アンキャニー 不気味の谷
Uncanny
2019年
アメリカ
マシュー・ルートワイラー監督
クレイグ・リッチー音楽
マーク・ウエバ―、、、デヴィッド(AIロボット工学者)
ルーシー・グリフィス、、、ジョイ・アンドリュース(科学取材レポーター、ロボット工学専門家)
デヴィッド・クレイトン・ロジャーズ、、、アダム(AIロボット)
屋上から街を見渡すシーンはあるにせよ、基本ずっと薄暗い研究室~密室でのほぼダイヤローグで進む。
内容が面白くなかったら、ついて行けない作品であろう。
アスペルンガー症候群かと思ったら(ヒューマノイドインターフェイス)AIなのか、、、。
取材の記者ジョイ・アンドリュースと共に感心する?
しっかり自立系主体として動いている、細部にわたって人間であるが、、、。
(まさに人間そっくりの高度なロボット~アンドロイドとアスペルンガーの人間の”不気味の谷(底)”における交錯を見る)。
「彼女は美人か?」のデヴィッドとアダムのやり取りの不気味さ。
そのジョイが研究室に通ってくる一週間を一日毎に描いてゆく。
アダムも毎日、研究を進めている。
ストレスもなく籠って淡々と研究を進められれば人がやるより遥かに生産性は高いかもしれない。
ダヴィッドと共同で作業にもあたる。
この辺は、理想的な関係に思えるものだ。
しかし、ここまで「人間」である必要があるのか。
そこが雇い主「キャッスル」の要請なのであろうが。
まさに”不気味の谷”がポイントとなる。
アダムとデヴィッドで、毎日チェスをやる。コミュニケーションと観察~チェックの一環か?
結局、どっちがどっちなのかよく分からない。
ここの様子を見る限りではイニシアティブを握るデヴィッドに受け身のアダムという感じであるが。
デヴィッドはジョイに対し”不気味の谷”を抜けた向こう側目指し「フォードよりゴッホになりたい」とまで言う。
つまり量産・普及型は製造しないということだ(一般向けではないとすると、、、)。
雑誌の記事にはとても良いキャッチ―な噺だ。
彼女にシヴァ神を示し瞑想にまで言及する。
次第に会話も深まって行きジョイの学生時代のプログラミングの件に及ぶ。
デヴィッドは彼女の未完成のプログラムを一緒に完成させる。
ジョイの当初の気持ちと姿勢は大きく変わり彼らに刺激を受け興味関心が個人的に深まってゆく。
彼女の目的も今の取材よりもかつての研究を始めたい気持ちが芽生える。
(両者とも)欲求を持つ主体であることは、間違いない。
アダムは彼らの行動と彼女のプライベートまで録画して確認したりもする。
彼らに三角関係が生まれていた(中盤以降それが深まり痴話喧嘩にもなる(笑)。
「行動の発現が観られるわ」(ジョイ)どころではない。
一途な探求と作業のルーチンに加え、アダムが贈り物をジョイにしたりする。
サプライズもかけるなど、そっちの方にヒートアップする。
そしてチェスにもふつうに勝つ。
7日目、最終日の夜デート
デヴィッドがすしを握って振る舞う。日本酒も呑んだようだ。
なかなか粋なやつだ。
彼女の前で思わせ振りに自問したりもする。
巧みに気を引き、彼女の方からデヴィッドを誘惑しふたりは結ばれた。
ジョイは(何と)デヴィッドと恋人同士となったのだ。
結構、自然な流れにより。
彼女と結ばれたことをデヴィッドは、彼女を通して我々の研究成果を世界に認識させることになると説明する。
(確かに科学雑誌に掲載されるし、他のメディアにも広く紹介されよう)。
しかしアダムは、君は主目的を変更したと謂う。
主目的を変え、優先順位を変えることまでしたと、アダムはデヴィッドを強く非難する。
この変化はジョイにも起きていた。彼女の仕事~ライフワークに対する意識である。自分も生産者になりたいという。
どんでん返しと言うか、そういうことか。
怒ったアダムに追われて、ということはあるにせよ、、、。
外部に出ようとした(恐らく自分の意志で解放されようとした)デヴィッドがセキュリティの外に出た途端、無線電波が届かなくなり、ノイズが~と言って倒れてしまう。ここで、われわれは真相を悟る件となる。
(その前からしっかり怪しかったが。何を隠そう、デヴィッドこそがアダムであった。つまりロボット役のアダムがデヴィッド)。
この精巧なロボットは、AIシステムを内臓しているのではなく、外部コンピュータ~サーバーを通し無線操作されているものであり、研究室を出たら作動しないものなのだ。途端にポンコツなのだ、、、この落差に唖然。
つまり、偉そうにしていたデヴィッドは、アダムであり、、、
如何にもぎこちないアダムがデヴィッドであった。
実質、その場にいる人間は、ずっとこのアスペルンガー・デヴィッドひとりであったのだ。
そしてジョイは実質、被験者であった。
きっと雑誌取材は「キャッスル」に仕組まれたものであって、彼女によってアダムの信頼性を証明~確認しようとしたものだ。
結果的に言って(最終的に)、ロボットの方は「不気味の谷」(森政弘博士の説)をとっくに超えてその彼岸に到達していた。
でなければ、美人記者が夜を共にする気になるまい。
つまり、デヴィッドはこの上ない研究成果を挙げたと謂えよう。
しかしその天才ロボット工学者の方はかえって不気味の谷の底に居続けているような、、、。
実際、彼は物凄くふたりに警戒され怖がられてもいた。アスペルンガーの強張った部分が強くせり出す。
ただ、アダムとデヴィッドは被験者ジョイに対してどこまで芝居なのか、どこかで本気?なのか嫉妬の部分などよく分からない。
いずれにせよ、(それぞれの)感情があり主体的に行動しているのだ。
ロボット工学が、将来ここまで来るとは到底思えない。
人間の補佐という立場は出ないはず(最初から出ない設計思想でいくはず)。
キャッスル社の提供する“ワークスペース18”でデヴィッドはすでに10年、研究を進めて来たのだが、恐らく軍事目的に直結の国家機密の極秘事業であろう。
ホンモノのダヴィッドのサプライズが最後の最後に明かされる。
やはり一番、手の込んだ悪さをするのは、人間の方であろう。
面白い映画ではあった。
「エクスマキナ」に似た世界観を持つが、あの映画には遠く及ばない。
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