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GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
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ディケイド 腐敗する者たち

Decay001.jpg

Decay
2015年
アメリカ

ジョセフ・ワートナーチェイニー監督・脚本・編集
マイケル・シェイブ音楽

ロブ・ザブレッキー、、、ジョナサン
リサ・ハワード
エリシャ・ヤッフェ


AmazonPrimeで観た。

遊園地の清掃人のジョナサン。
ジョナサンの趣味で収集している鍵を拾ってくれる友人。
一緒に昼の弁当を食べながら彼女の話をしたりする。
ジョナサンの世話をやいてくれる婦人。
この人は彼の成人後見人なのだろうか。
登場人物は、基本その3人くらい。
警官が時々、訪ねて来るが。

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頻繁に挿入される子供時代の記憶~フラッシュバック。
毒母の生々しいイメージである。どうやら彼が少年の時、母親は極端な潔癖症の強迫観念から、焼身自殺をしたようだ。
(幼少~少年期における毒母の影響は消そうにも消せるものではない。それによって腐敗した精神は正しい治療を施さないと益々進行するばかりである)。

体罰と言葉による日常的虐待により母に対し隷属的に育てられる。
極端に潔癖症の独善的で排他的な母の性格上、自宅軟禁状態で過ごし、外~他者との接触はほとんどもたない。
他者とは病原菌の塊である。鍵をかけないドアは不吉だ。施錠を何度も確かめさせる。
この世界観を幼少時から暴力的に植え付けられて来たため、中年(初老)?を迎えてもその枠の外には出れない。
出れないのではなく、そもそも今の状態がおかしいという認識すらなく毎日のルーチンを繰り返している。
亡き母に対する反抗心や憎しみ、怒りなどは微塵も感じられない。
そんな主人公のジョナサンである。彼は車には乗らず、三輪車を漕いで移動する。

Decay004.jpg

毎日、イマヌエル・カントばりの規則正しい生活を送っていた彼であったが、2人の不良娘が彼の家に盗みに入ったことで、かなり様相が変わる。
丁度家の中を物色している最中に彼が帰宅してきて、驚いた不良は、一人は脚立を踏み外し頭を打って死に、もう一人は道路に飛び出したところを車に轢かれて死ぬ。飛んだアホである。それはどうでもよいとして、彼は死体を見てどうするか迷う。
そういう客には初めて会ったのだ。
取り敢えず、バスタブにそれを入れ、氷を一杯充たして腐敗を遅らせようとした。
その死体の世話が彼の厳格なルーチンのなかに加わる。
毎日同じ8時8分の目覚ましで起き、冷蔵庫の冷凍食品を解凍して食べ、遊園地の清掃の仕事に行き、定時に帰り、薬を包丁で潰して飲む。地下室での胡蝶蘭の手入れ、トレーニングも欠かさない、、、。これを映画でもこれでもかというくらい反復する。強迫性障害を強調する為か~最後に薬を潰さずに飲むところで如何に追い詰められたかを示す。

元々外のものに興味が無い訳ではない。ボーイスカウトにも憧れがあった。
犬を飼いたいと言ったら母にひどく叱られ折檻を受け飼えなかったに過ぎず、生きているものには不浄さから手は出せなかったが、勝手に入って来てすでに死んだものである。興味は沸く。剥製があんなに沢山家の中を飾っているのだ。
彼の趣味である鍵収集も、その鍵で開けた他人の家の様子を想像する為のアイテムである。
しかし生きているものは、母の教えでは全て不浄なのである。
彼は想像を絶えず働かせる。今回、丁度そうするのに良い相手が転がり込んだのだ。
「出逢い」があったのだ。心ときめく。

Decay005.jpg

さてここから長い時間にわたって、わたしは画面を正視出来ない。
一番苦手な映像が延々と続く。
この若い女(女子高か女子大生だろう)の腐敗が進んでゆく。腐敗臭も凄かろう。
ウジが湧き、口からゴキブリが這い出て来たり、もう目も当てられない惨状なのだが、どう思っているのかわれらが主人公は丁寧に体を拭いたり氷を足したり防腐処理を出来る範囲でしながら、わざわざ夕食には食卓に招き、一緒にディナーをしたりするのだ。キャンドルも灯し。
死体の片づけや食卓の汚れの後始末などかなり大変な仕事が増えてしまった。
それでも世話やきに来る婦人にも仕事の同僚にも彼女が出来たと打ち明ける。
ラジカセにテープに吹き込んだ遊園地に流れそうな曲を流し、鼻歌も唄う。
このルーチンワークの反復。
だがそれにも限界が来る。
腐敗の限界である。彼女も彼も腐敗した。ディケイド、、、邦題は正しい。

Decay003.jpg

2人とも喜んではくれるが、同僚は明らかに彼のイマジナリーフレンドであることが分かる。
世話やき婦人の方も入って来方からして非現実的であるが、警察の聞き込みやマークに対して婦人の掛け合いが効いたような感じもするのだが、、、薬を持って来てくれるし彼を病気だと認識している。とは言え彼女もその実在は怪しい。実際に彼女が警官と話している映像は無かったと思う。
それより何度も家に入って来て、一度も腐敗臭に気づかない。

ともかく、彼にとって現実と想像は境界があやふやなのだ。どちらも等価の彼の世界と言ってしまえばそれまでか。
ただし、彼の状況と境遇からしても成人後見人がいないのは現実的ではない。彼一人で社会生活(という外部性)を熟せるものではない。想定外の出来事に対応が出来るか、、、今回のように。
遊園地は廃園であり、いつも彼はそこに無断で入り、勝手に清掃をして想像の中の友人と昼食をとっていただけだ。
この現実~彼の世界を作ったのは、全て毒母である。
何よりも毒母の力の恐ろしさに驚愕すべきなのだ。そしてこうした親子関係が外からは見えない。文字通り鍵を厳重にかけられ。毒母が焼身自殺し、外の風が入って来た時はすでに、もう充分彼も腐敗していた。
この廃園が何故か妙に美しい。哀しいほどに美しい。

Decay002.jpg

この外部から来た彼女との生活は長くは続かない。
信心深く、三輪車には鍵はかけず「何時盗むことなかれ」という札を付けている彼にとり、平気でドアを破り盗みに入る若い女性は、まさに外部の者だ。そんな外部を求めはした。しかし、、、
彼自身母に潔癖症を叩き込まれてきたのだ。
「不潔な家には悪魔が宿る」外部を受け容れると言うことは腐敗を呼び込むと言うこと。
汚いものには特に耐えられない(わたしだって到底耐えられないが)。
彼女の朽ちた体を拭くと活き活きした綺麗な肌が出て来るイメージで吹っ切れたのか。
遺体を解体し袋に詰めて処分する。
「ひとりも悪くない」
再び彼は前の生活に戻って行く。

BGMも繊細で良かった。








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