ラディウス (r)adius
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(r)adius
2017年
カナダ
カロリーヌ・ラブレシュ、スティーヴ・レオナール監督
ディエゴ・クラテンホフ、、、リアム・クラテンホフ
シャーロット・サリヴァン、、、ジェーン(ローズ)
ブレット・ドナヒュー、、、サム(ローズの夫)
これもまた究極のステージに追い込むのが得意なカナダ映画。
突然、自分が「普通でない」ことに気づく。
しかもその自分が誰なのかも分からない。
記憶も失っているのだ。
その異常さとは、自分から半径15m以内にいる他の動物に死を齎すという特質である。
このことを発見して恐れ慄く。
自分の近くで、、、車のドライバー、ダイナーの客、警察官、カラス、ヤギなどが次々に白目をむいて死んでしまう。
最初は、空気感染するウイルスか何かかと外部を疑ったが、自分自身が原因であることを知るに至る。
こんな状況をアイデンティティの覚束ない状態でどう対処すればよいのか。
いる場所がない。いるべきところも分からない。過去も未来も何も見えない。
究極の孤独である。
自分の名前は、事故を起こした(自分が乗っていたであろう)車にあった免許証から取り敢えず知るが。
そこから、自宅の場所も分かりそこに逃げ込む。
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そこへある女性が訪ねてくる。事故に遭った彼の車の同乗者で彼の名前と住所は知っていた。
その女性は近づいても死なない。
それだけでなく彼女の存在が彼の致命的な特質を無化してくれることを知る。
女性と共にいるときは、近くにいる動物は皆大丈夫なのだ。
しかしその女性も記憶を失っており、自らを「ジェーン・ドゥ」からとりジェーンと呼んでいる。
彼女も勿論、自分が誰であるのかを探る目的で唯一の手掛かりとして彼に会いに来たのだ。
孤独な者同士が一緒にいなければならない状況ができる。
彼女が離れたら彼に近づいた人間・動物は皆死んでしまう。
ふたりで記憶の微かな片辺を辿り、お互いの関係をも探ってゆく。
一方、リアムの家周辺から大量の死者が出たことから、彼が脳に直接電気的なダメージを与える工作をするテロリストであると睨み警察に追われる立場となる。
ふたりは自分が誰か分からぬまま、禍々しい運命も背負って逃亡者となるしかない。
TVの情報から、ふたりの乗る車が事故に遭った地点でUFOの飛来が確認されたというNASAからのアナウンスがあった。
その時の激しい閃光を浴びたことは、ふたりとも自覚がある。
原因は分かったが、それでどうなるか、解決に至るまでには余りに越え難いハードルがあった。
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記憶を失うということは、ある意味ピュアな状態で、再生に繋がるチャンスであるとも捉えられる。
人生には忘却した方が良いことも多くあるものだ。
逃げながらも徐々に見出される様々な書類(ポスター、日記など)から記憶の断片が蘇り、やがて繫ぎ合わさってゆく、、、。
そしてついに彼らの過去がふたりの前に明かされてしまう。
共にそれを受け容れられない。
特にリアムは、自分が得てしまった特性が自分のかつての性向の拡張したようなものであり、警察に追われるのは当然とも謂える。
更に彼と共に行動してきたジェーン(本名ローズ)の失踪した双子の姉を誘拐して殺害したのがこころを許してきたリアムであったことが分かり、激しい葛藤に苦しむ。彼の過去は、連続殺人犯であった。
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記憶の喪失と異常な特質に追い込まれるふたりであったが、記憶が戻れば更に過酷で残酷な運命が待ち構えていたのだ。
彼らは孤独から絶望へとまっしぐらに突き進む。
締めくくりは、テロリストを殺せと、突然襲い掛かって来た数名の住民が引き金を引く。
リアムとジェーンとの距離が空いたため、皆死ぬが最後の一人がジェーンの背中に向け発砲してしまう。
瀕死のジェーンを急いで車で病院に送り、緊急処置室に運ばれる彼女を見届け、リアムはこめかみに銃口を向ける。
このままの自分には、もう未来はない。
過去は消せない。
解決策はこの他にはなかった。
彼の虚ろな死んだ瞳で幕が落ちる。
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