彼女が目覚めるその日まで

Brain on Fire
2017年
アメリカ、アイルランド、カナダ
ジェラルド・バレット監督・脚本
スザンナ・キャハラン『脳に棲む魔物』原作
シャーリーズ・セロン他製作
クロエ・グレース・モレッツ、、、スザンナ・キャハラン(新聞記者)
トーマス・マン、、、スティーヴン(ミュージシャン、恋人)
リチャード・アーミティッジ、、、トム・キャハラン(スザンナの父)
ローナ・ナック、、、キャリー=アン・モス(スザンナの母)
ジェニー・スレイト、、、マーゴ(スザンナの同僚、親友)
ナヴィド・ネガーバン、、、サウエル・ナジャール(脳外科医師)
タイラー・ペリー、、、リチャード(編集長)
アガム・ダルシ、、、カーン医師
スザンナ・キャハランという難病を巡り闘ったジャーナリストの自叙伝の映画化である。
彼女は「抗NMDA受容体抗体脳炎」の271人目の患者であった。
まさに”Brain on Fire”であった。
映画にわざわざ邦題を付ける必然性はない、と思う。
(これほど酷い邦題を付けられたら、売り上げ~興行収入に響くこと間違いなし)。
わたしも主演が、クロエ・グレース・モレッツでなければ見ていない。
彼女の主演で初めて感動した映画を見過ごすところであった。
(良い映画に当たった。最初は天才ダコタ・ファニングが予定されていたという)。

「あなたがたは、自分自身の中に閉じ込められたことはあるか」という問いかけから始まる。
スザンナのような重篤な病で閉じ込められなくとも、このような感覚を抱いている人は少なくないのでは、、、。
彼女の場合、それは突然~彼女の誕生パーティーの最中~に来た。
自分でも分からない強い不快感に襲われ、幻視に幻聴、、、周囲の同僚にも分かる挙動不審。
親友や恋人、両親の不安と心配は募る。
身体を蝕む何であるか分からない苦痛~病魔を巡って、本人と両親、恋人の苦闘が始まってゆく。
本当にこの両親と恋人はよくやったと思う。
何よりも愛情があった。

この物語では、適当な診断を下す医者以外の周囲の人々は、とても彼女に献身的である。
いつも彼女を支えている先輩(親友)はもとより、辛口の編集長も窮地に立った彼女には支援の姿勢をしっかり示す。
(治るまで待ってくれた上に自叙伝を書くことまで勧めてくれた。何と良い人なのか)。
普通なら、クビとなって精神病院に送くられておしまいだ。

「抗NMDA受容体抗体脳炎」という診断が出たお陰で、スザンナは救い出された。
自分の体が脳を攻撃していることが判明したのだ。
致死的な疾患であるが適切な治療で高確率で回復も望めるものだという。
スザンナは、サウエル・ナジャールという医師に出逢えたことで、はじめて本当の病~苦痛が見出され解放された。
多かれ少なかれ、自らの身体~歴史のうちに閉じ込められている人はいる(本人が気づいていようがいまいが)。
しかし大部分の人は、それを正当に見出して救ってくれる人~機会(本との出会いも含め)に恵まれない。
何とか日常生活がそこそこ送れる程度であれば、相当な苦痛を強いられながらもそのまま生きてゆくことになろう。
本人に落ち度がなくても(犠牲者であっても)、大変な苦悩を背負い生きるしかない場合もある。
(そこまでいかなくても所謂自己不全感に悩まされている人は少なくないだろう)。
このような大きな病で日常生活がとても営めない状況になれば、入院してその治療に当たるが、多くの場合、見当違いな(いい加減な)診断により、全く異なる病の治療を受けさせられ、更に重篤になり死に至る。
彼女の場合、幾つもの病院で何人もの医者に診てもらいながら、誰もが彼女の苦痛の原因を見つけることが出来ない中、とても誠実で真摯に患者に向き合うカーン医師が、スザンナに下された診断は間違っていると直感するもそれが何かが分からず恩師であり今は医者を引退しているナジャール氏に診察を強く要請したことで、路が見事開けた。

現状は大変難しいところだ。
ヒトを当てにすることはまず出来まい。
(このような重篤な病でなければ、自分で治す以外にない)。
親が原因である場合~病など周囲からは全く見えない。
全く救いの手はない。
であるから、何であっても、自らの場所~身体性を自ら書くしかないのだ。
救われる~浄化されるまで書く。

これまで統合失調症、双極性障害、単に精神異常で片つけられ苦しんで来た人がどれほどいたか。
「多くの病人が見失われる世の中でわたしは見出された」と彼女は語る。
スザンナ・キャハランの手記によりこの難病の正しい治療が行われるようになったという。
また、これを書くことが彼女自身にとって大きな意味と価値をもったことは間違いない。
「わたしは以前よりも確実に強くなった」と自身振り返っている。
この映画の評価が専門家の間で低かったのは何故だろうか。
何であっても、映画としての出来不出来を越えて、大変価値のある作品であると思った。
クロエ・グレース・モレッツも頑張った。
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