
水曜日はどうにも忙しく、毎週水だけお休みにしようか、箇条書きだけでも載せようかと迷う、、、。
Fahrenheit 11/9
2018年
アメリカ
マイケル・ムーア監督
わたしは、基本的に政治に興味はない。政治について語る準備もない。
政治体制がどうなろうと実存の在り方が変わるものでもない。
だが、その体制~外圧にも限度がある。
不可避的に政治に関わざるを得ない危機的状況にすでに差し掛かっている部分はあるようだ。
(最近、全く別の件でそれをひしひしと感じたことがある。個人情報漏洩に関する重大な件だ。日本もいよいよおかしくなってきた感がある)。
「119」はメキシコ国境にせっせと壁を作っているトランプが勝利宣言をした日であるが、かつて1989年11月9日に「ベルリンの壁」が崩壊した。
こんな風な対比がブラックジョークになって笑えるところがあったりするが、全編極めてシリアスに迫っていた。
ちょいと映像に入れるムーアの一言(ツッコミ)がいちいちクスっと腑に落ちる。
音楽の演出も良いセンスで、映像の編集もサスペンスドラマ調であったりして綺麗であった。
何よりアメリカ愛が凄く、本気で自国を憂いていることが分かる映画である。その分何の遠慮もなく鋭い。
日本のメディアからは伝わってこない盛りだくさんで強烈な事柄、事件もかなりビビットに確認できた。
デモ隊が警察と対峙しこちらの武器は、という箇所で「マイケルムーアだ」というところは、ホント笑える。
「
華氏911」ではブッシュを叩くも、次の選挙に再選させてしまったが、、、今度はどうか?

トランプをぎゃふんと言わせてほしいとは思ったが、噺はそんな現代版ヒトラーを生むに至った社会構造を暴いてみせるところに力点が置かれている。トランプの暴挙を挙げ連ね批評・断罪するというより、こういう人を国の代表に押し上げてしまう政党~政治家~資本家そして民衆とが作る利権構造に寧ろスポットを当てているのだ。そこに説得力があり、個人の悪事ではなく全体の病として分析した結果の危機的で恐ろしい事態を晒していた。
トランプ政権の誕生は日本のわれわれにとっても確かにショックであった。
未開票でありながら、ヒラリー陣営はシャンパンを抜いて祝賀を始めていたのだから、アメリカ本国においても青天の霹靂と受け取ったひとは多かったことであろう。
トランプが勝つことを予見していたのはマイケル・ムーアくらいではないのか。
他の政治家、評論家、芸能人、メディア、著名人は皆、ヒラリーが勝つと公言していた。
初の女性大統領の誕生だわと思い込み結果も見ずに感激して泣いている人さえいたものだ。
何故トランプが大統領に選ばれたのか、という前に、、、
本人は別になる気などなく、自己顕示欲を充たす~金になるために立候補してみせただけであった。
NBCが歌手のグウェン・ステファニーに払った出演ギャラが自分より高かったことに怒り?その対抗意識で自分の人気を確かめるために出馬してみたらしい。
別世界の生物のことなので、わたしには意味不明なのだが、演説会に集まった群衆の数やこれは儲かると飛びついてくるメディアに酔って、暴言を喚き散らしながらも、大統領も悪くないと思うようになったようだ。金持ちのビジネスマンの悪ふざけで始めたこととは言え、、、。
だから勝ってもスピーチの用意もなかった(爆。

だが、強大な権力が転がり込んできたものだから大変だ。
何とかに刃物である。
その後は、ただ只管「アメリカ・ファースト」と雄叫びをあげ訳の分からぬツイートをしながら邁進してゆく。
得体の知れないパワーだが。
民主党がどうしょもなく腐っていた。
「共和党と民主党は同じ穴のムジナ」とバーニー・サンダースの謂うように、本当に政治をやる気の若手民主党議員の足を引っ張りわざと負けさせ、大統領予備選では得票数の改竄により圧倒的に勝っていたバーニーを落とし、クリントンを勝たせた。
公立大学の無償化や金融業界の規制を掲げ多くの貧困層、労働者から慕われ支持を集めていたバーニーが実は優勢であったことを知っている党員たちの心が民主党から離れ、共和党のトランプが対抗馬であることからすっかり政治~選挙(政治への参加)から遠ざかってしまう。クリントンは金融業からの献金を受けているところからも党員からは拒否反応が出ていた。
こんな実情から、恐ろしく低い投票率のなかトランプ政権誕生への道筋を作ってしまう。
民主党がこんな党だとは知らなかった。
ハッキリ言ってこの二大政党では、アメリカは変わりようがない。
同じ大企業~資本家から献金を受けており、利権絡みで結果的に同じ行動しかとれないのだ。
これは、オバマも同様であった。
「
大統領の執事の涙」でオバマが当選して感極まって泣いていた主人公の父子がこれをどう感じるのか、、、。
(ある意味あの続編とも謂える)。
やはりみんな同じ穴のムジナだと呆れかえるだけだろう。
国民に目を向けている政治家が日本と同様に、いないことがまず基本的問題だ。
民衆を偽の安全の為に自由を手放す方向にもってゆき骨抜きにする。
謂い方を変えれば「安全」という幻想を担保に「自由」を奪う。
民衆が政治に失望し諦めた時にここぞとばかりに独裁政権が生まれてゆく。
ナチスドイツの例と重ねながら、この構造を映像編集でムーアが楽しく示している。

前後するが、リック・シュナイダー州知事のミシガン州フリントで起きた耳を疑う汚染水問題から彼は噺を始めた。
まだ、トランプが政権を握る以前の話だが、この事件がトランプのやり方の手本(縮図か)となっていると彼は睨む。
今一つ説明が曖昧でよく把握できなかったが、フリントに供給する水源をこれまでの綺麗なヒューロン湖から汚染されたフリント川にシュナイダー知事が独断で替えてしまう。これが最悪の事件(犯罪)の始まりであった。
何でもすでにある上水道とは別な(もっと効率的な?しかし無用な)パイプラインを設置することにしたのだ。オーナーは知事の大口献金者だそうで、その際に銀行も儲かる。要するに自分の懐が更に潤い、自分の権力行使が何より目的であったとは、ムーアの捉え方だが、その辺のやり方がトランプにも引き継がれているというものだ?
その長期の工事の間、水源はフリント川から供給された。
その水を知らずに飲んだ住人が鉛中毒になり深刻な健康被害を受ける(上水道管の問題か?)。子供たちへの影響が大きく、一生涯その病から癒えることはなくDNAを損傷し子孫にも受け継がれるということ。高齢者には死亡者もかなり出た。
しかし州はその汚水の水質検査データを隠蔽し、改竄した情報を流して、毒の水を人々にずっと飲ませ続ける。
それを後程知った他州からのミネラルウォーターのペットボトルが寄付によって無料配布されたというが、驚くべき実態だ。
漸く知事の責任を問う訴訟が始まったというが。今のアメリカでこれか、という一番のショックである。
トランプはこのリック・シュナイダー(の手法)を支持しており、今もとても仲が良いそうだ。
フリントの鉛混入の水道水汚染では、利権絡みで政治家はまるで話にならず、ついに非常事態宣言をしてオバマが動くことになったが、彼を民主党の良心のように期待した人々は、ただ落胆するだけであった。つまり何がどうなるでもなく、単なるパフォーマンスに終わってしまったのだ。これには誰よりマイケル・ムーアががっかりしていたのが分かった。
その後が酷い。フリントの市街地に事前の予告も何もなく軍事演習が突発的に行われたのだ。
空いた建造物が多いことから選ばれたというが、空き家が多いのは、経済的に逼迫し貧困の地となった結果であるからだが、その苦境に追い打ちをかけるような無神経極まりない突然の銃弾の雨霰である。住民は民主党に見切りをつける。
民主党の、労働者や貧困層に対する姿勢の一端が窺えた場面であった。

この時点で労働者の救済を訴えたトランプに人が流れるのも必然であった。
ムーアに言わせればひとつの選挙戦のポーズに過ぎないのであるが。
もう大人に任せてはいられない。
フロリダの高校乱射事件では全米の高校生が立ち上がる。
犯人はKKKに所属する退学させられた高校生であった。
これに対し銃規制を訴える高校生の迅速な行動と集客力ではなく動員力は素晴らしい。
これは忽ち全国に波及して大きな運動となる。
SNSがこれにも大変寄与する。もっとも有効な使い方を彼らは知っている。
全米ライフル協会(NRA)の支持と献金を受けるトランプらに打撃を与える事が出来るか。
今後に注目したい。
明るい展望を印象付けてエンディングへ、、、。
マイケル・ムーアとしては、その方向に持って行きたいのはよく分かる。
ドキュメンタリー映画の力とはこの現実に働きかける力であろう。
人々に希望と行動力を促す。
わたしでさえ、影響を受けた(笑。
(全く慣れない政治ものであり、いつもと異なる類の話をしてとてもぎこちなかった(爆)。
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