魔女の宅急便 アニメ

Kiki's Delivery Service
宮崎駿 監督・脚本
角野栄子 『魔女の宅急便』原作
荒井由実『ルージュの伝言』、『やさしさに包まれたなら』主題歌
久石譲 音楽 『風の丘』など、、、
キキ
ウルスラ(画家の少女)
ジジ(キキの飼う黒猫)
おソノさん(パン屋の女将)
トンボ(キキの友達の少年)
老婦人
バーサ(老女中)
マキ(デザイナー)
この『魔女の宅急便』アニメ版も内部リンクを張ろうとしたら無いのに気づき、焦ったもの。
ここで、一言書いておきたい(このパタンまだありそう。探して見る必要あり)。
「トトロ」に並ぶ傑作である。
本作も随分前に観ているのだが、、、魔女と謂ってもとても普通の世界が描かれていた印象が強い。
声優はプロの声優のようだ。安定していて身を入れて観ることが出来た。
キキとウルスラが同じ声優さんなのだ。やはり専門家は違う。
久石譲の曲も優しく馴染んでとても良い。
特に『風の丘』はうちの娘がよく弾いていた好きな曲のひとつ。
綺麗なだけでなく哀愁が溢れていて、この映画の世界観にとてもよく溶け込んでいる。
まず、この物語はかなりストイックなものだ。
13歳でキキは修行の為、家を出るというところから始まる。
まるでかつての徒弟制度やルネサンス期のレオナルドがベロッキオ工房に送られたのもこの年頃か、、、。
だが、どこかの街の魔法学校に入るとかではなく、住む街を探して自活しながら人生を学ぶみたいなのだ。
ちゃんと働いてお金も稼がないと食べてゆけないという下部構造もしっかり描かれる。
よくある子供向けアニメの、修行を重ね次々に新たな魔法を習得して、悪者に立ち向かうような抽象的な方向性はとらない。
ここでいう魔女というのは、どのような存在なのか。
もうすでに過去の存在になっている(極、希少な存在のようだ)。
キキの姿を目にし、バーサがまさにひいおばあちゃんから聞いた魔女そっくり、みたいなことを言っている。
街でもとても浮いた個性的な存在である。実際に街中を箒に乗って飛んでいるのだ。
しかし、人々はおやっと空を仰ぎ見るが、過剰に驚き恐れるような人はいない。強い好奇心を持つ人はトンボ独りであった。
そんな特にいてもいなくてもよいような存在である。
日常的にも見る、自分とは明らかに違う人種を、優しく無関心に受け容れる状況に似ているが、、、。
宅急便の仕事を考え、始めるとそれなりの需要者が付き、街の人との関係も現実的に出来てゆく。
やりがいを感じ充実感を味わうばかりでなく、とても虚しく落胆に沈み急な豪雨に逢って風邪をひいてしまったりもする。
確かにこうして人は(誰のものでもない)自分の生きた経験を糧に成長してゆくのだ。
ただ現実にありそうな差別や謂れのない暴力などは起きない適度な無関心さに救われているように思う。
彼女が選んだ街は、特に豊かかどうかは知らぬが殺伐とした感じがない良い街であった。
所謂、普通の学校にはそのうち故郷に帰ってから戻るのか、その辺は知らないが、、、。
これは教科学習では賄えぬとても素敵な学びの場になっていると感じる。
特にシャガール風の絵を描く少女ウルスラとの邂逅は貴重なものだ。
ウルスラは魔女ではないが、キキと同様に若いが求道者である。
キキが飛べなくなった悩みを相談すると彼女も描けない時の苦しみを語る。
その苦境をどう乗り切ったかも話してくれるちょっと先を行く親友だ。
こういう得難い友を得ただけでもこの街(の森)に来た甲斐はある。
かなりのピンチでの偶然の大きな贈り物でもあった。
映画の中でこのパタンが幾つもあり、実際チャンスはそういう場で掴むものであろう。
キキを御贔屓の老婦人もおソノさん同様キキの精神的支えとして心強い存在だ。
そして前向きで上向きなトンボ少年である。
やはり同年代の異性はとても大切な存在である。
空を自由に飛び回れるキキを素直に尊敬しているところも良い。
良い話し相手になるに違いない。
最後にこのトンボ少年の危機をキキがとっても危なっかしくもドラマチックに救ったところで、二人の関係もとても自然になったが、その情景をその場やTVを通して観た多くの街の人々がキキに好感を抱いたのも間違いない。
これから商売も繁盛するだろうし、トンボとの将来や、ウルスラとも更に創造的に、、、など明るい未来に続く感覚で終わる。
黒猫ジジとは、この先どうなるんだろう、、、とちょっと思ったが。
絵と音楽が違和感なく融合して、この絶妙な世界を彩っていた。

どこにも破れ目や不自然さのないとても静かな説得力に充ちた作品であった。
実際に箒に乗って低空飛行しているような感じで自分も暮らしていることは確かで、そういった面からも親近感を抱く映画である。