アンデルセン物語

HANS CHRISTIAN ANDERSEN
1952年
アメリカ
チャールズ・ヴィダー監督
マイルズ・コノリー原作
モス・ハート脚本
ウォルター・シャーフ音楽
ダニー・ケイ、、、ハンス・クリスチャン・アンデルセン
ジョーイ・ウォルシュ、、、ピーター(助手の少年)
ジャンメイル、、、ドロ(バレリーナ)
ファーリー・グレンジャー、、、ニールス(バレエ演出家、ドロの夫)
ダニー・ケイが本当にアンデルセンに想えた。
受容性があり優しいが一旦のめり込むと周りが見えなくなり極めて頑固になる創作家にはよく見受けられるタイプだ。
だが、彼が恋するバレリーナはちょっと、、、どうであろう?
全体に柔らかな色調で安らぎと郷愁を覚える画面であった。
終盤の舞台幻想は見応えがあった。
実際の舞台も盛況のようであったが、アンデルセンの脳内オペラの方が遥かに幻想的で神秘的であった(に違いない)。
映画内の舞台シーンであるが、ここだけ独立して鑑賞できる演出と踊りのパフォーマンスで見事である。
デンマーク王立バレエ団やブロードウェイ俳優も助演しているという。
全体として、ちょっと控えめなミュージカルという感じの映画であった。
小品であるがセンスのよい歌や踊りも入るがストーリーの中に自然に溶け込み妙に突出することはなかった。
靴屋のアンデルセンは、子供相手に即興でお話を作っては語って聞かせる人気者であったが、町の大人たちからは良く思われていなかった。学校(共同体)で教える物語=学習より遥かに生き生きして個人的で現在形であり普遍性ももっていたからか。何より題材が身近で面白いのだ。「醜いアヒルの子」など孤立に悩む少年のことをすぐさま将来に向け勇気の溢れる話に昇華してくれるのだ。伝統や歴史を語る語り部とは異なる未来に向けた希望を語る最高のカウンセラーであり先生であった。
アンデルセンは地元オーデンスを追い出されコペンハーゲンに渡った直後に出逢ったバレリーナに恋心を寄せる。
人妻ドロに思いを募らせ生み出される童話~物語や幻想と現実が交錯しつつ物語は展開する。
助手のピーターはアンデルセンにとって実によい相棒であり、親方が苦手な現実認識と常識の点で彼をうまく補完する存在である。

そもそもアンデルセンは、バレリーナのドロが演出家の夫から虐待を受けていると勘違いし、彼女を自分の愛で救い出そうと思い込んでしまった。そこは子供であっても助手のピーターの方が現実の有様を包括的に俯瞰する目を持っている。実際、彼はドロ夫婦の仲睦まじい様子を上の階から眺めて笑っていた。
アンデルセンは自分にとってよいように現実を捉えてしまう(もちろん誰でも少なからずそうであるが)。
だが、彼の想像と創造の根拠はそこにあるのだ。きっとその強烈な思い込みに。分かる気がする。
そのため、ニールスに楽屋に閉じ込められて、実際の舞台が見れなくてもイマジネーションで舞台を見たと謂えるのだ。
それだけ自分の想像力に対し確信をもっている。想像界が現実より優位にある。
だから安全な日常を送るためにも彼にはピーターみたいな周りが見える相棒が必要なのだ。

人妻バレリーナとの恋に破れ、ピーターにもうお話はしない、と固く誓って国に帰るが、以前よりずっと盛大に老若男女を集めて話しを語っていた。
前と違って人にせがまれてやっているのだから、もう何の問題もない。
童話集が幾つも出た後のことだけあり、人々の彼に対する関心と好意も随分違う。
彼を率先して追い出した校長が彼に好きな童話をリクエストしていた。
一方的な恋には破れるが迫害した者たちから認められる。世界に広く信奉者を得る。
これが彼にとり、きっとハッピーエンドである。
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