癒しのこころみ

2020
篠原哲雄 監督
鹿目けい子、ますもとたくや、錦織伊代 脚本
松井愛莉、、、一ノ瀬里奈 (新人セラピスト)
八木将康、、、碓氷隼人 (元プロ野球選手)
水野勝、、、上坂浩司 (碓氷の友人)
中島ひろ子、、、篠崎直子 (先輩セラピスト)
秋沢健太朗、、、西野大輔 (先輩セラピスト)
矢柴俊博、、、鮫島鉄二 (セラピー医院長)
橋本マナミ、、、伊藤さやか (先輩セラピスト)
渡辺裕之、、、一ノ瀬太郎 (父)
藤原紀香、、、鈴木カレン (カリスマセラピスト)
寒川綾奈、、、碓氷奈美 (碓氷の妻)
勤めていた広告代理店がブラック企業であったことで手ひどいダメージを喰らって退職したヒロインがセラピストとなって蘇る噺。
わたしは、こういう物語は好きだ。見通しの良い物語で清々しい。感情の流れが自然であれば心地よいではないか。
松井愛莉がドンピシャのヒロインであった。大変表情が可愛い。暗く沈んで鬱になっているときも、終盤のキラキラした快活な表情も共に流れに乗った説得力があった。

松井愛莉演じる一ノ瀬里奈がセラピストを目指すきっかけとなったのが、カリスマセラピスト鈴木カレンのセミナーに参加し、個人的に施術を受け相談に乗ってもらったことである(このカリスマセラピストに藤原紀香がまさにピッタリはまり役であった)。
彼女が一ノ瀬のメンターとなって、要所において戸惑いに身体性をもって導いてゆく(有効なセラピーやワークショップに招待する)などで、一ノ瀬の迷いもトラウマからの解放も進み自分の現在の道に確信を抱いてゆく、理想的な師弟関係が築けたことは大きい。

劇団EXILEのメンバーだという八木将康が一ノ瀬の相手役で、元プロ野球5番打者であったが、デッドボールを受けてから不振となり戦力外通告を受け、少年野球教室の指導をしながら再びプロへの道を探りつつ、悩んでいるというもの。
彼は一ノ瀬里奈の初期の客であったが、(双方ともにこころに傷があり)施術が上手くゆかず、彼から強い不満の言葉を浴びせられてしまう。
彼女にとってはこの一件が、しこりとして残り、何とか施術をやり直したい思いに駆られ、相手を知る必要があるということで彼の野球教室にまで通う(ここまで普通するとは思えないが、何かを感じたということもあろう。否定はしない)。
この関係が良くなることが双方にとってのこころ解放に繋がるという直観はきっと働いたのだ。
実際、その通りであり、鈴木カレンの勧めてくれた「森林セラピー」への二人揃っての参加により、お互いに自分本来の波動に近づいた爽快感を実感する。
わたしの今後の癒しのこころみの参考になるところでもあった。

ここからふたりとも前向きとなり、彼女は施術に相手の気持ちに寄り添う技術が加わり、客の信頼も増し成就感と自信にも繋がってゆく。
碓氷はデッドボールのトラウマを超えて、独立プロの入団試験に通り、プロ野球界に復帰する足掛かりを確実に掴む。
ちょっとしたこころみ~一歩で全体の相が一変するということは確かにある。
それまでも冗長的に事態は進んでいたのだ。
表面的に変わらずともしっかり地に足を付けてルーチンを熟してゆき、タイミング的に良いところで大きな転換を狙う。

これで将来への夢に向かい別れてゆくハッピーエンドで良かった、のだが、ちょっとやり過ぎな感じで、四国のリーグに入団するために碓氷の家族が引っ越すところにまでわざわざ足を運ぶ。そこでただ激励のお別れするだけでなく応援歌まで歌ってしまう。一緒に来たセラピーの同僚まで、というのもちょっとしらける。何事もやり過ぎはよくない。
エンディング~エンドロールの歌がただもうウザいだけ。
終盤が何でこんな酷いものとなってしまったのか。
エンドロールで一般セラピストの写真がたくさん紹介されていたが、何やらセラピスト協会みたいなところから製作依頼されたPR作品であったのか。それはそれとして、中盤までいい感じで流れていたのに、ちょっと残念なものになってしまった。

渡辺裕之もとても良いお父さんであった。
最初のブラック企業のパワハラ上司以外、出て来る人は良い人ばかりであったが、、、これも少し平板な感じはした。
何にせよ、松井愛莉はよくやった。
Huluにて
