなまま終わる。
この墓守が殺したのか、やはりピン使いの主人公の力なのか。
劇中何度も地図が艶めかしく生き物のようにクローズアップされる。この地図の秘めた魔力によるものか。
(この地図アートがこの時期のVFXで出来る限り不気味さを表現していた)。
ピンを黒から白にして墓が暴かれた場面は描かれるが中身は蘇ったのか、それらは明かされない。
結局オカルティックな悪魔的な力によるものなのか、人の個人的な怨念による仕業~殺人であったのか、、
実際どんな現象~事件というのか。

I BURY THE LIVING004

この墓守にとっての墓とその区画地図はどういうものであったのか。それが一番大きな謎かも。
墓を自分から取り上げられる恐れからの犯行であれば、尋常ではない。
彼にとり墓がどれほどの魅力~魔力の場所であったのか。
そこの関係性を執拗に描き、その特異な心性を浮き彫りにすれば説得力も上がるはず。
尻切れとんぼという感は否めない。

もっと面白いオカルトサスペンスになった気がする。




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怪奇蒐集者 ROCKIII 村上ロック

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村上ロックなら何を喋っても一定のレベルにもっていってくれるが、この5つの噺も良かったが、彼にしては小粒であった。
度肝を抜かれるほどのものは無かった。
映像化したら凄そうなものはあるが、下手にやらない方がよいという気もする、、、。
やるなら山田杏奈に主演を頼みたい(笑。


一話目が「ビンタ!」
ロックが友人から聴いた噺である。小5,6のころの体罰先生への仕返しを行った男であった。
社会人になってから毎日ビンタをくらわしていた先生の家のそばに住むこととなったので、その仕打ちに対する償いをさせようと乗り込み、慰謝料などいくつか提案するがどれも受け付けない。
それで毎日、家に行って殴るということにした。
かつての担任はいつも大人しく殴られていたがそのうち、笑ってお礼を言うようになる。
そして或る日、玄関で呼んでも出てこないので奥を覗くと夫婦で首をつっていたという。
彼はそれを観て、笑いが止まらなくなった。
それからというもの夜中に目が覚めると、天井からその男がぶら下がって笑っている。
しかもその声が自分の笑い声なのだ。
「いったい何をどう思えばよいのか分からない」とロックが述懐するが、確かに(笑。
後味の悪い噺だと。


二話目「誕生日」
自分の名前を言う時にだけ必ず噛む、「たかし」なのに「たけし」と言いそうになる男の噺。
サプライズ誕生パーティーの時にケーキの蝋燭を消すときに彼は部屋の明かりを消させない。
後で聞くと、人の形をした黒い何モノかが暗闇に出現する為なのだ。しかも誕生日の度毎に顔の造作がはっきりしてくる。
そして明かりをつけたままケーキの蝋燭を消してみるようにすると、もうその影は現れなくなったのだという。
その黒い影の由来が、どうやら子どもの頃近所の全焼火災で焼け焦げた真っ黒のマネキンであったことに気づく。
「たかし」にそっくりの姿であったため「たけし」と従妹が名付けてそのまま忘れていたものだ。
その黒マネキンがいつの間にか実家の蔵に移動していたことを随分後で知る。
数十年後に再会すると、たけしの関節から音がして握手したら掌が煤で真っ黒になっていた。
彼は果たして「たかし」なのか「たけし」なのか、、、もしたけしなら、あのたかしは何処でどうしてるのか、、、
気がかりな噺。確かに(笑。

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三話目「我路町」
地図に載っていない打ち捨てられた街「我路町」の噺。
かつて炭鉱の街であった札幌と旭川の間に位置するゴーストタウンだという。心霊スポット扱いになっているらしい。
友人にも煽られ夜にそこに何とか辿り着いてみると、荒れ果ててはいるが、まだ人が住んでいるようにも思える生々しさも感じられる。
友人も忍び込んだという学校を見つけるが、後一歩進むと、割れた窓ガラスから無数の何かが飛び出してくることがはっきり確信できた。
恐怖で後ずさりしながら車に戻り帰路につくが、そこの住人を男女2人も乗せてきてしまう。
車で札幌まで帰るまで危害はないが幾つかの異変に襲われる、、、。
あの街に事件や事故があった訳でなく、住人の生きた思いが今も充満している街であると想えた。
どの場所も少なからずそうしたものだと思う。


四話目「映画研究部」
映画好きで有名な難波という人物が、大学に入学し「映画研究部」に入る。
そこで出された課題が映像作品を3日で仕上げて来いというもの。
彼は街を巡りドキュメント作品を作ることにした。
街角の面白いと思う人を片っ端インタビューしながら撮ってゆくうちに、ゴミ屋敷にたどり着く。
そしてこの家の二階部分の窓に、まさにこの世ならざるモノを目撃してしまう。
最後に思いもかけぬモノが撮れ、意気込んで作品を皆の前で上映する。
終盤まで笑いが起き良い反応であったが、最後の部分に来ると部屋が静まり返ってしまう。
誰も気づかないのかと思い3回も繰り返し最後の部分だけ再生してみせるが誰も声すら上げない。
4回目で確認しようとすると先輩に胸倉掴まれて止められる。
強引に外に連れて行かれ、お前だけ気づいていないと指摘を受けるのだった。
何と映っていたモノは皆気づいていたのだが、それと同時にその向こう側にある棚の扉が少しずつ開いてソレ自体が姿を顕にし出したのだ。こいつはヤバいということで止めたという。後一度再生していたらソレがここをあのゴミ屋敷みたいに支配してしまったかも。
映ってはいけないものが映ってしまったケース。割とよくあるケースらしい?

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五話目「黒田先生」
その人を見ただけで、その人を取り巻く環境まで細やかに見えてしまう人は、たまにいるようだ。
これは吉本隆明氏も講演で述べていた。
黒田先生がまさにそれである。
初日に転校生もその家人も知らぬ秘密の地下室まで見えてしまう。
そして鏡文字のキャラシールの貼ってある地下の部屋を実際に見た途端、その子は全て左右逆転してしまったのだ。
(右利きが左利きに、ほくろも逆の位置に全て入れ替わってしまった)。
その子を黒田先生が静かにじっと見つめると彼女は翌日には元の姿に戻っていた。
クラスの皆は安堵したが、担任の黒田先生が今度はすべて逆になってしまい、子供たちはそれについてもう何も言えなくなっていた。
結局その転校生はその後、また別の学校に転校したのだが、何とその家に黒田先生が越してきたのだという。
果たして黒田先生はどうなったしまったものか、、、。
別の何かが乗り移ってしまったのか。元の彼女はどうなったのか、、、。

確かに村上ロックの噺は量子論みたいな面白さがある。





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ディナー・イン・アメリカ

Dinner in America002

Dinner in America
2021
アメリカ

アダム・レーマイヤー 監督・脚本
ジョン・スウィハート 音楽

エミリー・スケッグズ、、、パティ(短大中退してアルバイト)

カイル・ガルナー、、、サイモン(ジョンQ)
グリフィン・グラック、、、ケビン(パティの弟、養子)
パット・ヒーリー、、、ノーマン(パティの父)
メアリー・リン・ライスカブ、、、コニー(パティの母)
ハンナ・マークス、、、べス
リー・トンプソン、、、ペティ


久々の素直な邦題でホッとした(笑。
アメリカでは刑務所が一番贅沢なディナーが食えるぜ、というところか。

Dinner in America001

ヒロインのパティは、同年代の男女から馬鹿にされているオタク系の女子で、パンクミュージックを主に聴いて籠りがちの女子。
大ファンで大胆で過激なファンレターを幾通も送っているパンクバンド”サイオプス”のリーダージョンQを知らず自分の家に匿う。
覆面ボーカリストの為、素顔観ても誰だか分からない、とは言え高校時代同じ授業をとっていたことに気づく全く知らぬ間柄ではないのだ。
彼はセクハラと放火の疑いで警察に追われており(成り行きでそうなっただけであったが訴えられてしまったもので)、どこか身を隠せる場所を探していた。何とも呑気な(笑。

Dinner in America003

それにしても二人が偶然出逢うなんて確率がどれほどあるか。
なんてことはどうでもよく、究極のご都合主義で始まるドタバタパンク・ラブコメディ。
前半はやたらとサイモンが尖っているが、彼もまた家族につまはじきの厄介者で在り、アウトサイダーであった。
片や過保護、片や不適合者の寄る辺なき孤独な者同士が、パンクで弾けて結ばれる。
なかなかのカップルだ!よいと思う。

わたしもロックでどれだけ救われたか。
ビートルズ~ムーディーブルース~プロコルハルム~キングクリムゾン~ピーターハミル~ルーリードと、、、。
(勿論すべて挙げればこの百倍になるが)。
パンクで言うと、わたしの場合、ストラングラーズ、Devo、ワイヤーそしてブライアンイーノのプロデュースによるアルバム「ノーニューヨーク」参加アーティストたち。(この頃、イーノはニューヨークの至るところで、”イーノは神”とビルの壁などに書きまくられていた。)実際、これらのパンクに出逢ったときは椅子から転げ落ちるほどの衝撃を喰らった(誇張ではない!)

Dinner in America004

パンクは不可避的に自身の存在誇示であり政治表明でもありえた。
これこそオリンピックより遥かにハードルは低く、参加することに意義がある!というものだ。
上記のパンクアーティストたちは、芸術性(音楽性)、飛び抜けた発想、具体化する演奏技術をしっかり備えた人々であったが、多くのパンクロッカーたちは、楽器もまともに弾けず歌もただ文句を怒鳴り飛ばしているだけの人たちであった。
しかしデビュー時は衝動的で攻撃性だけのムーブメントに乗っかったバンドに過ぎないところから、音楽性と歌詞のメッセージ性にも磨きがかかりじっくり聴かせる練れたバンドへと変貌するものも少なくなかった。バズコックス(ピート・シェリー)からマガジン(ハワード・ディヴォート)へ、、、など。実にカッコよい変貌を遂げてゆく。勿論、ジャムやザ・クラッシュ(ジョー・ストラマー)は言うまでもない。
しかしこのバズコックスのピート・シェリーなどもう亡くなっている。デビッド・ボウイも唸った名コンポーザーのジョー・ストラマーも亡くなっている。もうかつてのパンクミュージシャンが亡くなる歳(病気もあるが)なのだ。

パンクがロックのクラシックになるとは思えないが、でもこれを機に活きの良い発散行為をしている若者(今は爺さん)の姿に触れるのも、意味があると思う。少なくともこんなアホなことを死に物狂いでやってる人を最近見たことは無い。
皆、分別臭く妙に保守的に洗練されているのだ。

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最近流行っているボーカロイドも最初聴いた頃は面白味を感じたが、皆同じに聴こえてくるのだが。
ゾクゾクと音楽アプリケーションによって作り出されてゆくサウンドが、スマートなのだが何やら金太郎飴みたいな味わいで、、、。
別にわたしはテクノロジー(ソフト含む)を多重に介したものをどうこう言うつもりはない。
ソフトマシン(ロバート・ワイアット)やタンジェリンドリームだって、テクノロジーは使い倒している。ただ技術が段違いではあるが。
タンジェリンドリームのエドガー・フローゼが、わたしはベートーベンと同等の心境で音楽の創造に臨んでいる、とかつて語っていたが、そこまでの創造性や芸術性は別として、音楽にかける純粋で新鮮な意気込みは、同じものを感じるのだ。
ここに出て来るパンクロッカーに(爆。
だから、生きようと、多少ズレていようが自らのこころに従い、よりよく生きようとするこういう人たちを揺さぶり続ける。

Dinner in America006

一度くらいパンクに熱狂するのも良い。
彼らもいつまでもパンク(という形式~ムーブメント)に留まっていたわけではない。
別に大人になって卒業するという意味ではなく、、、
子どものままより強度のある表現に突き進んでいったアーティストは少なくない。
それがまた興奮させられる(爆。

檻に入ってなかなか出てこれなかったり、薬で身を亡ぼしたり、夭逝してしまったりするひとたちもいたが、この映画のサイモンはしっかり戻る場所~パティの待つところがあるので、心配はいらない。
自分の場所があるということは、最終的に強い。
これは言える。

このカップルに惹かれた(笑。



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八月の物語

August Story001

八月的故事  August Story
2006

香港

マク・ヤンヤン 監督・脚本


ディーン・フジオカ、、、平安(洋裁店住込み見習い)
ティエン・ユエン、、、玉意(女子高生)
ジャン・チェン、、、恚芳(玉意の友達)


Faye Wong ~王菲 の「紅豆」がしっかり聴けた。
懐かしい。王菲は大好きな香港のミュージシャンでアルバムもかなり持っている。
良い曲ばかりだ。
しかし彼女の音楽を聴いたのは何十年ぶりか、、、
また聴き返したい。



全編に渡り絶えず音楽が流れてゆくが、どれもリリカルでよい曲ばかり。
選曲のセンスが光る。
そこに青くて粗いトーンが主調の空間が香港の8月の暑さと街の猥雑さをよく表している。
そう想い出そのものと言った空間でもあった。
洋裁店が何とも風情がある。蒸し暑い中、アイロンかけまくっている。ミシンをかけたり、採寸して居たり、、、。
見習いの平安とバイトの玉意の働く手狭な店内が詩情を感じる絶妙の空間なのだ。
粥を分け合って食べていたり、、、玉意が熱射病になりかけて平安に氷を額にのせてもらったり、、、

August Story003

玉意と平安の淡くも繊細なこころの触れ合いがリリカルな曲とも相まって、、、
まるでミュージッククリップみたいな気もして来るが、心地よい時間が味わえたものだ。
セリフも極力抑えられているところがまた良い。
表情や所作で曖昧で不確かな気持ちを確認し合う。
ことばで言ってしまっては身も蓋も無い。

August Story002

玉意は制服が小さくなり、学費もまだ納める当がないようで、高校3年を迎え不安な表情をしている。
父親がどういう人なのか、保護能力がないのか、躾なのかよく分からない。
洋裁店は叔父の経営する店のようだが、大人たちは技術的なこと以外余計な口出しやお節介はしないようだ。
それが大人の配慮にも思えて来る。
バイトをしている洋裁店の平安が彼女の制服を丁寧に卒業まで困らぬよう仕立て直してくれた。
玉意が淡い気持ちを平安に抱いていることは伝わって来るが、彼はあくまでも良い兄の立ち位置でいる。

August Story005

ふたりの想い出の断片が曲に乗ってどこに収まるのか、、、。
玉意の初恋は思い出の中に消えて、後に平安の結婚披露宴でふたりは顔を合わせる。
友人の恚芳と三人で記念写真を撮る。

最後、制服についての玉意の述懐が曲の中に流れる。
制服に思いを込める。そうなのか、と思う。
玉意と平安がそれぞれ相手のことを大切な想いとして胸にしまっていることが分かるエンディングであった。

August Story004

これだけ雰囲気~感性で世界観を伝える映画も面白い。
こういった映画もまた観たいものだ。
キャストがとても自然な演技で清々しい。




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アンモナイトの目覚め

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Ammonite
2020

イギリス・オーストラリア・アメリカ

フランシス・リー 監督・脚本
ダスティン・オハロラン、フォルカー・バーテルマン 音楽


ケイト・ウィンスレット、、、メアリー・アニング(古生物学者)
シアーシャ・ローナン、、、シャーロット・マーチソン(裕福な人妻)
ジェマ・ジョーンズ、、、モリー・アニング(メアリーの母)
ジェームズ・マッカードル、、、ロデリック・マーチソン(シャーロットの夫、趣味が化石収集)
アレック・セカレアヌ、、、ドクター・リーバーソン
フィオナ・ショウ、、、エリザベス・フィルポット(メアリーの旧友)


ことばの少ない、美しい映画であった。

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1840年代のイギリス南西部の海辺の町ライム・レジスを舞台に淡々とメアリーとシャーロットの物語が描かれる。
BGMとロケーションがこころに染みる。
ふたりのヒロインは勿論、申し分ない
メアリー・アニングは生前学会では認められることのなかった実在の化石の採掘・研究者であった。
まだ男中心の社会である。
その男~夫に対する不信感と孤独から鬱症状を抱えて療養を兼ねてやって来た女性がシャーロット・マーチソン。

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ロデリック・マーチソンという如何にも裕福そうな男性が、都会から化石収集ツアーで妻を連れてメアリーのもとにやってきた。
メアリーは化石の発掘でそれなりに評価は受けており、知る人ぞ知る存在である。
彼女の発掘作業を見学してその男性は思いもよらぬ頼みごとをするのだ。
それ相応の謝礼は支払って行ったようだが、妻を療養のために暫く置いて欲しいと丁重に頼んで立ち去る。
人付き合いに嫌気のさしたメアリーにとり厄介なお荷物であったが、引き受けることに、、、。

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鬱である夫人はやはり外に出るのが酷く億劫であり、家事を手伝うにしても何もできない。
その自分がもどかしく号泣する。何かと手のかかる人なのだ。
更にメアリーの化石発掘の手伝いが出来るでもなく、その間に海水浴を思い切ってするが発熱して寝込むことに。
観光客相手の化石の装飾販売も夜を徹しの看護でままならず、、、。
しかしその甲斐あって夫人は前よりも表情が明るく元気になり、無理なく行動を共にすることも出来るようになる。

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音楽会に招待されてひと悶着あったりもするが、、、
看護していた時に軟膏を買った彼女がどうやら昔の彼女であったか、、、
その彼女とシャーロットが仲良く喋っているのを後ろで覗い、、、
メアリーは会場でイライラし始め途中退席してしまう。
しかしその後、お互いの気持ちは確認できる。

それからは、海辺の採掘場での詩情溢れる美しい光景である。
わたしのもっとも好きな淡々としたなかでの繊細極まりない所作。
密やかなやりとり。海の光景にBGMがとても自然に響く。
こころが通じ合い、、、海の中で身も心も溶け込んでゆくような交わり、、、。
ふたりの間に距離がなくなる、、、。

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永遠に近い恍惚の時を生きるふたりにある日突然、シャーロットに届く帰って来るようにという夫からの手紙。
豊潤で心地よい場がいとも呆気なく消え去る。
シャーロットに冷たく接していたメアリーの母も淋しがる。
そして母が亡くなり、独りで化石を採掘と客相手の商品作りをこれまで通りに続けているとき、手紙が来た。
メアリーはシャーロットに招かれ、長旅を厭わず彼女のもとに飛んでゆく。

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その綺麗な家にはメアリーの部屋が設えてあった。
些か強引であるが彼女と一緒に住もうと画策していてついにその環境が整ったのだ。
メアリーを呼び寄せた理由が分かるが。
これにはメアリーは閉口する、
プライドも許さない。「自由な鳥を金の籠に閉じ込めるつもり?」
シャーロットには好意だけしかない。きっと喜んでくれるというサプライズであったのだが。
さっさとその場を離れ、メアリーは上京したついでに見ようとしていた大英博物館に直行する。
そこには自分がかつて寄贈した恐竜の骨が展示されていた。
そのガラスケースの向かいに駆け付けて来たシャーロットの姿が。
見つめ合う二人、、、。



Wowowにて












ブラックフライデーの恐怖

Black Friday001


Black Friday
アメリカ
2021


ケイシー・テボ 監督

デヴォン・サワ 
イバナ・バケロ 
スティーヴン・ペック 
マイケル・J・ホワイト 
ブルース・キャンベル


パンズ・ラビリンス」のヒロインが長じてこの映画のヒロインやっとるとは、、、(悲。
あれは素敵な映画だった、、、。出演作に恵まれていないようで悲しい。

Black Friday002

ブラックフライデーに物凄い数の客が大型トイショップに押し寄せていた。
(アメリカでは暴動レベルで商品の取り合いとなるという。店にとってはかき入れ時で、店長はノルマが課せられる)。
その店が開店する直前に地球外生命体らしきものが落下し、客が店に雪崩れ込み、猛烈に買い物を始めると同時にソレも客にとりつき、何やらゾンビのようなクリーチャーと化したものが混乱の中、次々に他の人間を襲い始める。
噛まれたらソレに成ってしまうところはゾンビに等しい。
ただし、仲間を増やすと謂うより、相手を喰ってしまうモノも多いようだ。
とは言え、直ぐにパンデミックでゾンビだらけとなってしまう。
動きが激しいところで、多数派ゾンビとは異なる。

Black Friday003

ブラックフライデーの中で、誰もこの真相になかなか気づけない。
だが、店員に犠牲者が出始めてから、ようやく飛んでもない事態に恐怖する。
しかし、今日の売り上げを気にする店長やその腰巾着、表彰を狙う店員もおり、電話も不通で、パニックの中で混乱するばかり。
事態も正確に掴めないが、この噺の中でそれを掴んでいる人間や機関があるとは思えない。
突然降りかかった訳の分らぬ災害なのだ(しかしこういうことはよくあること)。
更にこのゾンビ?は、形態を変え、人が哀れに崩れた感じの表情から大変意欲的なエイリアンみたいな精悍な悪面に豹変する。
もう元が人だなんて思いもよらない、昆虫系の無慈悲な存在と化す。

Black Friday004

緊張感なくタラタラ進むのだが、店長含めスタッフがかなりの数犠牲になる。
だが、その犠牲になり方が皆頭がおかしく成って妙な言動を取った末に死ぬ。
独りだけ真面目な頼れるタフガイだけがまともに襲われて死ぬが、、、。
それ以外は、何それと言う感じで死んでゆく。ほぼギャクだが笑う程面白くもない。
見ている主人公たちも、「頭が変になったわ」と言って傍観していた。
こちらも主人公たちと同じく唖然とするしかなかったものだ。

Black Friday005

更に次なる変態では、それらが合体してゆき巨大な怪獣と化すのだ。
何たること。大型トイショップの天井を突き破り夜空に向けて吠えているではないの。
これで残った玩具屋の店員たちが立ち向かえるのか、という構図なのだが、、、
その戦い方が全く要領を得ず、どういう動きをしているのかさっぱり掴めない。
何を思い、考えてるのかも分からないが、何やらドリフのコントみたいな思いつきで対抗する。
で、まさかそんなんで効果あるかと思うとしっかり巨大怪獣が怯みその隙に車に乗って逃げるのに成功する。
(一瞬、ドリフのコントへのオマージュか、と思ったが外国の監督がそれを観てることは無いだろうと思い直した)。
しかし、そんなに甘くないと、こちらは次の瞬間を期待するのだが、呆気なくセーフティゾーンまで逃げおおせたみたい。
わたしには、そこがどんでん返しに思えた(爆。

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監督はホラーコメディという感覚で作っていると察するのだが、笑えない滑るコントを見せられているに等しい。
ズレた人たちが真面目に変なことをしている面白さを狙っているのか
ブルース・キャンベル演じる店長などその最たるもの。
一番まともなマイケル・J・ホワイトの店員はこの一行の雰囲気とは明らかに異なる為、一番デキル男に見えたが早々に怪物に殺されて退場となる。

後は、変な人たちだけが残り、妙な会話をしたり、本音を言って爆発して、訳の分らぬ喧嘩をしたり、その後で和解してみたり、人間関係を巡るお話の尺がかなり長い。ズレた変なことを長々と話しているが笑えないのだ。
しかしわたしもこんな中にいた記憶が何となく蘇ってくるような妙な郷愁に囚われたりもした(苦。
ホラーコメディエンターテイメントを見ているはずが、自分も微妙な表情で見ていることが分かる。
何というか、、、もう少し思い切った方向に振り切って欲しいものであった。
ハチャメチャな、手を叩いて笑い転げるみたいな。

あの怪獣はその後、どうしたのか、更に狂暴化して暴れ回れば、まさにゴジラ状態であるが、、、。
この噺でゴジラが登場しても収拾がつかない。




Wowowにて





ブレア・ウィッチ・プロジェクト

THE BLAIR WITCH PROJECT

THE BLAIR WITCH PROJECT

1999
アメリカ

ダニエル・マイリック、エドゥアルド・サンチェス 監督・脚本

ヘザー・ドナヒュー 、、、ヘザー・ドナヒュー(映画学科学生、監督)
ジョシュア・レナード 、、、ジョシュア・レナード (映画学科学生、撮影)
マイケル・C・ウィリアムズ 、、、マイケル・C・ウィリアムズ (映画学科学生、録音)


昨日のドキュメンタリータッチの深遠で静謐な格調高い映画とは真逆の学生のお手軽なノリで作ったような映画である。
この作品の存在は知ってはいたが特に観る気は起きずにいた。

モキュメンタリー映画の先駆けとなった作品だそうだ。
低予算と謂ったらこれの右に出る映画はないはず。
(こういうのもやれば出来るんだという良い例とはなったはず。だが未だにここまでお金をかけない映画はないのでは)。

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モンゴメリー大学映画学科に所属する3人の大学生が、1994年に“ブレア・ウィッチ”という魔女の言い伝えのあるメリーランド州ブラック・ヒルズの森に入った。そこで怖い映画を撮ろうという軽いノリであったみたいだが、、、(よくある心霊スポットにちょっと肝試しに行ってみる的なものか)。
この森では18世紀から50年ほどの間隔で、忌まわしい大事件が少なくとも3回起きているという。
7人の子どもの内臓を取って殺したなどという禍々しい手口で、犯人は年老いた女の幽霊~ブレア・ウィッチに操られてやったらしい。
折角、事前に取材したのだし、もう少しそれを活かしてもよかったかと、、、。
(特にあのおばあちゃんの興味深い噺とか、バカにせずに)。

中盤にはもう道に迷ったと子供じみた喧嘩になる。
準備もそこそこで来たとはいえ、コンパスと地図があってもどうにもならないのか。
(コンパスと地図をしっかり使えば、出られないなどということはないはずだが、富士の樹海じゃあるまいし)。
仲間荒れが始まり、怒ったり拗ねたり泣いたり、大学生と謂ってもまだまだ子供である。
もっと綿密な計画とシナリオもしっかり作ってクルーも厳選しないと、こうなってしまうか。

THE BLAIR WITCH PROJECT001

そして石を積んだモニュメント風のものや木を組んだブードゥー教の儀式で使うようなものを観ればそれは不安も強まる。
こういった状況となると、夜の闇が殊更怖い。
感覚的にも過敏に成る分、様々な音が不気味に聴こえてくる。
実際、あり得ない声などが複数聴こえていたようだ。
寒さで余計に心細くなる。
何に対しても、過剰に反応してしまう。
朝目覚めるとテントの周りに何者の仕業か、石が積まれている。これは何とも不吉。
しかしそれ目当てで撮影隊を組んでわざわざやって来たのだからどんどん撮れるだけ撮るべきだろう。

神経質になり、仲間との関係にも深刻な影響を及ぼす。
不安と恐怖の募る困難な状況となれば、相手のせいにしたくなる。
お互いを詰り、攻撃し合う。映画を撮りに来たのにカメラをまわすなと怒鳴りまくる等々。
そしてワザと地図を捨ててしまったり、破滅的な行為をするようにもなる。
不信感が募る。
夜毎に物音が不穏さを増す。
死の恐怖に苛まれる。
そして、途中で消えたジョシュアの歯と思しきものを見つけてしまっては、パニックになるのも無理はない。

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忌まわしい場所に自ら入ったとはいえ、出られなくなり絶望するとこうなるんだろうな、、、という感覚的、感情的なものが分かる。
しかし特に女の子の激しい感情表現は、クールな対応すべき時に厳しいものだ。
終盤はもうギャーギャー喚き通しで一緒に行動は遠慮したくなると言うもの。

いよいよ終盤に来て、女の子がわたしのエゴで皆を巻き込んでしまってごめんなさいとビデオに撮っているところが健気。
それもそれぞれのおかあさんに謝っているのだ。

最後のボロボロな館で、背を向けて立っているヒト~マイケル?の後姿(違う人か)。
カメラが地べたに落ち、ここで全てが途絶える。
これは、なかなかのもの。唯一怖く感じられたところである。こういったシークエンスは後の映画にも活かされたのでは、、、?
結局、8日間も3人はこの森を彷徨っていたのか。

ところで、このビデオだけが数年後発見されたのね。3人は消息不明でも。
3人のゴタゴタの活躍ぶり(更に彼女の謝罪)が残せたことだけでもよかった。



この映画には驚異の記録がある。
全世界興行収入2億4050万ドルというのだ。びっくり!この製作陣、監督たちはこの後何も作ってはいないそうだが、、、
この一本だけで、ずっと暮らせる。これを資本に何か事業でも始めてもよいだろうし。実際どうしたのだろうか。
(ちなみに、主演の3人の報酬は1000ドルであった。ケチ。製作費も6万ドルとか)。



全く別のスタッフで続編があると謂うが、、、観る気は微塵もない(笑。




Wowowにて







洞窟

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Il buco
2021
イタリア・フランス・ドイツ

ミケランジェロ・フランマルティーノ 監督・脚本
ジョバンナ・ジュリアーニ 脚本
レナート・ベルタ 撮影

パオロ・コッシ
ジャコポ・エリア
デニース・トロンビン


「1960年代、若い学者たちが前人未到のカラブリアの洞窟を探索。」
彼等は地下700mまで到達した。イタリアで二番目に深い洞窟だという。
この探検を当時のドキュメンタリーフィルムのように再現して行く。
セリフ無し。ロングショット、長回し。
これだけ山岳と高地を大きく捉える映画の映像はそうは観ない。
動物や人が点なのだ。

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大変な絶景であったが、神秘的で荘厳な光と様々な自然音が興味深いものであった。
深淵の闇の探検にあって、火を燃やして投げ入れ下の状況を確認する場面が特に印象に残る。
同時に音である。火、テレビ、動物、虫(蠅)、鈴の音がとても立っていた。
微視的な感覚が呼び覚まされるところ。
ここで言う闇が、完全な真っ暗であることも分かる。

出演キャストは皆、素人でこの洞窟探検時に自分のおじいさんのやったことを再現していたのだ(笑。
羊飼いのおじいさんも自分の好きなようにしていたようだが、亡くなるところは、演技となろう。看護する人も。
(実際にこの映画を撮った後に彼は亡くなったそうだ)。
洞窟の深淵の闇に降りる探検隊は本当の専門家に頼み、やって貰っているとのこと。
確かに専門家でなければ出来ない芸当だ。
つまり完全に撮影隊は下の闇の深淵と、上の高地の日常生活の二つに分かれ、それぞれ独自に撮影を進めて行ったようだ。

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基本的に家畜と思しき動物たちはどれも野生で、好き勝手に動いていたそうで、家の中に馬が頭を入れてくるのも馬の勝手のようだ。
羊飼いのおじいさんが倒れていてその看護をする部分は再現演技にせよ、それ以外はテレビを見ているシーンもサッカーボールで遊ぶところなど、それぞれ自由にやっていたという。ボールは綺麗に洞窟の中に落ちて行った、、、。


高地の撮影でいよいよ寒くなって来たなという感じも分かったが、最後の全体が白んでくるのも自然の相貌を撮ったものだという。
こういった作品を見てしまうと、小賢しく作り込んだお喋りで充満した映画は、少しの間遠ざけたい気分になる。

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静まり返った部屋に、ずっと環境ビデオとして流しておくのもよいかも。
厳かな空間にこころが引き締まる。





Wowowにて




ビザンチウム

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Byzantium
2012
イギリス・アイルランド・アメリカ

ニール・ジョーダン 監督
モイラ・バフィーニ 原作・脚本
ハビエル・ナバレテ 音楽

ジェマ・アータートン、、、クララ(吸血鬼)
シアーシャ・ローナン、、、エレノア(吸血鬼、クララの娘)
サム・ライリー、、、ダーヴェル(吸血鬼、同盟)
ジョニー・リー・ミラー、、、ルヴェン(吸血鬼、同盟、クララを少女時代に娼婦にする)
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、、、フランク(高校生、バイトでウェイター、白血病、エレノアの彼氏)
ダニエル・メイズ、、、ノエル(ゲストハウス「ビザンチウム」のオーナーの息子)
トム・ホランダー、、、ケヴィン(高校の教師)
マリア・ドイル・ケネディ、、、モラッグ (高校の女性教師)
ウォーレン・ブラウン、、、ギャレス(吸血鬼、同盟の幹部)


何故ビザンチウムなのか。
泊まったゲストハウスの名前と言うだけではちょっと納得まで行かない。
ビザンチウム自体がひとからみあればもっと謎めいて面白かったかどうか、、、
寒色系の悲し気な色調の冷たい空気感をシアーシャ・ローナンが際立たせていた。
美しい絵が堪能できる映画である。
BGMも良く、エレノアの弾くピアノもとても情景にフィットしていた。
丁寧なクロスカッティングで現状と過去の情景が綺麗に編集され母娘の波乱の人生に沿うことが出来た。

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この8歳差の母娘の吸血鬼は斬新であった。
(対極の性格の母娘である。どちらも吸血鬼になったときの姿のままで200年を生きている。母は24歳。娘は16歳)。
ふたりとも日光や十字架とか全然気にしないし、恐らくニンニクも大丈夫のはず。
噛まれた人間は単に血を吸われて死ぬだけ。噛む前にまず鋭く長く尖った親指の爪で血を吸う穴を開けるのが特徴。
血を吸わずには生きてゆけない孤独に苦しむエイリアンといったところか(エレノアだけ)。
もっとも斬新に思えたのが、母クララが生活の為と言ってせっせと金儲けを企むところ。
女の子を雇いノエルを利用して住みこんだゲストハウスを売春宿みたいにして札を数えている。
これはなかなか見ない吸血鬼だ。やはり人間社会に娘を守り安全に生きるには金がないと危ないことは心得ている。

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エレノアは祈りを捧げつつ、死期の近づいた人の血しか吸わない(同意を得たうえで)。
母のクララは、大胆に誰の血でも吸うが、特に自分たちの秘密に気付いた人間は決して生かしておかない。
長生きしていても、常に警戒しながら葛藤もしつつ孤独の中で生き長らえて来たのだ。
娘の方は解放されて自由に正直に生きたいという気持ちをもって葛藤している。
(手記を書いては破り捨てるという行為を繰り返している。詩的だがリスキー)。
母は割り切って嘘を楽しくついて生きてるが。

エレノアは白血病で余命幾許もないフランクと恋に落ちる。
誠実な彼女は、高校の授業で出された課題の自分の真実の物語(私小説)を、彼に読ませる。
彼は激しく動揺する。
教師もその物語の出来の良さ~文才に驚くが、課題通りのフィクションでないのなら、穏やかではない。
彼は真偽を確かめに家庭訪問にやって来る。
場合によっては彼女を精神科医にも診せなければならない。
結局その教師は首を突っ込み過ぎてクララに血を吸われてお陀仏。

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そんななか、、、
掟を破ったモノを罰するため吸血鬼同盟が警察に化けて彼女らを追い詰めてゆく。
彼女らは「創造」の罪を犯してしまったのだ。だから女は仲間に入れたくない、のだそうだ、、、。
ここが一番の窮地であるが、母娘共に捉えられ、十字軍が使ったという槍で処刑されそうになる。
だが、彼女らをずっと調べて来たダーヴェルがエレノアの慈悲深さなどに感銘を受けふたりを助けた。
そして母はエレノアの命を救うために吸血鬼にしてからずっと過保護にしてきたが、別れて暮らす時になったことを知る。
クララは島の地図をエレノアに渡し、フランクと共に生きることを促す。

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エレノアは死期の近いフランクを吸血鬼にして生かそうと秘密の島に連れてゆく。
夥しい蝙蝠が潜む小堂のような空間に入ると何かが現れ、噛まれると吸血鬼として再生する。
魂と引き換えに生を得るという。そのシーンはダーヴェル、クララ、エレノアの時と同様であった。
死から逃れるようにして全く新たな感覚で吸血鬼として蘇るのだ。
蝙蝠が夥しく宙を舞い、全ての滝が血の色に染まる、、、。

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これからは血さえ吸っていればいつまでも生きられる。
いつまでも生きているのが幸せとは謂えないにせよ。
お互いに孤独であれ、支え合って生きてゆけることは、大きいのでは。

シアーシャ・ローナンが冷たく怪しい光の中、儚げで異様に美しかった。
やはりこの二人の女優で魅せる映画でもあったことは確か。



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ベイビー・ドライバー

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Baby Driver
2017
アメリカ・イギリス

エドガー・ライト 監督・脚本

アンセル・エルゴート、、、ベイビー / マイルズ (天才ドライバー)
ケヴィン・スペイシー、、、ドク(強盗団元締め)
リリー・ジェームズ、、、デボラ(ウエイトレス、ベイビー の彼女)
エイザ・ゴンザレス、、、ダーリン / モニカ・カステロ(バディの妻、強盗)
ジョン・ハム、、、バディ / ジェイソン・ヴァン・ホーン(ダーリンの夫、強盗)
ジェイミー・フォックス、、、バッツ / レオン・ジェファーソン(強盗)
ジョン・バーンサル、、、グリフ(強盗)
CJ・ジョーンズ、、、ジョセフ(ベイビーの里親、足と耳が不自由)


べらぼうに面白かった。
ラストナイト・イン・ソーホー」もスタイリッシュでよく出来た作品であったが、面白さでは、こっち。

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キャストも出来の良い映画でたくさん見て来たケヴィン・スペイシーである。安心する(笑。
リリー・ジェームズは何と言っても「ガーンジー島の読書会の秘密」か。「ウィンストン・チャーチル~」、そう「シンデレラ」は忘れてはなるまい。アンセル・エルゴートは時々、映画で観ており、「ダイバージェント」が印象に残るが、もうこれが断然彼の最高傑作に他ならない。ホント良い役に当たったものだ。
ドリームガールズ」でジェイミー・フォックスは良い役を熟していた。ここでは凄い厳つい片っ端殺す厄介な悪役だが。
キャストは言うことなし。

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全編を通し曲がぎっしり詰め込まれていて、そのセンスも良い。
わたしの知らない曲もあるが、クイーンやR.E.Mやブラーそしてサイモン&ガーファンクルの曲で”ベイビー・ドライバー”。
でも一番、乗ったのがFocusの”HOCS POCUS”であった。シーンにこれ程マッチした曲があるだろうかというノリでその尺も長くて狂喜してしまったではないか(笑。ともかく、曲がシーン全て馴染む。なかなかない。
しかも寡黙な主人公は会話の際、たまたまその時に流れていた曲の歌詞を応えてしまったりする。それでも流れが成り立つ洒落た演出。スタイリッシュだ。

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そして何よりカーチェイスが半端でなかった。こんな迫力あるのは見たこと無い。
最初のスバル・インプレッサWRXの走りからして、もう圧巻。
(その他も申し分ないが、、、ギャランも出て来た)。
これだけ腕がよければ、「逃がし屋」でも何でもやってみたくなるだろう。
このドライブテクニックの実況をありのままに見られるところがワクワクである。
ジェイソン・ステイサムの運び屋もクールだったが。
こっちを見てしまうと、こちらに軍配(笑。

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わたしも以前そうだったが、ずっとイヤホンやヘッドホン付けて音楽を聴いていると、かなり集中力が出てスッキリクリアな感覚になる。周囲のノイズから遮断されることが何より大きい(心理的にも)。
最近、映画を観るためにまたヘッドフォン生活に戻って来たが(笑。
ベイビーもそれで持病の耳鳴りが治まりあのドライビングテクニックの披露が出来ていた。
サウンドに合わせて車を走らせる。そりゃ痛快だろう。全てがシンクロしてゆく。自分の世界に没頭だ。
まさにこれを固有時と言いたい。

また誤解を呼び、命の危険にも晒される原因にもなった、サンプリングによる音作りも大変面白い趣味であった。
ギャング団にとっては、「てめえ録音してタレこむつもりか?」という、大変際どい趣味ではある。
あの音源もとに作っている場面はとても興味深い。
兎も角、面白いものを沢山見せて貰って嬉しい映画だ。

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そして彼女デボラの為にも組織を抜けて堅気になろうとするベイビーであったが、やはり抜けさせてくれない。
最後の郵便局を襲撃する際は、いつもと異なり指示に従わず、組織ごと潰してしまえと言う極めてリスキーな賭けに出る。
それ以前からバッツが暴走しだし、そのやり方に耐えられなくなっていたところでもあった。

最後の最後にボスのドクに泣きつくが、計画を滅茶滅茶にした挙句に、組織そのものの壊滅させてしまい、ふざけるなと言うところだが、彼はベイビーには特別な親心でもあったか、身を挺して庇ってくれた。
そして厄介な愛する妻を失ったジェイソンがターミネイターみたいなタフさで襲って来る。
これには大いに手古摺るが、デボラとの連携で辛くも倒す。
ジョセフに有り金全部渡して施設に入れ、デボラと逃避行を図るも警察に先を阻まれ「生きる世界が違う」と彼女に言い残し、独り投降する。

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ひたすらスリリングなカーアクションで楽しまさてくれる映画であった。
最後、主人公カップルが死ななければ良いがとそればかり気になったが、メデタク無事で、裁判もベイビーに好意的な証言が続き、5年で仮釈放となる。
待っていたデボラと再会し、夢にまで見たドライブが始まる、、、(笑。


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後味の良い映画である。



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ザ・ウォード 監禁病棟

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The Ward
2011
アメリカ

ジョン・カーペンター 監督
マイケル・ラスムッセン、ショーン・ラスムッセン 脚本


アンバー・ハード、、、クリステン(アリスの別人格)
メイミー・ガマー、、、エミリー(アリスの別人格)
ダニエル・パナベイカー、、、サラ(アリスの別人格)
ローラ=リー、、、ゾーイ(アリスの別人格)
リンジー・フォンセカ、、、アイリス(アリスの別人格)
ミカ・ブーレム、、、アリス
ジャレッド・ハリス、、、ストリンガー(医師)


やはりジョン・カーペンターだからか、こういった病棟モノ映画では、とても納得できる快作であった。
幼少期に凄まじいトラウマを受けた少女が長じるに及んで多重人格に成ってしまったのであるが、その各人格が分離し一番新しく誕生した人格~ヒロインの目から描写してゆくため、恰も無法な(まるでナチスの人体実験目的の)病棟に隔離された患者たちのサヴァイヴァル物語のような形で進行する。
凶悪な医者と看護師、殺伐とした院内、残虐な実験装置と禍々しい器具類、、、知らず消えてゆく患者たち、、、退院した訳でもないのに、、、。
ヒロインが「信頼できない語り手」 としてミスリードを見事に誘う。
裂け目のない脚本と演出が素晴らしい
叙述トリックが利いており、わたしもそのままを観てハラハラしていた。

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理由も分からず農家に放火して連れてこられたクリステンには過去の記憶が無い。
当然である。それから逃れるために登場したのだから。
そのクリステンが病院の隔離病棟に強制的に入院させられてみると、他にも何人もの患者がいた。
他の患者は退院をねがいつつも、従順に(何かを恐れ)暮らしている。
クリステンはそうはいかず、婦長の出す薬を一切飲まず、医者にも反抗的な態度を示す。
彼女にとっては環境の総てが不条理なのだ。

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しかし主体が多重人格のまま生きてゆく訳にはいかない。
社会生活が不可能であり、病棟から出ることは当然、叶わない。
そこに、クリーチャー化したアリス~メタアリスの存在が秀逸である。
この超自然的なモノが刻々とアリスの分離した別人格を消し去ってゆく、ある意味人格を多重化して自己防衛を図ろうとしたアリスにとり驚異の魔物であろう。

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病院の職員や医師は誰一人としてメタアリスを問題視しない。
クリステンが何を訴えようが、彼女を鎮めることしかしない。
(謂うまでもなく彼らに見えて関われるのはアリス一人だ)。
クリステンは、そのアリスを脅威に感じて恐れており、他の患者たちは恐れながらも存在自体をひた隠しにしようとしていた。
彼女は他の患者~人格を巻き込み管理・治療から、メタアリスから逃れようと企てる。

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クリステンは一番新しい人格であることから、このメタアリスが何であるか分からないのだ。
と謂うより、アリスに取って代わってアイデンティティを掌握しようとする存在に見えてくる。
他の人格たちは、メタアリスが自分たちを攻撃し出しゃばらないようにして来たことから、ある時寄ってたかってソレを殺して~抑圧してしまった。
その反動で彼女は遥かに強力に狂暴になって蘇り粛清を始めたのだろう。医者側の存在と言える。
アリス本来の自我が強化されたとも見ることが出来るか。
治療が効果をあげているということだ。

The Ward005

そうなると一番厄介なのは、ヒロインのクリステンとなる。
活きがよく大暴れして何度捕まっても脱走を繰り返す。
自由を手にしようと諦めない。
ひとつのアイデンティティに収斂することを拒み続けるのだ。
アリスを乗っ取る可能性の高い危険な人格と言えよう。

何故かジョニー・ディップの顔が浮かんだ(爆。
ジョニー・ディップの大ファンであるわたしにとっても怖いと謂えば凄く怖い。
特に最後を見てしまうと、、、こういう人だったのかも、と思えてくる。
(あの一齣は蛇足だなあ、いらないな)。

結局、主治医がメトロノームで催眠療法を施した際、メタアリスと揉み合いになりアリス=クリステンは窓を破って外に落下する。
ベッドの上で気づくとアリスは、両親と面会し、退院して家に帰ることが医師から告げられる。
病院の医師もスタッフも皆親切で献身的な人であった。
自分のスケッチブックを開き、これまで描いた女性の顔~自分がなってみたい女性であろうか~を眺めるが、クリステンのところで止まる。(まだ拘りが残っていた)。


これは間違いなく傑作映画である。




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マスカレード

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Masquerade
2021
アメリカ

シェーン・ダックス・テイラー 監督・脚本

ベラ・ソーン、、、ローズ
アリヴィア・アリン・リンド、、、ケイシー
オースティン・ニコルズ、、、画商
マーセア・モンロー、、、画商の妻


特に書くつもりはなく、別の映画でと思ったが今日は観る時間が捻出出来ない。
従ってほんの一言。
詰まらなかった理由を書くことになるか。

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「マスカレード」(仮面舞踏会)という題名だけ素敵な、××な映画を観てしまった。
内容~世界観は実に薄っぺら、仕掛けに拘った割には見終わって、「それで?」という感じ。
面白くも怖くも感動もない。所謂、復讐劇ではあるが。
何にもない映画であった。ただ、盗んだ絵を自分たちが画商として売るというのが良い手なのか?問題なく金に換える上で。
(だとすればこれを参考にする輩が出て来るか)。

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過去に起きた犯罪と現在起きている事件をクロスカッテングして見せてゆく手法で進む、、、
現在のローズのいる場と逃げ惑うケイシーのいる場が、見た目シームレスに(分けて)構成されているが、
そのために、行ってはいけない場所~子供部屋・外とか、呼んではいけない言葉~名前とか、色々制約が出て来るために妙な滞りが生じてしまう。観ている側にとっては間延びとして感じられるばかり。これもしかして演出でわざとやっているとしたら勘違い。
叙述トリックというよりは、単に触れる訳にはいかないから触れない、というレベルの。
もたつかない鮮やかな展開を叙述トリックと謂いたい。
これでゾクゾクしたりハラハラしたりすると思ってるのか?
確かに、娘が天井が抜けて下に落ちそうなところで、ハラハラはしたが、わたしが痛いのが嫌いなだけの理由である。

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娘の家族は一度も映されないが、過去に全員、この画商の男に殺されたのか。
前半に殺されたベビーシッターの妹が現在の強盗団の仲間として電気を切った女性ね(彼女もベビーシッターか)。
今の画商の娘は全く登場しない。見に行かれては困るのでママが猿轡されて縛られる。
過去も現在も(わざと)同じフェンシングのマスク。拳銃で撃たれた時「お前の責任でこうなった」をそのまま返すに良い演出ではあった。ナイフで刺して「あんたの責任でこうなった」と。
飾られた写真も違う。
屋敷の外観が全く違う。
そして、最後に血まみれのケイシーが出て来る屋敷は、画商夫妻が入ったところとは全く違い、彼女の顔がクローズアップされ現在のローズになってエンドロールである。
が、それが何なのよ。
(あんな子供が銃で撃たれてよく生き残ったものである。そこが何とも)。

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ベラ・ソーンという女優さんが今、注目を浴びているとか、、、。
特にピンとこなかった。そりゃ、フェンシングのマスクしている尺もあるし、存在感示すほどのものでもなかった。

Masquerade0014.jpg

Blu-rayディスクの無駄と言うもの(録画したのをコピーして観ている為)。



Wowowにて





ラストナイト・イン・ソーホー

Last Night001

Last Night In Soho

2021
イギリス

エドガー・ライト 監督・脚本
クリスティ・ウィルソン=ケアンズ 脚本
エドガー・ライト 原案
スティーヴン・プライス 音楽

トーマシン・マッケンジー、、、エロイーズ・ターナー(デザイナー専科の学生)
アニャ・テイラー=ジョイ、、、サンディ (1960年代の歌手志望の女性)
マット・スミス、、、ジャック(60年代のナイトクラブのマネージャー)
ダイアナ・リグ、、、ミス・コリンズ (エロイーズの下宿のオーナー)
リタ・トゥシンハム、、、ペギー・ターナー(エロイーズの祖母)
テレンス・スタンプ、、、銀髪の男、刑事
マイケル・アジャオ、、、ジョン(デザイナー専科の学生、エロイーズの彼氏)
シノヴェ・カールセン、、、ジョカスタ(デザイナー専科の学生、エロイーズを馬鹿にする)
マーガレット・ノーラン、、、セイジ・バーメイド(エロイーズのバイト先のパブのオーナー)


トーマシン・マッケンジーは「オールド」でこれは間違いなくブレイクする女優だと思ったがしっかり難しいヒロインを演じ切っていた。
彼女と共にヒロインを演じるのがSF映画に幾つも主演しているアニャ・テイラー=ジョイ。相変わらずのビビットなオーラ。

Last Night002

主演がこの二人なら、ゴージャスなものになるはず。
とは思っていたが、不思議な、これまで観たことの無い感じの映画であった。
エロイーズは、ロンドンのデザイナー学校に受かり有頂天になって故郷を後にする。
しかし祖母が送り出す際、あなたの(見えてしまう)能力には気を付けてねという忠告をした。
(当然、お化けでも見えるのだろうと思ったのだが)。

学生寮のルームメイトがいじめっ子の為、外に部屋を借りてみると、1960年代に生きる女性と夢の中でシンクロしてしまう。
その女性が死んでいるとは限らない。まさにその女性の生きる空間に投げ出されるのだ。
部屋に沁みついた記憶像とでもいうようなサンディという女性と彼女を取り巻く世界にエロイーズも影のように入り込んでしまう。
サンディが煌びやかなナイトクラブで鏡を背に踊ると映った姿がエロイーズなのだ。何とも面白い鏡像関係。
サンディが男性客と踊れば、ターンの度にエロイーズに代わったりする。鮮やかな手際の絵であった。
60年代ポップは然程、これといった郷愁を誘うものはなかった、、、。塩化ビニールのレコード盤は良い味を出している。

Last Night003

ロンドンの古い歴史ある下宿とあらば、これまでに様々な人が借りてきたはずである。
殺人事件も一件や二件では済まないかも知れない。
そうした情報が何となく事前に入っていて、幻視と睡眠時異常行動などのある意味認知症とも取れる症状にも絡んだものか。
だが、、彼女は、まだ若い。
しかし霊視というものとも異なる(自殺したママは見えるが、これも幻視ともとれる)、ここでは他人の一時期の生活を共に追体験するのだ。
終盤まではエロイーズが一方的にサンディの生活を寄り添うように観察していて、彼女は見られていることを全く知らないのだが、下宿のオーナーこそ今現在のサンディであることが判明してからは双方向関係~現実の関係となる。
そしてそれまでは悪夢の中で遭うだけのサンディを散々食い物にして来た男たちが、まるでフランシス・ベーコンの絵から抜け出て来たような顔を失った姿でエロイーズの白昼の世界にも侵食して来るのだ。

Last Night004

もしや作者はロンドンの魔界性をこそ描きたかったのか。ロンドンの夜の不穏な街はタップリと描かれていた。
しかしずっと続くこの能力~症状は何なのか。そこが微妙である。
当人にとってその「力」は、日常の平穏な生活を脅かし不穏で不安定なものにする作用しかない。
後半はもう半狂乱で、恐怖に圧し潰されそうになっているではないか。
明らかに要らない捨てるべき、治療すべきものであろう。
周囲は田舎出で60年代趣味のエロイーズを見下し冷たくいつも陰口をたたいている。
彼女には居場所がない。そして夜にベッドに入れば、悪夢のサンディの世界に突き落とされる。
表面的には煌びやかな、搾取と欲望の渦巻く泥沼の世界だ。
そこにあって、唯一の救いは、何かとエロイーズのことを気にかけ心配してくれる心優しい同じクラスのジョンの存在だろう。
彼がいなければ、ホントに彼女は独りボッチである。

Last Night005

兎も角、幻視では、ジャックにベッドでめった刺しにされて殺された、搾取されて果てた哀れなサンディは、実際は自分を貶めた男たちを悉く殺害して、下宿のオーナーとして生きていたのだ。ではあの幻想とは、、、何であったのか。
(そして死体を床下に放り込んで隠すというのは、他の映画でも観たモノだが、腐乱の悪臭をどうするのか)。
しかしエロイーズは彼女が大舞台の歌手としてデビューすることを願っていたにも拘らず貶められ娼婦に仕立てあげられたことを知っており、彼女に深く同情している。
最後は、下宿が出火しサンディがナイフで自殺を図るのをとめたエロイーズであるが、結局彼女を心配してやって来てサンディに刺されたジョンを助けて、下宿はサンディもろとも燃え尽きる。
エンディングは、一年生エロイーズのコレクション発表が皆に絶賛されているところで終わる。
あれまあ、という感じ、、、。

それにしても60年代ってこんな時代~雰囲気であったか?
何とも言えない不穏で甘味で猥雑な空間だ。

わたしにとって、トーマシン・マッケンジーとアニャ・テイラー=ジョイの華やかでスタイリッシュな絡みを見て楽しむ映画であった。
絵的に見事

Last Night006


今日観たもう一本が「樹海村」というものであったが、久々に見る駄作の見本みたいな映画であった。
SUICIDE FOREST VILLAGE 2021
清水崇 監督
保坂大輔、清水崇 脚本
山田杏奈、山口まゆ、工藤遥、、、
一体どういう本なのか。基本となる世界観がまるで出来ていない。
こんな作品に山田杏奈を出さないで欲しい。
書く気にまるでなれなかった。




Wowowにて









ひらいて

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2021

首藤凜 監督・脚本
綿矢りさ 原作
岩代太郎 音楽
大森靖子「ひらいて」主題歌

山田杏奈、、、木村愛(たとえに恋する、美雪の彼女、高3)
作間龍斗、、、西村たとえ(美雪の彼氏、愛と同じクラス)
芋生悠、、、新藤美雪(たとえの彼女、愛の彼女、高3)
板谷由夏、、、木村頼子(愛の母)
田中美佐子、、、新藤泉(美雪の母)
萩原聖人、、、西村崇(たとえの父)
鈴木美羽、、、竹内ミカ(愛の友人、多田のことが好き)
田中偉登、、、多田健(愛を片思いしている)
山本浩司、、、岡野屋(愛の担任)
河井青葉、、、藤谷(国語教師)
木下あかり、、、守屋(養護教師)


綿矢りさ原作の映画はもう幾つも観た。
但し、この原作本は未読。
これは山田杏奈主演でかなりのインパクトのものとなっている。
劇中、美雪が「愛ちゃん神様みたいに綺麗」とうっとりして謂うところがあるが、確かに。
浜辺美波もうかうかしていられないぞ。

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しかしだ、、、
山田杏奈さん、この木村愛には手古摺ったろうな~。
飛んでもねえ自己中で、何でも欲しいものは手に入れようとし、その手段も奇想天外?
そしてやたらと積極的で強い。さらに衝動的で不安定。
進路大丈夫か、親子で呼ばれ臨時面談されてたけど、こんな時にその状態で、、、こっちが不安になってくる。
とは言え、しっかりこの娘の感情、その激しくうねる情動を表情~目で表現しきっていた。

まあ、自分がずっと思いを寄せていた人が他の人と付き合っていたことを知ったときのショックは分かる。
しかし共感できるのは、そこまで。
それ以降のこの娘の考えと行動は、ほぼ理解不能。
自分の中で処理することが出来ない。
勿論、そこには合理化したり自分を胡麻化すようなところもあるかも知らぬが、無理やりにでも異なる目標などを立て軌道修正するものではないか。大学に入ったらもっと素敵な彼氏を見つけるぞ、とか、、、が一般的かも知れない。

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だが、この娘は違う。
人と違うのはよいが、、、他者を自分の幻想に激しく巻き込むのだ。
これには困った。と言うか一番困ったタイプの人ではないか。
しかし見た目が山田杏奈である。非難はされず心配される(分かる)。

西村たとえという彼氏も単に内向的で思慮深い、という性格的~資質の問題だけでなく、何か秘めた(隠し持った)事情がありそうと想って見て行くとやはり家庭~父親に難があった。
或る意味、父親に対する反動形成から親しい女子に対しても常に一定の距離を置いているのだ。

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ヒトには様々な事情があり、それを自分の問題として解決~解消しようとしていても、関係性が不可避的に生じて来る。
人間社会に生きている限り。
独りで淡々と生きてゆく訳にはゆかない。必然的に依存関係も生じてしまう。
そして彼のように一方的に好かれて暴力的に関係性を迫られる場合もある。
だが、どう挑発しても彼が付き合っている相手~美雪以外に関心ないと分かると、何と美雪にアタックする。
ここが愛の、内に向かわず只管外に爆走する凄い思考回路と言うしかない。

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いや元々、生理的にそうした傾向もあるのだろう。
無ければ、思考に昇るまい。
あれだけ異性を好きになりながらも同性の美雪とも一線を越えられるのだ。
(性への拘りは無く、単にたとえと美雪という個体との関係性だけで見ているのか)。
美雪にしても、たとえという心に誓った相手がいるのに、受け容れることが出来るということは、ひとえに愛(山田杏奈)だからかも知れない。
彼女なら生理的に受け容れられるのかも知れない。最初は受動的であったが、次はかなり積極的であった。
そうした性向でなくとも愛となら可能であったのだろう。他の娘であったらきつかったはず。

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しかし、そういう形で誰からも一目置かれ人気者で認められている子であることは、しかも内省的な子ではないことからして、自己解体の契機は訪れるのか、という心配がある。勿論自己対象化など一生することのない人たちも山ほどいる。居過ぎる。
だが、愛のレベルの人ならして欲しい。
と思いつつ見ていたら終盤、美雪からの手紙を例によって先生が話している最中に読んでいて(ホントに傍若無人というか固有時を徹底して生きている)、これまたいつものように突然、教室を出てゆく(これしょっちゅうやってるから周りも慣れて来たみたい)。
その上に、別のクラスの扉を授業中なのに勝手に開け、美雪の処につかつかと行き「また寝よう」はない(笑。
せめて放課後に言いなさい。
だが、たとえを自分のものにする為、美雪を利用しようと近づいたことはもう抜け抜けと告白した後である。
美雪もそれに対し随分傷ついたはずだが、しかしそれでもあの手紙(愛との関係は確かな出来事として大切にしたいという趣旨)を読み取り、彼女の純粋さ誠実さそして愛情に打たれ、自分がある意味、見下していた存在の尊さに気づいたのだと思う。

それは良かった。
だが、美雪はたとえが受かった大学の関係で彼と一緒に東京に行ってしまう。
愛は自分にとってはレベルが低めの地元大学に推薦入学が決まっている。
この三角関係はどのように維持されるのか、どうか。

ともかく、山田杏奈のキャパシティーを感じた映画であった。



Wowowにて











ストレイドッグ

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Destroyer
2018
アメリカ

カリン・クサマ 監督
フィル・ヘイ、マット・マンフレディ 脚本


ニコール・キッドマン 、、、エリン・ベル(刑事)
セバスチャン・スタン、、、クリス(エリンの元相棒刑事)
トビー・ケベル、、、サイラス(強盗団のボス)
タチアナ・マスラニー、、、ペトラ(サイラスの情婦)
ブラッドリー・ウィットフォード 、、、ディフランコ(弁護士、サイラスの資金洗浄係)
ジェイド・ペティジョン、、、シェルビー・ベル(エリンとクリスの娘)
スクート・マクネイリー 、、、イーサン(シェルビーの継父で養父)
トビー・ハス 、、、ギル・ローソン( FBI捜査官。エリンとクリスの17年前の潜入捜査を指揮)
ザック・ビーヤ、、、アルトゥーロ(強盗団のメンバー)
ボー・ナップ、、、ジェイ(シェルビーの恋人)
シャミア・アンダーソン、、、アントニオ(エリンの現在の相棒刑事)


「デストロイヤー」が「野良犬」に。何だろう、この変換。
そうかサイラスがエリンに言い放った言葉に「おまえは飢えた野良犬だ」というのがあった。
全編にわたりヒリツク映画であった。

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トラウマ~悲惨な失敗と喪失に窶れ果てた刑事エリン。
彼女がニコール・キッドマンとは暫く気づかなかった。
(ただ気になるのは、ニコールもそうだしシャーリーズ・セロンもだが、オスカー狙う時、凄い顔の醜悪な変形させるのが、とても嫌。ゲイリー・オールドマンがチャーチルで取ったときもそうだが、彼の場合、変装の部類でとても面白かったからよいが)。
やはり美人女優は、その容姿のままで、演技でそれ~世界観を表現してもらいたい。演技力もあるのだし。
ここでの演技も凄まじいのひとこと。とは言え、こういうのあまりやってほしくない。

導入部が肝心な映画であった。
殺人事件の現場にエレンが酔っぱらった状態で現れ、そこで現場検証している刑事に迷惑がられる。
暫く状況を確認するが、ここはわれわれの管轄だから、帰って寝なさいと諭されると、「わたし犯人知ってる」と言って去ってゆく。
刑事は知ってるなら教えてくれとは言うが、期待はしていない。「おかしなやつだ」と呆れて見送る。


もう内面に秘めた執念と冷っとするような渋さで獲物を狙ってゆく、、、復讐劇なのだが。
精神的に蝕まれた感が強い。薬も飲んでるし睡眠不足丸出しで、大丈夫か、と誰もが尋ねたくなる為体。
あの事件から17年間、どれほど過酷な人生を背負って来たのかという凄い形相である。
あの事件というのが17年前の強盗団の潜入捜査で(二重の意味で)失敗し恋人でもある相棒を喪ったもの。
まあ、欲に目が眩んだことがそれを招いたもので自業自得であることは間違いない。
(あわよくばねこばばしようとしたのだから。連中が人を傷つけようとしたらFBIとして阻止するつもりであった)。

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それで刑事はそのまま続けてはきたがアルコールのせいもありボロボロでヨレヨレ。
同僚には変人扱いされ、愛娘にはさんざん背かれ不良と付き合い夜遊びが絶えず、上からは要注意人物扱いか。
どうやら皆から疎まれている様子。
(娘の反抗は身につまされる)。
そんななか、昔の因縁の男、サイラスがかつて銀行で盗んだ札を一枚封筒に入れて送りつけて挑発してきた。
かつて銀行強盗したときに行員に仕込まれた粉料パックの紫色のついた札である。トラウマが疼く。
またやるつもりなのだ。今度こそ阻止する。

彼女は、たった独りでそれに立ち向かう。
独りで立ち向かうしかないのだ。真実は伝えられないし。
途中何度も細切れの過去の潜入捜査時のフラッシュアップが巧みに挿入される。
当時一緒にやった強盗団の一人アルトゥーロは教会で贖罪の意識からか難民相手に法的な相談役を果たしていた。
そんな連中に次々にあたりながら、徐々に探りを入れてサイラスに接近してゆく展開。
同時に、娘と何度も会い、何とか愛情を示し立ち直らせようとするが、娘は納得せず平行線のまま。
不良にもその都度邪魔される。後に彼を単独で呼び出し、せしめた金で紫色の付いていないものを全額渡し娘と手を切ることを誓わせる。これでかつて手に入れた金で使えるものは全て渡してしまう。
しかし既に娘とは関係性をいまさら更新出来ないことを知る。ある意味、最後は良い母親になれなかったことを詫びお別れの場面ともとれる。娘が独りカフェに取り残される様子が象徴的に映される。

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サイラスの資金洗浄係の弁護士ディフランコともひと悶着。もう体も悲鳴を上げているのがよく分かり限界に近い感じ。
丁度銀行強盗に入った情婦のペトラをハアハアしながらどうにか捕まえる。
彼女の携帯からサイラスとの落合場所を知り、17年ぶりに遭ったところで男を射殺する。
そして、何と映画の最初の場面に繋がり重なる。凄い。こういうことだったのか。
(このパタン見るのが初めてではないが、実に手並みが鮮やかであった)。

車にいるところを今の相棒が元気付けにやって来る。
彼女は、捕らえたペトラのいる住所を書いた紙を渡して後を頼むと謂う。
車の中でのエリンの表情。
様子が変だ。
彼女はどうなるのか、、、。



Wowowにて



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