ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破

EVANGELION:2.0 YOU CAN (NOT) ADVANCE.
2009年
庵野秀明 総監督・原作・脚本・製作総指揮
摩砂雪、鶴巻和哉 監督
宇多田ヒカル「Beautiful World -PLANiTb Acoustica Mix-」主題歌
鷺巣詩郎 音楽
碇シンジ(声:緒方恵美) 、、、エヴァンゲリオン初号機パイロット
綾波レイ(声:林原めぐみ) 、、、エヴァンゲリオン零号機パイロット
式波・アスカ・ラングレー(声:宮村優子) 、、、エヴァンゲリオン2号機パイロット、ドイツ出身
真希波・マリ・イラストリアス(声:坂本真綾) 、、、エヴァンゲリオン仮設5号機パイロット、イギリス出身、NERVユーロ支部所属
渚カヲル(声:石田彰) - EVANGELION Mark.06パイロット、月より飛来
葛城ミサト(声:三石琴乃) - NERV戦術作戦部作戦局第1課課長
赤木リツコ(声:山口由里子) 、、、NERV技術開発部技術局第1課所属、E計画担当・エヴァンゲリオン開発責任者
加持リョウジ(声:山寺宏一) 、、、NERV主席監察官
碇ゲンドウ(声:立木文彦) 、、、NERV最高司令官、シンジの父。
冬月コウゾウ(声:清川元夢) 、、、NERV副司令
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」と「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」の間の作品。
「ヱヴァンゲリヲン」で一度、大分以前に”Q”以外を見てまとめを書いているが、あっさりし過ぎである。
ちなみにQは、「序破急」の急になろう。
取り敢えず今回、AmazonPrimeに宣伝があったため、これに絞り改めて観てみることにした。
何と言うか、大サービスのエンターテイメントである。
それ以外に言葉もない。
真希波・マリ・イラストリアスが突然、新エヴァとともに出て来てかなりのインパクトで活躍してしまうのも唐突だが初っ端から凄い畳み掛け。
華麗で派手なご登場の式波・アスカ・ラングレーの第7使徒との空中戦からして、ビビットで痛快な何でもあり感が正当化される。
SEELEの月面基地では、渚カヲルが普通に月面に座っているし、、、。
何がどうなるか、ただあれよあれよと受け容れていく快感か。
しかしそこには絶えず傷みが伴う(こちらも)。
毎度のことながら、使徒の赤いコアを粉砕することも何とも直截的な赤い液体の~死の生々しい溢出である。
エヴァも初号機・零号機・2号機に加え、仮設5号機とMark.06もお目見え。
使徒との死闘も迫力タップリだが。過酷で激しい(見ていて痛々しい)シーン満載である。
真希波・マリ・イラストリアスのエヴァンゲリオン仮設5号機と第3使徒との激しい闘いに始まり、終始陰惨な死闘が繰り広げられる。
仮設5号機もマリ脱出後に爆発するし、光を歪める強力なA.T.フィールドを持つ第8使徒との初号機・零号機・2号機での総当たり迎撃も壮絶であった。更に3号機の起動実験にアスカが志願搭乗するが、3号機の体はすでに使途に乗っ取られており、第9使徒と見做される。シンジはアスカの乗った3号機~第9使徒の破壊を命令されることとなる。シンジはそれに背くがダミーシステムに切り替えられ初号機は狂った獣のように使徒を貪るように食いちぎってゆきアスカを守るエントリープラグまで噛み砕いてしまった。アスカは一命は取り留めるが感染の危惧から隔離されてしまう。
シンジはもはや精神面でも耐え切れずパイロットを辞めて出てゆく。だがこれまでにない強力な第10使徒が来襲し、マリがエヴァ2号機で迎撃する。通常形態ではとても太刀打ち出来ず、獣化第2形態に変身させて闘うが圧倒的な力の前に撃退される。そこでレイが零号機でN2航空誘導弾を抱えて自爆攻撃をかけるが、A.T.フィールドを全て突破して撃ち込んでも肋骨でコアを守り切り、何とレイごと零号機を捕食してしまった。これを目の当たりにしたシンジは、パイロットであることを自覚し初号機に乗り込む。零号機を取り込んだ第10使徒はヒト型に変形したことでNERV本部のメインシャフトにそのまま入り込むことが出来、第一発令所まで降りて襲撃に及ぶ。父ゲンドウの目前で使途を食い止める初号機のシンジ。
そして初号機の内臓電源の切れた後、疑似シン化第1覚醒形態となりシンジに一体化した初号機は、圧倒的な拒絶体である第10使徒をも一蹴し、レイを死力を尽くして救い出す。このシーンはアニメ史に残る劇的シーンであろう。
闘いばかり並べてしまったが、そんななかでの日常生活。
クラスメイトとの和やかな関り、シンジの自分の他にアスカ、ミサト、レイの弁当作り、、、元々彼はこういう仕事が好きなのだと言うことが分かる。細やかな気遣いの出来る心優しい少年なのだ(エヴァに乗ることには大変な葛藤を抱いている。無意識的にはとても和むのだが、戦闘行為には馴染めない)。
葛城ミサトの家にシンジとアスカが同居するところなどコメディタッチで微笑ましいところでもある。
加持リョウジが、シンジやレイたちを第二インパクト前に生息していた海の生物の水族館(海洋生態系保存研究機構による試み)を見学させるところなど、一番好きなシーンだ。そのころは、海に生物が棲んでおり、海も赤くなかった。その世界を彼ら若者は知らないということなのだ。
綾波レイが碇シンジと父ゲンドウとの軋轢を少しでも解消しようと手作りの食事会を予定するところなど、ほっこりする日常も描かれる。何とレイとアスカがそれぞれ料理にも打ち込み始めるのだ。仄かな恋心~三角関係みたいなものも生まれる。大きな意味を持つはずのレイ主催の食事会、それも闘いの為に流れてしまう(3号機の起動実験)。
そしてその想いは膨らみラストのレイを取り戻すシンジの激烈な迫真のシーンに収斂されてゆく。
疑似シン化第1覚醒形態の初号機によりサードインパクトが起ころうとした矢先に、EVANGELION Mark.06が月から飛来する。
パイロットは、渚カヲルだ。
いきなり初号機のコアに槍を討ち挿しサードインパクトを止める。
「今度こそ君だけは幸せにしてみせるよ」
実は、この後、”Q”も観たのだが、観なければよかったかも知れない。
シンジが眠りから覚めた14年後、「ヱヴァンゲリヲン」が「宇宙戦艦ヤマト」みたいになってるではないか、、、
シンジと一緒に訳が分からなくなった。
彼は、あまり幸せそうでは、なかった、、、。
何よりも、レイがかつてのレイではなくなっていたのだ。
それは何より絶望的ではないか。これにはわたしも深く同情する。
余りに切ない。
