ガール・イン・ザ・ミラー

LOOK AWAY
2019年
カナダ
アサフ・バーンスタイン監督・脚本
インディア・アイズリー、、、マリア/アイラム(女子高生)
ミラ・ソルヴィーノ、、、エイミー(マリア/アイラムの母)
ペネロープ・ミッチェル、、、リリー(幼馴染)
ジェイソン・アイザックス、、、ダン(整形外科医、マリア/アイラムの父)
ジョン・C・マクドナルド、、、マーク(マリアをターゲットに虐める)
ハリソン・ギルバートソン、、、ショーン(リリーの彼氏、後にマリア/アイラムの恋人)
クリステン・ハリス、、、ナオミ
キエラ・ジョンソン、、、ジニー
マイケル・バーンスタイン、、、クラウディア
LOOK AWAY、、、意味深。

噺自体はよくあるパタン。
ヒロインがなかなか毒と狂気を孕む雰囲気が出せ魅せてくれる。
この女優のお陰で観きれた面はあるか。
キャスト全員役には嵌っていた。
双子の片方が死産だったのか。いやどうやらその姿を見て捨てられた子らしい。
マリアが自分が双子で生まれたことを知った時から、鏡(媒体)にアイラムという同じ顔の別人格が現れる。
自分のかつての片割れが無意識的に自らの抑圧し隠蔽した本心の代弁者として現出したという判り易い設定。
マリアは家庭では出来損ない扱いをされ、学校では美人なのに虐められるという「キャリー」そっくりの境遇に甘んじていた。

毒親から幼年期~少女期に受けた精神的虐待、更に学校での虐めによるトラウマとストレスの蓄積も大きく、一度外に噴出すればかなり危険な事態を引き起こしかねない。
特にこの少女はこのアイラムを外部の特異な存在~死んだ双子の片割れとして実体化して観ている為、猶更コントロール不能状態となる。
無意識が自立したらそれは恐ろしい。多重人格ともなろう。
案の定、鏡(の儀式)を経て入れ替わった人格は、人間的な~規範の中での~節度ある仕返しではなく、直接殺害に及んでしまう。所謂、アイラム側に規範など存在しない。
元々、人間~父に選別され排除された存在なのだ。
「何故、わたしを愛せないの」と言って、父の首を斬る。
この行為は神話や伝説空間の物語のものと同質であろう。
いつもうわべの取り繕い、美しさばかり口煩く、誕生日のプレゼントに整形を勧めてきた父である。
ありのままの自分を認めてくれたことはない(しかもアイラムの方は醜さから捨てられたようだ)。

自分の引き立て役くらいの意識でマリアと接しているリリーを、アイラム人格が氷上で睨みつけ追い詰める様子は、鬼気迫る呪術的なものであった。
結局彼女は必死に逃げているうちに倒れて縁石に激突し死亡する。これについては不可抗力の事故で扱われるものであろう。
リリーの不在により、以前から好意をもっていた彼女の彼であるショーンとは心置きなく大胆な恋愛が可能となった。
しかしそれ以外のマークの脚への殴打やショーンの頭の殴打、父の喉を切る行為は明らかな害意~殺意による故意になされたものである。
父を殺した後、マリア人格は消滅したようだ。
横暴な抑圧者によって生まれた人格がマリアであれば自然消滅ということか。
このアイラムはこの後どうするのだろう。
ママのベッドに入って添い寝していたが、このままでは済むまい。

ヒロインのインディア・アイズリーはオリヴィア・ハッセーの娘だそうだ。
そう言われても残念ながら、特別の感慨はないのだが(笑。確かに面影がありその気で見ればよく似ている。
よい女優であることは、この映画でよく分かった。
他の映画でも期待したい。

父役のジェイソン・アイザックスがこの物語の緊張感を保つ役割をしっかり担っていた。
非常に厳格な不気味さを感じる好演であった。
AmazonPrimeにて
