
The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society
2018年
イギリス、フランス
マイク・ニューウェル監督
ケヴィン・フッド、ドン・ルース、トーマス・ベズーチャ脚本
メアリー・アン・シェイファー、アニー・バロウズ『ガーンジー島の読書会』原作
リリー・ジェームズ、、、ジュリエット・アシュトン(作家)
ミキール・ハースマン、、、ドーシー・アダムズ(養豚家、読書会メンバー)
グレン・パウエル、、、マーク・レイノルズ(アメリカ人富豪軍人、ジュリエットの婚約者)
ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ、、、エリザベス・マッケンナ(キットの母)
キャサリン・パーキンソン、、、アイソラ・ピルビー(読書会メンバー)
マシュー・グッド、、、シドニー・スターク(編集者)
トム・コートネイ、、、エベン・ラムジー(イーライの祖父、郵便局長、読書会メンバー)
ペネロープ・ウィルトン、、、アメリア・モーグリー(読書会メンバー)
キット・コナー、、、イーライ・ラムジー(エベンの孫、読書会メンバー)
フローレンス・キーン、、、キット・マッケンナ(ドーシーの養女)
ニコロ・パセッティ、、、 クリスチャン・ヘルマン(キットの父、ドイツ兵)
とても忙しくなり、記事のアップペースを毎日ではなく、3日に2回としてみたが、特に楽になった気はしない(笑。
2日に1つにしようか迷う、、、
終戦直後のイギリス領ガーンジー島を舞台にした物語。
島の景観が絵になっていて美しい。
(ロケーションに拘っているのが分かる)。
直感が疼いたら、とりあえずそこに足を運んでみな、何かがおこるぞという映画だ。
(今の時期、難しいが、これってやはり大事なことだ。まず踏み出すことって)。
作家ジュリエット・アシュトンもそれで人生の大きな転機を掴む。
アメリカ人の金持ちマーク・レイノルズと結婚していても、それなりの幸せは享受出来たであろうが、この島に来てしまったからには、もう後戻りは効かなかった。知る前には戻れない、万事そうである。

彼女はある日突然、自分に届いたガンジー島の読者会メンバーからの手紙で、その会に興味をもつ。
(自分がかつて手放した本に感銘を受けた人からの手紙である。向こうでは古書店に売る本に自分の名前と住所まで書くのか)。
自分の執筆活動の役に立つものかも知れない。良い記事も書けるかも。
ということで、編集長に予定を変えてもらい島を訪れ、その地に興味を持ち、会に参加しそこから連れ去られたエリザベスの事が気になってゆく。(船に乗る直前、付き合っていた彼氏からプロポーズされ承諾する。色々と忙しい人だ)。
ジュリエットが、不在の人エリザベスに寄り添ううちに自分自身に目覚めてゆく過程が描かれてゆく。
戦時中この島にもドイツ軍は侵攻し、ドーシー・アダムズの養豚場から豚を奪い、替わりにジャガイモを喰えと置いて行った。
隠れて豚肉も喰いたい本好きが密かに集まり表向きは読書会と称し手に入れば肉を喰ったり密造酒を呑んだり本も読んだりしていた。当初読書会は隠れ蓑であったが本~ことばの力は大きい。とても大きい。
本当の定例読書会となり、そこから彼らメンバーの絆は深まって行く。
「読書とポテトピールパイの会」である。羨ましい共同体だ。
しかしポテトピールパイは不味そうなので食べたくない。

彼女も彼のプロポーズを受けた頃は、虚飾の世界に憧れていた。
ゴージャスなドレスを身に纏い華やかなパーティーでもてはやされる生活。これはこれで良いのだが、、、
「手紙」で彼女の中の何かが疼いた。予感、いや運命も感じていたか、、、
とても興味深い世界がそこに眠っていることが分かり、会のことを取材し執筆することにする。
しかしそれを伝えられた会のメンバーはあからさまに不快感を見せる。
ジュリエットの「タイムス誌に載せると言ったら喜んでもらえると思って、、、」と、羽振りの良い、何かと紋切り型の大袈裟な表現の好きなアメリカ人婚約者マークの心性は同根である。
戦勝国の奢りも加わり、自己相対化の余地もない。

しかし、読書会メンバーとの交流を通してジュリエットは変わり始める。
婚約者とは本の話が果たして出来ていたか。
この読書会は、子供にとっても大変良い学習の場となっていた。
少年イーライはメンバーの朗読を真剣に聴き入り、書評に関する討論など自主的に几帳面にノートしていた。
普通の学校よりも理想的な学習環境に思える。
彼らと行動をともにしながら、ジュリエットは読書会の創始者であり不在のエリザベスという存在に深くのめり込んでゆく。
誰もが語りたがらないエリザベスとは、何者なのか、、、。
親しくなってゆくにつれ会のメンバーたちは、エリザベスについて少しづつ彼女に語り始めた。
エリザベスがどれだけ大きな存在であったか。
ジュリエットも謎を追ううちに惹かれてゆく。囚われない思考と、自由なものの見方、愛情の深さとその信念の強さに。
そしてメンバーのアイソラが気弱なエリザベスという立ち位置で、ジュリエットにじわじわと影響を与えていたことも見逃せない。
このアイソラがなかなか素直で素敵なのだ。
ジュリエットは、こうありたい自分を発見してゆく。その確信が深まって行く。
その先に、自分於愛する相手が薔薇の花束を何時も送って来るマーク・レイノルズではなく、島の野草を手渡してくれるドーシー・アダムズであることに気づく。
(当然、自分を見出せば、自分には誰が必要なのかは自ずと分かるものだ)。

エリザベスは、自分の親友(アメリアの娘)を戦争で失い、ドイツ軍に大変な憤りを抱いていたが、敵兵であろうが人の本質を見抜く目を持っていた。彼女は自分の信念に忠実に、敵兵クリスチャン・ヘルマンを堂々と愛した。
アメリアは、余りの憎しみから余所者に対する目が曇っていたが、彼女のことは認めていた。
当然、島では浮いた存在となるが、そんなことに動じるエリザベスではなかった。
彼は本国に戻される途上、魚雷で戦艦もろとも命を落とす。
クリスチャンは知らぬままであったが、二人の間には子供が出来ていた。それがキットという女の子である。
残されたエリザベスは、或る時脱走した病気の少年ドイツ兵を保護したかどで逮捕されてしまう。
赤ん坊を託されたのが、彼女が最も信用していたドーシー・アダムズであった。
その赤ん坊を彼は自分の娘のように大切に育てていた。
母の帰りをひたすら待つ読書会のメンバーたちであったが、、、。
そんななかジュリエットがマークに頼んでおいた追跡調査の報告が送られて来る。
エリザベスは、ドイツの収容所で女の子に暴力を振るう監視役を止めに入ったところを銃殺されたという。
呆然となり皆の力が抜ける。
外に出て、その件を幼い娘を膝に乗せ伝えるドーシー。
窓からそれを眺めながら、「未だにわたしは娘の死が理解できないでいる」と泣き崩れるアメリア、、、。
今やキットにとってジュリエットはなくてはならない存在となっていた。
そしてジュリエットにとっても。
読書会のメンバーは彼女にとり精神的血族でもあった。
(ある意味、理想的な家族のようなものである)。
彼女は家に戻り、やはりこの事を書き記す。しかし約束通り出版はしない。
記事は、読書会に寄贈される。
.彼女の再出発のマニュフェストでもあるか
そして彼女はまた再び船着き場で、今度はドーシーと結婚を誓う(最初と最後がシンメトリー構成)。
暫くエンドロールが流れると、読書会でイーライに続き、皆の応援のなかキットも懸命に朗読を披露している音声が入って来る。
これには、、、ちょっとやられた。
キャスト全員、存在感があり申し分なかった。
AmazonPrimeにて