A Film About Coffee/ア・フィルム・アバウト・コーヒー

A Film About Coffee
2014
アメリカ
コアなコーヒーカルチャーのドキュメントであった。
「スペシャルティコーヒー」の市場が次第に大きくなっており、人々はより上質なコーヒーを求める傾向にあるという。
そこでコーヒーの生豆のバイヤーも世界の生産地を飛び回り、ここだという土地と生産者を探し出し直接取引契約を交わすようになった。
それによって会社は安定した高品質の豆が手に入り、生産者は安定した高収入が約束され安心して生産に励むことが出来る。
アメリカの「スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ」社とルワンダの生産者の間には、このWin-Winの関係が成り立っているみたいだ。
コーヒー関係にまるで興味も知識もないわたしでも楽しく観ることが出来た。

選ばれたアフリカの栽培地で選定された豆が丁寧に手で摘まれ、世界各地で試行錯誤を繰り返し焙煎され、名店それぞれの職人技でドリップされる。
このドリップ技術の高さと工夫により「これがコーヒー?」と感心するようなコーヒーが出来、その方法が洗練され匠の技みたいになると伝説の店になってゆくようだ。
日本の偉大な店として「大坊珈琲店」がしっかり紹介される。
淹れる工程が映し出される貴重なものではないか。これには素人のわたしもワクワクしながら魅入ってしまったではないか。
そのオーナーの美しい所作は、まるで伝統芸を観る思いだ。
これから勉強すると言う人にもよいフィルムであるはず。
わたしはこの店は残念ながら名前を聞いたことがあるという程度である。

ドリップ技術というのも、なるほどねと思いながら感心しながら見ていたが、焙煎という過程も感慨深い。
風味や香りをまず決定付ける肝心な工程である。焼き加減と温度の与え方次第で随分変わってしまうものだという。
ピーナツバターやチョコレートや日本茶だって焙煎の過程を潜る。きっとそれによる旨さの違いがあるはずだ。
この辺にもスポットが当てられ、確かに家で焙煎からやっているかつての職場の拘りの友人もいたなと思い起こす。
つまり映画に出ていた有名バリスタの言うように、豆の生産・摘み~焙煎~ドリップのこの三工程が極めて高い水準で行われることが旨いコーヒーを生む結果となる、のだ。

まあ元々わたしは、家ではすでに挽かれたコーヒーをドリップメイカーで淹れてブラックで飲み、昼頃に喉が渇いたら自販機で缶コーヒーを飲んでるくらいのもの。コーヒーに拘りなど全くなく、特に好きでも何でもない。どちらかというと日本茶~緑茶の方に興味はある。
とは言え、こういったドキュメンタリーを見てしまうと、もう少し意識的にコーヒー(に限らず飲み物)に関わってもよいかと思うところだ。
ニューヨーク~サンフランシスコ~ポートランド~シアトル~東京など各地でスペシャリティコーヒーがどんどん高みへと磨かれてゆくのを見て凄いものだと感心しながらも、、、まるで求道者みたいだ、、、その一杯を口にすると、、、
「一度、特別なコーヒーを味わったら元へは戻れない。」
それは、その通りだと思う。
そういうものだからこそ、一度は飲みたくても二の足を踏む。
普通の市販のコーヒーが飲めなくなるのは、これまた面倒なことだ。スペシャリティコーヒーは値段もうんと高いし。
ちょっと旅先のホテルなどで朝飲むコーヒーがもう不味くて飲めなくなると言うのも厄介な噺である。

だがしかし、鎌倉とかで上等な蕎麦を食べても、何処かの高原など旅先の立ち食い蕎麦屋で山菜蕎麦を食べるのも、これはこれで美味しいものだ。
これから先、上質なコーヒーを飲む機会があるかも知れぬが、それでも街中の自販機で買った缶コーヒーを手を腰に当てて立ち飲みすることは変わらずあるだろう。
旨いコーヒーとやら、やはり飲んでみたいものだ。
(誰が飲んでも旨いのかどうかが、実は心配でもある。だから一度は試してみないと)。
