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GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
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スイス・アーミー・マン

Swiss Army Man001

Swiss Army Man
2016年
アメリカ

ダニエル・シャイナート、ダニエル・クワン監督・脚本
アンディ・ハル、ロバート・マクダウェル音楽

ポール・ダノ、、、ハンク
ダニエル・ラドクリフ、、、メニー
メアリー・エリザベス・ウィンステッド、、、サラ


ハンクという人の精神状態はかなり危ない。
どれくらいの時間~期間かは分からないが、思いを寄せる人妻の家の傍に潜み、動けない自分の助けを求め、ついにどうにもならず首吊り自殺を思い立ったところで、死体を浜辺に見つけた。
ここからがこの映画の真骨頂である。
彼の乖離性人格がその死体に投影され、後程メニーと名乗るその男が彼を元の場所に蘇らせる~自分を肯定させるのだ。
ここから暫くの間、下ネタとお下品なオナラネタ満載のファンタジー世界に飛ぶ。
まずは、その死体がオナラ~腐敗ガスか~の噴射を推進力にして、ハンクの見立てた孤島から彼を背中に乗せて脱出に成功する。
人の住む土地に来たにも関わらず、なかなか「故郷」~現実に戻れない彼は森(という見立て)のなかで躊躇・動揺している。
彼らの発する声を使ったボーカリゼーションによるBGMは、実にこのシュールな物語を饒舌に演出していた。

水が欲しくなると死体の口から水が滝のように溢れ出てくる。
あれだけ派手にオナラをしている身体から出た水をハンクは飲む。
旨いらしい。自然水なのかも知れない。
それまでハンクが一方的に話しかけていたその死体が言葉を返し始める。
最初は質問などから、まるで記憶喪失者みたいに聞いてくるが、何も思い出せないという設定の人格で、ハンクの過去をある意味封印したい人格をかなり煽ってくる。
徐々に言うことも達者になって来て、ハンクの方はいいように押されてゆく。
その人格は今のハンクを大きく揺り動かすものとして出現しており、その為何かとハンクをハンクたらしめる抑圧・隠蔽パーソナリティに対し、ずけずけと手厳しく指摘・批判して来る。下ネタ攻撃もそのひとつである。

このメニーと名乗ってから急速に饒舌になり洞察力も冴えてくる死体は、まさにスイス・アーミー・ナイフみたいに多目的に使える多機能男であった。
まずは水上ボートさながらにハンクを乗せてオナラで突っ走り、ミネラルウォーターサーバーみたいに口から水を吐き出し、いちいちもっともだが辛辣な見解を披露する。「お前は壊れてて、空っぽで、汚くて、臭くて、無用で、古い。お前はゴミみたいなもんだ、違うか?」には笑うしかない。
その他、重宝することは、硬直した腕で丸太を切れるし、歯で髭も剃れる。更に動物相手に口に籠めた小石を体内ガスで放出してピストル代わりにも使える。指を鳴らせばライターみたいに火もつけられ、火にお尻を向けて放屁すれば火炎放射器さながらである。
またあそこが、「故郷」の方向を示す磁石にもなる。いがらしみきおの漫画か(笑。
まったく都合の良い多機能人格である。
死体にここまでやらせるか。いや死体だからここまでできるのだろう。

Swiss Army Man002

通常、開放的で批判的な人格を想定し白昼夢のなかで思い描くにしても、もう少し現実的なあり得る人格を浮かべるのではなかろうか。
このハンク特有な強烈な乖離した人格なのだろう。
このメニーが死体であることが、逆説的で説得力も強いのだ。
生きていても臆病で何もできず、自分を否定して、自然な欲望を全て抑圧している。
自由も何もないではないか。それで生きていると謂えるかということを死体から終始突っ込まれているのだ。
そして森?のなかで人間が捨てたゴミを利用してハンドメイドのサラと出会ったバスの中の光景を再現してメニーと記憶~経験を共有し再認してゆく。結局これで自分を認める過程を辿ってゆく。この間メニーに指摘される事柄を皆ハンクは認めてゆくようになる。
もう一人の自分のメッセージにこころを開く。
それにしてもハンクという男、器用である。森のバスなどよく出来たファンタジー作品である。

そして過酷なサバイバルを恐らくうんと近場で展開してきた末、サラの家の庭に転がり込む(爆。
笑う箇所はたくさんあったが、これが一番吹き出した。

Swiss Army Man003

そこで、ハンクは愛しいサラを前にして、自分を初めて曝け出す。
逞しい姿を見せる。
ホントに彼にしてみれば過酷なイニシエーションを潜って来たのだ。
それは間違いない。
メニーは自分の役目を終えたかのように単なる死体となって横たわっていた。
ハンクは解放されたと謂えるか?
覚醒し自立(自律)を得たのか?


だが、それを見守るサラは、救急車は呼んでくれるも、何なの?という怪訝な表情を浮かべるだけであった。
そんなものなのだ。

そして最後に死体のメニーは再び放屁により海の中を突っ走ってゆく。
(ハリーポッター氏もこういう方向に行かなければ生き残れないところにきているのか、、、)。
それを見守る人々は、皆ついてゆけないという呆気にとられた顔で佇む。
この水上ボートみたいなもの、彼らにはどう見えているのか、定かではない。

とても印象に残る怪作である。






音楽がとても斬新で特筆すべき出来であった。





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