イカルイト

Iqaluit
2016
カナダ
ベノワ・ピロン監督・脚本
ロバート・マーセル・ルパージュ音楽
マリ=ジョゼ・クローズ、、、カルメン
フランソワ・パピノー、、、ジル(夫、建設業者)
ナター・アンガラアク、、、ノア(夫の親友、部下、イヌイット)
クリスティン・トゥートゥー、、、アニ(ノアの姪、ジルの浮気相手)
セバスチャン・フーバドー、、、ビクター(夫の親友、白人)
ポール・ヌタラリアック、、、ダニー(ノアの息子)
フロビッシャー・ベイという名の街であったが、1987年にイカルイトに改称された。
ロバート・マーセル・ルパージュの音楽がこの北(北緯63度)の朝なのか夜なのか分からない場所にマッチしていた。
雑踏の話声が環境音でよく響いていた。
住民の約6割はイヌイットであるそうだ。
クリスティン・トゥートゥーの特殊な発声法によるボーカリゼーションも興味深い。
以前、モンゴル人のアーティストによる演奏でもまた異なる発声法によるボーカリゼーション”フォーミー”に驚嘆したものだが(但しこちらは驚嘆という類のものではなく、喉笛とスキャットの重奏による素朴で生々しい響きといった感じ)。
長期出張中の夫の事故を受けてモントリオールから駆け付けた妻のカルメン。
しかし彼は一言も彼女に告げることもなく息を引き取る。
それから、カルメンはイカルイトに滞在し夫の生前の姿を知ろうとする。
事故の真相も知りたい。
夫の仕事仲間や知人に当たると皆、彼はいい奴だった、良い上司だった、等と当たり障りないコメントを返してくる。
まあ大概はそうしたものだろう。何やら腹に秘めている者は、そういうときには何も言わない。
寒々とはしているが、とても惹かれる幻惑的な光景だ。
そしてバーに作家自ら彫刻を売りに来るというのも乙なお土産文化に思える。

この物語、アザラシを生で食べるシーンから始まる。
これが御馳走なのだ。皆で取り囲み各自ナイフで切りながら美味しそうに食べる。
(精神を落ち着かせたいときに滞在する川辺のテントでもノアは釣った魚の生を食していた。食文化は日本人の感覚に近い)。
ここで、ジルはこの家の主人であり仕事の部下でもあるノアに金を渡し、アザラシの生食に誘われた帰りに娘のアリにも金を渡す。
かなり気前のいい男だと思っていたが、後半でその意味も分かる。
ダニーのジルを窺う表情にも見て取れるものだ。
夫はイヌイットの有名な作家の彫刻も沢山集めていた。
知らない面を知ることはあるだろう。
だが、この収集もある目的というかケジメとして処理されていた。
実はジルは、まだ当時20歳の学生と恋仲になり、何と子供まで儲けていたのだった。
流石にカルメンはこれには驚き、悲嘆に暮れる。
真相は、酒に酔ったダニーとジルとの間のちょっとした小競り合いからの事故であった。
押された拍子に落ちたところで頭部を打ってしまったのだ。
直ぐに警察に連絡はしたが、自分たちは姿を消して、この一見は皆で闇に葬ろうとしていた。
そのことを漸く知ったカルメン。
しかし、ノアとその家族との関りを通し、そして何よりこの北の、朝なのか夜なのか分からない場所に、彼女も何時しか呑み込まれていた。
闇のない時間は、異なる感覚と感性を生む。
何よりこの場所なのだ。
この事故~事件の決着は、そのことを自ら話したダニーとその一家に任せることにする。
そしてカルメンは、アニに子供に父親のことを話すかと聞き、勿論という返答に少しだけ微笑む。
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