
A Piece of Our Life
2009年
安藤モモ子 監督・脚本
桜沢エリカ 原作
桃山さくら、渡邉啓子 製作
満島ひかり、、、北川ハル(女子大生)
中村映里子、、、坂田リコ(メディカル・アーティスト)
津川雅彦、、、田中 正()
かたせ梨乃、、、山城陶子
永岡佑、、、篠塚了太(ハルの彼氏)
光石研、、、坂田昭吾(リコの父)
志茂田景樹、、、老婆(リコの祖母?)
安藤モモ子ファミリーが何とも、、、犬養毅(曽祖父)、犬養健(祖父)、奥田瑛二(父)、安藤和津(母)、安藤サクラ(妹)、柄本佑(義弟)、、、面白い。この人は、さらに作家もやっている。
製作において、女性で固めた作品。それは充分に伝わった。
大変面白い映画であった。面白いと言っても居心地悪くむず痒く、不安定で宙吊り状態のまま終わる。
「女性」というものを女性が正面からバシッと描こうとした類稀な作品であると思う。
よく女性の性を描くとか謂っても、男の監督と脚本家が男目線で描いたものばかり。
溝口しかり、小津しかり、、、他も皆、、、。それで女性蔑視だとか言われてもいる、、、。
こういう作品は貴重なものだ。

とは言え、どこがどう凄いとかわたしから謂うのは難しい。
ただ男が安心して観られるようなお気楽な世界ではない。
その意味でかなり観難い。
だがそれがホントなのだという説得力~生々しいリアリティーを感じる。
まさに女性の生理的な事情も赤裸々に描かれる。男性には思いつかないであろうところだ。
そうした女性特有の身体性を逃さずに彼女らの世界~観念を描いて行く。

ハルは惰性で流されるように付き合いが続いている了太との関係にそろそろけじめをつけたい、と思っていた矢先に明晰で凛としたリコという女性から声を掛けられる。
ビックリするが、リコは初っ端からハルのことが好きだと言って迫ってくるのだ。
二人が付き合う正当性を理路整然と生物学的根拠を示しつつ説いてくる(ちょっと空気読まないポイが)。
だが言語化出来ないような微細な感覚世界を(その職業からして)大切にしている。
戸惑いながらもハルもリコに好意を寄せてゆく。とても仲良しになってゆく。
覇気のない表情でいることが多かったハルが快活で伸び伸びした面を見せるようになっていた。
それに従い了太には愛も特別な感情も、もはやないことを悟る。
(おまけに奴は浮気をしていた)。

しかし、ここがハルのピリッとしないところなのだが、自から了太に引導を渡せない。リコの手を借りて何とか彼と手を切る。
更にリコのように開けっ広げに女の子同士で晴れて付き合う気概もない。
(リコにしてみれば同性愛という意識はなく、飽くまでも個人と個人との間の愛情だという。確かにそういった世界観は了解できる。要は生理的な部分で受け容れられるかどうかの問題か、狭苦しい良識~固定観念が邪魔しているのか)。
何やらグズグズ世間体を気にしてこそこそしているのだ。並んで歩かず後ろからついて行ったり、、、。
リコが余りにクリアに理論で割り切っているところに馴染めない部分もあるか。
女の子同士が生理的にダメなら、好意を抱いて寄ってくる他の男子学生もいるのに、そちらと関わる気もない。
そして、どちら(リコとも男子学生)とも距離を置き、独りでせっせと部屋の掃除をしている(笑。
どちらにも微妙な違和感を抱いていてスッキリしない。、それが相手の問題なのか自分が解決すべきところなのか、、、両方セットで考える問題となろうが。

その辺の吹っ切れないし寄る辺ない部分がとても居心地は悪いが、リアルなのだ。
何故かとても共感してしまう。
人間というものは、今の関係が明らかにおかしいと気付いたとしても直ぐにそれを断ち切ることは難しいし、理想的で創造的な関係~環境であると理解はしてもそこに飛び込めるかと言えば、躊躇してしまうことが多い。
その結果、腐れ縁を清算出来なかったり、新しい関係性を切り結べないで、鬱々とした日常を送っていたりする。
だが、恋愛感情も含まれる関係であれば、、、まずは感情に任せて動くところかと思うが。
大掃除をしてから、暫く誰とも距離を置き、冷静に考える時間を持つことは賢明かも知れない。
焦る事でもない。
欠けたままの自分を受け容れそれに耐え続けるのが人生でもあるし。
「欠けている月も綺麗、、、」「満月なのはたった一日だけなの」
ひとつ謎なのだが、何故ハルはいつも履かない可愛いスカート姿で八百屋にお金を持たずに出向き、蜜柑一個をせしめるということをしたのか。何の通過儀礼なのか、、、女性として新たな自分の(魅力の)確認なのか、、、リボーンの取り敢えずの成功か。
もうひとつ、、、ペットボトルが鳥に成ったり(投げ合いだけで止めて欲しい)、まるで宇宙をプロジェクトマッピングしたようなプールに飛び込むところなど、それほどのカタルシスの場面でもなかったし、然程意味はないVFXに思える。あの効果は無くてもよかったかな、、、。
その後、ハルとリコがどうなるのか、気になる。
少なくとも良い親友にはなれると思うが。
リコの職業~女性の体のパーツ作りもこの噺を引き立たせとても魅惑的にみせるものであった。
リコの作業風景がとても素敵である(無理なVFXよりもこうした光景を克明に写す方がシュールでリアルだ)。
最初からディテール描写に拘っていたがそれを徹底することが効果的に思える。

続編が作られるはずはないが、観てみたくなる、、、。
キャストは、素晴らしい。特に満島ひかりと中村映里子は言うことなし。
AmazonPrimeにて、、、