ヴァイラス

Virus
1999年
アメリカ
ジョン・ブルーノ監督
チャック・ファーラー、デニス・フェルドマン脚本
チャック・ファーラー原作・製作総指揮
ジェイミー・リー・カーティス 、、、ケリー・"キット"・フォスター
ウィリアム・ボールドウィン 、、、スティーブ・ベイカー
ジョアンナ・パクラ 、、、ナディア(ロシア船乗組員)
ドナルド・サザーランド 、、、ロバート・エバートン船長
マーシャル・ベル 、、、J・W・ウッズJr.
シャーマン・オーガスタス 、、、リッチー・メイソン
クリフ・カーティス 、、、ヒコ
ジュリオ・オスカー・メチョソ 、、、スクィーキー
ナディア以外は全てロバート・エバートン船長の船の乗組員
これまた荒唐無稽なお話しである。
「電磁波生命体」というのが出てくる。
”Virus”はその謎の生命体の人類に対する呼び名である。コンピュータを介して対話が可能であった。
彼らはミールを介してロシアの衛星探査船に飛び込んだ。すぐさまコンピュータに侵入し地球人のことを学習してしまう。
その結果、地球人はウイルスとして殲滅すべきという結論が出たようだ(よくある話だが)。
物質的な身体を持たないため、その場にあるモノを何でも材料にしてロボット工場みたいに奇怪な身体を作り上げてしまう。
電気があれば何でもできるため、他の船や軍事衛星や環太平洋ケーブルにアクセスを許せば一気に人類が滅ぼされることが予想される。
それをたまたまその船を発見して乗り込んでしまったエバートン船長一行が、それぞれの魂胆を持ちながらエイリアンに向き合い、壮絶な闘いに及んでゆく。内容的にはサバイバル映画と謂えよう。

サイエンス・ファンタジーはどんな突飛なものでもそれを前提と出来る強みがある。
それにしても高度な知性をもった電磁波生命体である?!
で、あのような名状し難い寄せ集めモンスターの形をとるらしい、、、。目はやはりカメラレンズなのか。
ここがどうも人間(地球人)的な身体性に重なり、しっくりしなかった。
どれほど突飛な設定であっても構わないが、ディテールをしっかり構築しないと、このような噺はついてゆけなくなるものだ。

ここでは、葛藤する人間同士の軋轢や裏切り、協調などのドラマと冷酷な電磁波生命体の怖さ残忍さに、人の死体のエグさ加減で勢いよく乗り切ってしまう。展開も早い。暗闇に蠢くメカ・エイリアンは充分に不気味であった。
ともかく、怖がらせようというところで、しっかり怖がれる。スプラッタームービー的な煽りと怖さが大きい。
各キャラクターもその人格面と個性が濃厚に描かれ、噺に厚みが出ていた。
ドナルド・サザーランドの船長がこれでもか、というほど憎たらしく描かれていたが、威勢よく敵の手先に寝返った~改造されたかと思うとかなり呆気なくやられてしまう。お気に入りの役者だけにちょっと情けない。

しかし、いくら何でも折角馴染んできた味のあるキャラを片っ端から殺し過ぎである。
何でこの人まで殺されるのかというギリギリのところまでメンバーが死んでゆく。
せめてロシア船ただ一人の生き残りであるナディアくらい生かせておけない内容なのか?
結局最後に残るのはケリーとスティーブの二人だけである。
(主役的な雰囲気を持った存在はナディアであったのだが)。

敵は何故かロシア船内でロボット工場を運営し始め、侵略の準備を進めているようであった。
それを阻止するため立ちはだかるケリーたちは、外部には一切連絡せず、この船を爆破して連中をここで食い止めようと捨て身の作戦に出る。だが隠して装着しておいた爆弾も見つけられてしまう。
完全に分の悪い闘いであったが、リッチー・メイソンの最後に仕掛けたトラップにより、二人の脱出ポッドの発射と共に、もう一つの(リッチーだけが知っている)爆弾が破裂することになった。
これで、人類が辛うじて助かるというトリッキーでスリリングな解決であった。
(ホントにそれが消滅したかどうかは知らんぞ)。
最後にも蛇足的に怖がらせる映画のトラップがあったりして、監督の思惑は成功しているのでは、と思う。
パニック・サバイバル映画としてはよく出来たものだ。
とは言え、われわれの体を一秒間に数百兆個も通り抜けてゆくニュートリノを考えると、そのような微細な粒子が何らかの影響をわれわれに及ぼさないことの方が不思議と謂えるかも知れない。
宇宙からは常に何かがやって来ているのだ。
いやわれわれの身体も超新星爆発などで生成された(吹き飛んだ)元素を元に形成されている。
レイ・ブラッドベリ的な感性は大切にしたい。