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アメリカン・スナイパー

American Sniper01

American Sniper
2014年
アメリカ

クリント・イーストウッド監督
ジェイソン・ホール脚本
クリス・カイル『ネイビー・シールズ最強の狙撃手』原作

ブラッドリー・クーパー 、、、クリス・カイル(スナイパーのレジェンド)
シエナ・ミラー 、、、タヤ・カイル(クリスの妻)


戦争映画であるが、好戦とか反戦とかのレベルではない。
戦争という場~状況において、人がどのように変わってしまうのか、その変わってゆく自分との葛藤(乖離)と不安が描かれる。
取り憑かれた(強迫的な)理念で怪物のように膨れ上がってしまう自分を持て余し、只管行動~狙撃に集中しようとする。
憎き敵を撃っているときは、精神的な安定が得られる。
おれは仲間を救っている、、、殺された仲間の仇討ちをしている、、、アメリカの為に闘っている、、、しかし人を殺すことで自分のうちの何かが死んでゆく。
だが彼は激戦区においてイラク兵を160人以上殺し、中でも特に腕が冴えわたり恐れられている敵側の元オリンピック代表選手であったスナイパーを約2000m離れた位置から狙撃して倒し、レジェンドとしてアメリカ中から崇められる存在に祭り上げられてしまう。
彼はそれに戸惑いを隠せない。

イラク戦でランチャーを持って掲げようとした兵を狙撃して殺すが、そのランチャーを幼い子供がやっとのことで拾い上げて掲げる。
クリスはその子に照準を合わせつつも、それを下に置けと心で念じる。
幸い、その子は重みに耐えられずに、道にほっぽり出して逃げてゆき、彼もホッとする。
彼がイラク戦のデビューは、対戦車用の手榴弾を持った子供と母親の狙撃であった。
確かにこれの連続であれば、おかしくならない方が変である。
自分がそれと意識せずとも、知らずこころは犯されてゆくだろう、、、。

American Sniper03

あくまでもアメリカの立場から、主人公クリスの視座から見ている為、残虐で非道なイラクの兵士や幹部が登場する~見られる。
アメリカ人と話をしたというだけの理由でイラク民間人の息子の頭にドリルで穴をあけて殺害するイラク兵幹部の1人など、、、極端な例が幾つも登場する。彼(アメリカ兵たち)のイラク兵殺害の正当化は容易い。良心の呵責は抑えられる。
悪を滅ぼすのだ、、、と。

彼はワールドトレードセンター(911)のTV実況を観て、その復讐に燃えたものだが、そこに至る事態の構造は俯瞰してはいない。
その要因は、ブッシュを中心とした石油官僚たちの利権争いの一環であったことは否めない。
ノーム・チョムスキー博士(生成文法の言語学者)は、はっきりそこに至るアメリカ~ブッシュの罪について分析し批判している。

しかし、これはそういった戦争映画ではない。ある意味、戦争映画ですらない。
丁度、「沈黙 サイレンス」が信仰を利用した侵略主義の国家(カトリック)的背景には一切触れず、個人の信仰レベルに絞ってその壮絶な苦悩を描いていたように、あるイデオロギーに侵された人間がその柵から抜けようとして苦しみもがく姿を描いている。
戦争はそうしたものの極限状態のひとつであろう。
クリント・イーストウッドは、恐らくイラク戦争に賛成か反対かとかいうレベルの作品として撮ってはいない。

American Sniper02

最後の最後までこの人は大丈夫なのか?
この修羅場の何処かで撃ち殺されはしないか、精神的に参ってしまわないか、、、その不安が次第に高まって行き、息苦しさをに耐え兼ねてしまうのだが、、、。
無事に本国に帰還して、こちらも本当にホッとする。

だが暫くの間は適応障害に苦しむこととなる。
これまでならすぐにそれから(自ら)逃れるように戦地に赴く事だろうが、彼はもう引退を固く決めていた。
(妻が引き留めるのも聞かず、4回も危険極まりない戦地に飛び込んで行ったものであった)。
彼の中で冗長性を保ってきたものが一気に相転換したのだ。
普通の生活に戻る決心をした。妻と子供と生きることにした。良かったとこちらも思う。
彼は子供の存在や傷病兵の慰問などによって、自分をしっかり見出してゆき、落ち着いた生活に徐々に戻って行く。
これで後は安らかな生活を送って行くのか、と思ってみたのだが、、、。

ヒーローというのは、苛烈な場ではある意味、不死身であるが、想いもかけないところであっけなく命を落とす。
(かつて松田優作はそういうヒーローを演じていたことを思い出す)。
二時間の約束で招かれて帰還兵の会に出席したとき、元海兵隊所属の男に殺害されたという。

American Sniper04

そういうものなのだ。
最後に奥さんが彼がちょいと出かけて来ると言って車に乗るとき怪訝な表情で見守っていたところが印象深い。
それは監督の脚色かも知れぬが、実際大いにあることだと思う。

胸騒ぎがしたら取りやめた方がよい、、、
きっと、行かない勇気(ちょっとしたもの)も必要である。





プロフィール

GOMA28

Author:GOMA28
絵画や映画や音楽、写真、ITなどを入口に語ります。
基本的に、日々思うことを綴ってゆきます。悪しからず。
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