オーケストラの少女

One Hundred Men and a Girl
1937年
アメリカ
ヘンリー・コスター監督
ブルース・マニング、チャールズ・ケニヨン、ハンス・クレイリー脚本
チャールズ・プレヴィン音楽
ディアナ・ダービン 、、、パッツィー
アドルフ・マンジュー 、、、ジョン(パッツィーの父、トロンボーン奏者)
レオポルド・ストコフスキー 、、、本人(指揮者)+フィラデルフィア交響楽団
アリス・ブラディ 、、、フロスト夫人
ユージン・パレット 、、、ジョン・フロスティ
ミシャ・オウア 、、、マイケル・ボロドフ(フルート奏者)
良い邦題だと思った。
原題の直訳ではさすがに厳しい。
ディアナ・ダービンの帽子の鳥の羽がチャーミングであった。
モーツアルトの「踊れ喜べ幸いなる魂よ」第3楽章”ハレルヤ”とヴェルディの椿姫”酒宴の歌”もしっかりと歌っている。
立派な歌手であり、とても素敵な女優だ。
爽やかで豊かな演技力と素晴らしい歌唱力からみても、ジュディー・ガーランドよりディアナ・ダービンを推したい。
リストのハンガリア狂詩曲第2番もストコフスキー指揮で演奏が聴けた。

噺は恐慌時代に誰もが共感を持てるような筋書になっている。
失業している優秀な楽器奏者が日々大変な目に遭っている。オーケストラの楽団が少ないためではないかとパッツィーは考える。
それなら新たにオーケストラを作って彼らを救うことで、素晴らしい楽曲を多くの人が聴けて誰もが幸せになる、、、というパッツィーの願いを叶えるまでの周囲を巻き込んでの彼女の破天荒な(かなりご都合主義的な)奮闘が描かれる。
父娘の愛情の物語でもある。
(ハリウッドは、父息子の愛情はよく描かれるが)。
勿論、ファンタジーとして歌と音楽を愉しみつつ素直に噺を満喫すればよいのだ。

ここで大事なのは、何度しくじっても諦めない、ということ。
何度も角度を変えてチャレンジすること。
アイデアもとても大切だ。
特にここで肝心なのは、彼女が人の先頭に立ち彼らを動かすことに長けていることである。
いくら不景気の最中と言えども、あっさりと失業音楽家が100人あの短時間に召集出来るとはちょっと思えないが(質の問題もあるし、オーディションも必要だろう)。
ことごとく彼女に引っ張られて、大の大人たちが彼女のレールに乗っかってうまい方向に動いてゆく。
前向きで素直な屈託のない笑顔の美少女だからうまくゆく面もあろうが、この軽やかな行動力は見習いたい。
歌手としても優れた才能を持つが、このまま音楽プロデューサーとしても実力を発揮するはず。
彼女は政治家や実業家になっても大成しそうだ。
かのアンネ・フランクが大戦中の隠れ家にディアナ・ダービンの写真を貼っていたという逸話もある。
やはり彼女は単なるアイドルというより、希望の象徴でもあるのだ。

この物語はあまりに強引な筋運びとファンタジックな展開で最後まで突き進むが、恐慌後のまだ社会全体が疲弊しているときに大変有効な触媒になったはず。メガヒットを記録し、ディアナ・ダービンが世界的に名を轟かせたのも頷ける。
勿論、本物の大指揮者のレオポルド・ストコフスキー(の演技)が、これだけたっぷりみられるというのもお得感が大きい。
他のキャストも申し分ない。哀愁たっぷりのアドルフ・マンジュー演じる父や、儲けのためなら何でも割り切る実業家のフロスト氏やパッツィーに先行投資してくれたタクシーの運転手などとても判り易いキャラで王道の運びに寄与している。
最後、ストコフスキーが自宅ホールにぎっしりと並んだ失業音楽家楽団に戸惑い唖然としつつも、その演奏に自然と指揮を始めてしまうところには、パッツィーと同じようにこちらも笑みが出てしまう。
こう来るとわかっていてもそう来てほしいとわれわれも切に願っている。
そういう映画だ。
ディアナ・ダービンの存在がそうさせている。
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