
2019年
横山一洋 監督
三木大雲、、、語り(和尚)
蜃気楼龍玉、、、案内人(噺家)
松原タニシ、、、ゲスト(怪奇蒐集家)
想像力を解きほぐす刺激があれば、何でも観てみたい~聴いてみたいものだ。
かなりキッチュでポップな事(のなか)にもそれはあったりする。
バブリーでサラーっと消えて無くなるものがやはり多いが。
日常の情報そのものが大概、そんなものだ。玉石混交とは言うが、95%は石。
それ自体が実につまらなく、こちらに何かを及ぼす力はないが、更にこちらがシールドを上げてしまっている面もある。
送られてくる情報の中で、メールなどについても、過去に幾つかの業者とのやり取りに使っていたメアドに妙な稼ぎ系メールがどんどん入って来ることがある。きっと業者のどれかが、そのアフィリエイター~その会社にメアドを売ったのだろう。だがそこは迷惑メールフォルダがある。そこにため込み少し経ってからまとめて全消去すればよいだけのこと。実質手間は取らないのでどうでもよいが、、、。
そういうメールは、律儀に配信停止を押しても構わず送られてくるものだ。最初は内容を確認することもあるにはあるが、詐欺以外の何ものでもない(特商法に基づく表記も内容~ビジネスモデル自体もまともに書いていない為、判断材料すらない)。
時には数千万円差し上げますので、銀行口座教えてちょうだいという荒唐無稽を通り越したようなのもある。これには爆笑したが、怪談の一種だったのかも知れない、、、。
今日は、またランダム抽出したもので、怪談和尚の異名を持つ三木大雲という京都の寺のご住職の噺~怪談説法。
(仏法を説くことが目的とのこと)。住職だけあり、喋りはとっても上手い。
どの噺もしっかり練られており構成が良く、じっくり堪能できた。
優れたエンターテナーでもある。

「レンタル彼女」
呪いの実験に使われた女子大生の噺。
和尚は地方から出てきて京都で大学に通う学生の困ったときの支援にも当たっている。
両親とも面識のある、レンタル彼女のバイトをしている女子大生が指名客と会う度に体調を崩すという。
その男は、見た目は所謂オタクであり女性との付き合い方をレクチャーしてほしいというので、親身になってアドバイスをしていたそうだ。とても素直で礼儀正しく彼女の話す通りに見た目を直し、プレゼントなどをくれる優しい人に思え、彼女もバイトのし甲斐を感じていたという。
しかしとうとう彼女は寝たきりになってしまい、心配した友達が和尚のところにプレゼントと共に連れてゆく。
その友達には霊感があり、男のくれた帽子、スリッパ、縫い包み全てに悪い気を感じたのだ。
和尚が中を裂いて見てみると呪いのアイテムがしっかり縫い込まれていたのだった。髪の毛、爪、前歯である。
それにもうひとつのアイテムを合わせて入れるそうだが、和尚はそれは伏せた。真似する人が出たら不味いことになる為。
この男は、この女子大生を実験台にして自分の作った呪いグッズの効き目を確認していたのだ。
和尚の推察では、この結果を元に恨みを持つ対象にそれを実行するつもりなのだということである。
しかし、何も知らずに実験台にされた女子大生はたまったものではない。
それにしても、呆れた男である。この男、前歯が何本あるのか、、、ストックでもなければ、実験やっとる場合ではないぞ。
生理的に身の毛のよだつ噺であった。
「鏡」
夫婦にかかった呪いを解いてみると、、、。
「鏡」の中のもうひとりが悪さをすると男が言う。
最初は妻の方が調子が悪く、明らかに呪いの仕業であった為、和尚はお経をあげて対処した。
妻は体調が戻り、夫と離婚したという。
その後、同じような症状が夫にも起こり、和尚は引き続き彼に対してもお経をあげる。
その家の鏡は全て罅が入っていたり割れていた。それを尋ねると、鏡の中にいる違う自分が悪さをしてくると言うことであった。
そして和尚のお経の甲斐もあり、夫も元通りに治る。
離婚の件と言い、色々尋ねると妻への呪いはこの夫がかけたもので、他の女にもかけているという。
結婚詐欺に二度合い、散々な目にあわされた復讐でやったというが、その犯人は逮捕されたが、それだけでは気が済まずその女によく似た妻とレンタル彼女のバイトで知り合った女子大生にもかけたという。何とこの男だったのだ。
しかしその呪いが自分のところにも還って来てしまったという噺。
レンタル彼女の後日談でもあった。
松原タニシという人の噺~エピソードも挿入される。
怪談噺の撮影の際、自分と共演する松原タニシという怪談収集家に悪いモノが憑いていることが見えた為、その場に出演する全スタッフに対し数珠を持参するように連絡したのだが、カメラマンがガラスのアクセサリーを代わりにしてきた為それが破裂したとのこと。その体験談を和尚だけでなくタニシ氏も語る。
確かに心霊スポットのロケなどと番組の特集などで出かけていれば、悪霊などをしょって帰ることも少なくないだろう。
和尚はそれがハッキリと見え、不味い場合はすぐにそれを感じとり対処できるが、それほどの霊感をもたない収集家であれば知らずに持ち帰って気づかない場合もあろう。
「ノック」
心霊スポット巡りが趣味の大学生の噺。
そのスポットはとても危険だから行かない方が良いと和尚に止められたにも関わらず行って写真をバシバシ撮ってきてしまった大学生。その夜写真をチェックしているときに大変なことになる。
メンドクサイ人騒がせな大学生だが、彼も和尚が頼まれている地方からやって来ている学生のようだ。
結局、霊が深夜にドアや窓やベッドの下をノックしまくり、逃げようとする学生の脚や体を掴みビビりまくらせるというもの。
学生が霊に向かってごめんなさいと叫ぶと彼らは去っていったという。
何の遠慮もなく霊の住処にズカズカ上がり込み写真を撮り放題撮って帰って行った学生に苦言を呈したかったのか。
礼儀の問題であった。
和尚はその夜、心配になり3時ごろ学生のアパートを張っていたという。案の定、部屋から転がり出て来たのを助けたそうだ。
大したものである。頼りになるが、こんなことで頼っている暇があったら学生なのだから勉強に精を出せと言いたい。
「行方不明」
小4の息子がいなくなった。
一家惨殺された家の規制線の中に入ってその家のモノで度胸試しをして友達と遊んでいたという。
(怪談映画でそういうの観たことがある)。
10日後に京都から滋賀県まで歩いてきたところを見つかる。
和尚曰く、その家の祖母の遺灰をぶちまけて遊んだことで、そのおばあちゃんの霊が乗り移ったのだそうだ。
滋賀県の向かった先は、そのおばあちゃんの故郷なのだそうだ。
アホにも程がある。そこまで規範に対する感覚が無いかとか言う前の問題である。
太古から人類は埋葬を地球上のどの地域でもして来た。その共通の感覚も持ち合わせていないこの子自身の問題は大きい。
「助けて」
和尚の目の前で起きた交通事故。
びっくりしたところで、事故車から直ぐに飛び出してきた男性が和尚に救急車を頼む。
和尚が急いで呼んだ救急車に、担架に乗せられた運転手と先ほどの彼が同乗して慌ただしく去っていった。
翌日その事故はTVで放送されるが、その車に乗っていたのは一人~ドライバーだけであり、和尚に助けを求めたまさにその彼であった。
彼は亡くなったそうだ。
体を抜け出して助けを求めた霊体の噺。
「匂い」
四季の匂い。
病気の匂い。
機嫌の悪い人は悪い匂いを放つという。
その匂いの影響力は大きいと。家族全体がそれによって崩れてしまうケースもあると、、、
和尚は、その人の匂いで病が何であり、どれくらい進行しているかも分かると言う。鼻が利くにも程がある。
医学的にも病と匂いの関係は研究は、進んでいるそうだが。
ここでは和尚の「見える」力と「感じる」力と「匂いを嗅ぐ」力が存分に発揮されている。
しかしその匂いを発している男がすでに死んでいることに気づかないとは、どうしたことか、、、。
他の人には見えない人~幽霊が見えることは特殊能力だが、それが生きているのか霊体なのかの判別が出来ないとなると、これは問題ではないか?それが悪霊で、まんまと騙されたり操られたり憑りつかれたらどうするのか、、、。
そこは、微妙なところだ。
そもそも死んだ人~霊が何で本屋で雑誌を立ち読みしているのか?
霊と匂いの関係。死んでいる人が匂いだけ残していた、、、匂いが名残りか、、、匂いの残す情報、、、
亡くなった人は匂いを食べる、、、等々、匂いというモノについてとても感慨深い噺であった。

流石にご住職ということだけあり、全ての噺が仏法のもとにまとめられたものであった(そのオチはいちいち書かなかったが)。
大変、ためになる説話でもあり、困ったときに相談したいくらいだ。特に相手が化け物であった場合など、、、まあ大概、物の怪みたいなモノであるが、、、。
しかしこうして全て観終わってみると、噺が上手く出来すぎており、ネタのひとつに使われるだけかも、、、という気もしてくる。
(何とも言えない(笑)。