サイン

Signs
1995年
M・ナイト・シャマラン監督・製作・脚本
メル・ギブソン 、、、グラハム・ヘス(元牧師)
ホアキン・フェニックス 、、、メリル・ヘス(元野球選手、グラハムの弟)
ロリー・カルキン 、、、モーガン・ヘス(病弱の息子)
アビゲイル・ブレスリン 、、、ボー・へス(霊感のある娘)
M・ナイト・シャマラン 、、、レイ・ラディ(グラハムの妻をひき殺した男)
チェリー・ジョーンズ 、、、キャロライン・パスキ(警察官)
パトリシア・カレンバー 、、、コリーン・ヘス(グラハムの妻)
小品である。かなり地味な趣にまとめている。
「シックス・センス」の監督である。
巨大なミステリー・サークルが主人公のトウモロコシ畑に突然現れた。
そのトウモロコシ畑に、何者かが侵入した気配があり痕跡も窺える、、、。
家庭にひたひたと緊迫感が浸透してゆく。
キャストの熱の入ったストイックな演技がそれを高める。
(ストーリー・プロットの弱さをキャストが演技で支えていた)。
異星人が襲ってくるといっても「インディペンデンス・デイ」のような超巨大宇宙船相手に、即物的で物量に任せた軍隊でただ無謀に突撃~みたいな単純なものではなく、一軒の家のひと家族に焦点を合わせた、こじんまりと小さく絞った作りには好感は持てる。
宇宙人の情報もTVやラジオで伝えられるのをハラハラしながら受け取るのみ。
現場にドカドカ車を飛ばして駆け付けたりして大騒ぎもしない、控えめで真面目な家族の姿が描かれてゆく。
武器だってこれと言ってない。包丁とバッドくらいか、、、。
何でも、煩くどでかければよいというものではない。

TV放送にがぶり付になっていたメリルがニュース番組で不意にエイリアンが道を過るのを見てしまい飛び上がって驚愕する場面は良い。これが下手な役者であったらここから失笑をかって以降グダグダになってしまうだろう。
ここはホアキン・フェニックスの実力で持ちこたえる。
しかし品性の悪そうな宇宙人だこと。
如何にも悪です。と、言っているようなものだ。
しかも普通に街を横切っている。
大胆不敵である。というよりも宇宙人自体危険認識ないのか?
水で簡単にのされてしまう身をどう思っているのか、不思議、、、。

エイリアンが微妙にちらつき、精神的に追い詰められ、三人で宇宙人に思考を読まれないためにアルミのヘルメットを被るところは、微笑ましく見えようが笑えない。
真面目な演技に説得力を感じてしまうのだ。
(メル・ギブソンとホアキン・フェニックスの気迫の演技にひたすら押されてゆく感じだ)。
家の中から釘を打ち付け襲撃を防ごうというところは「鳥」を想わせるが、鳥ならその有効性は期待できるが(それでもボコボコ嘴で突いてきた)、相手は外宇宙から飛来したエイリアンである。その防御で太刀打ち出来るか、グラハムの案通り湖の畔に逃げた方がよかったのでは、、、。
しかし子供たちはママと暮らしたお家から離れたくないときた。
これでは、お父さんも無理強いが効かなくなる。
弟のメリルもホントにこれで大丈夫なのか兄さん、、、と不安顔になるが、観ているこちらも同感だ。
しかし兄としてはレイの貯蔵庫で一度エイリアンに対峙している経験上、これでも何とかなると踏んでいたようだ。
案の定、なかなか入ってこれない(笑。
しかも疲れて寝ている間に、ラジオから円盤は皆立ち去って行ったというニュースがしきりに叫ばれていた。
折角侵略にはるばるやって来たのに宇宙人はそうそう引き上げてゆく。
(そもそもホントに侵略だったのか、、、?)
兄曰く、「きっと弱点を攻撃されたんだ。」
弱点はすでに彼はレイから聞き出していた。
きっと誰かが水をかけたらそれが効いたのだろう。
ミステリーサークルは水辺からは決まって離れたところにあった。
それを目印に彼らは集まっているように見える。
これを看過したのはレイであった。
彼はそれを伝える為にグラハムを電話で呼んでいたのだ。
最後に一安心と思った矢先に、エイリアンがテレビパネルに映った瞬間は、秀逸であった。
まだいたのだ!部屋のその方向に向き直るグラハムとメリル。
緊張がピンと走るが、そのエイリアン実物を間近に観ると何か間が抜けている。
アホなコソ泥といった風情で知的生物としての威厳の欠片もない。
体の弱ったモーガンを人質にとるも結局、メリルのフルスイングバッドで滅多打ちにされ、倒れたところ上からボーの置いたコップの水を被り退治される。これはコメディか?いやメル・ギブソンとホアキン・フェニックスの表情からそんな要素は微塵も感じられない。
しかし宇宙人、ショボい。余りにショボすぎる。
そのエイリアンはレイの倉庫に生け捕りにされていた個体で、グラハムにも指を二本切断され負傷者扱いで退却する円盤にも乗せてもらえなかった者だ。ちょっと哀れである。グラハムからも甘く見られている。
彼らは海以外にも地球に水が溢れていることは、接近する以前からよく知っていたはずなのだが、命に係わる割には、その防備が足りなすぎないか。防水スーツすら着ている訳ではない。空気中の水蒸気(気温と湿度の関係)をどうみているのか?
裸でヒョコヒョコ歩いてる場合か?ゲリラ豪雨でも来たらどうするのか?気圧はどうなんだ。大丈夫なのか、って別に心配することではないが。
星間航行(移動)して来た知的生命体とは思えぬ、間抜けぶりである。
異星人の造形及び動作の点、設定から謂っても、その工夫の無さ加減はSF?映画史上ワースト3にはしっかり入ると思う。

この宇宙人襲撃騒ぎは、家族の関係修復と団結の為の試練ともなり、彼らにとって役立った。
このくらいのチョイ悪宇宙人効果なら悪い事ばかりでもなさそうだ。
とは言え、TV・ラジオによると都心部では死者も出たとのこと。
田舎と都市とでは騒ぎ加減がかなり違ったのだ。
しかしそれは彼らには窺い知れない事。
目の前を見て、自分たちのやるべき事を地に足を付けてしっかりやる。
エイリアンの実情をしっかり見極め、適当な対処で無事切り抜ける。
地道で堅実で素朴な生活こそが大切なのだ。
こういう視点から描く映画も良い。
キャストの熱演に好感を抱く映画であった。