VHSテープを巻き戻せ!

REWIND THIS!
2014年
アメリカ
ジョシュ・ジョンソン監督
最近、観るものがドキュメンタリーに偏っている。
演じモノがとても胃に重く感じられるのだ。
所謂ドラマでも、淡々として流れるものがよい。
ここのところ、毎日欠かさず、「ニック・ケイヴ/20,000デイズ・オン・アース」を観ている。
たまらない魅力。どうしても観たく、いや聴きたくなるのだ。
さて本作は、ひたすらオタクにインタビューする類のもので、観ながら脱力しつつニンマリしてしまったりする。
出てくる人が皆、拘りのコレクターばかりなところもちょっと嬉しい。
わたしも自分のマンションから今の実家に戻る際に、かなりの本数を処分してきたが、それでも2000本は残っている。
セルビデオは当時一本10000円位が相場であったし、そう簡単に捨てられない。
買うときはいつも胸をときめかせていたし、今でもケイトブッシュのシングルビデオクリップ集など煌めくアイテムである。
多少の画質がどうしたというのだ。画面に筋が入ると流石に落ち込むが、気にしてはいられない。
とは言え、セルゲイ・パラジャーノフの「ざくろの色」などの画質は相当キビシイものになっていた。
何が映っているのか判然としない部分もあって、この映画の最大の売りでもある鮮やかな色調もいまひとつのコントラストでうやむやであった。パラジャーノフものは、3つVHSでもっているが、どれもDVDにはなっている。場合によっては買う方向で考えるかも知れない。
だが、VHSのまま放置されたコンテンツも多いと聞く。それらに詳しい彼らマニアには、そのVHSは死んでも手放せない価値である。
それ、よく分かる。

VHSビデオデッキを残しておく理由は確かに在る。
わたしは、引っ越してきて2台場所の関係もあり捨てたが、頼みのメインデッキが作動しなくなり、修理に出したがすぐにソフトを呑み込んだまま動かなくなってしまったため、また2台中古で購入する羽目になった。何やってんだかである。
当時、TV録画した貴重なコンテンツも多い。もうとっくの昔に亡くなった人のビデオも少なくない。今後どんどんそうしたものは増えてゆくことになる。これらは死守しなければならない。滲んだ画像には何やら霊的な尊厳も加わって有難く見えてしまう。
想い出の自然と重なる絵は鮮明であれば良いというものではないことを感じた。
パソコンのストリーミング画面でしか映像を見たことのないうちの小5の娘たちとはまず、この感覚は共有不可であろう。
(彼女らには、メディアの記録媒体もデータそのものも手元にはないのだ。全てがクラウド管理という中央集権には、恐らく収集マニアは、馴染まないのではないか。彼らは少なからずアナキストで、徹底した個人主義者であることが多い)。
映画ではホームビデオ文化についての解説というかメディア論的授業の教材めいた部分が多い。
この時代をリアルタイムに生きたわたしにとっては自明でありわざわざ聞くことでもないが、知らぬ世代にとっては今現在のメディア環境がここから発展したということが学習できるはず。ただ、VHSデープやデッキ自体を手で触って操作もしてみないと正確には認識できないだろう。勿論、巻き戻しを体験するのは当然のこと。

ホームビデオ以前と以後は、映像文化にとり別世界とも謂える。
VHSとベータは日本の技術である。
それが世界の大変革を齎した。
どの世帯にもビデオデッキがTVの近くに据え置かれ、まずTV番組が放送時間から解放される。
そのため、番組表に支配されずに時間を自由に使うことが出来るようになった。
好きな番組は何度でも見ることが出来るだけでなく、ディテールをポーズしたり巻き戻したり、スロー再生して確認も可能であった。これは映画のVFXを素人の目で解析するにも役立った。
そこからビデオカメラで手軽に映像を取り込み、ビデオデッキで編集してお手軽インディペンデント映画を作ることに熱中する人もたくさん出てきた(映像と言うものに対して、人はとても主体的に低予算でアウトプットが可能になった革命である)。これと同時に、大手映画会社もそのビデオ販売権利を新たに生まれたビデオコンテンツ会社に売るにとどまらず、自らも映画のビデオコンテンツ部門を作り積極的に映画コンテンツの販売、レンタルを開始する。個人経営のビデオレンタルの店が次々に立ち上がり大変な儲けを手にすることとなる。これまでは番組~シリーズ終了でそれまでであったものが、パッケージされてその後に売り出されることになった(この件を押井守が感慨深げに語っていた)。
更に、ヒトは何も大掛かりな映画をソフト化するばかりが能ではないことに気づく。
最初から低予算でシリーズ量産可能なビデオ映画を手軽に作ればよいではないかというプロが出てくる。
これが日本でいえば「Vシネマ」と呼ばれるコンテンツである。
Vシネマに特化する俳優も生まれてきた。
海外VHSマニアたちが熱く語っていたが、Blu-rayなんぞ短命に終わるだろう。
またVHSが盛り返すのだ、と。
何故なら、まだ多くの人の知らないコンテンツがVHSの中にだけ眠っているのだから。
もしテープの劣化、散逸などでこれらが失われれば、その貴重なコンテンツには二度と触れることはできない。
彼らは今現在もレアコンテンツ収集に奔走し、管理保存に心血を注いでいる。
そう、わたしも頭を痛めているのは、管理~整理である。
こういう収集物の管理・整理術が肝心になってくる。
「VHSテープを巻き戻せ!」であるが、これは管理上、鉄則である。こうしないとテープが痛むのだ。
(VHSメディアを知らない世代は覚えておいて欲しい)。

まさかこれからVHSが流行ることはあるまいが、貴重なコンテンツが消滅することはなんとかしてもらいたいものだ。
わたしも自分の持っている資源は捨てないことを心掛けたい。
(猛烈な圧力が掛かるが。わたしの場合、鉄人28号フィギュアやLPレコードその他、色々あるので)。
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