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GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
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長屋紳士録

Record of a Tenement Gentleman001

Record of a Tenement Gentleman
1947年

小津安二郎 監督
池田忠雄 小津安二郎 脚本


飯田蝶子、、おたね(長屋に住む未亡人。荒物屋を営む)
青木放屁、、、幸平(父と逸れて連れてこられる)
小沢栄太郎、、、幸平の父親、大工
河村黎吉、、、為吉
吉川満子、、、きく女
笠智衆、、、田代
坂本武、、、喜八
高松栄子、、、とめ
長船フジヨ、、、しげ子
河賀祐一、、、平ちゃん
谷よしの、、、おかみさん


おたねさんが実に良い味を出していた。
今、こういった初老の味のある女優はいるだろうか、、、。
樹木希林や市原悦子ほどの強烈な個性は無く素朴でぶっきらぼうで憎めないタイプ。
そのおたねと幸平の「間」の演技は絶妙と言うほかない。
彼女と田代と幸平を軸に、全体にユーモアとペーソス漂う映画であった。
相変わらずローアングルの確立した構図~奥行きに全てが整然と収まっている。


この時期、戦災孤児は上野とかにかなりいたという。
終わり間際のシーンでは、年端も行かぬ少年たちが上野公園でタバコを吸ってたむろしていた。
舞台となる長屋近辺でも孤児と思しき少年らが釣りをしていた。その日食べる魚の調達だろうか。

Record of a Tenement Gentleman004

ここでも八王子で焼け出された大工の息子が父と逸れて寄る辺無き身のところを長屋に連れてこられる。
連れて来たのは笠智衆演じる田代であった。
(口髭を生やし髪は黒々として歌を唄いまくる「のぞきからくりの口上」、らしくない胡散臭い笠智衆だ)。
茅ヶ崎からついて来たから仕方ないと言って。
だが、自分の家に泊めるのではなく、戦争未亡人のおたねに押し付けて去ってゆく。
「一晩泊めてやっておくれよ、、、」と、いい加減な男だ。その後どうするんだ。
その子は父親のタバコの吸い殻と釘をポケットにしまっている。

警察に届けるなんていう状況~時代でもないのだろうし(例え引き受けようがその子に関する情報が徹底的にない)、行政や福祉が動く時代ではない。そもそも機能するネットワークもないのだ。
置き去りにされた子供らは一体どうしたんだろうと思う、、、。
このような下町人情がなければ、恐らくどうにもならない。

Record of a Tenement Gentleman005

とは言っても最初のうちは押し付け合いである。
誰も生活に余裕などないのだから。
その上、その子に可愛げがない。少なくとも現代的な可愛さ~キュートではないのだ。
おたねさん曰く「こちこちの握り飯みたいな顔でこっちを睨むんだよ」(爆)。おたねさんの睨みも怖い。
無口でむすっとしていて、純朴なのだが不器用で。返答に窮するとフエ~ンと泣き出す。
おまけにオネショをする始末。
これには、おたねさんも怒りまくる。団扇を渡してこれで扇いで乾かしな、と。

ちょいと品のあるお友達が度々遊びに来ては帰りに「おやかましゅ~」と言って去るのが印象的だった。
当時の言い回しもいろいろと面白い。
この人の行き来が軽妙な(情報の)やり取り、適度の距離感と微妙な他者性があって、風通しの良い長屋の良さを感じる。
おたねの「捨てられたんだか、逸れたんだか、あんたんとこいらないかい」に対し、そのご婦人の「いらないねえ。ゴムのホースならほしいけど」には、笑った。

何とか誰かに引き取って貰いたい彼女~長屋の彼らは、田代が最初に出逢ったという茅ヶ崎にその子を連れてゆくことにする。
(この役を長屋では籤引きで決めた。もしこれを話し合いなどでやっていたら埒が明かない。籤引きとは、大変優れた物事を決める手段~方法である。英知の賜物である)。
現地で聞いて回るが、八王子で焼け出されてやってきた父子であるということ以外分からない。父はどうやら仕事の目途がついたらしいが、何処に向かったかは分からない(つまり新しい情報はなにも得られない)。
海辺の砂浜でおにぎりを食べながら、あんたの父親も薄情な男だねえとか話しながら、海に行って貝拾ってきてと言って、おたねは大急ぎで砂浜を駆け登りサッサと逃げてゆく。しかしそれを見つけたその子もまっしぐらに走って来て彼女に追いつく。
ここの砂浜の白を背景にしたシーンは、「東京物語」の埠頭でのシーンにも繋がる美しくも幻想的な光景だ。
結局、茅ケ崎で引き取り相手を見つけることなく、一緒に戻ってくることに、、、。

Record of a Tenement Gentleman003

それからも、その子はおたねに干し柿泥棒と間違えられこっぴどく叱られたり、またもやおねしょをしてしまい叱られるのが怖くて、布団を畳んで逃げるが行くところもなく、また田代に駅で拾われ戻って来たり、、、。(この男は自分では何もしないくせに連れてくるだけのことはする(爆)。
おたねのムンっという睨みつける顔は、まるで犬、猫相手にするようなものにも見える。
(そもそも田代も捨て犬か猫を拾ってくるような感覚で連れてくるのだ)。

猫と言えばわたしも子供の頃から14匹飼ったものだ。一匹いなくなると直ぐに次が尻尾を立てて、やって来る。
一度もペットショップなどで買ったことなどない。全て遊びに来て居ついてしまう猫たちである。
一匹一匹、こうも違うかというほど、個性や性格、能力も違うが、それぞれに癒されたものだ。
未だに想い出に鮮明に残る猫もいる(ホキと名付けた真っ白な猫だ)。
思い返すとどれ程猫たちに救われていたか知れない(人に壊された脳を猫に治癒してもらった部分は大きい)。
話は逸れたが、一度姿を消してからその子の存在の大きさに気づくおたね。猫にしてもそうだが。
彼が戻って来てからは、それまでの接し方とは打って変わって、良いものを着せ、上手いものを食わせ、動物園に連れて行き、一緒に写真館でおめかしをして記念写真まで撮る。特にスイミングキャップみたいな帽子を普通の帽子に買い替えたのは正解だ。
自分が引き取り育ててゆく決心をしたのだ。
その子を目を細めて見るおたねの表情は愛情に満ちている。
おたねもその子のシラミか何かをもらったようで、ふたりでシンクロして肩を揺らす。

Record of a Tenement Gentleman002

そしてある夜突然、幸平の父がやって来る。
気持ちの優しそうな礼儀正しい男で、彼も必死に逸れた息子を探していたという。
息子が世話になった礼を丁寧に述べ、土産を置いて行こうとする。
彼女は、幸平の為に買い求めたもの一式をまとめてせわしなげに父に手渡す。もう自分の元にとっておく必要などないのだから。
彼らを見送り、後に一人残るおたね、、、。思えば共に過ごしたのは、一週間程であった。

おたねは知らぬうちに干乾びてしまっていた自分がその子に癒されたことを深く実感し、彼が父と幸せになることを心の底から祈る。





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