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バラバ

Barabbas.jpg

Barabbas
1961年
イタリア

リチャード・フライシャー監督
クリストファー・フライ、ナイジェル・バルチン、ディエゴ・ファッブリ脚本
ペール・ラーゲルクヴィスト原作
ディノ・デ・ラウレンティス製作

アンソニー・クイン 、、、バラバ
シルヴァーナ・マンガーノ 、、、ラケル
アーサー・ケネディ 、、、ピラト
ジャック・パランス 、、、トルヴァド
ヴィットリオ・ガスマン 、、、サハク
アーネスト・ボーグナイン 、、、ルシウス
ハリー・アンドリュース 、、、ペトロ


BSでやっていたのを観て、わたしもすでに持っていたことを思い出して観てみた(笑。
まさに映画の手法で作られた重厚な映画であった。
(最近、映画とは思えない映画が多い)。

キリストの身代わりに生きることを運命付けられた男の数奇な人生を描く。
それにしても壮絶である。
彼には死ぬことが許されない。
死ぬべきところで三度も生かされる。
そして信仰を心より欲したところで召されるのだ。
2000年以上前のエルサレムにはじまる。


死刑にされるキリストの身代わりで釈放というのも、まさに途轍もない巡り合わせだ。
彼はキリストが光の中に佇む姿も十字架を背負って歩むところも彼の死後、真昼の空が真っ暗闇になったことも知っている。
そして三日目に蘇ったことも確認する。だがそれを認めたくない、、、
それは、信じることを伴うからだ。

キリスト教徒となっていた愛人のラケルの説く話に彼は耳も傾けず、放蕩を続けているうちに彼女は反逆の罪で処刑されてしまう。
彼は怒りに任せかつての仲間を統率し強盗を続けるが、怒りに我を忘れているうちに再び捕らえられてしまう。
シチリア島の硫黄鉱山に送られ劣悪な環境で過酷な重労働を課せられるが、サハクというキリスト教徒の相棒が出来る。
地下の坑道が陥没し誰もが押しつぶされ焼け出され死んでゆく中、バラバと彼が助けたサハクだけが生き残る。特にバラバの体力、生命力は尋常ではなく、皆から不死身と呼ばれる。そう彼は生きる運命を強いられていた。
ひょんな切っ掛けで彼らは剣闘士養成所に取り立てられる(彼は度々特別な運命が与えられる。その為大変波乱万丈な生を歩む)。
だがサハクは決闘で闘った相手にとどめを刺さなかったかどで彼もまた反逆罪でトルヴァドに処刑されてしまう。
サハクは奴隷~剣闘士の前で人間の魂の平等とお互いに尊重し愛し合う尊さを説いて聴かせた。
奴隷たちの間で明かな動揺が走る。
バラバはそれを無言で聴いており、それをすでに思想として理解しているがまだそれ以上には踏み出せない。
すぐにサハクの言動は咎められ、危険思想として処刑を言い渡されることになる。
こうして身近な人が次々に殉教して逝く。

葛藤しながらも信仰には踏み込めないバラバではあったが、盗賊の長をしている頃から、人は置かれた立場~枠の内で自分の欲望を満たして生きるだけの存在であるという認識は持っていた。
たまたま自分は娼婦の息子に生まれ、こう生きる以外に道はなかったと。
盗賊の罪で捕えられたときに、州総督に向かって堂々とそちらは単に法の中にいて好き放題に殺戮と搾取を繰り返しているだけで、俺もお前も所詮変わりはないという実に真っ当な認識をぶつける。
かなり時代のパラダイムから外れたアウトサイダーとしての洞察を彼は早くからものにしていた。
枠自体を考察する視座をもっていた為、思想の相対化は容易いものであっただろう。
しかし信仰に生きるということは、言うまでもなく考えるのではなく信じることである。
心的構造が変質することを意味する。わたしには到底できない。わたしは信仰からは限りなく遠い存在である。
果たしてバラバのような人間が信仰に身を投じるということがあり得るのか、、、?

バラバは次々に貴族の見世物としてトルヴァドに処刑されてゆく剣闘士を見ながら自分の順番が巡ってくるまでに策を練る。
作戦が功を奏し見事彼らの上に君臨していたトルヴァドを仕留めることに成功した。
彼はその活躍ぶりを観客たちから熱狂的に讃えられ、国王から自由の身を勝ち得る。

キリスト教徒たちが秘密の集会をもつカタコンベにサハクの亡骸を運ぶが、キリスト教徒たちはバラバを受け入れない。
何故今更やって来たのか。もっと早く彼が救えなかったのかと。
彼らはバラバを非難し蝋燭を手にして真っ暗な闇の回廊に消えてゆく。
この時、彼はまさに文字通り、道に迷う。
彼に初めて明確に、新たな未知の道が示唆された。
本当に寄る辺ない不安な幼子のような顔で彼は闇の中を彼らに追いすがろうとする。

このカタコンベのシーンを見てこれが映画だと身に染みた。
バラバの不安が直接こちらにひりつくように響く。
そして漸く光る出口を見つけ出てみると、何とローマが燃えているではないか、、、。
見渡す限り一面の火の海なのである(現在のVFX効果を利用すれば遥かにインパクトある画像が得られたと思ったが)。

このシチュエーション~インプレッションは強烈この上ない。
すぐにかつてのサハクの言葉をありありと思い出す。
「古きものを焼き払い新たな王国が生まれる、、、」
彼は建物に火をつけて回る。
信仰に身を投じた瞬間だ。
彼は現行犯で捕えられ、自分はキリスト教徒でわれわれが火を放ったと自白する。
捕えられたキリスト教徒たちの中に20年以上も前にエルサレムで遭ったパウロがいた。
われわれが火を放つわけがない。またしても君は誤った。これはキリスト教徒を弾圧するための皇帝による姦計であると。

、、、犬死だ。後にはいつも死骸と苦痛しか残らない、と呟くバラバに対してパウロは語る。
「君はこころのなかでいつも戦いを繰り返してきた。それこそが神への道であり、そのこころのうねりこそが神の国の到来を促すのだ」と。
これにはわたしも説得力を覚え共感する。


一日の終わりが来た。
苦痛の後には眠りがある。
祈ろう。

殉教者たちの夥しい磔刑の姿が闇に浮かび上がる。
そのなかのひとりにバラバの姿が、、、
「すべてを主に委ねます」バラバは息を引き取る。





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プロフィール

GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
基本的に、日々思うことを綴ってゆきます。悪しからず。
出来ればパソコン画面(PCビュー)でご覧ください。

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